平成26年度 第一種 電気主任技術者二次試験 電力・管理

2022年11月6日更新

目次

  1. 火力発電所における燃料の燃焼
  2. 大容量 GIS の異常診断手法
  3. 1 線断線事故
  4. 事故波及防止リレーシステム
  5. 配電線損失電力を減らすためのコンデンサ接続
  6. 電磁障害の防止

問1 火力発電所における燃料の燃焼

火力発電所における燃料の燃焼に関して,次の問に答えよ。

なお,原子量は,水素(H)1,炭素(C)12,酸素(O)16,硫黄(S)32である。また,問題文中にある [Nm³] は,標準状態(0 °C,101 325 Pa)における気体の体積 [m³] を表す単位である。

  1. 炭素が完全燃焼すると二酸化炭素となるが,1 kg の炭素の完全燃焼に必要な酸素の質量 [kg] を求めよ。
    次に,水素 1 kg ,硫黄 1 kg の完全燃焼に必要な酸素の質量 [kg] をそれぞれ求めよ。
  2. 上記 (1) では完全燃焼に必要な酸素を質量で求めた。しかし多くの場合,気体の量は体積で示した方が便利である。そこで 1 kg の炭素の完全燃焼に必要な酸素の体積 [Nm³] を求めよ。
  3. 質量比で炭素 70 % ,水素 7.5 % ,硫黄 0.6 % ,酸素 8.5 % を含む石炭について,完全燃焼するために必要な単位質量当たりの理論空気量 [Nm³/kg] を求めよ。
    ただし,空気中には体積百分率で 21 % の酸素を含むものとし,かつ,上記以外の成分は燃焼とは関係ないものとする。

(1) 完全燃焼に必要な酸素の質量 [kg]

炭素が完全燃焼する反応式は C + O2 → CO2 である。これより炭素 1 kg が完全燃焼するのに必要な酸素は,

16 × 2 / 12 = 2.666 ≒ 2.67 [kg]

水素が完全燃焼する反応式は 2H2 + O2 → 2H2O である。これより水素 1 kg が完全燃焼するのに必要な酸素は,

16 / 2 = 8 [kg]

硫黄が完全燃焼する反応式は S + O2 → SO2 である。これより硫黄 1 kg が完全燃焼するのに必要な酸素は,

(16 × 2) / 32 = 1 [kg]

(2) 完全燃焼に必要な酸素の体積 [Nm³]

1 kmol の炭素が完全燃焼するには 1 kmol の酸素を必要とする。1 kmol の気体の体積は 22.4 Nm³ であることから,1 kg の炭素が完全燃焼するのに必要な酸素の体積は,

22.4 / 12 = 1.866 ≒ 1.87 [Nm³]

(3) 石炭を完全燃焼するために必要な理論空気量

1 kmol の水素が完全燃焼するには 0.5 kmol の酸素を必要とし,1 kmol の硫黄が完全燃焼するには 1 kmol の酸素を必要とする。また,燃料中に酸素も燃焼に寄与することに留意する。石炭を完全燃焼するために必要な理論空気量は,

1/0.21 × (22.4/12 × 0.70 + (22.4/2)/2 ×0.075 + 22.4/32 × 0.006 - 22.4/(16 × 2)) × 0.085 )
1/0.21 × (1.3067 + 0.42 + 0.0112 - 0.0595) = 7.9923 ≒ 7.99 [Nm³]

問2 大容量 GIS の異常診断手法

超高圧などの重要変電所に使用される大容量 GIS において,下記の異常を診断する手法について,その概要を説明せよ。

  1. GIS 母線の絶縁異常
  2. GIS 母線のシール異常
  3. GIS 母線及びSF6 ガス遮断器の通電異常
  4. SF6 ガス遮断器の機械的異常

(1) GIS 母線の絶縁異常

絶縁異常の兆候をとらえる主な診断技術は部分放電の検出である。部分放電に伴ってタンク内部に発生する各種現象を電気的(電磁波),機械的(AE:Acoustic Emission)に検出する方法が使われている。また,分解ガスを検出する化学的方法,UHF帯域の電磁波を検出することで部分放電を pC 感度で管理する方法も採用されている。

特に絶縁異常の主な要因である金属異物については,異物が交流電界内を振動中に,タンク表面に衝突して発生する音波や異物の存在により発生する部分放電を AE センサ(超音波センサ)や加速度センサにより検出する方法が使われている。

(2) GIS母線のシール異常

ガス配管,フランジ部などでシール異常があると,ガス漏れが生じ,ガス圧力低下に至る。ガス漏れに対する診断技術としては,ガス圧力の変化を測定する方法とタンクからのガス漏れがないことを直接的に検出する方法があり,それぞれガス圧力センサやガス密度スイッチを用いた測定,ガスリークディテクタによる検出が採用されている。

(3) GIS 母線及びSF6 ガス遮断器の通電異常

GIS母線の通電異常の要因として,主回路導体の接触不良がある。この接触不良を検出する診断技術としては,導体の接触抵抗を測定する方法,局部加熱に起因するタンク温度上昇を温度センサ,赤外線カメラで検出する方法,局部過熱により発生する SF6 分解ガスを測定する方法,また通電異常箇所から発生する部分放電を検出する方法などが採用されている。

SF6 ガス遮断器の通電異常においては,コンタクト損耗異常の検知がある。このコンタクト損耗異常の主な要因としては,大電流遮断時のコンタクト損耗がある。コンタクトの損耗は開閉特性(ワイプ量の測定など)を確認する方法があるが,電流遮断によるコンタクトの損耗は,一様に発生しないため,開閉特性では確認できない場合もあり,累積遮断回数により管理する場合もある。

(4) SF6 ガス遮断器の機械的異常

SF6 ガス遮断器の操作機構部の固渋や不動作の要因として,グリスの劣化や電装品の不具合などが挙げられる。

機械的異常の診断技術としては,開閉動作特性を測定し,動作特性不良を判定する方法がある。開閉動作特性を測定する方法としては,制御電流や補助スイッチの動作を測定する方式,機構部の動作速度をセンサにて検出する方式がある。また,油圧操作用油圧系統の異常を油圧ポンプの動作頻度で検出する方法などがある。

問3 1 線断線事故

準備中

問4 事故波及防止リレーシステム

電力系統では部分的事故が系統の異常現象(不安定現象を含む)によって拡大・波及し,大規模な停電となることを防止するために,事故波及防止リレーシステムが導入されている。この事故波及防止リレーシステムについて,次の問に答えよ。

  1. 事故波及防止リレーシステムが適用対象とする系統の異常現象(不安定現象を含む)のうち 3 種類を挙げよ。
  2. 上記 (1) で答えた 3 種類の異常現象に対し事故波及防止リレーシステムはそれぞれどのような動作をするか簡潔に述べよ。
  3. 事故波及防止リレーシステムにおいて制御量を決定する方式には,動作原理からみていくつかの方式が存在するが,どのような方式があるか簡潔に述べよ。

事故波及防止リレーシステムが適用対象とする系統の異常現象(不安定現象を含む)

  1. 系統周波数の異常
  2. 安定度の喪失
  3. 過負荷の連鎖
  4. 電圧不安定現象

事故波及防止リレーシステムの動作

系統周波数の異常

周波数の異常低下に対しては,揚水発電所が揚水している場合は揚水遮断し,次には必要量の負荷遮断を適切に行う。

安定度の喪失

該当する電源系統の発電制限,発電遮断などにより電力動揺を抑制する。

過負荷の連鎖

該当する系統の発電制限,発電遮断,負荷遮断などを適切に選択あるいは組み合わせて実施し,過負荷を抑制する。

電圧不安定現象

該当する負荷系統において調相設備の投入,負荷遮断を適切に行い電圧低下を抑制する。

事故波及防止リレーシステムにおいて制御量を決定する方式

  1. 系統擾乱に発展し得る事故を想定して,事前情報からあらかじめ制御量を設定しておく事前演算方式
  2. 事故中及び事故後の情報をもとに演算を行い,制御量を決定する事後演算方式
  3. 特に演算を伴わない設備事故除去リレーと同様な構成のリレー形の方式

問5 配電線損失電力を減らすためのコンデンサ接続

図に示すように,こう長 6 km ,電圧 6.6 kV の三相 3 線式配電線があり,需要家の分散型電源が平等かつ連続的に分布して電力を供給しているものとする。この配電線の 1 地点にコンデンサを接続して,配電線損失電力を減らすことを考える。このとき,次の問に答えよ。ただし,分散型電源は,電流密度が 30 A/km,分散型電源側からみて進み力率 95 % の定電流源とする。また,配電線各地点の電圧位相の差は無視できるものとする。

  1. 変電所より 4 km の地点にコンデンサを接続する。接続前後における抵抗損による配電線損失電力をそれぞれ L1L2 とするとき, L1 - L2 = L [kW] を求めよ。ただし,コンデンサは電流 IC [A] の定電流源,配電線の抵抗は 1 相当たり r [Ω/km] とする。
  2. 上記 (1) のL を最大とするコンデンサ容量 QC [kvar] を求めよ。ただし,コンデンサの接続点における配電線電圧は 6.6 kVとする。
配電線損失電力を減らすためのコンデンサ接続
30 A/km

準備中

問6 電磁障害の防止

近年における電気電子技術の急速な進歩に伴い,電磁障害の防止は,現代の電気施設管理にとって重要なテーマである。

電磁障害を防止するためには,電磁ノイズを発生及び被害の両面から考えていく必要がある。次の問に答えよ。

  1. 次の表は,電気の品質に関係が深い 4 種類の電磁ノイズについてまとめたものである。表中の A , B , C , D 及び E の記号を付した空欄に当てはまる最も適切な語句又は文章を答えよ。
  2. 電磁両立性(EMC:Electromagnetic Compatibility)とは何かを説明せよ。
電磁障害の防止
ノイズの種類 意味 主な発生要因 主な被害機器
A 数サイクルから数秒の短時間で回復するような,電力系統のある 1 点における突然の電圧低下
電圧の低下は,その点を含む電力系統の周辺に及ぶ
B コンピュータ
汎用インバータ
電磁接触器
高圧放電灯
高調波電流 基本波周波数成分以外の周波数成分の電流 パワーエレクトロニクス適用機器など,非線形特性をもつ機器 C
フリッカ 光度又はスペクトル分布が時間とともに変動する光の刺激によって誘起される視覚上の不安定さに対する印象 D 白熱灯
蛍光灯
E 三相系統において,相電圧の実効値又は隣り合う相間の位相角が全て等しいという訳ではない状態 大容量相負荷のアンバランス 同期発電機
誘導電動機

空欄に当てはまる語句又は文章

A:瞬時電圧低下(瞬低,電圧ディップも可)

B:架空送配電線等の地絡,短絡事故

C:進相コンデンサ装置

D:アーク炉

E:電圧不平衡

電磁両立性(EMC:Electromagnetic Compatibility)

装置又はシステムの存在する環境において,許容できないような電磁妨害をいかなるものに対しても与えず,かつ,その電磁環境において満足に機能するための装置又はシステムの能力。

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