平成25年度 第一種 電気主任技術者二次試験 電力・管理

2022年11月6日更新

目次

  1. 河川の流況曲線
  2. 距離リレー
  3. 遮断器
  4. π 形等価回路による送電線模擬
  5. 電線のたるみ
  6. ループ系統と放射状系統

問1 河川の流況曲線

①式~③式の直線近似式で表される図 1 の流況曲線の河川に,最大取水量 100 [m³/s] ,最小取水量 15 [m³/s] ,有効落差 50 [m] の自流式(流込み式)水力発電所を設置する場合の年間発電電力量 [kW·h] と年間設備利用率 [%] を,(1) ~ (4) の手順に沿って求めよ。

なお,水車・発電機の総合効率 η [%] は,計算の簡便上,取水量の二次式ではなく,図 2 のような④式及び⑤式の直線近似式によって終日連続運転するものとする。また,年間を通じて,終日 5 [m³/s] の河川維持流量を確保するものとする。

ここで,1 年間は 365 [日],水の密度 ρ は 1 000 [kg/m³] ,重力加速度 g は 9.8 [m/s²] とする。

河川流量 Q [m³/s] は,日数 t [日]の関数とし,

0 ≤ t < 45 のとき:Q = -4.3t + 298.5・・・・・①
45 ≤ t < 125 のとき:Q = -0.5t + 127.5・・・・・②
125 ≤ t < 365 のとき:Q = -0.2t + 90・・・・・③

総合効率 η [%] は,取水量 qV [m³/s] の関数とし,

15 ≤ qV < 60 のとき:η = 2qV - 30・・・・・④
60 ≤ qV < 100 のとき:η = 90・・・・・⑤
  1. 最大取水量を確保して最大出力を発電できる日数と,最小取水量を確保して発電できる日数をそれぞれ求めよ。
  2. 最大取水量で発電できる期間の累計発電電力量 [kW·h] を求めよ。
  3. 最大取水量未満での累計発電電力量 [kW·h] を求めよ。
  4. この発電所の年間発電電力量 [kW·h] と,年間設備利用率 [%] をそれぞれ求めよ。
図1 流況曲線
図1 流況曲線
図2 総合効率
図2 総合効率

(1) 最大取水量を確保して最大出力を発電できる日数と,最小取水量を確保して発電できる日数

最大取水量を確保して最大出力を発電できる日数

最大取水量 100 [m³/s] 以上を確保できる日数は,河川維持流量 5 [m³/s] を加味して,Q = 105 に該当する日数となり,②式より,

105 = -0.5t + 127.5
∴ t = 45 [日]
最小取水量を確保して発電できる日数

最小取水量 15 [m³/s] を確保できる日数は,河川維持流量 5 [m³/s] を加味すると,Q = 20 に該当する日数となり,③式より,

20 = -0.2t + 90
∴ t = 350 [日]

(2) 最大取水量で発電できる期間の累計発電電力量 [kW·h]

有効落差 H [m] での発電電力 P [kW]は,

\[ P=g\rho q_\text{V} H\times\frac{\eta}{100}\times\frac{1}{1000} \]

最大取水量で発電できる期間の発電電力 P1 は,

\[ P_1=9.8\times1000\times100\times50\times\frac{90}{100}\times\frac{1}{1000}=44100 \]
P1 = 44 100 [kW]

最大取水量を確保して最大出力を発電できる日数は,(1) より 45 日あり,その期間の発電電力量 W1 は,

\[ W_1=P_1\times24\times45=44100\times24\times45=47628000 \]
W1 = 47 628 000 → 47 600 000 [kW·h]

(3) 最大取水量未満での累計発電電力量 [kW·h]

45 日 ~ 125 日の期間
P2 = -220.5t + 54 022.5 [kW]
W2 = 67 737 600 [kW·h]
125 日~ 350 日の期間
P3 = -0.392t2 -303.8t + 58 310 [kW]
W3 = 53 581 500 [kW·h]
最大取水量未満での累計発電電力量 [kW·h]
W2 + W3 = 67 737 600 + 53 581 500 = 121 319 100 → 121 000 000 [kW·h]

(4) この発電所の年間発電電力量 [kW·h] と,年間設備利用率 [%]

この発電所の年間発電電力量 [kW·h]

(2) ,(3) より,年間発電電力量は,

W1 + W2 + W3 = 47 628 000 + 67 737 600 + 53 581 500 = 168 947 100 → 169 000 000 [kW·h]
年間設備利用率 [%]

年間設備利用率は,最大出力で 365 日間運転した場合の発電電力量 W0 [kW·h] に対する比率である。W0 は,

W0 = P1 × 365 × 24 = 44 100 × 365 × 24 = 386 316 000 [kW·h]

年間設備利用率は,

年間設備利用率 = (W1 + W2 + W3) / W0 = (168 947 100) / (386 316 000) × 100 = 43.732 → 43.7 [%]

問2 距離リレー

準備中

問3 遮断器

遮断器は電力系統の運用の中で重要な役割を果たしている。定常時に通電すると共に,系統事故時においては,事故電流遮断,抵抗投入などによる開閉過電圧の抑制や再閉路による電力系統の安定度向上などの役割を果たす。

遮断器に関連する次の項目について,具体的に説明せよ。

(1) 直列機器としての電流協調:

遮断器が閉路の状態で,① 定常及び過負荷運転時,② 系統事故時において,遮断器に流れる電流の許容値に関する定格をそれぞれ一つ挙げ,直列機器の運用に支障がないように,遮断器が電流面で協調を図るべき事項(電流協調)について簡潔に説明せよ。

(2) 事故電流の遮断現象:

近距離線路故障遮断(SLF)について,遮断現象を説明せよ。

(3) 送電線事故時の系統安定度の向上:

図の電力相差角曲線を用いて,2 回線送電線で 1 回線 3 相地絡事故を遮断器で除去し,再閉路によって,安定度が向上されるケースについて,動作点の動きを説明せよ。なお,P は 2 回線送電中の電力相差角曲線とし,事故発生前は電力 PM を送電し,相差角 δ0 の交点 a で運転されている。

電力相差角曲線
電力相差角曲線

(1) 直列機器としての電流協調:

① 定常及び過負荷運転時

遮断器の定格運転中に連続的に流れる電流の許容値は,「定格電流」で表される。例えば,500 [kV] や 275 [kV] の送電線用遮断器では 2 [kA] から 8 [kA] である。

過負荷時の遮断器の電流容量は,直前の通過電流が定格電流以下であれば,短時間の過負荷は可能である。この際,遮断器の温度上昇の時定数は,油入変圧器に比べると小さく,直列機器として許容できる過負荷電流及び時間は,遮断器で決まるので,遮断器の定格電流は,油入変圧器などの過負荷運用の支障にならないように選定することが必要である。

② 系統事故時において,遮断器に流れる電流の許容値

系統の短絡や地絡事故時に流れる事故電流の許容値は,遮断器などの直列機器では「定格短時間耐電流」で表される。事故継続時間中,閉路している遮断器も含めて,直列機器は定格短時間耐電流に耐えなければならない。

定格短時間耐電流は,定格遮断電流と同じ値が標準として規定される。例えば,500 [kV] や 275 [kV] では,50 [kA],60 [kA] が多く採用されている。また,継続時間は,最終段保護による事故除去時間も考慮し,2 秒と規定している。

特に直接接地系では,地絡や短絡事故時には事故電流が大きく,変圧器巻線などへ大きな電磁力が発生することから,事故除去が遅れると過熱損傷の恐れがある。このため,保護・制御装置の信頼度向上を図り,遮断器による確実かつ早期の事故除去により,事故の局限化を図る必要がある。

(2) 事故電流の遮断現象:

近距離線路故障遮断(SLF : Short Line Fault)は,遮断器に近く,およそ数 [km] から 10 [km] くらいまでの範囲の距離で起こった線路事故(通常は 1 線地絡事故を対象)時の電流を遮断する現象である。

近距離線路故障電流遮断時には,電流遮断後の過渡回復電圧は端子短絡故障(BTF : Breaker Terminal Fault)に比べ低いが,開放状態にある遮断器線路側端子と地絡点との間の線路上で往復反射現象を起こすため,遮断器極間には電源電圧のほかに,この往復反射現象による三角波形の電圧が印加される。このようにして発生した過渡回復電圧の,特に初期の部分の立ち上がりが急峻であり,遮断器極間の絶縁回復速度との競合という面から見て,遮断条件は,非常に厳しいものとなる。

(3) 送電線事故時の系統安定度の向上:

準備中

問4 π 形等価回路による送電線模擬

図 1 に示すように,こう長 200 [km] の 500 [kV] 並行 2 回線送電線で,送電端から 100 [km] の地点に調相設備をもった中間開閉所がある送電系統を考える。送電線 1 回線のインダクタンスを 0.8 [mH/km],静電容量を 0.01 [μF/km] とし,送電線の抵抗分は無視できるとするとき,次の問に答えよ。なお,周波数は 50 [Hz] とし,単位法における基準容量は 1 000 [MVA·A],基準電圧は 500 [kV] とする。また,円周率は,π = 3.14 を用いよ。

図1 送電系統図
図1 送電系統図

(1) 送電線 1 回線 1 区間(100 [km])を π 形等価回路で,単位法で表した定数と併せて示せ。また,送電系統全体(負荷,調相設備を除く)の等価回路図を図 2 としたとき空白 A ~ E に当てはまる単位法で表した定数を示せ。ただし,全ての定数はそのインピーダンスで表すものとする。

図2 送電系統全体(負荷,調相設備を除く)の等価回路図
図2 送電系統全体(負荷,調相設備を除く)の等価回路図

(2) 受電端の負荷が有効電力 800 [MW],無効電力 600 [Mvar](遅れ)であるとし,送電端の電圧を 1.03 [p.u.] とする場合に必要な中間開閉所と受電端の調相設備の容量 [MV·A](基準電圧における皮相電力値)をそれぞれ求めよ。

(1) π 形等価回路で,単位法で表した定数

1 回線 100 [km] であるから,

L = 0.8 [mH/km] × 100 [km] = 80 [mH]
C = 0.01 [μF/km] × 100 [km] = 1 [μF]
C/2 = 0.5 [μF]

周波数は 50 [Hz] なので,ω = 2π × 50 = 314 [rad/s] となり,インピーダンスは,

XL = 314 × 80 / 1000 = 25.12 [Ω]
XC = 1/(314 × 0.5 × 10-6) = 6369.4267 [Ω] (片端分)

単位法における基準インピーダンスは,

\[ \frac{(500\times10^3)^2}{1000\times10^6}=250 \]

単位法表現では,

XL = 25.12 / 250 = 0.10048 [Ω]
XC = 6369.4267 / 250 = 25.4777068 [Ω] (片端分)

送電線 1 回線 1 区間(100 [km])当たりのπ 形等価回路は,下図の通り。

送電線 1 回線 1 区間(100 [km])当たりのπ 形等価回路
送電線 1 回線 1 区間(100 [km])当たりのπ 形等価回路

送電系統全体(負荷,調相設備を除く)では,

A = B = jXL/2 = j0.0502
C = E = -jXC/2 = -j12.7
D = -jXC/4 = -j6.37

(2) 必要な中間開閉所と受電端の調相設備の容量 [MV·A]

準備中

問5 電線のたるみ

図のように,平たんな地形 A-B 間を経過する電線支持点に高低差のない公称電圧 154 [kV] の架空送電線で,B 側鉄塔建替え工事のみで電線支持点を嵩上げして,点線で示すように電線線下のどの地点においても,「電気設備技術基準の解釈」で規定される電線との離隔距離を確保し,高さ 10.0 [m] の建造物が建築可能となるようにする場合,次の問に答えよ。

ただし,嵩上げ前後の電線の水平張力を変えないものとする。また,電線たるみの曲線は放物線で近似し,以下のとおり表せるものとする。

  1. 支持点嵩上げ前の電線水平たるみ D は \[ D=\frac{WS^2}{8T} \]
  2. 支持点嵩上げ後の,径間中央のたるみは D ,電線の最低地上高となる地点 O の A 点からの水平距離 SA は \[ S_\text{A}=\frac{S}{2}(1-\frac{h}{4D}) \]
S : 径間の長さ [m]
T : 電線の水平張力 [N]
W : 電線単位長さ当りの重量 [N/m]
D : 嵩上げ前の電線水平たるみ = 嵩上げ後の径間中央たるみ [m]
h : 電線支持点の嵩上げ量 [m]
  1. 電線の最低地上高となる地点 O での電線水平たるみ D0 を,径間中央たるみ D と電線支持点の嵩上げ量 h を用いて表せ。
  2. 嵩上げ前の電線支持点高さ H = 16.0 [m],電線水平たるみ D = 3.80 [m] とするとき,154 [kV] 架空送電線の電線と建造物との離隔距離 d が「電気設備技術基準の解釈」で規定される離隔距離 d0 = 4.80 [m] を確保する最低嵩上げ量 h0 [m] を求めよ。
  3. 154 [kV] 架空送電線と第 2 次接近状態に建築される建造物の主要な上部造営材(屋根等)に関して,危害防止のために「電気設備技術基準の解釈」で規定されている適合条件を述べよ。
電線のたるみ
電線のたるみ

準備中

問6 ループ系統と放射状系統

送電系統の構成は,ループ系統と放射状系統に大別される。それぞれの特徴を,(1) 安定度及び電圧安定性,(2) 信頼度,(3) 潮流運用,(4) 短絡電流の観点から対比して説明せよ。

(1) 安定度及び電圧安定性

ループ系統では,送電ルートが複数あるため,安定度,電圧安定性が高く,送電可能電力が大きい。

放射状系統では,送電ルートが一つしかないため,安定度,電圧安定性はループ系統ほど高くなく,送電可能能力も大きくない。

(2) 信頼度

ループ系統では,片方のルートが使えなくなっても,残りのルートで送電でき,信頼度が高い。しかし,保護システムが適切でなければ,事故が系統全体に波及し,広域停電に至る可能性がある。

放射状系統では,ルート断により下位系統への送電が完全にできなくなるので,ループ系統ほど信頼度は高くない。回線数を増やすことでルート断を防ぐ,あるいは,構成上はループ系統とし,常時運用は放射状系統で事故時に系統切換えを行うことで,信頼度低下を抑えることができる。事故が系統全体に波及することはない。

(3) 潮流運用

ループ系統では,ループ間の潮流を制御することが難しい。また,片方のループが使えなくなったとき,潮流分布が大きく変化する。

放射状系統では,潮流制御の必要がない。また,事故時を含み,潮流状況の把握が容易である。

(4) 短絡電流

ループ系統では,短絡電流が大きくなりやすく,上位定格の遮断器の採用,あるいは,高インピーダンス機器,限流リアクトルの採用,上位電圧,母線分割の採用による系統分割などの抑制策が必要となることがある。

放射状系統では,短絡電流はループ系統ほど大きくならない。

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