平成26年度 第二種 電気主任技術者二次試験 電力・管理

2022年11月5日更新

目次

  1. ダム水路式水力発電所における水撃作用
  2. 変圧器三次に接続される進相コンデンサ
  3. 架空送電線の電線の太さの選定
  4. 三相 3 線式 1 回線の高圧配電系統
  5. 逆潮流による電圧上昇
  6. 電気工作物の保全

問1 ダム水路式水力発電所における水撃作用

フランシス水車を設置するダム水路式水力発電所における水撃作用について,次の問に答えよ。

  1. 水撃作用が発生する主な原因を説明せよ。
  2. 設計段階で水撃作用に対する機械的強度の確保や対策設備の設置を考慮しなかった場合,水車及び水路のどのような部分に被害の発生が考えられるか説明せよ。
  3. この発電所で水撃作用による被害を避けるため,機械的強度の確保とは別に採用される,設備による対策事例を二つ挙げ,その設備名称,設備の設置場所及びその仕組みを説明せよ。

1. 水撃作用が発生する主な原因

発電機や発電所構内事故あるいは送電線事故などにより,保護装置が発電機の負荷を自動遮断した場合,水車・発電機が危険な速度まで速度上昇しないよう,(調速機及び保護装置により)ガイドベーンを急速閉止する。この場合,流水を急激に停止させたことにより,運動エネルギー(水流による慣性)が圧力エネルギー(高圧力)となって,水撃が発生する。

2. 設計段階で水撃作用を考慮しなかった場合の被害

水撃作用の圧力変動により,水車のケーシング,水圧管路あるいは圧力トンネルを損傷するおそれがある。

3. 設備による対策事例

  1. サージタンクを圧力トンネルの末端付近に設置し,水撃作用による圧力変動を吸収させる。
  2. 制圧機をケーシングあるいは水圧管路の末端に設置し,水圧が危険圧力まで上昇しないよう,調速機(ガバナー)によるガイドベーンの急速閉止に連動して,この制圧機の弁体を開放し,ケーシング及び水圧管路内の水圧を逃がす。

問2 変圧器三次に接続される進相コンデンサ

図のように変電所から,皮相電力 100 MV·A,遅れ力率 80 % の負荷に電力を供給している。変圧器の一次,二次及び三次の定格線間電圧は 154 kV,77 kV,22 kV であり,巻線の結線は,一次側 Y 結線,二次側 Y 結線,三次側 Δ 結線である。変圧器の三次には 30 Mvar の進相コンデンサが接続されている。変圧器の容量及び % インピーダンスは以下のとおりとする。

  • 容量 一次 200 MV·A 二次 200 MV·A 三次 50 MV·A
  • % インピーダンス
    一次-二次 15 % (200 MV·Aベース)
    一次-三次 8 % (200 MV·Aベース)
    二次-三次 2 % (50 MV·Aベース)
変圧器三次に接続される進相コンデンサ
変圧器三次に接続される進相コンデンサ
  1. 二次-三次巻線間の % インピーダンスの p.u. 値を一次容量基準で表せ。
  2. 一次,二次及び三次巻線の % インピーダンスの p.u. 値をそれぞれ一次容量基準で表せ。
  3. 一次母線電圧が 152 kV の場合,二次母線の電圧を求めよ。
    ただし,変圧器のタップは一次 154 kV / 二次 77 kV とする。また,変圧器の励磁電流や有効電力による電圧への影響は考慮しなくてよく,巻線リアクタンスでの無効電力消費は無視する。なお,電圧降下が十分に小さいとして,簡略な計算法を用いてよい。

問3 架空送電線の電線の太さの選定

架空送電線の電線の太さの選定について,次の問に答えよ。

架空送電線の電線の太さを選定するにあたっては,様々な要因を考慮する必要があるが,その要因としては,電気的要因,機械的要因(強度・重量・耐振性・工事上の取り扱いなど)や価格などがある。

  1. 太さの選定に関係する主要な電気的要因を 4 項目挙げて,その概要を説明せよ。
  2. 上記の文章で説明されている要因のうち,機械的強度,重量,価格に上記 (1) で挙げた各項目を加えた 7 項目の要因それぞれに関して,電線の太さが太い方が望ましいか細い方が望ましいかを理由を付して述べよ。

1. 太さの選定に関係する主要な電気的要因

許容電流

一般に電線に電流が流れると温度が上昇し,ある限度以上に高くなると引張強さなどの性能が低下するので,電線の性能に悪影響を及ぼさない温度限度(最高許容温度)以下で使用しなければならない。この限度の電流を許容電流といい,電線の材質,構造,表面の状況,周囲温度,日射状態,風雨などにより異なる。

電力損失

電線の径が小さい場合,抵抗 $R$ が大きくなる。抵抗 $R$ の電線に電流 $I$ が流れると $I^2 R$ に相当する電力損失が発生するが,エネルギー輸送の観点から望ましいことではない。

コロナ

特に高電圧の送電線において電線の径が小さい場合,周囲の電界強度が高くなり,これが過大な場合にはコロナ放電が発生し電力損失,ラジオ雑音,近接通信線の誘導障害などを与えるので,これが発生しない範囲(AC 21 kV/cm 程度)で使用しなければならない。

電圧降下

電線の径が小さい場合,抵抗 $R$ と作用インダクタンス $L$ が共に大きくなるので,直列インピーダンス $\dot{Z} = R + \text{j}\omega L$ も大きくなる。直列インピーダンス $\dot{Z}$ の電線に電流 $\dot{I}$ を流すと $\dot{ZI}$ の電圧降下が生じるが,送配電機器や負荷の電圧は可能なかぎり定格値近くで運用する方が望ましい。すなわち,電圧降下が過大にならないようにしなければならない。

2. 電線の太さ

電線の太さが太い,細いで 7 項目の要因を比較する。

表 電線の太さ
要因 太い電線 細い電線
機械的強度 ○ 引張強さ 大 × 引張強さ 小
重量 × 大 ○ 小
価格 × 高価 ○ 安価
許容電流 ○ 大 × 小
電力損失 ○ 小 × 大
コロナ ※単導体で比較 ○ 小 × 大
電圧降下 ○ 小 × 大

問4 三相 3 線式 1 回線の高圧配電系統

図に示す等価回路の三相 3 線式 1 回線の高圧配電系統がある。電源側 S 点の線間電圧 6.93 kV,1 線当たりの抵抗 5 Ω,リアクタンス 7 Ω であるとき,次の問に答えよ。ただし,負荷は三相抵抗負荷とする。

  1. 電源側の相電圧 Es,受電端の相電圧 Er,負荷電流 Ir のベクトルを図示せよ。
  2. 負荷電流が 50 A 流れた際の受電端の線間電圧 √3|Er| [kV] を上記 1. で表したベクトル図の関係式から求めよ。ただし,当該線路に他の負荷はなく,漏れ電流等は無視できるものとする。
  3. 受電端 B 点において線路の電圧降下率が 10 % となる三相抵抗負荷電力 [kW] 及びそのときの負荷電流 [A] を求めよ。
三相 3 線式 1 回線高圧配電系統の 1 相分の等価回路
三相 3 線式 1 回線高圧配電系統の 1 相分の等価回路

問5 逆潮流による電圧上昇

図に示すような三相 3 線式高圧配電線の末端に負荷が接続されており,新たに太陽電池発電所を設置した場合の逆潮流による電圧上昇について,次の問に答えよ。

ただし,低圧需要家側の電流は無視し,計算諸元は次のとおりとする。

  • 高圧配電線電圧:高圧 6 600 V
  • 高圧配電線インピーダンス:r + jx = 2.82 + j3.19 Ω
  • 柱上変圧器のタップ比:一次電圧 / 二次電圧 6 600 V / 210 V
  • 負荷:動力 800 kW,遅れ力率 0.6,力率改善用コンデンサ 1 000 kvar
  • 太陽電池発電所:出力 2 000 kW,力率 1
  • 電流値計算にあたっては,高圧配電線電圧 6 600 V を用いる。
  1. 負荷側に流れる有効電流 IPL [A] と無効電流 IQL [A] を求めよ。
  2. 太陽電池発電所が接続されることによる低圧需要家側の受電電圧 VL [V] を求めよ。ただし,逆潮流による配電線の電圧上昇 ΔV は,負荷側に流れる電流を正とした場合,ΔV = -√3 (有効電流 × 線路の抵抗分 + 無効電流 × 線路のリアクタンス分) で求めよ。
  3. 上記 2. で求めた受電電圧 VL [V] は,法令で定める維持すべき電圧をいくら超えているか,その値 VD [V] を求めよ。
  4. 高圧配電線,負荷,太陽電池発電所及び柱上変圧器で考えられる電圧上昇抑制対策を二つ述べよ。
末端に負荷が接続された三相 3 線式高圧配電線
末端に負荷が接続された三相 3 線式高圧配電線

4. 高圧配電線,負荷,太陽電池発電所及び柱上変圧器で考えられる電圧上昇抑制対策

  • 電線を太くしインピーダンスを減少
  • 力率改善用コンデンサの開放
  • 新たな無効電力補償装置の設置
  • 太陽電池発電設備側でインバータによる無効電力補償の増
  • 柱上変圧器のタップ変更

問6 電気工作物の保全

電気工作物の保全について,次の問に答えよ。

  1. 電気工作物の保全について,技術的見地からその必要性(目的)について述べよ。
  2. 保全方式とは,事後保全(CM:Corrective Maintenance)と予防保全(PM:Oreventive Maintenance)に大別される。
    1. 事後保全方式について説明せよ。
    2. 予防保全方式のうち,定期保全方式について説明せよ。
    3. 予防保全方式のうち,予防保全(状態監視保全)方式を採用する利点(メリット)を二つ述べよ。

1. 電気工作物の保全の必要性(目的)

電気工作物の故障等の発生により,公共の安全や電力の安定供給等が脅かされるので,常に法令で定める技術基準に適合するよう,その性能等を維持すると共に,事故の未然防止を図ることが必要であり,それが保全の目的となる。

2-a. 事後保全方式

故障停止又は著しい性能低下に至ってから修理を行う保全方式であり,通常事後保全と緊急保全とに管理上,分類できる。

2-b. 定期保全方式

従来の経験又は,その電気工作物の特性から一定期間の周期を定めて点検を行い,定期的に分解・清掃又は部品交換や補修を行い,突発事故を未然に防ぐ保全方式をいう。

2-c. 予防保全(状態監視保全)方式を採用する利点(メリット)

  • 機器・設備の劣化状態等を把握できるので,無駄な交換が不要となり,保全費用を低減できる。
  • 機器・設備の異常兆候の早期発見や予測などが可能であり,機器の故障やシステム停止を未然に防止できる。
  • 機器の劣化による機能低下を検知することができ,システムの機能及び性能の低下を防止できる。
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