2019年度 第2種 法規

2019年8月31日作成,2022年5月5日更新

はじめに

  1. 問題文中に「電気設備技術基準」とあるのは,「電気設備に関する技術基準を定める省令」の略である。
  2. 問題文中に「電気設備技術基準の解釈」とあるのは,「電気設備の技術基準の解釈における第1章~第6章及び第8章」をいう。なお,「第7章 国際規格の取り入れ」の各規定について問う出題にあっては,問題文中にその旨を明示する。
  3. 問題は,平成31年4月1日現在,効力のある法令(電気設備の技術基準の解釈を含む。)に基づいて作成している。

目次

  1. 自家用電気工作物の保安及び高圧一括受電マンションの取扱い
  2. 発変電設備等の損傷による供給支障の防止
  3. 移動用電気工作物の取扱い
  4. 架空電線路の支持物の昇塔防止
  5. 電力保安通信設備
  6. 分散型電源の高圧配電線との連系
  7. 電力需要の分析

問1 自家用電気工作物の保安及び高圧一括受電マンションの取扱い

  1. 自家用電気工作物に該当する需要設備の保安管理業務を外部委託し,電気主任技術者を選任しない場合,その外部委託について経済産業大臣又は産業保安監督部長に事前に承認申請をしなければならない。この保安管理業務の外部委託業務に従事する者の要件として,電気主任技術者免状の交付を受けていることのほか,実務に従事した期間が一定以上であることが必要である。
  2. 一般的なマンションでは,住戸部(専有部)の電気契約は,住人(専有部利用者)が個別に電気事業者と低圧電灯契約を結ぶのに対し,契約主体を単一にして高圧契約し,マンション側で設置する受変電設備から各住戸部に低圧供給する,いわゆる高圧一括受電マンションが近年増加している。高圧一括受電マンションの電気工作物は,電気事業法及び関係法令により,次のように扱うことが必要である。

電気工作物の種類は,受変電設備,住戸部のいずれも自家用電気工作物となる。

住戸部の電気工作物は,保安規程及び電気主任技術者の保安の監督の対象になる

電気工作物の保安管理業務を外部委託により行う場合,住戸部の定期点検の頻度は,低圧受電の一般用電気工作物の調査と同様,原則的に 4 年に一回以上とすることができる。

参考文献

問2 発変電設備等の損傷による供給支障の防止

次の文章は,「電気設備技術基準」における,発変電設備等の損傷による供給支障の防止に関する記述である。

  1. 発電機,燃料電池又は常用電源として用いる蓄電池には,当該電気機械器具を著しく損傷するおそれがあり,又は一般送配電事業に係る電気の供給に著しい支障を及ぼすおそれある異常が当該電気機械器具に生じた場合に自動的にこれを電路から遮断する装置を施設しなければならない。
  2. 特別高圧の変圧器又は調相設備には,当該電気機械器具を著しく損傷するおそれがあり,又は一般送配電事業に係る電気の供給に著しい支障を及ぼすおそれがある異常が当該電気機械器具に生じた場合に自動的にこれを電路から遮断する装置の施設その他の適切な措置を講じなければならない。

参考文献

問3 移動用電気工作物の取扱い

台風や地震による停電時に,避難所や病院等に電気を供給する高圧発電機車など,車載式や貨物自動車等で移設して使用する電気工作物を移動用電気工作物といい,移動用発電設備,非自航船用電気設備,移動用変電設備,移動用予備変圧器の四つに分類される。このうち,移動用変圧器とは,二つ以上の発電所,変電所又は需要設備に移設して使用することを目的とする予備変圧器をいう。

移動用発電設備は,発電所,変電所等の非常用予備発電設備として使用するもの以外のものは,電気事業法において発電所として取り扱われる。したがって,移動用発電設備として内燃力(ディーゼル)発電装置を倉庫に保管し,電源のない建設現場に移設して使用しようとする場合,使用電圧が 600 V 以下で出力 10 kW 未満の小出力発電設備であれば,電気事業法上の手続きは不要であるが,出力が 10 kW 以上の場合は,使用電圧が 600 V 以下であっても,主任技術者選任の届出又は申請と保安規程の届出を,移動用発電設備を使用する場所を管轄する産業保安監督部長(当該場所が二つ以上の産業保安監督部の管轄区域にある場合は,経済産業大臣)に提出しなければならない。

参考文献

問4 架空電線路の支持物の昇塔防止

次の文章は,「電気設備技術基準」及び「電気設備技術基準の解釈」における,架空電線路の支持物の昇塔防止に関する記述である。

  1. 架空電線路の支持物には,感電のおそれがないよう,取扱者以外の者が容易に昇塔できないように適切な措置を講じなければならない。
  2. 架空電線路の支持物に取扱者が昇降に使用する足場金具等を施設する場合は,地表上 1.8 m 以上に施設すること。ただし,次のいずれかに該当する場合はこの限りでない。
    1. 足場金具等が内部に格納できる構造である場合
    2. 支持物に昇塔防止のための措置を施設する場合
    3. 支持物の周囲に取扱者以外の者が立ち入らないように,さく,へい等を施設する場合
    4. 支持物を山地等であって人が容易に立ち入るおそれがない場所に施設する場合

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問5 電力保安通信設備

次の文章は,「電気設備技術基準」及び「電気設備技術基準の解釈」における,電力保安通信設備に関する記述の一部である。

  1. 電力系統の運用に関する指令を行う所を給電所という。
  2. 市街地に施設する電力保安通信線は,特別高圧の電線路の支持物に添架された電力保安通信線と接続してはならない。ただし,誘導電圧による感電のおそれがないよう,保安装置の施設その他の適切な措置を講ずる場合は,この限りでない。
  3. 同一水系に属し,保安上,緊急連絡の必要がある水力発電所相互の間には,電力保安通信用電話設備を施設すること。
  4. 電力保安通信線は,機械的衝撃,火災等により通信の機能を損なうおそれがないように施設しなければならない。

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問6 分散型電源の高圧配電線との連系

太陽光発電,風力発電等の発電設備等の系統連系において,電力品質を確保するための技術要件が明らかにされている。一般的には,発電設備等の一設置者当たりの電力容量(連系する発電設備等の出力容量と受電電力の容量のいずれか大きい方)が原則として 2 000 kW 未満であり,以下に示す技術要件を満たす場合には,高圧配電線と連系することができる。

電力品質を確保するための技術要件
1. 力率 原則 85 % 以上とするとともに,系統側から見て進み力率とならないようにする。
2. 自動負荷制限 発電設備等の脱落時等に連系された配電線路や配電用変圧器等が過負荷となるおそれがあるときは,設置者において自動的に負荷を制限する対策を行う。
3. 逆潮流の制限 当該発電設備等を連系する配電用変電所のバンクにおいて,原則として逆向きの潮流が生じないようにする。
4. 電圧変動 a 発電設備等の脱落等又は発電設備等からの逆潮流により低圧需要家の電圧が適正値を逸脱するおそれがあるときは,設置者において,それぞれ自動的に負荷を制限する対策又は自動的に電圧を調整する対策を行う。
b 瞬時電圧変動対策を行う。
5. 不要解列の防止 a 連系された系統以外の事故時には解列されないと同時に,連系された系統から解列される場合には,自動再閉路時間より短く,かつ単独運転か否かを判別できる適切な次元で行われるものとする。
b 系統の事故による広範囲の瞬時電圧低下や瞬時的な周波数の変化があっても運転を継続するものとする。
6. 連絡体制 系統側電気事業者の営業所等と発電設備等設置者の技術員駐在箇所等との間には,保安通信用電話設備を設置するものとする。

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問7 電力需要の分析

  1. 時々刻々変動する負荷の特性を表すために,横軸に時間(日・週・旬・月・年)を,縦軸に需要電力をとって表示した曲線がよく使用される。この他に,日・週・旬・月・年を対象とする期間の電力需要について,その発生した時間とは無関係に大きい順に並び替えた曲線のことを負荷持続曲線といい,負荷の特性を分析・調査するために使用される。
  2. 需要率は,最大需要電力の全設備容量に対する割合であり,過負荷使用の場合を除き,一般に 1 より小さい値となる。
  3. 供給する電力量が一定の場合,最大需要電力が大きいほど負荷率が低下して設備利用率は低くなる。
  4. 需要家 A,需要家 B 及び需要家 C の三つの需要家に電力を供給している。それぞれの最大需要電力は 940 kW,1 180 kW,1 540 kW である。需要家 A の年間使用電力量が 4 900 MW·h であるとき,その年負荷率は 59.5 % である。また,三つの需要家相互間の不等率が 1.20 であるとき,最大合成需要電力は 3 050 kW である。ただし,1 年は 365 日,需要家 A,需要家 B 及び需要家 C の力率はいずれも 1.0 とする。

需要家 A の年負荷率

需要家 A の年負荷率は次式で求められる。

\[ \frac{4900 \times 10^3}{940 \times 24 \times 365} \times 100 = 59.5 \text{ [%]} \]

最大合成需要電力

三つの需要家相互間の不等率が 1.20 であるとき,最大合成需要電力は次式で求められる。

\[ \frac{940 + 1180 + 1540}{1.20} = 3050 \text{ [kW]} \]

参考文献

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