平成20年度 第2種 法規

2021年12月27日更新

はじめに

  1. 問題文中に「電気設備技術基準」とあるのは,「電気設備に関する技術基準を定める省令」の略である。
  2. 問題文中に「電気設備技術基準の解釈」とあるのは,「電気設備の技術基準の解釈における第1章~第6章及び第8章」をいう。なお,「第7章 国際規格の取り入れ」の各規定について問う出題にあっては,問題文中にその旨を明示する。
  3. 問題は,平成20年4月1日現在,効力のある法令(電気設備の技術基準の解釈を含む。)に基づいて作成している。

目次

  1. 電気主任技術者の選任等
  2. 一般用電気工作物の保安
  3. 地中電線路の施設
  4. 危険な施設の禁止
  5. 架空送電線路における電線の微風振動
  6. パワーエレクトロニクス技術を応用した送配電設備
  7. 分散形電源及びその系統連系に係る技術的な要件

問1 電気主任技術者の選任等

電気事業法 第43条(主任技術者)

  • 事業用電気工作物を設置する者は,事業用電気工作物の工事,維持及び運用に関する保安の監督をさせるため,経済産業省令で定めるところにより,主任技術者免状の交付を受けている者のうちから,主任技術者を選任しなければならない。
  • 自家用電気工作物を設置する者は,前項の規定にかかわらず,経済産業大臣の許可を受けて,主任技術者免状の交付を受けていない者を主任技術者として選任することができる。
  • 主任技術者は,事業用電気工作物の工事,維持及び運用に関する保安の監督の職務を誠実に行わなければならない。

電気事業法施行規則 第52条(主任技術者の選任等)

  • 自家用電気工作物であって,出力 1 000 [kW] 未満の発電所(原子力発電所を除く。)のみに係る事業場, 7 000 [V] 以下で受電する需要設備のみに係る事業場又は電圧 600 [V] 以下の配電線路を管理する事業場のうち,当該発電所,需要設備又は配電線路を管理する事業場の工事,維持及び運用に関する保安の監督に係る業務(以下「保安管理業務」という。)を委託する契約(以下「委託契約」という。)を次条に規定する要件に該当する者と締結しているものであって,保安上支障がないものとして経済産業大臣(事業場が一の産業保安監督部の管轄区域内のみにある場合は,その所在地を管轄する産業保安監督部長。第五十三条第一項,第二項及び第五項において同じ。)の承認を受けたもの並びに発電所,変電所及び送電線路以外の自家用電気工作物であって鉱山保安法 が適用されるもののみに係る同表三又は七の事業場については,同項の規定にかかわらず,電気主任技術者を選任しないことができる。

問2 一般用電気工作物の保安

電気事業法 第56条(技術基準適合命令)

  • 経済産業大臣は,一般用電気工作物が経済産業省令で定める技術基準に適合していないと認めるときは,その所有者又は占有者に対し,その技術基準に適合するように一般用電気工作物を修理し,改造し,若しくは移転し,若しくはその使用を一時停止すべきことを命じ,又はその使用を制限することができる。

電気事業法 第57条(調査の義務)

  • 一般用電気工作物において使用する電気を供給する者(以下「電気供給者」という。)は,経済産業省令で定めるところにより,その供給する電気を使用する一般用電気工作物が前条第一項の経済産業省令で定める技術基準に適合しているかどうかを調査しなければならない。ただし,その一般用電気工作物の設置の場所に立ち入ることにつき,その所有者又は占有者の承諾を得ることができないときは,この限りでない。
  • 電気供給者は,前項の規定による調査の結果,一般用電気工作物が前条第一項の経済産業省令で定める技術基準に適合していないと認めるときは,遅滞なく,その技術基準に適合するようにするためとるべき措置及びその措置をとらなかつた場合に生ずべき結果をその所有者又は占有者に通知しなければならない。

電気事業法 第57条の2(調査業務の委託)

  • 電気供給者は,経済産業大臣の登録を受けた者(以下「登録調査機関」という。)に,その電気供給者が供給する電気を使用する一般用電気工作物について,その一般用電気工作物が第五十六条第一項の経済産業省令で定める技術基準に適合しているかどうかを調査すること並びにその調査の結果その一般用電気工作物がその技術基準に適合していないときは,その技術基準に適合するようにするためとるべき措置及びその措置をとらなかつた場合に生ずべき結果をその所有者又は占有者に通知すること(以下「調査業務」という。)を委託することができる。

問3 地中電線路の施設

電気設備技術基準の解釈 第134条 地中電線路の施設

  • 地中電線路は,電線にケーブルを使用し,かつ,管路式,暗きょ式{キャブ(CAB:電力,通信等のケーブルを収納するために道路下に設けるふた掛け式のU字構造物)を含む。},又は直接埋設式により施設すること。
  • 地中電線路を暗きょ式により施設する場合は,暗きょにはこれに加わる車両その他の重量物の圧力に耐えるものを使用し,かつ,地中電線に耐燃措置を施し,又は暗きょ内に自動消火設備を施設すること。

電気設備技術基準の解釈 第137条 地中電線の被覆金属体の接地

  • 管,暗きょその他の地中電線を収める防護装置の金属製部分(ケーブルを支持する金物類を除く),金属製の電線接続箱及び地中電線被覆に使用する金属体には, D 種接地工事を施すこと。

電気設備技術基準の解釈 第139条 地中電線と地中弱電流電線等又は管との接近又は交さ

  • 地中電線が地中弱電流電線等と接近し,又は交さする場合において,相互の離隔距離が低圧又は高圧の地中電線にあっては 30 cm 以下,特別高圧地中電線にあっては 60 cm 以下のときは,地中電線と地中弱電流電線等との間に堅ろうな耐火性の隔壁を設ける場合を除き,地中電線を堅ろうな不燃性又は自消性のある難燃性の管に収め,当該管が地中弱電流電線等と直接接触しないように施設すること。

問4 危険な施設の禁止

電気設備技術基準 第36条 油入開閉器等の施設制限

  • 絶縁油を使用する開閉器,断路器及び遮断器は,架空電線路の支持物に施設してはならない。

電気設備技術基準 第37条 屋内電線路等の施設の禁止

  • 屋内を貫通して施設する電線路,屋側に施設する電線路,屋上に施設する電線路又は地上に施設する電線路は,当該電線路より電気の供給を受ける者以外の者の構内に施設してはならない。ただし,特別の事情があり,かつ,当該電線路を施設する造営物(地上に施設する電線路にあっては,その土地。)の所有者又は占有者の承諾を得た場合は,この限りでない。

電気設備技術基準 第41条 市街地に施設する電力保安通信線の特別高圧電線に添架する電力保安通信線との接続の禁止

  • 市街地に施設する電力保安通信線は,特別高圧の電線路の支持物に添架された電力保安通信線と接続してはならない。ただし,誘導電圧による感電のおそれがないよう,保安装置の施設その他の適切な措置を講ずる場合は,この限りでない。

問5 架空送電線路における電線の微風振動

架線された電線に 0.5 ~ 10 [m/s] の比較的緩やかな一様な風が水平方向から直角に当たると,カルマン渦により,電線に対して鉛直方向に交互の圧力が発生する。電線の微風振動は,この圧力変化の周波数と架線された電線自体の固有周波数が一致するときに発生する定常的な振動である。

微風振動を受けた電線は,曲げ疲労を生じ,素線切れ等の損傷に至ることがある。長径間の場合,電線の撚り層数が少ない場合及び電線張力が高い場合には特に問題となる。

電線の微風振動対策の実施例としては,次のようなものがある。

  1. 電線に防振用ダンパを取り付け,電線系の消費エネルギーを大きくすることにより,発生振幅を下げる。
  2. 電線支持点付近の電線にアーマロッドを巻き付け,振動による発生応力を下げる。

問6 パワーエレクトロニクス技術を応用した送配電設備

1950 年代のダイオード開発に続く逆阻止三端子サイリスタの出現とそれ以降の各種デバイスの高電圧化・大電流化・高速化は大きな進歩を遂げ,これらを応用した半導体電力変換装置の技術分野はパワーエレクトロニクスと呼ばれ,様々な用途で利用されている。これらの機器を送電系統に使用して安定度向上方策を施し,電力系統を柔軟に制御することが考えられているが,これらのパワーエレクトロニクス機器を総称して FACTS(Flexible AC Transmission System)機器と呼んでおり,その代表的な応用例としては,次のようなものがある。

  1. 系統安定化等を目的とした,交流と直流の電力変換機能を用いた直流送電及び送電線のない直流送電である BTB(Back to Back)装置がある。
  2. 系統電圧を調整して電圧の安定化や系統安定度の向上を図る目的とした,静止形無効電力補償装置がある。特に自励式変換器を用いた装置は,SVG 又は STATCOM と呼ばれている。

問7 分散形電源及びその系統連系に係る技術的な要件

  1. 太陽光発電や風力発電に代表される自然エネルギーを利用した分散形電源は,エネルギー密度が小さく,一般的に小規模であることが多く,気象条件などに影響され出力の変動が大きいことなどの特徴がある。
  2. これらの分散形電源が,電力系統に無秩序に連系されると,保安面及び電力品質確保などの面から,当該分散形発電設備等の設置者以外の者及び電力設備に悪影響を及ぼすことがあるため,国は,保安に関する技術的な要件を「電気設備技術基準の解釈」で示しており,また,電力品質に関する技術的な要件を「電力品質確保に係る系統連系技術要件ガイドライン(以下「ガイドライン」という。)」で定めている。
  3. ガイドラインに定められている技術要件の一つに,瞬時電圧変動対策がある。風力発電で一般的に使われている誘導発電機は,系統並列時に瞬時電圧低下を引き起こし,系統電圧が所定値を超えるおそれがある。このような場合には,発電設備等の設置者において限流リアクトル等を設置することが必要であり,また,これにより対応することができない場合には,同期発電機を用いるなどの対策が必要である。
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