平成23年度 第2種 法規
はじめに
注
- 問題文中に「電気設備技術基準」とあるのは,「電気設備に関する技術基準を定める省令」の略である。
- 問題文中に「電気設備技術基準の解釈」とあるのは,「電気設備の技術基準の解釈における第1章~第6章及び第8章」をいう。なお,「第7章 国際規格の取り入れ」の各規定について問う出題にあっては,問題文中にその旨を明示する。
- 問題は,平成23年4月1日現在,効力のある法令(電気設備の技術基準の解釈を含む。)に基づいて作成している。
目次
問1 特別高圧架空電線と道路等との接近又は交さ
特別高圧架空電線が道路,横断歩道橋,鉄道又は軌道(以下「道路等」という。)と第 2 次接近状態に施設される場合は,次の各号によること。
- 特別高圧架空電線路は,第 2 種特別高圧保安工事の規定(特別高圧架空電線が道路と第 2 次接近状態に施設される場合は,がいし装置に係る部分を除く。)に準じて施設すること。
- 特別高圧架空電線と道路等との離隔距離(路面上又はレール面上の離隔距離を除く。)は次表に掲げる使用電圧の区分に応じ,表示された離隔距離以上であること。
使用電圧の区分 | 離隔距離 |
---|---|
35 000 [V] 以下のもの | 3 [m] |
35 000 [V] を超えるもの | 3 [m] に,使用電圧が 35 000 [V] を超える 10 000 [V] 又はその端数ごとに 15 [cm] を加えた値 |
ただし,次のいずれかに該当する場合はこの限りではない。
- 特別高圧絶縁電線を使用する使用電圧が 35 000 [V] 以下の特別高圧架空電線と道路等との水平離隔距離が 1.5 [m] 以上の場合
- ケーブルを使用する使用電圧が 35 000 [V] 以下の特別高圧架空電線と道路等との水平離隔距離が 1.2 [m] 以上の場合
- ケーブルを使用する使用電圧が 35 000 [V] を超える 100 000 [V] 未満の特別高圧架空電線と道路等との水平離隔距離が 2 [m] 以上の場合
問2 機械器具の鉄台及び外箱の接地
太陽電池モジュールに接続する直流電路に施設する機械器具であって,使用電圧が 300 [V] を超える低圧のものの鉄台及び金属製外箱の接地には C 種接地工事を施す必要がある。
ただし,次の各号のすべてに該当する場合であって,使用電圧が 300 [V] を超え 450 [V] 以下のものに施す接地工事の接地抵抗値は 100 [Ω] 以下にすることができる。
- 直流電路に接地されていないこと。
- 直流電路に接続する逆変換装置の交流側に絶縁変圧器が施設されていること。
- 太陽電池モジュールの出力(複数の太陽電池モジュールを施設した場合にあっては,その合計の出力。)が 10 [kW] 以下であること。
- 機械器具(太陽電池モジュール,これに接続する開閉器及び過電流遮断器,その他の器具,逆変換装置並びに避雷器を除く。)が直流電路に施設されていないこと。
問3 特別高圧架空電線路の第 1 種特別高圧保安工事
- 電線には,圧縮接続による場合を除き,径間の途中において接続点を設けないこと。
- 径間は,支持物が鉄塔の場合は 400 [m] 以下であること。
ただし,電線に引張強さ 58.84 [kN] 以上のより線又は断面積 150 [mm²] 以上の硬銅より線を使用する場合は,この限りでない。 - 電線が他の工作物と接近し,又は交さする場合にあっては,その電線を支持するがいし装置は,次のいずれかに掲げるものであること。
- 懸垂がいし又は長幹がいしを使用するものであって,50 % 衝撃せん絡電圧の値が当該電線の近接する他の部分を支持するがいし装置の値の 110 [%] (使用電圧が 130 000 [V] を超える場合は 105 [%])以上のもの。
- アークホーンを取り付けた懸垂がいし,長幹がいし又はラインポストがいしを使用するもの。
- 2 連以上の懸垂がいし又は長幹がいしを使用するもの。
- 電線路には,架空地線を施設すること。ただし,使用電圧が 100 000 [V] 未満の場合において,がいしにアークホーンを取り付けるとき又は電線の把持部にアーマロッドを取り付けるときは,この限りでない。
- 電線路には,電路に地絡を生じた場合又は短絡した場合に,使用電圧が 100 000 [V] 未満の場合において,3 秒以内に自動的に電路を遮断する装置を設けること。
問4 特別高圧架空電線路の雷事故に対する設備・保守対策
- 特別高圧架空電線路の雷事故には,雷が架空地線あるいは鉄塔へ直撃して,架空地線や鉄塔の電位が上昇することにより,架空地線と電力線間,又はがいし装置のアークホーンでせん絡する逆フラッシオーバ事故がある。
- 鉄塔の電位上昇低減対策としては,鉄塔塔脚接地抵抗の低減に有効であり,耐雷性向上のために,わが国では一般的に 10 ~ 15 [Ω] 程度が採用されている。また,鉄塔塔脚接地抵抗を低減するために,埋設地線,接地シート及び深打電極などが施工されている。
- 架空地線と電力線間における径間せん絡は,断線事故に発展するおそれがあり,これを防止するために,径間における架空地線と電力線の間隔は,支持点における間隔より小さくないこととされている。
- 雷事故発生後の事故点早期発見対策としては,雷撃箇所を表示するせん絡表示器の鉄塔への取り付けや,送電線の事故点を標定するフォルトロケータなどの設置が行われている。
問5 電気事業法の自主保安
電気事業法は,電気工作物の工事,維持及び運用を規制することによって,公共の安全を確保するため,電気工作物の自主保安の考え方に基づき,事業用電気工作物については設置者に対して,技術基準維持義務,保安規程の作成・届け出・遵守義務,主任技術者の選任義務などを課している。そして,主任技術者を選任したときは,遅滞なく,その旨を経済産業大臣に届け出るべきことを定めている。
他方,同法は,自主保安を基本としつつも,自主保安が十分機能していることを確認するための方策の一つとして国による立入検査を規定している。例えば,自家用電気工作物の場合,同法は「経済産業大臣は,この法律の施行に必要な限度において,その職員に,自家用電気工作物を設置する者又はボイラー等若しくは格納容器等の溶接をする者の工場又は営業所,事務所その他の事業場に立ち入り,電気工作物,帳簿,書類その他の物件を検査させることができる。」と規定している。
また,自主保安にかかる義務の履行等に不備が認められるときには,国は,これを是正するため,次のような措置をとることができるとしている。
例えば,保安規程に関しては,「経済産業大臣は,事業用電気工作物の工事,維持及び運用に関する保安を確保するため必要があると認めるときは,設置者に対し,保安規程を変更すべきことを命ずることができる。」としている。
そして主任技術者に関しては「経済産業大臣は,主任技術者免状の交付を受けている者がこの法律又はこの法律に基づく命令の規定に違反したときは,その主任技術者免状の返納を命ずることができる。」と定めている。
問6 電力系統に発電設備等を連系する場合の基本事項
高圧配電線路との連系は,発電設備等の一設置者当たりの電力容量が原則として 2 000 [kW] 未満(低圧配電線路との連系は, 50 [kW] 未満)である。
発電設備等の一設置者当たりの電力容量とは,発電設備等設置者における契約電力又は系統に連系する発電設備等の出力容量のうち,いずれか大きい方をいう。
発電設備等設置者における契約電力とは,常時の契約と予備の契約の電力の合計をいう。
また,発電設備等の出力容量とは,交流発電設備を用いる場合には,まずその定格出力を指し,直流発電設備等で逆変換装置を用いる場合には,逆変換装置の定格出力をいう。
なお,発電設備等の出力容量が契約電力に比べて極めて小さい場合(一般的には契約電力の 5 [%] 程度以下が目安)には,契約電力における電圧の連系区分より下位の電圧(低圧)の連系区分に準拠して連系することができる。
問7 架空電線路が弱電流電線に及ぼす静電・誘導障害の防止
- 電気設備技術基準の解釈では,使用電圧が 60 000 [V] を超える特別高圧架空電線路は,電話線路のこう長 40 [km] ごとに常時静電誘導作用による誘導電流が 3 [μA] を超えないようにすること(架空電話線が通信用ケーブルであるとき,架空電話線路の管理者の承諾を得たときは,この限りでない。)と規定されている。この誘導電流の計算は,所定の計算式によるが,架空電線路と電話線路との距離が十分離れている部分は計算を省略している。例えば,160 000 [V] を超える架空電線路の場合は,電話線路との距離が 500 [m] 以上離れている部分は誘導電流の算定を省略している。
- また,特別高圧架空電線路は,弱電流電線路に対して電磁誘導作用により通信上の障害を及ぼすおそれがないように施設することと規定されている。
架空電線路側における対策として,架空地線にアルミ覆鋼より線などを使用して低抵抗化を図ることや架空地線の条数を増やすことにより遮へい効果を向上させることなどが行われている。
弱電流線路側の対策としては,ルートの変更による架空電線路との離隔距離の拡大,遮へい効果の高い通信ケーブルへの張り替え,避雷器の設置による誘導電圧の低減などが実施されている。