令和元年度 第2種 機械

2019年8月31日作成,2022年2月11日更新

目次

  1. 誘導電動機
  2. 同期発電機の特性曲線
  3. 単相交流電力調整装置
  4. 自動車用バッテリーなどに用いられている鉛蓄電池
  5. 三相変圧器における巻線の結線方式
  6. 放射と光
  7. 電気加熱
  8. マイクロコンピュータのプログラム言語

問1 誘導電動機

三相誘導電動機の一次巻線に三相交流電源を接続すると回転磁界が発生する。回転磁界と回転子の回転速度に差があると,回転子の二次巻線に誘導電流が流れ,回転磁界との間でトルクが生じる。このとき,発生するトルクは,回転磁界と回転子の回転速度の差を減少させる方向に働く。

二極機のギャップに生じる磁束密度分布を正弦波状と仮定し,回転角速度を $\omega$ とすると,任意の位置 $\theta$ で観測される磁束密度は,

\[ B(\theta,t) = B_\text{m}\cos(\theta - \omega t) \]
・・・①

と表すことができる。ただし,$B_\text{m}$ は最大磁束密度である。① 式は,$\theta =$ $\omega t$ の位置に最大磁束密度 $B_\text{m}$ が現れることを示している。

一方,二極の純単相誘導電動機の磁束密度分布は,

\[ B'(\theta,t) = B'_\text{m}\cos(\theta)\cos(\omega t) \]
・・・②

と表せる。この場合,$\theta =$ 0 の位置で最大値となる正弦波状 $\cos(\theta)$ の磁束密度分布となり,その大きさは $\cos(\omega t)$ で変化する。このような磁束は,回転磁界に対して,交番磁界と呼ばれる。② 式を書き換えると,磁束密度分布は,

\[ B'(\theta,t) = \frac{B'_\text{m}}{2}\cos(\theta - \omega t) + \frac{B'_\text{m}}{2}\cos(\theta + \omega t) \]
・・・③

と二つの成分の和で表すことができる。③ 式の第 1 項は ① 式と同じ方向に回転する回転磁界であり,第 2 項はそれとは逆方向に回転する回転磁界である。

参考文献

問2 同期発電機の特性曲線

1. 無負荷飽和曲線

no-load saturation curve

同期発電機を定格回転速度,無負荷で運転している場合の界磁電流に対する端子電圧の関係を示す曲線を無負荷飽和曲線という。界磁電流の増加に伴い鉄心が飽和するため,界磁電流と端子電圧の関係は比例関係にならず,いわゆる飽和特性を示す曲線になる。

2. 短絡特性曲線

short-circuit curve

同期発電機の端子を短絡し,定格回転速度で運転した場合の,界磁電流に対する電機子電流の関係を示す曲線を短絡特性曲線という。端子短絡状態では,電機子反作用による減磁作用で界磁起磁力の大部分が打ち消されるため界磁電流を増加させても鉄心は磁気飽和せず,特性曲線はほぼ直線となる。

無負荷飽和曲線と短絡特性曲線が得られると,同期発電機の短絡比を求めることができ,この短絡比と単位法(p.u.)で表した同期インピーダンスは互いに逆数の関係になる。

3. 負荷飽和曲線

load saturation curve

同期発電機を定格回転速度で運転し,電機子電流一定で力率一定の負荷をかけた場合の界磁電流に対する端子電圧の関係を示す曲線を負荷飽和曲線という。負荷飽和曲線のなかで特に電機子電流値が定格で零力率の負荷をかけた場合の曲線を零力率飽和曲線といい,無負荷飽和曲線をポーシェの三角形を用いて平行移動することでもこの飽和曲線を描くことができる。

参考文献

問3 単相交流電力調整装置

同じ制御遅れ角で点弧されるサイリスタが逆並列接続された単相交流電力調整装置を図に示す。まず抵抗が純抵抗 $R$ の場合の運転について考える。

電源電圧を $v = \sqrt{2} V \sin{\omega t}$ とすると,サイリスタ T1,T2 に印加される可能性がある電圧の最大値は順方向に $\sqrt{2}V$,逆方向に $\sqrt{2}V$ である。制御遅れ角 $\alpha$ で運転したとき,二つあるサイリスタのうち一方のサイリスタ T1 に流れる電流 $i_\text{T1}$ の平均値 $I_\text{0(av)}$ を求めるには,$\omega t$ が $\alpha$ から $\pi$ までの負荷電圧波形から 1 サイクル(0 から $2\pi$)の平均値を計算して $R$ で除すればよい。したがって,$I_\text{0(av)} =$ $\displaystyle \frac{V}{\sqrt{2}\pi R}$ $\times (1 + \cos\alpha)$ となる。

次に,負荷が力率角 $\theta$ の誘導性負荷の場合の運転について考える。

この交流電力調整装置で出力の交流電圧すなわち交流電力を調整することができるのは,制御遅れ角 $\alpha$ を $\theta \lt \alpha \lt \pi$ の範囲で運転したときである。負荷が純インダクタンスであったときに,出力の交流電圧を調整できるある制御遅れ角 $\alpha_1$ で運転したとすると,入力の交流電流 $i$ は,$v$ に対して基本波ベースで位相が 90 ° 遅れとなり,無効電力の大きさを調整する手段に使われる。

単相交流電力調整装置
単相交流電力調整装置

問4 自動車用バッテリーなどに用いられている鉛蓄電池

鉛蓄電池は正極活物質に二酸化鉛,負極活物質に鉛,電解質に硫酸水溶液を用い,電極反応は以下の式で表される。

(正極)PbO2 + 3H+ HSO4- + 2e-PbSO4 + 2H2O
(負極)Pb + HSO4-PbSO4 + H+ + 2e-

電解質の濃度は満充電時に約 30 % である。放電するのに伴って濃度は低くなる。正極活物質の鉛の価数は 4 である。電気量 200 A·h の放電で反応する正極活物質の量はファラデーの法則から,892.6 g である。なお,二酸化鉛のモル質量を 239.2 g/mol,電気素量を 1.602 × 10-19 C,アボガドロ定数を 6.022 × 1023 mol-1 とする。

流れた電気量より,電極反応に伴う電子のモル数を求める。

\[ \frac{200 \times 60 \times 60}{1.602 \times 10^{-19} \times 6.022 \times 10^{23}} = 7.4633 \text{ [mol]} \]

正極活物質のモル数は,電子のモル数の半分である。これに正極活物質である二酸化鉛のモル質量を乗じる。

\[ \frac{7.4633}{2} \times 239.2 = 892.61 \text{ [g]} \]

参考文献

問5 三相変圧器における巻線の結線方式

三相変圧器巻線の結線方式には Y 結線(星形結線)と,Δ 結線(三角結線)の 2 種類がある。Y-Y 結線は,変圧器の一次側,二次側とも巻線を Y 結線とする方法である。この結線の特徴としては,中性点接地が採用できるので,巻線の絶縁低減が可能となること,事故検出に十分な地絡電流が流れ保護が容易となることが挙げられる。しかし Y-Y 結線では,変圧器の励磁電流に含まれる第 3 次調波による近接通信線への電磁誘導障害などが発生する。

この第 3 次調波による障害を解決するために,三巻線変圧器を用いてその結線方式を Y-Y-Δ とすることにより第 3 次調波の影響を小さくすることができる。この結線は超高圧の変圧器に広く適用されている。

中低圧でよく使われる Y-Δ 結線と Δ-Y 結線は Δ 結線が励磁電流中の第 3 次調波成分の環流回路として働き,電流のひずみが小さくなる。

Δ-Δ 結線は,日本では主として 77 kV 以下の変圧器に適用される。この結線方式で独立した単巻変圧器 3 台による場合には,1 台の単相変圧器が故障しても健全な変圧器 2 台による V 結線として,最大出力は落ちるものの三相電力の伝達ができる利点がある。欠点としては,Δ-Δ 結線では中性点接地が採用できないため,アーク地絡によって異常電圧が発生すること,不平衡負荷の場合に巻線に流れる循環電流が大きくなることなどが挙げられる。

参考文献

問6 放射と光

放射とは,電磁波あるいは粒子の形によって伝搬するエネルギーのことである。電磁波の波長範囲は,10-16 ~ 108 m であり,その波長によって宇宙線,ガンマ線,X 線,紫外放射,可視放射(光),赤外放射,電波などに区分され,それぞれ特有の性質を持っている。このうち人の目に入って,明るさの感覚を乗じさせる 380 ~ 780 nm の波長範囲を可視放射(光)という。

単位時間にある面を通過する放射エネルギーの量を放射束という。単位はワット [W] 又はジュール毎秒 [J/s] であり,物理量である。

放射束に明所視下における人の目の感度(分光視感効率)を乗じた量 $\Phi$ を光束といい,単位はルーメン [lm] である。これは,物理量に人の目の感度を乗じた量であることから,心理物理量と呼ばれる。また,この $\Phi$ は,ある放射体からの分光放射束を $\Phi_\text{e}(\lambda)$ [W/nm],標準分光視感効率を $V(\lambda)$ とすれば,次式より求まる。

\[ \Phi = K_\text{m}\int^{\lambda_2}_{\lambda_1} V(\lambda) \Phi_\text{e}(\lambda) \text{d}\lambda \]

ここで,$\lambda$ は波長 [nm],$\lambda_1$ から $\lambda_2$ までは可視放射(光)の波長範囲,$K_\text{m}$ は最大視感効果度であり,その値は約 555 nm において約 683 lm/W である。

参考文献

  • 目指せ!電気主任技術者~解説ノート~「放射と光

問7 電気加熱

電気加熱
加熱方式 加熱原理からみた電気の主たる役割 被加熱物の加熱の様相
ヒートポンプ加熱 電動機による圧縮機の駆動 凝縮器からの熱の吸収
直接抵抗加熱 被加熱物への通電 通電電流によって発生するジュール熱による発熱
赤外加熱 熱放射の発生 放射の吸収による発熱
誘導加熱 交番磁界の発生 渦電流によって発生するジュール熱による発熱
誘電加熱 交番電界の発生 誘電損による発熱

参考文献

  • 目指せ!電気主任技術者~解説ノート~「電気加熱

問8 マイクロコンピュータのプログラム言語

マイクロコンピュータのプログラム命令は,メモリから命令レジスタに読み込まれた後,命令デコーダで解読されて制御回路へ伝達される。このようなマイクロコンピュータが直接理解できるプログラム命令は,2 進数で記述された機械語である。機械語を扱うときには,2 進数 4 桁分を表す 16 進数を用いることが多い。

一般的に機械語命令は,基本動作を表す命令コードと命令の対象となる数値やデータのアドレスなどを表現するオペランドによって構成される。例えば,相対アドレスを指定する場合は,プログラムカウンタの値にオペランドによって指定した値を加えて,目的のアドレスを算出する。停止命令や無操作命令など,一部の命令ではオペランドの無い命令もある。

アセンブラは,機械語とほぼ 1 対 1 に対応したニモニックを用いる言語で,機械語よりもプログラムの内容が分かりやすい。

機械語やアセンブラを低水準言語という。

人間が理解しやすいように記述した原始プログラムを一括して機械語などの低水準言語に変換する言語を総称して,コンパイラ言語という。この変換作業によって原始プログラムは目的プログラムとなり,さらに別の目的プログラムやライブラリと結合させて実行可能プログラムとなる。

実行時に原始プログラムを一文ずつ解釈し,逐次実行していく言語としてインタプリタ言語がある。この言語は,コンパイラ言語に対してプログラム変更手順が容易であるが,実行速度は遅くなる。

オペランド(operand)とは,数式を構成する要素のうち,演算の対象となる値や変数,定数のこと。プログラミングの分野ではこれに加えて,プログラム中の個々の命令・処理の対象となるデータや,データの所在情報などのこともオペランドという。

アセンブラとは,コンピュータ,マイクロコントローラ,その他のプログラム可能な機器を動作させるための機械語を人間にわかりやすい形で記述する代表的な低水準言語である。

コンパイラ(compiler)とは,コンピュータ・プログラミング言語の処理系の一種で,高水準言語によるソースコードから,機械語あるいは基のプログラムよりも低い水準のコードに変換(コンパイル)するプログラムである。

参考文献

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