平成30年度 第一種 電気主任技術者二次試験 電力・管理

2019年9月21日作成,2022年11月6日更新

目次

  1. 化石燃料を使用する現用の汽力発電方式
  2. 事故波及防止リレーシステム
  3. コンデンサ形計器用変圧器(CVT)
  4. 簡易法による潮流計算
  5. 特別高圧需要家
  6. 電気事業法に規定する使用前自主検査

問1 化石燃料を使用する現用の汽力発電方式

化石燃料を使用する現用の汽力発電方式で,蒸気タービンとボイラの効率に影響する運転時の管理項目を「蒸気温度・蒸気圧力」以外に三つ挙げ,どのように制御すれば効率を高めることができるか,損失の増加や設備への影響などを問題点と併せて説明せよ。

問1 解答と解説

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ボイラ排ガス中の酸素濃度(=過剰空気率)

過剰空気率が適正であるときは燃料が完全燃焼するため効率が高まる。大きすぎるとボイラ内の燃焼温度が下がり,排ガス損失が増加する。小さすぎると不完全燃焼となり未燃損失が増加する。

空気予熱器出口排ガス温度(=排ガス温度)

空気予熱器で燃焼用空気を予熱すれば炉内温度が高くなり,燃料の蒸発量,燃焼速度が増加するため,燃焼が完全燃焼し効率が高まるとともに,排ガスの熱を利用して空気を過熱することで効率は上昇する。また,排ガスの熱を利用し,節炭器で給水を加熱すると効率を向上することができる。排ガス温度が高くなると排出エネルギーが増加し,低すぎると空気予熱器や節炭器の低温部腐食が多くなる。

復水器真空度(=真空度)

復水器の真空度を増加させればタービン出口蒸気の排気圧が低くなり排出エネルギーが小さくなるため,タービンの熱落差を増加させることとなり,効率は向上する。真空度を高めれば効率は上昇するが,復水が過剰に冷却されるため,効率は低下する。他にも真空度が高いことによるタービン振動の増加も懸念される。

問2 事故波及防止リレーシステム

電力系統に発生した事故を事故除去リレーの働きによって高速で除去することで,通常は事故点を含む最小限の範囲の設備が停止することとなるが,系統及び事故の様相によっては,系統全体に事故の影響が波及拡大し,広範囲な停電を起こす場合があることから,事故波及防止リレーシステムが導入されている。事故によって次の 1. から 3. の事象が発生した場合に,どのような事故波及が発生する可能性があるのか,また,その事故波及を防止するために,事故波及防止リレーシステムによってどのような制御を行うかについて,1. から 3. のそれぞれに対し,100 ~ 300 文字程度で簡潔に述べよ。

  1. 送電線等の過負荷
  2. 周波数低下
  3. 発電機の脱調

問2 解答と解説

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1. 送電線等の過負荷

事故により送電線や変圧器が停止し,他の健全設備の過負荷が発生した場合,過負荷になった設備の損壊等による事故の発生,又は,損壊等を回避するための設備停止によって,大規模な停電に至る可能性がある。また,ループ状やメッシュ状の系統では,過負荷になった設備の停止により,他の設備が過負荷となり,次々と設備停止を余儀なくされる可能性もある。

このような事故波及を防止するため,発電機出力又は負荷の抑制や遮断によって,送電線や変圧器を通過する電流を抑制する。

2. 周波数低下

系統事故(及びその波及)により大量の電源が脱落し,大幅な需給アンバランスが生じた場合には,通常の制御では対処できない急激かつ大幅な周波数低下が発生し,これが発電プラントの安定運転限界を超過すると,連鎖的な発電機の脱落に繋がる可能性がある。

このような事故波及を防止するため,一部の負荷を遮断することで周波数の維持を図る。さらに,この対策によっても周波数の回復が困難で周波数低下状態が継続する場合には,連系系統を分離したり,適当な近傍負荷を有する局地火力系統を分離して単独系統として安定運転を維持させたりするなどにより,事故の影響による停電等が電力系統全体に及ぶことを回避する対策も採用されている。

3. 発電機の脱調

事故除去の遅延や失敗によって発電機が脱調に至った場合,脱調の電気的中心付近の電圧が大きく低下することから,これを放置すると,他の発電機の電気出力の低下により次なる脱調が起こるという連鎖的な脱調現象が発生する可能性がある。

このような事故波及を防止するため,発電機の脱調が予測される場合に一部の電源の遮断を行って脱調現象の発生を防止する,又は,発電機の脱調が発生した後にこれを速やかに検出して脱調の電気的中心の両端で系統を分離することでそれ以上の進展を防止するといった制御を行う。

問3 コンデンサ形計器用変圧器(CVT)

コンデンサ形計器用変圧器(CVT)に関して,次の問に答えよ。

  1. 図は CVT の基本回路である。端子 a-b から左側の部分を一つの電圧源と一つのコンデンサを用いて等価回路に書き直すとどうなるか,端子 a-b から右側の部分を接続した形で具体的に描け。
  2. 図において,二次負担 $z$ の如何にかかわらず常にコンデンサ $C_1$ と $C_2$ の静電容量の逆比で系統電圧が分圧されて補助 VT(図の Tr)に入力されるための条件を,1. で得た等価回路に基づいて導出せよ。ただし,系統周波数を $f$ とする。
  3. 簡単のため,以下では二次負担 $z$ は非接続,補助 VT(図の Tr)の励磁インダクタンスを $L_\text{m}$ とし,漏れインダクタンスは無視する。1. で得た等価回路の $L$ と Tr を一つのインダクタンスにまとめた等価回路に書き直せ。
  4. 無電圧から時刻 $t=0$ にて急に系統電圧 $v(t) = V \sin{\omega t}$($\omega = 2 \pi f$)が図のように印加されたときの過渡応答を考えたい。1. で得た等価回路のコンデンサ電圧 $v_\text{c}(t)$ について微分方程式を書け。
  5. $L$ の初期電流とコンデンサの初期電荷はなく,補助 VT と $L$ は線形範囲で動作するものとして 4. で得た微分方程式を解いて $v_\text{c}(t)$ を時刻 $t$ の関数の式として示せ。(ヒント:線形微分方程式の解は,その定常解に,右辺(強制入力)が零の場合の解(過渡解)を加えた形で表せる。)
  6. 実際には磁気的非線形性のため鉄共振が発生し,等価コンデンサ電圧 $v_\text{c}(t)$ に低周波数の電圧成分が生じる場合がある。小問 1. と 5. の結果と飽和時に $L_\text{m}$ が低下することを用いて,大きな低周波数電圧成分が Tr 二次側に生じる理由を定性的に説明せよ。
図 CVT 基本回路
図 CVT 基本回路

問3 解答と解説

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準備中

コンデンサ形計器用変圧器(CVT : Capacitor Voltage Transformer)は,図 CVT 基本回路に示すように静電容量 $C_1$ および $C_2$ による容量分圧の原理を用いたものである。

問4 簡易法による潮流計算

簡易法による潮流計算に関して,次の問に答えよ。

図において,A 母線の電圧位相を $\theta_\text{A}$,A 母線に接続される発電出力を $G_\text{A}$,負荷を $L_\text{A}$ とする。ここで,A 母線への正味注入電力を $P_\text{A} = G_\text{A} - L_\text{A}$ とし,B,C 母線でも同様の表記とする。また,各相電線の潮流 $P_1$,$P_2$,$P_3$ は図の向きを正とし,送電線では図の $x_1$,$x_2$,$x_3$ のリアクタンスのみを考慮する。発電出力,負荷,潮流は有効電力のみを考慮し,数値はリアクタンスも含め単位法での値とする。ただし,位相の単位は [rad] である。

各母線の電圧は 1,電圧の位相差は小さいとする。この場合,送電線を流れる有効電力の近似式は,例えば $P_1$ は ① 式で表される。これを簡易法による潮流計算と称する。

\[ P_1 = \frac{\theta_\text{A} - \theta_\text{B}}{x_1} \]
・・・・・①

以下の小問 1.,及び,簡易法による潮流計算を用いて小問 2. ~ 4. に答えよ。

  1. $x_1 = 0.1$ $\displaystyle \theta_\text{A} - \theta_\text{B} = \frac{\pi}{12}$,各母線の電圧は 1 とする。① 式による $P_1$ の近似式と ① 式の近似を用いない場合の $P_1$ の真値を求めよ。ただし,$\pi = 3.1416$ を用い,$\displaystyle \sin^2 \theta = \frac{1 - \cos{2\theta}}{2}$ の関係式を用いてよい。
  2. $theta_\text{B}$ を基準($\theta_\text{B} = 0$)とし,$P_\text{A}$ と $P_\text{C}$ を,$\theta_\text{A}$,$\theta_\text{C}$ 及び $x_1$,$x_2$,$x_3$ で表せ。
  3. $x_1 = 0.05$,$x_2 = 0.02$,$x_3 = 0.03$ の場合の,$\theta_\text{A}$,$\theta_\text{C}$ 及び $P_1$,$P_2$,$P_3$ を求めよ。ただし,$theta_\text{B}$ を基準($\theta_\text{B} = 0$)とする。また,$G_\text{A}=20$,$G_\text{B}=30$,$G_\text{C}=14$,$L_\text{A}=10$,$L_\text{B}=46$,$L_\text{C}=8$ である。
  4. $P_1 = 6$ とするように,発電出力 $G_\text{A}$ と $G_\text{B}$ を調整する。$G_\text{A}$ と $G_\text{B}$ を求めよ。ただし,$G_\text{A}$ と $G_\text{B}$ 以外の条件は小問 3. と同じとする。
簡易法による潮流計算
簡易法による潮流計算

問4 解答と解説

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準備中

問5 特別高圧需要家

図 1 のように,電気事業者の変電所から 66 kV 架空送電線 2 回線を併用して受電する特別高圧需要家がある。送電線には,回線ごとに再閉路システムが備えられているとする。需要家に至るまでの送変電系統は,理想的であるとして,変圧器上位系統の背後インピーダンス及び抵抗損失を無視するものとする。次の問に答えよ。ただし,$Z_0$ は変圧器の漏れインピーダンス,$Z_1$ および $Z_2$ は各送電線の正相インピーダンスである。

  1. 電力系統に発生する事故によって,需要家は,瞬時電圧低下を経験する可能性がある。瞬時電圧低下とは,どのような現象であるのかを説明せよ。
  2. 需要家の負荷は定インピーダンス特性とし,負荷容量は,受電電圧が 60 kV のときに 48 000 kV·A であるとする。力率が遅れ 0.8 のとき,負荷の正相インピーダンスの抵抗分とリアクタンス分は,それぞれ何オームか。
  3. 需要家は,送電線 2 回線を併用して受電しているとする。変電所の上位系統電圧が 154 kV で,負荷の正相インピーダンスが 80 + j60 Ω であるとき,需要家の受電電圧の大きさは,何ボルトになるか。
  4. 3. の状態で受電しているときに,1 号線のちょうど中間の地点で,三相短絡事故が発生した(図 2)。この事故が除去されるまでの間,需要家の受電電圧の大きさは,何ボルトになるか。
図 1
図 1
図 2
図 2

問5 解答と解説

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1. 瞬時電圧低下

瞬時電圧低下とは,落雷などにより電力系統に事故が発生すると,事故点を中心に電圧が低下し事故点を電力系統から切り離すまでの短い時間,電圧低下が継続することをいう。需要家にとっては,系統電圧が突然低下した後に短時間で復帰する現象で,コンピュータシステムや自動化が進んだ生産設備の停止等,様々な障害のきっかけとなる。

2. 負荷の正相インピーダンスの抵抗分とリアクタンス分

3. 需要家の受電電圧の大きさ(正常時)

4. 需要家の受電電圧の大きさ(三相短絡事故発生時)

問6 電気事業法に規定する使用前自主検査

三相変圧器(定格電圧:一次 275 kV / 二次 77 kV,結線方式:Yd1(一次星形,二次三角で 30 ° 遅れ),一次中性点:直接接地)を含む変電所を設置したときに実施する電気事業法に規定する使用前自主検査に関して,次の問に答えよ。

(1) 図 1 は,接地線がメッシュ状に埋設してある変電所の接地抵抗を求める交流電圧降下法による測定回路である。電流を流さないときの高入力インピーダンス電圧計の読み $V_0$ が 1.10 V,電流 $I$ を 20.0 A 流したときの読み $V_\text{S1}$ が 4.00 V,極性を反転して $-I$ を 20.0 A 流したときの読み $V_\text{S2}$ が 5.20 V であったとき,電圧回路に対する誘起電圧の影響及び接地電流その他による大地浮遊電位の影響による誤差を除いた接地抵抗値を図 2 のベクトル図を参考に求めよ。ただし,接地抵抗値は電流の極性で変わらないものとし,周囲の送配電線は停止しているものとする。

(2) 電気設備技術基準への適合性を電気設備技術基準の解釈の規定に基づき確認する場合について,以下の問に答えよ。

  1. 電気所の周囲にさくを設ける場合,構内に取扱者以外の者が立ち入らないように出入口に講じるべき措置を二つ説明せよ。
  2. 図 3 は,変圧器二次側 v 相に電圧を印加して変圧器一次側 V 相の絶縁性能を確認する試験回路である。ただし,変圧器は理想的であり,損失等は無視できるものとし,試験時のタップは 300 kV / 77 kV として,一次側中性点の接地線は切り離されているものとする。
    1. このとき,一次側 V 相の対地電圧は,二次側 v 相に印加する対地電圧の何倍になるか求めよ。
    2. 変圧器一次側の使用電圧を公称電圧と同じ 275 kV とするとき,二次側 v 相に印加すべき試験電圧値を求めよ。
  3. 変圧器の電路の絶縁性能を確認する方法は,上記 b のように現地での試験電圧を印加して確認する方法以外に,変圧器の輸送,現地組立作業の品質管理が確実にできていることを前提に,絶縁耐力を確認する方法がある。この確認方法について重要な要件を二つ説明せよ。
図 1 交流電圧降下法による変電所の接地抵抗測定回路
図 1 交流電圧降下法による変電所の接地抵抗測定回路
図 2 ベクトル図
図 2 ベクトル図
図 3 変圧器一次側 V 相の絶縁性能確認試験回路(変圧器二次側 v 相に電圧を印加)
図 3 変圧器一次側 V 相の絶縁性能確認試験回路(変圧器二次側 v 相に電圧を印加)

問6 解答と解説

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1. 接地抵抗値

2-a. 講じるべき措置

立入禁止等危険である旨を表示すること及び施錠装置を施設して施錠する等,取扱者以外の者の出入りを制限する措置を講じることである。


2-b-1. 

2-b-2. 

3. 重要な要件

当該変圧器が,規格に定める交流耐電圧試験を工場において実施し,絶縁性能が確認されていること。

もう一つは,現地で変圧器に常規対地電圧を絶縁性能に影響がないことが確認できる一定時間(10 分間)印加すること。

電気設備の技術基準の解釈 第16条 機械器具等の電路の絶縁性能(抄)

変圧器の電路は,次の各号のいずれかに適合する絶縁性能を有すること。

  1. 16-1 表中欄に記載する試験電圧を,同表右欄に規定する試験方法で加えたとき,これに耐える性能を有すること。
  2. 日本電気技術規格委員会規格 JESC E7001 (2010) 「電路の絶縁耐力の確認方法」の「3.2 変圧器の電路の絶縁耐力の確認方法」により絶縁耐力を確認したものであること。
JESC E7001 (2010) 「電路の絶縁耐力の確認方法」 3.2 変圧器の電路の絶縁耐力の確認方法

変圧器の電路で,3-2-1 表に定める規格の耐電圧試験による絶縁耐力を有していることを確認したものである場合において,常規対地電圧を電路と大地との間に連続して 10 分間加えて確認したときにこれに耐えること。

3-2-1 表
種類 絶縁耐力関係の規格 耐電圧試験名称
変圧器 「変圧器」電気学会 電気規格調査会標準規格 JEC-2200 交流耐電圧試験
「配電用 6 kV 油入変圧器」日本工業規格 JIS C 4304 加圧耐電圧試験
「配電用 6 kV モールド変圧器」日本工業規格 JIS C 4306 加圧耐電圧試験
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