平成27年度 第一種 電気主任技術者二次試験 電力・管理

2022年11月6日更新

目次

  1. モデル水車と相似な水車
  2. 電力流通設備の絶縁協調
  3. 電力系統の変圧器タップ動作による電圧不安定現象
  4. 高調波やフリッカ現象の対策
  5. 保護リレー
  6. 同期発電機 2 台が並列運転可能な電力系統

問1 モデル水車と相似な水車

ランナの直径 D1 が 0.4 m のフランシス水車で,有効落差 H1 が 1 m のとき,水車出力 P1 が 1 kW,使用水量 Q1 が 0.121 m³/s,回転数 N1 が 149.5 rpm のモデル水車(以下水車 A と呼ぶ。)がある。

この水車と相似な水車(以下水車 B と呼ぶ。)を有効落差 H2 が 121 m ,使用水量 Q2 が 10 m³/s の条件の場所に設置したい。次の問に答えよ。

ただし,水車効率 η [%] は水車 A ,水車 B で同一とし,水車 B のランナ直径を D2 [m] , 相似比を kk = D2 / D1)とする。また,重力加速度 g は 9.8 m/s² ,水の密度 ρ は 1 000 kg/m³ とする。

  1. 水車 B の出力 P2 [kW] を求めよ。
  2. 水車 B の使用水量 Q2 [m³/s] を Q1H1H2 及び k を用いて表せ。
  3. 水車 B の出力 P2 [kW] を P1H1H2 及び k を用いて表せ。
  4. 水車 B のランナ直径 D2 [m] を求めよ。
  5. 水車 B の回転数 N2 [rpm] を N1H1H2P1 及び P2 を用いて表し,その値を求めよ。

準備中

問2 電力流通設備の絶縁協調

電力流通設備の絶縁協調について,次の問に答えよ。

  1. 絶縁協調の考え方を説明せよ。
  2. 雷過電圧を例にとり,500 kV 送変電設備の絶縁協調を送電設備と変電設備に分けて説明せよ。
    1. 送電設備
    2. 変電設備
  3. 雷過電圧を例にとり,配電設備と送変電設備との絶縁協調の違いについて説明せよ。

(1) 絶縁協調の考え方

電力系統各部の機器,設備の絶縁の強さに関して,技術上,経済上並びに運用上からみて最も合理的な状態になるように協調を図ることをいう。

(2) a. 500 kV 送電設備の絶縁協調

送電線の耐雷設計として,最も一般的に行われているのは,電力線に直撃雷が侵入しないように送電線を遮へいする架空地線の布設である。

架空地線を布設しても,雷撃電流の波高値が小さい雷では,(架空地線の吸引力が弱いため)遮へい失敗し,電力線へ直接侵入することがある。このとき発生する過電圧が大きいとアークホーンでフラッシオーバする(正フラッシオーバ)。また,架空地線や鉄塔へ雷撃があった場合,雷撃電流が大きいと,鉄塔電位が上昇し,アークホーンで逆フラッシオーバが発生し,電力線に雷が侵入する。

雷によるフラッシオーバに伴う送電線事故は再送電が可能なことが多いため,ある程度の事故(フラッシオーバ)率は許容して,送電設備の小型化を図り,建設コストの上昇を抑えている。500 kV 送電線では,架空地線を一般的に 2 条布設し,架空地線を電力線より外側に布設し負の遮へい角とし,下位電圧よりフラッシオーバを減らし,送電線事故を減少させている。

遮へい失敗や逆フラッシオーバにより電力線に侵入した雷撃電流は,アークホーンにより制限されるものの,電力線を伝搬して変電所に侵入する。

(2) b. 500 kV 変電設備の絶縁協調

変電所の耐雷設計では,変電所近傍の鉄塔への落雷による逆フラッシオーバによる近接雷と,電力線を伝搬してくる遠方雷を考慮する。これらの雷過電圧に耐える絶縁強度を機器(変圧器や開閉器)にもたせることは経済的ではないため,変電所内に避雷器を設置し,最適位置に配置することにより雷過電圧を抑制し,効果的な絶縁協調を図っている。

避雷器の設置により,過電圧抑制のための機器代は増加するものの,過電圧を確実に抑制できるため,雷インパルス耐電圧( LIWV : Lightning Impulse Withstand Voltage )を低減した変圧器や開閉器が採用できる。主要機器代が減少し,技術上,経済上並びに運用面から合理的な設計にすることができる。

(3) 配電設備と送変電設備との絶縁協調の違い

配電設備は送電設備と異なり,絶縁レベルが相対的に低い。また,機器が分散配置されていることから,雷事故を軽減するためには耐雷対策に十分配慮する必要がある。

配電設備で雷過電圧が発生する要因は,配電線への直撃雷と,近隣の落雷により発生する強い電磁界による誘導雷の 2 種類がある。誘導雷の発生電圧は数百キロボルト程度にとどまり,送電線では脅威にならない。

配電設備の耐雷対策としては,架空地線で電力線と機器とを遮へいする方法と,侵入した雷による過電圧抑制や機器保護のため避雷器やアークホーンを用いる方法がある。開閉器や変圧器は,避雷器を内蔵したり,近傍に設置して保護している。線路も保護範囲を考慮して避雷器を適切に設置したり,電線や碍子の雷による被害を防止するために,アークホーンを設置して保護している。

問3 電力系統の変圧器タップ動作による電圧不安定現象

準備中

問4 高調波やフリッカ現象の対策

配電系統の電力品質や需要家に影響の与える恐れのある高調波やフリッカ現象の対策について,次の問に答えよ。

  1. 需要家に設置される進相コンデンサは,JIS C 4902 で直列リアクトルとともに使用することが標準として規定されている。直列リアクトルを設置する理由を二つ説明せよ。
  2. 高調波対策設備の一つである LC フィルタについて高調波抑制の原理を説明するとともに,設置に当たり留意すべき点について二つ記載せよ。
  3. フリッカの対策法について三つ記載せよ。

(1) 直列リアクトル(Series reactors)を設置する理由

  • 回路電圧の波形のひずみを軽減する
  • コンデンサ投入時の突入電流を抑制する

(2)-1 LC フィルタの原理

LC フィルタは,コンデンサ,リアクトルといった受動素子を組み合わせて,特定の周波数又は周波数領域で低インピーダンスとなる分路を構成し,高調波を抑制する。

(2)-2 LC フィルタ設置に当たり留意すべき点

  • 高調波発生機器停止時は,進み力率を避けるため,LC フィルタを開放することが望ましい。
  • LC フィルタは,発生する高調波次数に対応した分路を組み合わせるため,分路の次数や低次側に電力系統インピーダンスとの共振点が現れる。共振している次数の高調波が存在すると,その高調波電流が増加して変換装置が運転不可能になるため留意する。
  • LC フィルタは,進相コンデンサに比べて高調波電流の流入が多いため,遮断後の回復電圧が大きくなる。このため,遮断直後の過渡回復電圧抑制用サージアブソーバの設置や 1 ランク上の定格電圧の遮断器を採用する必要がある。
  • LC フィルタは電力系統内で第 n 次高調波に対して短絡回路を形成するため,電流耐量に留意する。
  • 励磁突入電流の引き込みが大きい場合には,耐量向上又は運用上の対策が必要となる。
  • 同調フィルタの並設時は,それぞれの LC フィルタの同調点をずらして,フィルタインピーダンスを大きくする。

(3) フリッカ対策

需要家側の対策

  • 静止形無効電力補償装置(SVC,SVG)等を施設する。
  • アーク電流が不安定な交流アーク炉ではなく,安定した電流が得られる直流アーク炉を採用する。
  • 一次側に直列過飽和リアクトルを接続する。

供給側の対策

  • 変動負荷を専用線あるいは専用変圧器により供給する。
  • 高圧配電線の昇圧,電線の太線化など電源側インピーダンスの低減を図る。

参考文献

  • JIS C 4902-1:2010「高圧及び特別高圧進相コンデンサ並びに附属機器 - 第1部:コンデンサ(High voltage power capacitors and attached apparatus-Part 1: Capacitors)」
  • JIS C 4902-2:2010「高圧及び特別高圧進相コンデンサ並びに附属機器 - 第2部:直列リアクトル(High voltage power capacitors and attached apparatus-Part 2: Series reactors)」
  • JIS C 4902-3:2010「高圧及び特別高圧進相コンデンサ並びに附属機器 - 第3部:放電コイル(High voltage power capacitors and attached apparatus-Part 3: Discharge coils)」

問5 保護リレー

電力設備における事故などの異常状態を検出し,その部分を系統から切り離すよう指令を出す保護リレーに関して,次の問に答えよ。

  1. 以下に示す具備すべき条件の中から三つを選び説明せよ。
    1. 選択性
    2. 信頼性
    3. 動作感度
    4. 動作速度
  2. 主保護,後備保護について説明せよ。また,超高圧基幹系送電線の主保護リレーにおける信頼性向上のための設置上の配慮事項を説明せよ。

(1) 保護リレーの具備すべき条件

a. 選択性

保護対象区間の事故などの異常状態だけを識別し,必要最小限の範囲の遮断で事故区間を停止して,その他の設備を不必要に遮断させない能力を有すること。

b. 信頼性

誤動作・誤不動作は許されず,正動作・正不動作が要求されること。無保護区間がないようにし,また保護区間外事故で誤動作することのないように保護協調をとる。具体的には複数のリレーの組み合わせ,二重化,後備保護の設置などがある。

c. 動作感度

系統構成,需要などの運転状況,事故様相などによって変化する事故電流,電圧の大小によって,保護性能に影響を受けないような動作感度を確保できること。

d. 動作速度

電力系統の安定度維持,機器破損の回避及び事故拡大防止に必要な高速動作が可能なこと。

(2)-1 主保護,後備保護について

主保護とは,ある事故に対して,最初に動作することが求められている第一の保護で,事故区間だけを選択遮断する事を目的としている。

何らかの原因で,主保護動作に失敗した場合に備えて,第二,第三の保護,すなわち後備保護が設置されている。後備保護は主保護による保護が行われないと判断してから保護するため,一般的に遮断時間が遅くなり,また,広範な遮断となる。

(2)-2 超高圧基幹系送電線の主保護リレーにおける信頼性向上

重要度の高い基幹系送電線においては,主保護を 2 組設置し,いずれかのリレーでも遮断器を動作できるようにしている。この 2 組のリレーは,一般的には同じリレーとすることが多い。また,遮断器のトリップ回路も 2 系統にしている。これらにより,送電線事故除去に対し,保護信頼度の向上を図っている。

問6 同期発電機 2 台が並列運転可能な電力系統

定格出力 200 MW ,定格周波数 50 Hz ,速度調定率 4.0 % の同期発電機 A と定格出力 100 MW ,定格周波数 50 Hz ,速度調定率 3.0 % の同期発電機 B とが並列運転可能な電力系統がある。次の問に答えよ。ただし,調速機(ガバナ)の特性は線形であるとし,負荷の周波数特性は無視する。

  1. 発電機 A のみの運転によって,系統周波数が 50 Hz に保たれているとする。系統負荷が 10 MW 減少したときの,系統周波数の変化を求めよ。
  2. 発電機 A と発電機 B との並列運転によって,系統周波数が 50 Hz に保たれているとする。系統負荷が 10 MW 減少したときの,系統周波数の変化を求めよ。
  3. 発電機 A と発電機 B とが並列運転を行っており,系統周波数が 49.9 Hz に保たれているとする。このときの系統負荷の大きさは 250 MW であり,出力分担は発電機 A が 150 MW ,発電機 B が 100 MW であった。系統負荷が 200 MW に減少したときの,系統周波数,発電機 A の出力 [MW] ,及び発電機 B の出力 [MW] を求めよ。

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