平成30年度 第2種 機械

2022年2月11日作成

目次

  1. 三相誘導電動機
  2. 永久磁石同期発電機
  3. チョッパ回路
  4. 間接抵抗加熱
  5. 変圧器の損失及び効率
  6. アルカリマンガン乾電池
  7. ルミネセンス
  8. ネットワーク通信における LAN 中継機器

問1 三相誘導電動機

図は,三相誘導電動機の 1 相分の L 形等価回路である。ただし,$r_1$ は一次巻線抵抗,$r_2'$ は二次巻線抵抗の一次換算値,$x_1$ は一次漏れリアクタンス,$x_2'$ は二次漏れリアクタンスの一次換算値,$b_0$ 及び $g_0$ は励磁サセプタンス及び励磁コンダクタンスである。三相交流電源の相電圧の実効値を $V_1$,フェーザを $\dot{V_1}$ とする。また,滑りを $s$ とし,漏れリアクタンスの和を $X = x_1 + x_2'$ とする。

電動機を交流電源に接続すると,励磁電流は $\dot{I_0} =$ $(g_0 - j b_0) \dot{V_1}$ となり,$\dot{I_0}$ による損失は $W_1 = $ $3g_0 V_1^2$ である。機械損 $W_m$ を無視すると,機械的出力は $P_O =$ $\displaystyle \frac{3 \frac{1-s}{s}r_2' V_1^2}{(r_1 + \frac{r_2'}{s})^2 + X^2}$ である。一方,$r_1$ 及び $r_2'$ に生じる損失は $W_C =$ $\displaystyle \frac{3(r_1 + r_2')V_1^2}{(r_1 + \frac{r_2'}{s})^2 + X^2}$ となる。ここで,機械損 $W_m$ を考慮すると,電動機の効率は $\displaystyle \frac{P_O - W_m}{P_O + W_I + W_C}$ となる。

三相誘導電動機の 1 相分の L 形等価回路
三相誘導電動機の 1 相分の L 形等価回路

参考文献

  • 目指せ!電気主任技術者~解説ノート~「誘導電動機

問2 永久磁石同期発電機

同期電動機の回転子(界磁)は電磁石が一般的であるが,界磁に永久磁石を用いたもの(永久磁石同期電動機。以下,PM モータという)と回転子が鉄心のみで構成されたもの(リラクタンスモータ)もある。PM モータは,回転子に永久磁石を配置しているため,電磁石を用いる方式に比べて励磁装置が必要なく,かご形誘導電動機と同様にシンプルな構造となる。

PM モータは回転子への磁石の配置方法により,表面磁石形(SPM)と埋込磁石形(IPM)の二種類に分けられる。SPM は磁石の自足を有効活用できるので高トルクでトルクリプルの少ないモータであり,可変速ドライブを行う場合に制御性,応答性の良いモータである。しかし,高速回転時に磁石の剥がれや飛散の可能性があり,構造上の対策を必要とする。一方 IPM は磁石が回転子鉄心内部にあるので,回転子鉄心は高速回転時の磁石を保護しているだけでなく,その構造によってリラクタンストルクも得られ,運転速度領域を広くとれる利点がある。しかしその反面,磁石の磁束の有効活用の面では SPM に比べ劣り,磁極位置によるトルクリプルも増加する。

PM モータは近年発達の著しいネオジム合金等の希土類永久磁石を用いることで小形・軽量となる利点があることから,家庭用機器,OA 機器,電気自動車などに多く用いられてきたが,最近では小形軽量であることを活かし鉄道車両用の大出力機への開発も進められている。

PM モータの可変速運転は,可変電圧・可変周波数の電力変換装置と組み合わせて構成される。このうち高性能な精密可変速運転を目的とするベクトル制御では,回転子の角度を検出し 1 台のインバータで 1 台の PM モータを駆動するのが原則となる。

参考文献

問3 チョッパ回路

図 1 は,昇降圧チョッパの回路図である。平滑コンデンサ $C$ の静電容量は十分に大きく,出力電圧 $V_{\text{out}}$ 及び出力電流 $I_{\text{out}}$ のリプルは無視できるものとする。図 2,3 は,定常状態におけるインダクタの電圧 $v_L$ 及び電流 $i_L$ の波形であり,スイッチ S がオンの期間を $T_{\text{on}}$,オフの期間を $T_{\text{off}}$ とする。

図 2 は出力電流 $I_{\text{out}}$ が大きく,インダクタ電流 $i_{\text{L}}$ が常に正の場合で,電流連続モードと呼び,このときの出力電圧が,$V_{\text{out}} =$ $\displaystyle \frac{T_{\text{on}}}{T_{\text{off}}} V_{\text{in}}$ となることは,よく知られている。ここで,デューティ比 $\displaystyle D = \frac{T_{\text{on}}}{T_{\text{on}} + T_{\text{off}}}$ を用いると,$V_{\text{out}} =$ $\displaystyle \frac{D}{1-D}$ $V_{\text{in}}$ と表すこともできる。

一方,出力電流 $I_{\text{out}}$ を低減すると,図 3 のようにインダクタ電流 $i_{\text{L}}$ に零となる期間が現れる。図 3 の場合を電流断続モード(電流不連続モード)と呼ぶ。定常状態では,インダクタ電圧 $v_{\text{L}}$ の 1 周期の平均値は常にでなければならない。電流連続モードと電流断続モードとでスイッチ S のゲート信号が同じであれば,$V_{\text{out}}$ は電流断続モードの方が高くなる。

図1
図1
図2
図2
図3
図3

問4 間接抵抗加熱

ニクロムや炭化けい素などで作られたヒータに通電し,発生するジュール熱を利用して非加熱物を間接的に加熱する方式は間接抵抗加熱と呼ばれ,工業分野の電気加熱において最も多く利用されている加熱法である。

この方式の加熱炉では,炉内のヒータに供給する電力を調整して,炉内温度を制御している。この温度制御には,サイリスタを用いた位相制御が多く用いられている。位相制御では高調波が発生するので,このための対策が必要であるが,制御応答は速い。

ヒータで発生したジュール熱は,放射,対流,伝導の組合せによって被加熱物に伝えられ,被加熱物が加熱される。放射ではヒータやヒータによって加熱された炉壁から発生する電磁波(主に赤外放射)によってエネルギーが被加熱物に伝えられる。対流ではヒータによって加熱された炉内の空気の移動によってエネルギーが被加熱物に伝えられる。対流による被加熱物への熱流束(単位時間に単位面積を横切る熱量)は被加熱物近傍の炉内空気温度と被加熱物の表面温度との温度差に比例する。また,炉内で被加熱物を保持する物体と被加熱物とが接触する部位からは伝導によってエネルギーが被加熱物に伝えられる。

参考文献

  • 目指せ!電気主任技術者~解説ノート~「電気加熱

問5 変圧器の損失及び効率

変圧器の全損失は無負荷損と負荷損の和で表される。無負荷損は変圧器の二次側を開放し,一次側に定格周波数,定格電圧を加えた無負荷試験において,一次側への入力電力を測定することにより得られる。無負荷損は鉄損であると考えられる。鉄損は磁界の交番により生じる損失であり,磁束密度が同一のとき,周波数にほぼ比例するヒステリシス損と周波数の 2 乗にほぼ比例する渦電流損とに分類される。

一方,負荷損は,二次側を短絡し,一次側に定格周波数の定格電流を流した短絡試験において,一次側への入力電力を測定することにより得られる。負荷損を測定したときの電圧はインピーダンス電圧とも呼ぶ。

変圧器の効率 $\eta$ は,二次出力 $P_2$ の一次入力 $P_1$ に対する比で表される。一次入力は二次出力と全損失 $P_L$ の和で表されるから,全損失を測定又は算定すれば次式で効率が求められる。これを規約効率という。

\[ \eta = \frac{P_2}{P_2 + P_L} \times 100 \text{ [%]} \]

参考文献

問6 アルカリマンガン乾電池

アルカリマンガン乾電池は負極に亜鉛粉,正極に二酸化マンガン,電解液に水酸化カリウム水溶液を用いた公称電圧 1.5 V の一次電池である。あるアルカリマンガン乾電池を 1 000 mA の定電流でセル電圧が所定の終止電圧になるまで放電したとき,通電電気量が 6 000 mA·h,電気量が 6.60 W·h であった。このとき,放電に要した時間は 6 h,1.1 V となる。放電で水酸化亜鉛(Zn(OH)2)のみが生成されるとすると,その質量は 11.1 g である。ただし,亜鉛,酸素及び水素の原子量をそれぞれ 65.38,16.00 及び 1.01,ファラデー定数を 26.80 A·h/mol とする。

参考文献

  • 目指せ!電気主任技術者~解説ノート~「一次電池

問7 ルミネセンス

ルミネセンスとは,物質を構成する原子,分子,イオン,電子などが,外部からのエネルギーを吸収して,励起,イオン化又は加速された後,そのエネルギーを放出するときに発光する現象をいう。

放電発光は,放電により原子や分子が電離又は励起され,電子状態の遷移に伴って発光する現象である。HID ランプなどがこれを利用している。

フォトルミネセンスは,物質が X 線,紫外放射,可視放射,赤外放射などを受けたときにそのエネルギーを吸収し,通常は吸収した波長よりも長波長の放射エネルギーを放出して発光する現象である。蛍光ランプ及び白色 LED の蛍光体ではこの現象を利用している。

エレクトロルミネセンス(EL)は,物質に電界を印加することによって発光する現象で,注入形 EL と真性 EL とに区別される。注入形 EL は,電界を印加することによって電子及び正孔を注入し,その再結合過程で発光する現象である。LED,有機 EL などがこれを利用している。真性 EL は,蛍光体を分散させた薄い誘電体をサンドイッチ状に挟んだ電極両端に電圧を印加することによって発光する現象である。

参考文献

問8 ネットワーク通信における LAN 中継機器

ネットワーク内には,端末となるコンピュータの他に,通信回線を延長したり制御したりするための各種中継機器が用いられている。

リピータは,伝送路で減衰した信号を増幅,補正して,さらに遠方まで伝送するための機器で,OSI 参照モデルの物理層の中継を行う。この機器は,信号の解釈をするものではなく,アドレスを参照した制御機能をもたない。

ブリッジは,複数の LAN を接続する機器であり,OSI 参照モデルのデータリンク層の中継を行う。この機器は,MAC アドレスによってネットワークを制御する。代表的な機器としてスイッチングハブがある。

物理層とデータリンク層の一部を定義した IEEE 802.11 関連規格があり,これに対応した無線中継機器を利用することで,Wi-Fi による LAN への無線接続ができる。

ルータは,ブリッジと同様に複数の LAN を接続する機器であり,OSI 参照モデルのネットワーク層での中継を行う。この階層で用いるアドレスは DHCP サーバを用いることで自動的にクライアントへ割り当てられるため,利用者はコンピュータをネットワークに接続しただけで通信環境を整えることができる。

参考文献

  • 目指せ!電気主任技術者~解説ノート~「
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