平成21年度 第2種 法規

2021年12月27日更新

はじめに

  1. 問題文中に「電気設備技術基準」とあるのは,「電気設備に関する技術基準を定める省令」の略である。
  2. 問題文中に「電気設備技術基準の解釈」とあるのは,「電気設備の技術基準の解釈における第1章~第6章及び第8章」をいう。なお,「第7章 国際規格の取り入れ」の各規定について問う出題にあっては,問題文中にその旨を明示する。
  3. 問題は,平成21年4月1日現在,効力のある法令(電気設備の技術基準の解釈を含む。)に基づいて作成している。

目次

  1. 過電流遮断器の施設
  2. 電気工作物の工事をする場合の手続き
  3. 変圧器の信頼性向上対策
  4. 電圧フリッカの現象とその防止対策
  5. 常時監視をしない変電所
  6. 支持物の倒壊の防止
  7. 揚水発電所の電力系統における運用とその役割

問1 過電流遮断器の施設

  1. 過電流遮断器として低圧電路に使用する配線用遮断器は,定格電流の 1 倍の電流で自動的に動作しないこと。
  2. 低圧電路に使用する過電流遮断器は,これを施設する箇所を通過する短絡電流を遮断する能力を有するものであること。ただし,当該箇所を通過する最大短絡電流が 10 000 [A] を超える場合において,過電流遮断器として 10 000 [A] 以上の短絡電流を遮断する能力を有する配線用遮断器を施設し,当該箇所より電源側の電路に当該配線用遮断器の短絡電流を遮断する能力を超え,当該最大短絡電流以下の短絡電流を当該配線用遮断器より早く,又は同時に遮断する能力を有する過電流遮断器を施設するときは,この限りでない。
  3. 過電流遮断器として施設するヒューズのうち,高圧電路に用いる非包装ヒューズは,定格電流の 1.25 倍の電流に耐え,かつ,2 倍の電流で 2 分以内に溶断するものであること。
  4. 高圧又は特別高圧電路中の電路に短絡を生じたときに作動する過電流遮断器は,これを施設する箇所を通過する短絡電流を遮断する能力を有するものであること。
    過電流遮断器は,その作動に伴いその開閉状態を表示する装置を有するものであること。ただし,その開閉状態を容易に確認できるものは,この限りでない。

問2 電気工作物の工事をする場合の手続き

  1. 事業用電気工作物の設置又は変更の工事(公共の安全の確保上特に重要なものとして経済産業省令で定めるものを除く。)であって,経済産業省令で定めるものをしようとする者は,その工事の計画を経済産業大臣に届け出なければならない。
  2. 上記 a の規定による届出をした者は,その届出が受理された日から 30 日を経過した後でなければ,その届出に係る工事を開始してはならない。
  3. 次に掲げる事業用電気工作物の設置の工事の計画は,届出の対象となっている。
    1. 火力発電所であって汽力を原動力とするものの設置
    2. 電圧 170 000 [V] 以上(受電所にあっては 100 000 [V] 以上)の変電所の設置
    3. 受電電圧 10 000 [V] 以上の需要設備の設置

問3 変圧器の信頼性向上対策

a. 変圧器事故の未然防止策として,設計・製作及び施工面での品質管理の向上が図られている。

保守面でも,以下のような診断技術も広く用いられ,また,近年では絶縁物の劣化生成物であるフルフラールなどの含有量を基にした劣化診断技術の適用も進められ,事故の未然防止が図られている。

  1. 油中ガス分析
  2. 変圧器内部の部分放電により発生する微小パルス又は超音波を検出する部分放電検出

b. 変圧器の絶縁油において管理すべき最も重要な特性は絶縁破壊電圧であるが,これは絶縁油中の水分により大きく左右される。長期使用に伴う絶縁油の劣化は全酸化,体積抵抗率などの特性変化となって現れるため,管理基準に従った十分な管理が必要である。

c. 大容量の送油式変圧器では,絶縁油が変圧器内を冷却循環することにより絶縁紙などの表面や絶縁油中に電荷が蓄積し,絶縁油の耐圧値を超えると局部的に部分放電が発生する流動帯電現象による事故の防止が課題となっている。この現象は,絶縁油及び絶縁材料の処理技術向上に伴い,高い固有抵抗の絶縁油がよく乾燥された紙絶縁物表面を流れるときに顕著に現れる現象であり,絶縁物への添加剤の適用や変圧器構造,絶縁油の流速などについて総合的に検討を行い対策する必要がある。

また,変圧器の絶縁油中には極微量の硫黄分が含有されておりこれが銅と反応し銅表面を腐食し化合物を生じさせ,これが油中に浮遊し,導体間等に入り込み,絶縁性能を低下させ,絶縁破壊が生じることがある。これを防止するためには,硫黄及びその化合物と反応性の低い材料の使用や銅の表面処理などの対策が必要である。

問4 電圧フリッカの現象とその防止対策

製鋼用アーク炉などの変動負荷が短絡容量の小さい系統に接続されると,その負荷電流による電圧降下のため系統の電圧が変動する。この現象を電圧フリッカと呼んでいる。この負荷変動が頻繁に繰り返されると同じ変電所から供給される一般需要家の白熱電灯,蛍光灯などの照明にちらつきを生じ,このちらつきが著しい場合はこれらを利用している人に不快感を与えることになる。

フリッカ防止対策は,発生側で行う対策と電力供給側で行う対策に分けられる。

発生側(製鋼用アーク炉)で行う対策例

  1. アーク炉の電流変動を抑制するため,アーク炉の電路に過飽和リアクトルを挿入する。
  2. アーク炉の無効電力変動分を吸収するため,アーク炉の電路に SVC を設置する。

電力供給側で行う対策例

  1. アーク炉をもつ需要に対して,短絡容量の大きい系統から電力を供給する。又は,上位電圧階級の系統に切り替えてアーク炉をもつ需要に電力を供給する。
  2. 一般需要家への影響を軽減するため,アーク炉をもつ需要を一般供給系統と分離して,専用線で電力を供給する。
  3. アーク炉をもつ需要に供給する電路の途中に直列コンデンサを挿入し,見かけ上の短絡容量を増大させる。

問5 常時監視をしない変電所

変電所の運転に必要な知識及び技能を有する者(以下,技術員という。)が当該変電所(変電所に施設する電路を分割して監視する場合にあっては,分割した電路。)において常時監視しない変電所は,変圧器の使用電圧と技術員駐在所の関係を,次の 1 から 4 に適合するように施設しなければならない。

  1. 使用電圧が,100 000 [V] 以下の変圧器を施設する変電所であって,当該変電所又はその構外にある技術員駐在所のいずれかに技術員が常時駐在しているもの。
  2. 使用電圧が,100 000 [V] を超え 170 000 [V] 以下の変圧器を施設する変電所であって,当該変電所又はこれから 300 [m] 以内にある技術員駐在所のいずれかに技術員が常時駐在しているもの。
  3. 使用電圧が,100 000 [V] を超え 170 000 [V] 以下の変圧器を施設する変電所であって,当該変電所を遠隔監視制御する制御所(以下,変電制御所という。)又はこれから,300 [m] 以内にある技術員駐在所のいずれかに技術員が常時駐在しているもの。
  4. 使用電圧が,170 000 [V] を超える変圧器を施設する変電所であって,変電制御所に技術員が常時駐在しているもの。

問6 支持物の倒壊の防止

  1. 架空電線路又は架空電車線路の支持物の材料及び構造(支線を施設する場合は,当該支線に係るものを含む。)は,その支持物が支持する電線等による引張荷重,風速 40 [m/s] の風圧荷重及び当該設置場所において通常想定される気象の変化,振動,衝撃その他の外部環境の影響を考慮し,倒壊のおそれがないよう,安全なものでなければならない。ただし,人家が多く連なっている場所に施設する架空電線路にあっては,その施設場所を考慮して施設する場合は,風速 40 [m/s] の風圧荷重の 2 分の 1 の風圧荷重を考慮して施設することができる。
  2. 特別高圧架空電線路の支持物は,構造上安全なものとすること等により連鎖的に倒壊のおそれがないように施設しなければならない。

問7 揚水発電所の電力系統における運用とその役割

揚水発電所は,上池と下池の二つの貯水池をもち,通常電力系統の負荷が小さくなる夜間の時間帯に,原子力発電や火力発電を使用して下池の貯水を上池へ揚水して貯え,電力系統の負荷が大きくなる時間帯に発電を行うピーク供給力として運用される。上池の自流分を除いた揚水発電所の総合効率は約 70 [%] 程度である。

停止中の揚水発電所は数分程度で起動して電力を供給することができるため,電力系統の負荷変動時あるいは事故時にも安定して電力供給を継続するために必要な供給予備力のうちの運転予備力という役割を担っている。この予備力は,電力系統の負荷の 3 ~ 5 [%] 程度である。

また,揚水運転中の可変速揚水発電設備は,系統に並列している発電機の運転台数が少ない場合に,周波数調整に活用されている。

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