平成10年度 第一種 電気主任技術者二次試験 電力・管理

2022年11月6日更新

目次

  1. 水車発電機の負荷遮断
  2. 一軸型コンバインドサイクル発電方式と多軸式コンバインドサイクル発電方式
  3. 事故波及防止システム
  4. タップ付き変圧器を途中の地点にもつ送電系統
  5. ガス絶縁開閉装置(GIS)の性能低下の監視・測定
  6. 給電指令

問1 水車発電機の負荷遮断

水車調速機の閉鎖時間が $t$ 秒,不動時間が $\tau$ 秒の水車発電機が $P$ [kW] で運転中に負荷遮断した。次の問に答えよ。ただし,ガイドベーンの閉鎖時間特性は直線で表されるものとする。

(1) ガイドベーンを閉鎖し終わるまでに水車に与えられた過剰エネルギー $W$ [J] を $P$,$t$ および $\tau$ を用いて表せ。ただし,無負荷運転時のエネルギー損失は無視するものとする。

(2) この水車発電機の最大回転速度時点での運動エネルギーと,負荷中の回転速度の運動エネルギーの差を慣性モーメント $I$ [kg·m²] を用いて表せ。

なお,負荷中の回転速度は $n_i$ [min-1],最大回転速度は $n_\text{max}$ [min-1] とする。

(3) 回転部の質量を $G$ [kg],等価的な直径を $D$ [m] としたとき,慣性モーメント $I$ を $G$ および $D$ で表せ。

(4) 問(1) および問(2) で求めたエネルギーは等しいことから,速度変動率 $\delta_n$ [%] を $P$,$t$,$\tau$,$G$,$D$ および $n$ で表せ。

なお,定格回転速度は $n$ [min-1] とする。また,$n_i = n$,$n_\text{max} + n_i \approx 2n$ とする。

(5) ガイドベーン全開から無負荷開度までの閉鎖時間が 2 秒,不動時間が 0.5 秒に調整された水車において,1/4 負荷から負荷遮断したときの速度変動率が 2 [%] であった。もし,この閉鎖時間を 3 秒に改定した場合について,全負荷から負荷遮断したときの速度変動率を問(4) で導き出された式を用いて求めよ。

問2 一軸型コンバインドサイクル発電方式と多軸式コンバインドサイクル発電方式

我が国の一軸型コンバインドサイクル発電方式と多軸式コンバインドサイクル発電方式の機器構成を延べ,システムの相違に起因する得失を述べよ。

一軸型コンバインドサイクル発電方式

一軸型コンバインドサイクル発電方式は,第1図に示すようにガスタービンと蒸気タービンの軸を同一軸として直結したものである。そして,この軸に発電機が直結され,駆動されている。同発電方式の得失は以下の通り。

  • 部分負荷でも発電機の運転台数を切り換えることで,高効率運転を行うことができる。→中間負荷の発電に適している。
  • 機器構成が簡単であり,建設工期が短い。
  • 始動時間が短い。
  • ガスタービン単独での運転ができない。

多軸式コンバインドサイクル発電方式

多軸型コンバインドサイクル発電方式は,第2図に示すようにガスタービンの軸と蒸気タービンの軸とが,別々にあり,それぞれの軸で発電機を駆動するようになっているものである。また,蒸気タービン発電機1台に対して,ガスタービン発電機複数台を組み合わせて1組とすることもある。同発電方式の得失は以下の通り。

  • 蒸気タービン発電機1台に対してガスタービン発電機を複数台とすると,蒸気タービンの容量が大きくなり,定格負荷(全出力)時の効率は高くなる。したがって,一軸型に比べ,ベース負荷に適している。
  • ガスタービン発電機と蒸気タービン発電機とで異なる出力で,出力を加減できる。
  • 発電方式によっては,ガスタービンおよび蒸気タービンそれぞれを単独で運転することができる。
  • プラント構成が一軸型に比べて複雑となる。

問3 事故波及防止システム

我が国では最近,電力系統の部分的事故が全系統に拡大・波及し,系統の過渡・中間領域安定度が損なわれるのを防止するために,事故波及防止システムが導入されている。このシステムの基本的な機能,方式と特徴,信頼性向上策について述べよ。

事故波及防止システムとしては,系統周波数の異常防止(需給バランス対策),異常の抑制(無効電力バランス対策),系統動揺の抑制(過渡・中間領域安定度対策)が挙げられる。

基本的な機能

系統の短絡・地絡などの事故発生中は,発電機への機械的入力は略一定であるが,電気的出力は発電機と系統側との電圧位相差の変化によって動揺する。このことによる発電機の機械エネルギーと電気エネルギーの不平衡により系統の過渡・中間領域安定度が損なわれ,そのままにすると脱調に至る場合,高速に電源遮断・負荷遮断あるいは系統分離などを行う。

方式と特徴

方式には,事後演算形・事前演算形およびリレー方式がある。

事後演算形は,事故が発生した時点で,系統各地点の事故前・事故中・事故除去後の電圧や電力の情報をオンラインで受信し,あらかじめ用意した安定化のための演算アルゴリズムにより,電源遮断・負荷遮断・系統分離などの地点や電力など制御量をリアルタイムで演算し,制御する方式である。

事前演算形は,系統が不安定になる事故を想定し,想定した事故前の系統情報からあらかじめ制御量を求めておき,該当する事故が発生した場合,該当するリレー動作や遮断器トリップなどの情報で制御起動する方式である。

リレー形は,周波数低下と一定の時限であらかじめ定めた負荷を遮断する UFR(周波数低下リレー)や,系統の連系点などあらかじめ設定した分離点で,周波数異常・過負荷・系統動揺などを検出して系統を分離させ,停電範囲を局限する系統分離リレーがある。

信頼性向上策

事故波及防止システムは,その性質上,設備事故除去リレーに準じた信頼性を考慮する必要がある。例えば,システムや伝送回線の 2 系列化,常時監視・自動点検方法,主保護・後備保護の考え方などをシステム適用にあたって検討する必要がある。

問4 タップ付き変圧器を途中の地点にもつ送電系統

図のようなタップ付き変圧器を途中の地点にもつ送電系統があり,負荷に複素電力1.00+j0.20を供給している。このときのタップ比nを有効数字3桁まで求めよ。

ただし,送・受電端の電圧の大きさは1.00に維持されているものとする。なお,計算に用いる定数はすべて単位法で表されており,送電線定数はリアクトル分のみで表されている。また,変圧器の励磁インピーダンスおよび漏れインピーダンスは無視するものとする。

準備中

問5 ガス絶縁開閉装置(GIS)の性能低下の監視・測定

ガス絶縁開閉装置(GIS)の性能低下の監視・測定には,一般的に次に掲げる項目があるが,これらの監視・測定の意義とその具体的な方法を簡潔に述べよ。

  1. ガス圧監視
  2. 部分放電監視
  3. ガス中水分測定
  4. ガス分解生成物測定

ガス圧監視

ガス絶縁開閉装置(GIS)の絶縁媒体および消弧媒体として SF6 ガスを使用している。このガスは,数気圧異常の圧力を加えることによって絶縁性能および消弧性能が得られる。したがって,タンクや配管部分での破損,ねじやボルトの緩みがあると,ここからガスが漏れ,圧力が低下して絶縁破壊に至るおそれがある。このような理由からガス圧を監視することが必要である。

ガス圧監視の方法は,ガス圧力計や密度計による監視がある。

部分放電監視

タンク内の異物や突起物などにより電界が集中し部分放電が生じ,その結果,絶縁劣化が進み絶縁破壊に至る。このような理由から部分放電を監視する必要がある。

電気的方法として,絶縁スペーサの内部または外部に設けた検出用電極に静電的に生じるパルス電圧を検出する絶縁スペーサ法や,部分放電により GIS の接地線に生じたパルス電流を電磁的に検出する電磁カップリング法がある。機械的方法として,部分放電による音波やタンクの振動を,振動加速度計やマイクロホンで検出する。

ガス中水分測定

ガス中に含まれる水分が多くなると,固体絶縁物の表面に結露を生じ絶縁体耐力が低下し,絶縁破壊に至る。このような理由からガス中の水分を測定する必要がある。

五酸化りんの薄膜に吸収させた電極間に電圧をかけ,水分を水素と酸素に分離させ,流れる電流を測定する,水分が入るとキャパシタンスが変化するエレメントを使い,キャパシタンスの変化を測定する,水分計法がある。

ガス分解生成物測定

タンク内で放電が生じると,分解ガスと生成物が生じるが,この分解ガスと生成物を測定することで部分放電などの有無を知ることができる。

呈色反応法を利用したガスチェッカー[1]やガスマトグラフを用いる。


  1. 部分放電により発生する微量の分解ガスを検知物質の色変化により検出する方式。(出典)電気協同研究 第52巻 第1号「ガス絶縁開閉装置仕様・保守基準」

問6 給電指令

給電指令所の業務のうち,次に掲げる給電指令について,その内容をそれぞれ簡潔に述べよ。

  1. 運転指令
  2. 調整指令
  3. 操作指令

運転指令

電力設備の始動・運転・停止などについての指令をいう。

調整指令

運転中の電力設備の発電電力・電圧・周波数・電力潮流などの調整をさせる命令をいう。

操作指令

電力系統の運転・調整のため,開閉装置,保護用継電装置用スイッチの操作をさせる指令である。

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