平成27年度 第2種 法規

2022年5月5日更新

はじめに

  1. 問題文中に「電気設備技術基準」とあるのは,「電気設備に関する技術基準を定める省令」の略である。
  2. 問題文中に「電気設備技術基準の解釈」とあるのは,「電気設備の技術基準の解釈における第1章~第6章及び第8章」をいう。なお,「第7章 国際規格の取り入れ」の各規定について問う出題にあっては,問題文中にその旨を明示する。
  3. 問題は,平成27年4月1日現在,効力のある法令(電気設備の技術基準の解釈を含む。)に基づいて作成している。

目次

  1. 発電機及び特別高圧変圧器の保護装置
  2. 低圧連系時及び特別高圧連系時の施設要件
  3. 周波数制御用発電所
  4. 電力系統の安定度
  5. 太陽電池発電設備の保安
  6. 発電用風力設備
  7. 電力系統の電圧・無効電力制御

問1 発電機及び特別高圧変圧器の保護装置

  1. 発電機には,以下に示す場合に,発電機を自動的に電路から遮断する装置を施設すること。
    1. 発電機に過電流を生じた場合
    2. 容量が 500 kV·A 以上の発電機を駆動する水車の圧油装置の油圧又は電動式ガイドベーン制御装置,電動式ニードル制御装置若しくは電動式デフレクタ制御装置の電源電圧が著しく低下した場合
    3. 定格出力が 10 000 kW を超える蒸気タービンにあっては,そのスラスト軸受が著しく磨耗し,又はその温度が著しく上昇した場合
  2. 特別高圧の変圧器には,次の表の左欄に掲げるバンク容量の区分及び同表中欄に掲げる動作条件に応じ,同表右欄に掲げる装置を施設すること。ただし,変圧器の内部に故障を生じた場合に,当該変圧器の電源となっている発電機を自動的に停止するように施設する場合においては,当該発電機の電路から遮断する装置を設けることを要しない。
特別高圧変圧器の保護装置
変圧器のバンク容量 動作条件 装置の種類
5 000 kV·A 以上
10 000 kV·A 未満
変圧器内部故障 自動遮断装置又は警報装置
10 000 kV·A 以上 同上 自動遮断装置

参考文献

問2 低圧連系時及び特別高圧連系時の施設要件

  1. 単相 3 線式の低圧の電力系統に分散型電源を連系する場合において,負荷の不平衡により中性線に最大電流が生じるおそれがあるときは,分散型電源を施設した構内の電路であって,負荷及び分散型電源の並列点よりも系統側に,3 極に過電流引き出し素子を有する遮断器を施設すること。
  2. 低圧の電力系統に逆変換装置を用いずに分散型電源を連系する場合は,逆潮流を生じさせないこと。
  3. 特別高圧の電力系統に分散型電源を連系する場合(スポットネットワーク受電方式で連系する場合を除く。)は,次の各号によること。
    1. 一般電気事業者が運用する電線路等の事故時等に,他の電線路等が過負荷になるおそれがあるときは,系統の変電所の電線路引出口等に過負荷検出装置を施設し,電線路が過負荷になったときは,同装置からの情報に基づき,分散型電源の設置者において,分散型電源の出力を適切に抑制すること。
    2. 系統安定化又は潮流制御等の理由により運転制御が必要な場合は,必要な運転制御装置を分散型電源に施設すること。
    3. 単独運転時において電線路の地絡事故により異常電圧が発生するおそれ等があるときは,分散型電源の設置者において,変圧器の中性点に接地工事を施すこと。
    4. 上記 3 に規定する中性点接地工事を施すことにより,一般電気事業者が運用する電力系統内において電磁誘導障害防止対策や地中ケーブルの防護対策の強化等が必要となった場合は,適切な対策を施すこと。

参考文献

問3 周波数制御用発電所

周波数制御用発電所は一般に次のような条件を具備しなければならない。

  1. 必要とする調整能力( kW , kW·A )を常時持っていること。
  2. 出力調整が容易で負荷変動に対する応答性が高く,さらに高効率運転ができること。
  3. 出力調整により水力発電所では水量の変動により水利上で支障が生じないこと。
  4. 出力調整により送電系統に支障が生ぜず,また通信設備が完備していること。

周波数制御用発電所のうち水力発電所では,揚水発電所及び比較的大容量の貯水池式又は調整池式水力発電所が使用されている。また夜間は調整力確保のために可変速揚水発電所も採用されている。

大容量火力発電所も使用されているが,定格出力に対する調整幅の割合や,調整速度とも水力に比べ小さい。要因の一つとして,出力変動が大きい場合にタービンにおいて熱応力の問題があげられる。

これら水力や火力を組み合わせることで,系統周波数の変動幅を最大で ± 0.1 ~ 0.3 Hz 以内を目標とするように出力調整されている。

参考文献

問4 電力系統の安定度

電力系統の安定度とは,負荷変動,系統操作,短絡や地絡事故などの系統内の擾乱に対して安定に送電を継続できる度合いをいい,定態安定度と過渡安定度とがある。定態安定度とは,徐々に負荷を増加した場合など微小な擾乱に対して安定に運転を行える度合いをいい,その限界の電力を定態安定極限電力と呼ぶ。なお,定態安定度,過渡安定度は,擾乱の大きさからの分類であり,発電機の自動電圧調整装置等の制御装置を考慮した分類もある。

線路抵抗の損失を無視した場合の受電端有効電力の最大は,相差角が π/2 のときで,これが定態安定極限電力となる。

この定態安定度の説明には,P - δ 曲線(電力・相差角曲線)が用いられる。ここで,相差角が微小変化したときの送電電力の変化の割合を同期化力という。相差角の小さな領域ではその増加とともに送電電力は増加するが,相差角が π/2 を超えると逆に減少するようになる。

これは,負荷増加に対応して相差角が大きくなり,送電電力が増えようとしても,反対に送電電力が減少することを意味し,安定な送電は継続できない。

参考文献

問5 太陽電池発電設備の保安

  1. 電圧 600 V 以下,合計出力 50 kW 未満であって,同一の構内に他の発電設備がない太陽電池発電設備は,小出力発電設備である。
  2. 上記 a. の太陽電池発電設備のうち,電気事業法で定める一般用電気工作物に該当する太陽電池発電設備の設置者は,主任技術者の選任は必要でない。
  3. 上記 b. に該当しない太陽電池発電設備は,事業用電気工作物となるため,その設置者は保安規程の策定・届出,及び主任技術者の選任が必要であるが,出力 2 000 kW 未満であって,電圧 7 000 V 以下で連系されている自家用電気工作物の場合には,主任技術者の業務を,経済産業大臣又は産業保安監督部長の承認を得て,外部に委託することができる。

参考文献

  • 目指せ!電気主任技術者~解説ノート~「太陽光発電

問6 発電用風力設備

  1. 最高部の地表からの高さが 20 m を超える発電用風力設備には,雷撃から風車を保護するような措置を講じなければならない。ただし,周囲の状況によって雷撃が風車を損傷するおそれがない場合においては,この限りでない。
  2. 発電用風力設備として使用する圧油装置及び圧縮空気装置は,次の各号により施設しなければならない。
    1. 圧油タンク及び空気タンクの材料及び構造は,最高使用圧力に対して十分に耐え,かつ,安全なものであること。
    2. 圧油タンク及び空気タンクは,耐食性を有するものであること。
    3. 圧力が上昇する場合において,当該圧力が最高使用圧力に到達する以前に当該圧力を低下させる機能を有すること。
    4. 圧油タンクの油圧又は空気タンクの空気圧が低下した場合に圧力を自動的に回復させる機能を有すること。
    5. 異常な圧力を早期に検知できる機能を有すること。
  3. 風車を支持する工作物は,自重,積載荷重,積雪及び風圧並びに地震その他の振動及び衝撃に対して構造上安全でなければならない。

参考文献

問7 電力系統の電圧・無効電力制御

送電端電圧 Vs ,受電端電圧 Vr ,線路の抵抗 R ,リアクタンス X ,負荷の電流 I ,力率 cos θ (遅れ)の線路の電圧降下 e は①式で近似される。①式は,受電端の有効電力を P ,遅相無効電力を Q で表すと②式のように表される。

e = Vs - Vr = √3 I ( Rcosθ + Xsinθ)・・・・・①
e = ( RP + XQ)/Vr・・・・・②

②式から,一般に送電線では,線路抵抗 R に比べて線路リアクタンス X が著しく大きいので,無効電力 Q により電圧が変化する。

そこで,系統の電圧調整方法として,無効電力の調整が行われており,そのために以下の設備が使用されている。

  1. 同期調相機は無負荷の同期電動機であり,界磁電流を小から大まで調整することによって無効電力を遅相から進相まで連続的に変化させて系統の電圧を制御する。
  2. 電力用コンデンサは,系統電圧を上昇させる。
  3. 分路リアクトルは,系統電圧を低下させる。
  4. 静止形無効電力補償装置(SVC)は,無効電力をサイリスタで高速に調整する。これは,サイリスタでリアクトルに流れる電流を位相制御する方式であり,無効電力の連続的な調整が可能である。

参考文献

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