平成21年度 第二種 電気主任技術者二次試験 電力・管理
目次
問1 水車の案内羽根開度及び効率
水車の案内羽根開度及び効率を一定とした場合に,次の問に答えよ。
-
水車の出力 $P$ [kW] は有効落差 $H$ の関数として表されるが,その関係を次に示す諸量を表す記号を用いて表せ。
水車の効率を $\eta$ [%],水圧管の断面積を $A$ [m2],重力加速度を $g$ [m/s2],管路損失等による流速の低下を考慮した流速係数を $k$ として用いること。 - 1. を用いて,有効落差 100 [m],最大出力 8 000 [kW] の水車発電所が水位変化によって有効落差が 81 [m] に低下したときの最大出力を求めよ。
流速の速度 $v$ [m/s] は,次式で表せる。
\[ v=k\sqrt{2gH} \]水車の流量 $Q$ [m3/s] は,次式で表せる。
\[ Q=Av=Ak\sqrt{2gH} \]よって,水車の出力 $P$は,次式となる。
\[ P=gQH\frac{\eta}{100}=\sqrt{2}Ak\frac{\eta}{100}(gH)^{\frac{3}{2}} \]水位変化前後の有効落差,最大出力を $H_1$,$P_1$ 及び $H_2$,$P_2$ とすれば,次式となる。
\[ \frac{P_{1}}{P_{2}}=(\frac{H_{1}}{H_{2}})^{\frac{3}{2}} \]よって,$P_2$ [kW] は次式で求められ,最大出力は 5 830 [kW] である。
\[ P_{2}=P_{1}(\frac{H_{2}}{H_{1}})^{\frac{3}{2}}=8000(\frac{81}{100})^{\frac{3}{2}}=5 832 \]問2 三相 3 線式配電線路
図に示す 6 600 [V],50 [Hz] の三相 3 線式配電線路において,変電所の A 点の電圧を 6 600 [V],B 点の需要家負荷を 100 [A](遅れ力率 0.8),また,線路末端の C 点の需要家負荷を 100 [A](遅れ力率 0.8)とする。AB 間の長さを 2 [km],BC 間の長さを 4 [km] とし,線路のインピーダンスは 1 [km] 当たりの抵抗を 0.4 [Ω],リアクタンスを 0.3 [Ω] とする。次の問に答えよ。

- B 点,C 点の線間電圧をそれぞれ求めよ。
- C 点に進相コンデンサを設置して,進相電流 60 [A] を流して補償したとき,B 点及び C 点の線間電圧を求めよ。
- 進相コンデンサ設置前後の配電線路の損失を計算し,比較せよ。
問3 変電所の接地設計
変電所の接地設計を行う場合,設計基礎データとして建設予定地の面積,土壌固有抵抗と予想最大接地電流が明確にされると,それに伴って具体的に設計を進めることができる。具体的な接地設計に関する次の問に答えよ。
(1) 所要接地抵抗 $R$ [Ω] を決定するに当たり,人体の安全を第一義に考えて,最大接地電流 $I_E$ [A] における接地電位の上昇値を,人体が機器ケース等に触れたときに人体に加わる接触電圧の許容値の $\alpha$ 倍以下に収めることとする。
人体に対する電流の許容値 $I_k$ [A] と故障継続時間 $t$ [s] の間に,
\[ I_{k}\frac{0.116}{\sqrt{t}} \text{ [A]} \]の関係式が成立し,人体の抵抗値 $R_k$ が 1 000 [Ω],片足の接地抵抗 $R_F$ が地表面付近の土壌固有抵抗 $\rho_s$ [Ω・m] を用いて $3\rho_s$ [Ω] で与えられるとき,所要接地抵抗 $R$ が満たすべき条件式を $\rho_s$ ,$I_E$,$t$,$\alpha$ を用いて表せ。
(2) 変電所の敷地内に敷砂利を施設する効果について,接地抵抗の観点から定性的に説明せよ。
(1) 所要接地抵抗 $R$ が満たすべき条件式
(2) 変電所敷地内に敷砂利を施設する効果
地表面に固有抵抗が高い敷砂利の層を設け,人体の足と大地間の接地抵抗を増加させることにより,人体に加わる歩幅電圧,接触電圧の許容値を上げることができる。
問4 中・小規模の電力貯蔵装置
電力系統の負荷平準化のため,以前より揚水発電が用いられている。近年では負荷平準化だけでなく,電力品質の向上や自然エネルギー発電の変動吸収等を目的として,中・小規模の電力貯蔵装置が注目されている。これらの中・小規模電力貯蔵装置について,貯蔵原理別(貯蔵時のエネルギー形態の種類別)に 3 種類をとりあげ,その ① 動作原理, ② 特徴(貯蔵エネルギー密度,貯蔵エネルギー量など)について述べよ。
電池電力貯蔵
動作原理
交流電力エネルギーを直流に変換して,化学エネルギーとして貯蔵する。蓄えられたエネルギーは直流電力として出力されるため,交流電力に変換して系統に供給する。例としては,鉛電池,ナトリウム-イオン電池(NaS)電池,リチウムイオン電池などがある。
特徴
- 電池の容量当たりのエネルギー密度が高く,小型化しやすい。
- 交流-直流変換器や一部の電池は既存技術であり,実現しやすい。
- 設置場所の制約が少なく,設置に要する期間が短い。
- 電池によっては,温度管理,電解液管理などの保守が必要がある。
- 電池には寿命がある。
フライホイール電力貯蔵
動作原理
交流電力エネルギーでフライホイールを回し,回転エネルギーとして貯蔵する。エネルギー貯蔵量の変化に伴いフライホイールの回転数が変化するため,周波数変換器を用いてエネルギー授受を行う。
特徴
- 容積当たりのエネルギー密度が高く,小型化しやすい。
- 機械的な制約などから貯蔵容量は中容量以下となる。
- 軸受けの低損失化のため,超電導磁気軸受が開発されている。
超電導エネルギー貯蔵(SMES)
動作原理
交流電力エネルギーを直流に変換し,超電導コイルの磁気エネルギーの形で貯蔵する。
特徴
- 超電導コイルを用いるため,コイルでの損失は零となる。
- 応答速度が速い。
- 冷却のための冷凍機と交直変換器の損失が全体の損失となる。
- 冷凍機の電力などが必要なため,高効率化のためには大容量の装置が必要となる。
- 装置の容積当たりの貯蔵エネルギー密度は大きい。
キャパシタ貯蔵
動作原理
交流電力エネルギーを直流に変換し,電解コンデンサ,電気 2 重層キャパシタ等の大容量キャパシタに静電エネルギーとして貯蔵する。
特徴
- 応答速度が速く,容積の割に取り扱える電力が大きい。
- 容積当たりのエネルギー密度は他の方式に比べ小さく,エネルギー貯蔵量は小さめである。
- キャパシタはエネルギーの授受で端子電圧が大きく変動するため,交直変換器に工夫が必要である。
- 短周期の負荷変動や発電量の変動吸収に適する。
- 蓄電池に比べサイクル寿命が長い。
圧縮空気貯蔵(CAES)
動作原理
交流電力エネルギーで 3 ~ 6 [MPa] の圧縮空気を貯蔵し,その圧縮空気をガスタービンに供給し,電力を発生させる。
特徴
- 圧縮ガスのエネルギー密度はさほど大きくない。
- 貯蔵場所に地下空洞などを用い,大容量化が可能である。
- 電力に変換するときは,ガスタービンに LNG などの燃料が必要なため,純粋な電力貯蔵とは異なる。
問5 特別高圧自家用需要家の受電方式
特別高圧自家用需要家における代表的な四つの受電方式を下記に示す。下記 2. の常用予備切替方式の解答例(方式の特徴を表すうえで必要ない断路器の記載は省略してある。)にならって,他の三つの受電方式について系統概略図を記載し,特徴を説明せよ。
ただし,系統概要図では,需要家受電設備の受電用遮断器の開閉状態と,送配電線路におけるほかの需要家との接続状態を明記し,特徴については,① 事故時,② 保守時,③ 信頼性について簡素に説明せよ。
- 樹枝状方式(1 回線受電方式)
- 常用予備切替方式(本線・予備線受電方式)
- ループ方式(常時閉路ループ方式)
- スポットネットワーク方式(スポットネットワーク方式)

(解答例)2. 常用予備切替方式(本線・予備線受電方式)
系統図

特徴
① 事故時
常時常用(本線)側受電であるため,送配電線路の常用(本線)側の事故時にはいったん停電するが,予備(予備線)側に切り替えることにより復旧する。復旧後は負荷抑制をする必要がない。また,事故時の停電に伴う受電用遮断器の開放及び投入は,自動的に行われるので運転管理が容易である。
② 保守時
常時常用(本線)側受電であるため,送配電線路の常用(本線)側の保守時には,事前に予備(予備線)側受電に無停電切り替えをしてから,常用(本線)側を停止する。よって,停電や負荷抑制の必要がない。また,保守時の切り替えに伴う受電用遮断器の開放及び投入操作は,電気事業者と連絡をとりながら行う。
③ 信頼性
本方式は,○○方式よりも低いが△△方式よりも高い。
注)解答例では,記載すべき受電方式を○○,△△で記しているが,実際の解答においては,問に示した受電方式名を記載すること。
樹枝状方式(1 回線受電方式)
事故時には,送配電線路の事故が復旧するまで,停電が継続する。送配電線路の保守時には,停電をする必要がある。信頼性も他の 3 つに比べて,最も低い。
ループ方式(常時閉路ループ方式)
準備中
スポットネットワーク方式(スポットネットワーク方式)
準備中
問6 短絡電流
図の特別高圧系統から電圧 66 [kV] で受電している需要設備における,受電用遮断器(CB1)を通過する短絡電流について,次の問に答えよ。ただし,発電機,変圧器及び送電線のインピーダンスは,表に示すとおりである。また,短絡電流の計算において,発電機,変圧器及び送電線の抵抗分,もしくは変圧器の励磁インピーダンスは無視できるものとし,短絡時における上位系統及び発電機の過渡リアクタンスの背後電圧は 1.0 [p.u] であるとする。
- CB1,CB2,CB4,CB5 及び CB6 が閉のとき,事故点における三相短絡電流 [kA] を求めよ。
- 上記 1. の状態において,変電所 B と変電所 C を連系する CB3 を閉としたとき,事故点における三相短絡電流 [kA] を求めよ。
各設備のインピーダンス | 100 [MV·A] 基準 [%] |
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系統側 | 変電所 A の母線から上位系統側をみた過渡リアクタンス | 2.5 |
発電所の発電機過渡リアクタンス | 25.0 | |
変圧器 | 発電所の変圧器 TR1 の漏れリアクタンス | 12.0 |
変電所 B の変圧器 TR2 の漏れリアクタンス | 10.0 | |
変電所 C の変圧器 TR3 の漏れリアクタンス | 10.0 | |
送電線 | 送電線 TL1(変電所 B ~ 需要設備)の正相リアクタンス | 1.5 |
送電線 TL2(変電所 A ~ 変電所 B)の正相リアクタンス | 0.5 | |
送電線 TL3(変電所 B ~ 変電所 C)の正相リアクタンス | 1.0 | |
送電線 TL4(変電所 C ~ 発電所)の正相リアクタンス | 1.0 | |
送電線 TL5(変電所 A ~ 変電所 C)の正相リアクタンス | 2.0 |
準備中