平成11年度 第一種 電気主任技術者二次試験 電力・管理
目次
問1 石炭を完全燃焼するのに必要な理論空気量
石炭火力発電所において,燃料として使用する石炭の成分は,炭素 70 [%],水素 7.3 [%],硫黄 0.4 [%],酸素 8.9 [%],窒素 1.5 [%],水分 0.9 [%],灰分 11 [%] である。
この石炭を完全燃焼させるのに必要な理論空気量 [m³N/kg] はいくらか。また,空気過剰係数が 1.3 になるように燃焼させたときの実際の燃焼空気量 [m³N/kg] 及び燃焼ガス量 [m³N/kg] はいくらか。数値は小数点第 2 位まで表せ。ただし,窒素は可燃成分とはしない。
(注:単位の中の m³N は,標準状態{0°C,1013 hPa(760 mmHg)}における気体の体積 [m³] のことである。)
準備中
問2 軽水形原子力発電所における蒸気タービン及び発電機
軽水形原子力発電所における蒸気タービン及び発電機について,火力発電所との構造上の相違点を挙げ,それらを対比して説明せよ。
蒸気タービン
- 同一出力を得るためには,使用蒸気量が火力タービンの 1.6 ~ 1.8 倍となるので,タービン,復水器が大形になる。
- タービン低圧段で湿り度が増加するので,羽根の浸食を減らすために 1 500 [min-1] または 1 800 [min-1] となる。
- タービン入口の湿り度が 0.25 ~ 0.4 [%] 程度なので,最終段の湿分を許容値以下にするため,各段階に湿分分離機能をもたせてドレン分離したり,高圧タービンと低圧タービンの連絡管の途中に湿分分離器が設置される。
- 原子炉の放射能を帯びた蒸気がタービンに流入するため,放射線遮へい,放射性気体廃棄物処理が必要である。
発電機
- 4 極機であるため,界磁巻線1極当たりの励磁起磁力が少なく,界磁巻線の銅量も増加できるので,励磁容量および界磁銅損が 60 [%] 程度減少するので,ラジアルフロー形冷却方式が採用される。
- 回転数が低いので風損が減少し,界磁銅損,漂遊負荷損も少なくなるので,効率が高くなる。
- 回転数が 2 極機の半分,軸長を同じにすると同一容量の回転子半径は 1.5 倍程度なので,遠心力は小さくなる。
問3 負荷の消費する有効電力及び遅れ無効電力
準備中
問4 微地絡検出装置
準備中
問5 地球温暖化防止のため,電気供給面及び電気使用面において採るべき対策
地球温暖化防止のため,電気供給面及び電気使用面において採るべき対策を次の項目について述べよ。
- 電気供給面
- 電源の多様化
- 二酸化炭素(CO2)の削減
- 流通設備の効率向上
- 電気使用面
- 省エネルギー
- 負荷平準化
- その他
- 電気供給面
- 電源の多様化
- ウランやプルトニウムを使用する原子力発電の導入拡大
- 石油,石炭と比較して CO2 の排出量が少ない,LNG(液化天然ガス)火力の比率拡大
- 中小水力の開発促進
- バイオマス発電
- 太陽光や風力などの新エネルギーの導入拡大
- 地熱の導入拡大
- 二酸化炭素(CO2)の削減
- コンバインドサイクル発電方式の導入拡大
- 火力発電所のリパワリングによる熱効率向上
- CO2 除去技術の開発
- 流通設備の効率向上
- 100 万 V 架空送電など送電電圧の高電圧化
- 電力用コンデンサ,分路リアクトルなど調相設備の配置運用,変圧器タップの運用などの適正化による系統電圧・無効電力分布の適正維持
- 変圧器,ケーブルなどの損失低減
- 配電線の太線化による抵抗損失の低減
- 電源の多様化
- 電気使用面
- 省エネルギー
- コージェネレーションシステムを利用した効率的な熱電供給
- 電動機,変圧器など産業用電力機器の高効率化,空調,冷蔵庫その他の低消費電力化
- エレベータ,給排水など動力負荷用電動機のインバータ運転,回生制動
- 高効率照明器具の採用,自然光の活用,照度の適正化,不要な照明の消灯
- テレビ,オーディオなど待機電力の低減
- 住宅の高気密・高断熱化による換気量低減
- 負荷平準化
- 蓄熱式ヒートポンプの普及
- 高効率な電力貯蔵設備の開発・設置
- エコキュート・電気温水器の普及
- 製鉄,繊維,セメント工業など 24 時間操業可能な業種の連続操業
- 電気炉など電力多消費設備のピーク時間帯運転停止,夜間操業
- その他
- 工場・変電所などの廃熱,河川水や下水と外気との温度差など低質未利用エネルギーを活用した蓄熱ヒートポンプによる地域熱供給・冷暖房
- 省エネルギー
問6 揚水式水力発電所の経済運用効果
揚水式水力発電所の経済運用効果は,オフピーク時の余剰電力等単価の低い電力を利用して揚水し,ピーク時に発電して電力の価値を高めることにある。
複数の火力発電所が連系している次の三つの電力系統に,揚水式発電所を導入する場合の経済運用効果について,その評価の考え方(主として費用の増減)を述べよ。
- 高効率火力発電機と低効率火力発電機が運転している系統
- 高効率火力発電機が部分負荷で運転している系統
- 運転予備力を火力発電機で保有している系統
1. 高効率火力発電機と低効率火力発電機が運転している系統
揚水動力用の深夜の高効率火力発電機の出力増加による熱効率向上,ピーク時の揚水発電による低効率火力発電機の起動回数低減により経済運用効果が得られる。ピーク時の低効率火力の起動費,発電費の低減分と,揚水のための高効率火力の発電費増加分の差が経済効果となる。揚水のための高効率火力発電費増加分は,ピーク時の低効率火力の発電費低減量を揚水発電所の総合効率で割ったものに等しい。
2. 高効率火力発電機が部分負荷で運転している系統
高効率火力発電機も部分負荷で運転すると,効率が著しく低下する。ピーク時に部分負荷運転の高効率火力機がある場合は,それを停止し揚水発電で不足分を補うようにするとき,部分負荷運転での高効率火力発電機の熱効率用も高ければ経済効果が得られる。また,オフピーク時に部分負荷の高効率火力機がある場合にも,揚水動力を増やしてその負荷率を高めて熱効率向上を図りピーク時に揚水発電すれば,同様の経済効果を得られる場合がある。
3. 運転予備力を火力発電機で保有している系統
運転予備力は,天候急変などによる需要の急増などに対応して即時または 10 分程度以内に発電可能な供給力であり,部分負荷運転中の火力発電機余力や停止待機中の水力が該当する。火力機の部分負荷運転で保有する場合は熱効率が低下するため,これを揚水発電で肩代わりさせれば,火力機の運転台数低減・部分負荷運転の回避により経済効果が得られる。揚水発電はいったん揚水すれば発電に使用しないかぎり運転予備力としての価値は維持されるので,運転予備力として期待する期間が長ければ長いほど効果は大きくなる。