平成12年度 第一種 電気主任技術者二次試験 電力・管理

2022年11月6日更新

目次

  1. 水素冷却方式
  2. SF6 ガス絶縁開閉装置(GIS)の輸送,据付,現地試験
  3. 静止形無効電力補償装置(SVC)
  4. 相電圧のひずみ率
  5. 電力系統を連系するメリット及び短絡容量の増大に対する抑制対策
  6. 故障した変圧器が復帰するまでの間,電力を供給するための考え方

問1 水素冷却方式

火力発電所の大容量タービン発電機に採用される水素冷却方式に関する次の問について概要を述べよ。

  1. 水素冷却方式が採用される理由
  2. 水素冷却方式において安全上留意すべき事項
  3. 発電機に付属される密封油装置の設置目的と密封方法

水素冷却方式が採用される理由

  • 水素は密度が空気の 7 [%] ときわめて軽いため,通風損失や回転子摩擦損が空気に比べて 10 [%] 程度となり,効率が 1 ~ 2 [%] 向上するため。
  • 水素の比熱は空気の 14 倍であり,冷却効果が向上するため。
  • 水素は不活性であり,絶縁物の劣化が少なく,火花を発しても酸素がないために燃焼が起こらず,コロナ発生電圧が高いため。

水素冷却方式において安全上留意すべき事項

水素冷却方式の欠点は,空気と混合した場合,水素の容積が 10 ~ 70 [%] の範囲では爆発性になることである。したがって,水素の純度管理には十分留意する必要がある。

電気設備の技術基準の解釈 第41条の七【水素冷却式発電機等の施設】
発電機内又は調相機内の水素の純度が 85 % 以下に低下した場合に,これを警報する装置を設けること。

発電機に付属される密封油装置の設置目的と密封方法

密封油装置は機内の水素ガスを密封する目的で設置される。

密封方法としては,密封油を機内ガス圧より 70 [kPa] 程度高い圧力で供給し,この油を密封リングのなかの小穴を通って軸と密封リングのすき間に流れ込ませて軸に沿って空気側および水素側に押し出し,軸と密封リングの間に油膜をつくって密封する。

問2 SF6 ガス絶縁開閉装置(GIS)の輸送,据付,現地試験

SF6 ガス絶縁開閉装置(GIS)の工場製作完了から現地据付・試験完了までの期間における次の事項について概要を述べよ。

  1. 輸送に関して配慮すべき事項
  2. 据付に関して配慮すべき事項
  3. 現地試験において確認すべき事項

輸送に関して配慮すべき事項

我が国の陸上輸送は諸外国に比べ,一般に輸送重量・制限が厳しく,個々に輸送方法・経路を事前に確認する必要がある。検討する事項としては,以下の通り。

  • 輸送経路
  • 搬入路と荷下ろし方法
  • 輸送時の振動・衝撃

据付に関して配慮すべき事項

  • 基礎工事:据付ボルトの位置等
  • 据付作業
  • じんあい管理:粉じん計により測定し,20 カウント以下となるよう管理
  • 水分管理:分解ガスを発生しない機器は 500 [ppm] 以下,分解ガスを発生する機器は 150 [ppm] 以下
  • ガス充てん:リークディテクタにてガス漏れの有無を確認
  • 防水処理:コーキング等で防水処理

現地試験において確認すべき事項

  • 絶縁抵抗測定
  • 接触抵抗測定
  • 開閉試験
  • インタロック試験

問3 静止形無効電力補償装置(SVC)

送電線の送電能力を向上させる方策として,静止形無効電力補償装置(SVC)などの電圧維持装置を,送電線途中の開閉所などに設置することが考えられる。

図に示すような送電線があり,両端 S 及び R の電圧の大きさは一定値 $V$ に維持されている。この送電線の左端 S から全長の $a$ [%] の地点 M に SVC を設置し,その設置地点の電圧の大きさを送電線両端の電圧と同じ値 $V$ に理想的に一定に維持した場合について,次の問に答えよ。

ただし,送電線の全長のリアクタンスを $X$ とし,送電線には損失がなく,また,対地静電容量は無視するものとする。

(1) この送電線の M 点において,S 点から受電する有効電力 $P_1$ 及び R 点へ送出する有効電力 $P_2$ を表す式を示せ。ただし,$\dot{V}_S \dot{V}_M$ 間の相差角を $\delta_1$,$\dot{V}_M \dot{V}_R$ 間の相差角を $\delta_2$ とする。

静止形無効電力補償装置(SVC)
静止形無効電力補償装置(SVC)

次に,この送電線の静的な最大送電電力(定態安定極限電力)$P_\text{nax}$ を $a$ の関数として求め,それを図示せよ。

(2) この送電線の M 点において,S 点から受電する遅れ無効電力 $Q_1$ 及び R 点へ送出する遅れ無効電力 $Q_2$ を表す式を示せ。

次に,SVC から系統に供給される遅れ無効電力 $Q_\text{SVC}$ を求めよ。

(3) $a$ が 50 [%] 及び $\displaystyle \frac{100}{3}$ [%] のときの $P_\text{max}$ 及び $Q_\text{SVC}$ を求めよ。

問4 相電圧のひずみ率

図は三相配電線の一相分の等価回路である。この線路の末端に高調波発生負荷が接続されたとき,末端における相電圧のひずみ率(=高調波電圧の実効値/基本波電圧の実効値)を求めよ。

ただし,負荷の発生する第 5 調波電流 $I_5$ は 5.0 [A],第 7 調波電流 $I_7$ は 3.5 [A] とし,第 11 次以上の高調波電流は無視する。また,配電線の電源電圧は 6.6 [kV],60 [Hz] の基本波のみの三相平衡正弦波電圧とし,基本波電流による配電線の電圧降下は無視するものとする。

三相配電線の一相分の等価回路
三相配電線の一相分の等価回路

問5 電力系統を連系するメリット及び短絡容量の増大に対する抑制対策

電力系統を連系するメリット及びこれに伴う短絡容量の増大に対する抑制対策について述べよ。

電力系統を連系するメリット

  • 負荷の不等性によるピーク負荷の低減が図れ,供給設備の稼働率が向上する。
  • 河川流量の不等性による常時供給力の増加を図ることができる。
  • 発電設備の大容量化が図れ,経済的な電源開発が可能となる。
  • 供給予備力の共有化が図れ,予備力の削減ができ,電源開発量の節約ができる。
  • 火力・水力・原子力発電の経済運用が容易となり,燃料費の節減を図れる。
  • 火力・原子力発電の補修などの調整が容易となる。
  • 常時および事故時の周波数変動・電圧変動率が少なくなる。
  • 送電損失が減少する。

短絡容量の増大に対する抑制対策

  • 高次の送電電圧を採用し,既設系統を分割する。
  • 発電機や変圧器に高インピーダンス機器を採用する。※安定度低下に注意
  • 限流リアクトル(直列リアクトル方式,分離リアクトル方式)を採用する。
  • 直流連系により事故時の無効電力を遮断して短絡容量を低減する。
  • 系統分割,系統分離方式を採用する。

問6 故障した変圧器が復帰するまでの間,電力を供給するための考え方

図 1 の単線結線図に示すような自家用変電所において,三相変圧器 B に内部故障が午前 9 時に発生し,変圧器の一次側及び二次側とも遮断器(O12 及び O22)が開放した。故障した変圧器が復帰するまでの間,電力を供給するための考え方党について次の問に答えよ。

(1) 事故直後の電力供給の考え方とその操作手順について簡潔に述べよ。

(2) 変圧器 B が復帰するまでのピーク負荷への対応策の項目を挙げ,それについて簡潔に述べよ。

ただし,以下の条件を考慮すること。

[条件]

  1. 66 [kV] 送電線への事故波及はなかったものとする。
  2. 当面の予想日負荷曲線は図 2 のとおりで,負荷の力率は 0.9 とする。
  3. 故障発生時は母線の連絡用遮断器 O40 のみ開放状態にあったものとする。
  4. 変圧器の冷却方式は油入自冷式で製造年月は不明とする。
  5. 非常用予備電源はないものとする。
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