平成27年度 第二種 電気主任技術者二次試験 電力・管理

2022年11月5日更新

目次

  1. 大容量のタービン発電機に採用される冷却方式
  2. 静止形無効電力補償装置
  3. 配電線の負荷分布
  4. 送電線の抵抗とリアクタンスの求め方
  5. 電力の供給
  6. 電力用 CV ケーブルの水トリー

問1 大容量のタービン発電機に採用される冷却方式

大容量のタービン発電機に採用される冷却方式に関して,次の問に答えよ。

  1. 水素冷却方式が採用される理由を水素ガスの特徴を挙げて述べよ。また,安全上留意すべき事項を述べよ。
  2. 固定子水冷却方式が採用される理由を水の特徴を挙げて述べよ。

問1 解答と解説

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1-1. 水素冷却方式が採用される理由

空気と比較して水素ガスは密度が小さいため,風損が小さく,発電機効率を向上させることができるほか,熱伝導率,比熱が大きいので,冷却効果が高く,発電機の小型化を図ることができる。

さらに,加圧して用いることにより,熱容量,熱伝達率が大きくなり,より大きな冷却能力を発揮できる。また,水素ガスは不活性であるため,絶縁物の劣化影響が少ない。以上のように,発電機の機械寸法の大幅な増大を抑えることができるなどの利点があるため,大容量のタービン発電機では,水素冷却方式が採用される。

1-2. 安全上留意すべき事項

火源があっても酸素がないと燃焼は起こらないが,水素と空気が混合した場合,ある水素濃度の範囲では爆発性になるので,これを防ぐため発電機内部の水素濃度をその範囲よりもある程度高く保つ必要がある。また,発電機内の水素ガスが軸に沿って機外に漏れないようにする必要があり,軸受内部に油膜によるシール機構を施し,ガス漏れを防いでいる。

2. 固定子水冷却方式が採用される理由

水は空気や水素と比較して熱容量,熱伝達率が大きく冷却効果が高いので,大容量のタービン発電機では,固定子(電機子巻線)水冷却方式が採用される。

参考文献

問2 静止形無効電力補償装置

電力用半導体を用いた静止形無効電力補償装置(SVC,STATCOM)について,次の問に答えよ。

  1. SVC は具体的にどのような目的に用いられるか,系統側,需要側の事例をそれぞれ一つずつ挙げよ。
  2. SVC の代表的な方式である TCR と TSC について,それぞれの動作原理と制御の特徴を簡潔に述べよ。
  3. STATCOM(自励式 SVC あるいは SVG)の動作原理を述べよ。あわせて,TCR 方式の SVC と比較した制御の特徴を簡潔に述べよ。

問2 解答と解説

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1-1. SVC の目的~系統側の事例~

SVC(Static Var Copensator:静止形無効電力補償装置)の目的~系統側の事例~は,以下の通り。

  • 設置点の送電系統の事故時の電圧維持による同期安定性を向上させる
  • 配電系統の末端など,電源系統の弱い地域において,負荷変動などに起因する電圧変動を抑制する

1-2. SVC の目的~需要側の事例~

SVC の目的~需要側の事例~は,以下の通り。

  • アーク炉,採石場のクラッシャー等の変動負荷による急激な電圧変動を抑制する
  • 負荷で発生する無効電力をキャンセルして力率を改善する

TCR と TSC について

TCR(Thyristor Controlled Reactor:サイリスタ制御リアクトル方式)は,サイリスタを用いてリアクトル電流の位相制御を行う方式で,誘導性(遅れ)の無効電力を連続的に制御できる。また,並列にコンデンサを接続することにより,進みから遅れの領域にわたる無効電力を連続的に変化させることができる。

TSC(Thyristor Switched Capacitors:サイリスタ開閉コンデンサ方式)は,サイリスタを用いてコンデンサの開閉を行う方式で,容量性(進み)の無効電力を制御できる。突入電流が流れない位相でオンオフ制御を行うため,無効電力は段階的にしか制御できない。

STATCOM の動作原理

STATCOM(STATic synchronous COMpensator)は,自己消弧素子を用いた自励式変換器を用いることにより,進みから遅れまでの幅広い無効電力補償を,連続かつ高速で行うことができる。TCR 方式の SVC に比較して,系統電圧の低下時にも高い補償能力が得られるため,電圧安定性を高める効果に優れる。

参考文献

問3 配電線の負荷分布

図1 に示すように,A 点から B 点に行くほど直線的に負荷密度が大きくなる低圧負荷が分布している配電線路(全長 $L$ [m])の途中に,変圧器を設置し給電するとき,次の問に答えよ。

ただし,配電線路の線路特性は均一として,給電点(P 点)電圧は一定であり,負荷は抵抗負荷とする。また,線路の電圧降下は抵抗分(単位長さ当たりの等価抵抗を $R$ [Ω/m] とする。)のみを考慮することとし,図中の $I$ [A/m] は,B 点における負荷密度とする。

  1. 変圧器の設置地点 P から,A 点及び B 点までのそれぞれの電圧降下が等しくなるようにしたい。P 点は,A 点から何メートルの場所にすればよいかを考える。次の各問に答えよ。
    1. A 点と P 点の間の距離を $x$ [m] として,P 点から A 点の間の電圧降下 $V_\text{A}$ [V] を求めよ。
    2. P 点から B 点の間の電圧降下 $V_\text{B}$ [V] を求めよ。
    3. $V_\text{A} = V_\text{B}$ となる場合の A 点と P 点の間の距離 $x$ [m] を求めよ。
  2. 上記 1. で求めた地点に変圧器を設置する場合の P 点から A 点までの電圧降下の値は,図2 に示すように B 点に変圧器を設置した場合の P 点(= B 点)から A 点までの電圧降下の値は何 [%] になるのか計算せよ。
図1 直線的に負荷密度が大きくなる低圧負荷が分布している配電線路
図 1 直線的に負荷密度が大きくなる低圧負荷が分布している配電線路
図2 B 点に変圧器を設置した場合
図 2 B 点に変圧器を設置した場合

問3 解答と解説

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1-a. P 点から A 点の間の電圧降下

A 点から距離 $l$ [m] の点の負荷密度は次式で表される。

\[ i = \frac{l}{L}I \text{ [A/m]} \]

この距離 $l$ [m] の点の線電流 $i_l$は,P 点から A 点に向かって負荷密度を積分して求める。

\[ i_l =\int^l_0{i}\text{d}l = \int^l_0{\frac{l}{L}I}\text{d}l = \frac{I}{L}[\frac{l^2}{2}]^l_0 = \frac{I}{2L}l^2 \text{ [A]} \]

単位長さ当たりの等価抵抗が $R$ [Ω/m] であるとき,距離 $l$ [m] の点の微小長さ $\text{d}l$ における電圧降下 $\text{d}V_\text{A}$は,次式で求められる。

\[ \text{d}V_\text{A} = i_l R \text{d}l = \frac{I}{2L} Rl^2 \text{d}l \text{ [V]} \]

P 点から A 点の間の電圧降下 $V_\text{A}$ は,これを積分して次のように求まる。

\[ V_\text{A} = \int^x_0{\text{d}V_\text{A}} = \frac{IR}{2L}\int^x_0{l^2\text{d}l} = \frac{IR}{2L}[\frac{l^3}{3}]^x_0 = \frac{IR}{6L}x^3 \text{ [V]} \]

1-b. P 点から B 点の間の電圧降下

距離 $l$ [m] の点の線電流は次式となる。

\[ i_l =\int^l_0{i}\text{d}l = I\int^l_0{(1-\frac{l}{L})}\text{d}l = I[l-\frac{l^2}{2L}]^l_0 = \frac{I}{2L}(2Ll-l^2) \text{ [A]} \]

P 点から B 点の間の電圧降下 $V_\text{B}$ は,これを積分して次のように求まる。

\[ V_\text{B}= \int^{L-x}_0{i_l R} \text{d}l = \frac{IR}{2L}\int^{L-x}_0{2Ll - l^2} \text{d}l = \frac{IR}{6L}(2L^3 - 3L^2 x + x^3) \text{ [V]} \]

1-c. $V_\text{A} = V_\text{B}$ となる場合の A 点と P 点の間の距離

$V_\text{A} = V_\text{B}$ であれば,題意を満足する。

\[ \frac{IR}{6L}x^3 = \frac{IR}{6L}(2L^3 - 3L^2 x + x^3) \] \[ x = \frac{2}{3}L \]

よって,A 点から $\displaystyle \frac{2}{3}L$ の地点となる。

2. 変圧器の設置位置による電圧降下の比較

B 点に変圧器を設置した場合

B 点から A 点の電圧降下 $V_\text{BA}$ は,$V_\text{A}$ の式に $x=L$ を代入する。

\[ V_\text{BA} = \frac{IR}{6L} \times L^3 = \frac{1}{6}IRL^2 \]
P 点(A 点から $\displaystyle \frac{2}{3}L$ の地点)に変圧器を設置した場合

P 点から A 点の電圧降下 $V_\text{PA}$ は,$V_\text{A}$ の式に $x = \frac{2}{3}L$ を代入する。

\[ V_\text{PA} = \frac{IR}{6L} \times (\frac{2}{3}L)^3 = \frac{4}{81}IRL^2 \]
変圧器の設置位置による電圧降下の比較

上記 1. で求めた地点に変圧器を設置する場合の P 点から A 点までの電圧降下の値は,図2 に示すように B 点に変圧器を設置した場合の P 点(= B 点)から A 点までの電圧降下の値は何 [%] になるのか計算する。

\[ \frac{V_\text{PA}}{V_\text{BA}} \times 100 = \frac{8}{27} \times 100 = 29.6 \text{ [%]} \]

問4 送電線の抵抗とリアクタンスの求め方

送電線の抵抗とリアクタンスの求め方に関して,次の問に答えよ。

送電線両端の電圧や位相角が測定できると,送電線の抵抗やリアクタンスが求められる。送電端電圧 $\dot{V}_1$ の大きさを $V_1$,その受電端電圧 $\dot{V}_2$ に対する位相差を $\delta$,送電端から受電端への潮流の送電端側の有効電力を $P$,無効電力を $Q$ とする。また,送電線の並列アドミタンスは無視できるものとし,送電線の抵抗を $r$,リアクタンスを $x$ とする。

ただし,電力や電流は送電端から受電端への向きを正,無効電力は遅れ側を正,及び $P \ne 0$ あるいは $Q \ne 0$ とする。また,$\delta$ の単位は [rad],その他の単位は [p.u.] とする。

  1. 送電端と受電端の複素電圧をそれぞれ $\dot{V}_1 = V_1 \angle{\delta}$,$\dot{V}_2 = V_2 \angle{0}$,送電線電流を $\dot{I}$ としたとき,$\dot{V}_1$ を $\dot{V}_2$,$\dot{I}$,$r$,$x$ を用いて表せ。
  2. $\dot{I}$ を,$P$,$Q$,$\dot{V}_1$ を用いて表せ。
  3. 上記 1. 及び 2. にて表した式から $\dot{I}$ を消去して $V_1$,$V_2$,$\delta$,$P$,$Q$,$r$,$x$ 間の関係を表す式を示せ。
  4. 上記 3. の式で,実数部と虚数部に分けて考えると,$x$ と $r$ に関する下記の式が導かれる。$\alpha$ と $\beta$ は,$V_1$,$V_2$,$\delta$ の関数である。$\alpha$ と $\beta$ を表す式を示せ。 \[ x = \frac{P\alpha + Q\beta}{P^2 + Q^2} \] \[ r = \frac{P\beta - Q\alpha}{P^2 + Q^2} \]
  5. $V_1 = 1.05$ p.u.,$V_2 = 1.01$ p.u.,$\delta = \frac{\pi}{12}$ rad,$P = 1.23$ p.u.,$Q=0.195$ p.u. のときの $x$ [p.u.] と $r$ [p.u.] を求めよ。
    なお,$\sin{\frac{\pi}{12}} = 0.258 82$,$\cos{\frac{^pi}{12}} = 0.965 93$ を使用すること。

問4 解答と解説

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題意の送電線を図示すると,下図のようになる。

送電線の抵抗とリアクタンスの求め方
送電線の抵抗とリアクタンスの求め方

1. 送電端の複素電圧 $\dot{V}_1$

\[ \dot{V}_1 = \dot{V}_2 + (r + \text{j}x)\dot{I} \]

2. 送電線電流 $\dot{I}$

\[ P + \text{j}Q = \dot{V}_1 \cdot \bar{\dot{I}} \] \[ \dot{I} = \frac{P - \text{j}Q}{\bar{\dot{V}_1}} \]

3. $V_1$,$V_2$,$\delta$,$P$,$Q$,$r$,$x$ 間の関係を表す式

2. で求めた式を 1. の式に代入する。

\[ \dot{V}_1 = \dot{V}_2 + (r + \text{j}x)\frac{P - \text{j}Q}{\bar{\dot{V}_1}} \] \[ V_1^2 = V_1 V_2 e^{-\text{j}\delta} + (r + \text{j}x)(P - \text{j}Q) \]

4. $\alpha$ と $\beta$ を表す式

3. で求めた式を展開し,整理する。

\[ V_1^2 = V_1 V_2 (\cos{\delta} - \text{j}\sin{\delta}) + (rP - \text{j}rQ + \text{j}xP + xQ) \] \[ V_1(V_1 - V_2 \cos{\delta}) + \text{j}V_1 V_2 \sin{\delta} = (Pr + Qx) + \text{j}(Px - Qr) \]

両辺の実部と虚部が等しいので,次式が得られる。

\[ V_1(V_1 - V_2 \cos{\delta}) = Pr + Qx \] \[ V_1 V_2 \sin{\delta} = Px - Qr \]

上記の 2 式より,$r$ と $x$ をそれぞれ消去する。

\[ x = \frac{PV_1 V_2 \sin{\delta} + QV_1(V_1 - V_2 \cos{\delta})}{P^2 + Q^2 } \] \[ r = \frac{PV_1(V_1 - V_2\cos{\delta}) - QV_1 V_2 \sin{\delta}}{P^2 + Q^2 } \]

よって,$\alpha$ と $\beta$ を表す式は,次式となる。

\[ \alpha = V_1 V_2 \sin{\delta} \] \[ \beta = V_1(V_1 - V_2\cos{\delta}) \]

5. $x$ [p.u.] と $r$ [p.u.]

与えられた数値を代入し,計算する。

\[ x = 0.228 \text{ [p.u.]} \] \[ r = 0.0275 \text{ [p.u.]} \]

問5 電力の供給

定格容量 9 500 kV·A の変圧器 1 台を有する変電所から,配電線 A,B により,下表に示す需要設備 a,b,c に電力を供給しているとき,次の問に答えよ。

ただし,需要設備 a,b,c の需要率はそれぞれ 80 % ,需要設備 a,b,c の負荷力率はそれぞれ遅れの一定値とし,結果は,小数第 1 位を四捨五入せよ。

  1. 需要設備 a,b,c の平均電力 [kW] をそれぞれ求めよ。
  2. 変電所の総合最大電力 [kW] を求めよ。
  3. 変電所の総合負荷率 [%] を求めよ。
  4. 需要設備 a,b,c の負荷力率 [%] をそれぞれ求めよ。
  5. 変圧器が過負荷とならないために必要なコンデンサの最小容量 [kvar] を求めよ。
配電線 需要設備 設備容量
[kV·A]
最大電力
[kW]
負荷率
[%]
需要設備間の
不等率
配電線間
の不等率
A a 7 500 5 700 70 1.1
B b 4 000 3 040 80 1.25
c 3 500 2 660 60

問5 解答と解説

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1. 需要設備 a,b,c の平均電力 [kW]

平均電力は,「平均電力 = 最大電力 × 負荷率」で求められる。

\[ \bar{P_\text{a}} = 5 700 \times 0.70 = 3 990 \text{ [kW]} \] \[ \bar{P_\text{b}} = 3 040 \times 0.80 = 2 432 \text{ [kW]} \] \[ \bar{P_\text{c}} = 2 660 \times 0.60 = 1 596 \text{ [kW]} \]

2. 変電所の総合最大電力 [kW]

総合最大電力は,「合計最大電力 / 不等率」で求められる。

配電線 A の最大電力
\[ P_\text{A} = 5 700 \text{ [kW]} \]
配電線 B の最大電力
\[ P_\text{B} = \frac{3040 + 2660}{1.25} = 4560 \text{ [kW]} \]
変電所の総合最大電力
\[ P_\text{S} = \frac{P_\text{A} + P_\text{B}}{1.1} = \frac{5700 + 4560}{1.1} = 9327.27 \approx 9327 \text{ [kW]} \]

3. 変電所の総合負荷率 [%]

変電所の総合負荷率 $LF$ は,「平均電力 / 総合最大電力」で求められる。

\[ LF = \frac{\bar{P_\text{S}}}{P_\text{S}} \times 100 = \frac{\bar{P_\text{a}} + \bar{P_\text{b}} + \bar{P_\text{c}}}{P_\text{S}} \times 100 \] \[ LF = \frac{3990 + 2432 + 1596}{9327} \times 100 = 85.97 \approx 86 \text{ [%]} \]

4. 需要設備 a,b,c の負荷力率 [%]

最大電力 = 設備容量 × 負荷力率 × 需要率」の関係より,力率を求める。

\[ \cos{\theta_\text{a}} = \frac{5700}{7500 \times 0.80} \times 100 = 95 \text{ [%]} \] \[ \cos{\theta_\text{b}} = \frac{3040}{4000 \times 0.80} \times 100 = 95 \text{ [%]} \] \[ \cos{\theta_\text{c}} = \frac{2660}{3500 \times 0.80} \times 100 = 95 \text{ [%]} \]

5. 変圧器が過負荷とならないために必要なコンデンサの最小容量 [kvar]

変圧器が過負荷とならないために必要なコンデンサの最小容量を $Q_\text{C}$ [kvar],変圧器の定格容量を $S$ [kV·A],変電所の総合負荷力率を $\cos{\theta}$ とすると,題意より次式が得られる。

\[ P_{\text{s}}^2 + (P_\text{S}\tan{\theta} - Q_\text{S})^2 \le S^2 \]

上記の関係を $Q_\text{C}$ で成立する。

\[ Q_\text{S} \ge P_\text{S}\tan{\theta} - \sqrt{S^2 - P_{\text{S}}^2} \]

与えられた数値を代入し,計算する。

\[ Q_\text{S} \ge 1262.38 \approx 1262 \text{ [kvar]} \]

問6 電力用 CV ケーブルの水トリー

電力用 CV ケーブル(架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブル)の水トリーに関する次の問に答えよ。

  1. 水トリーの発生要因,特徴について簡潔に述べよ。
  2. 以下に示す CV ケーブルの水トリー劣化診断技術の中から二つ選び,その概要について簡潔に述べよ。
    1. 損失電流法
    2. 残留電荷法
    3. 耐電圧法
    4. 直流漏れ電流測定

問6 解答と解説

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1. 水トリーの発生要因,特徴

CV ケーブルの絶縁体内に水分が多く含まれている状態で電圧が印加されると,突起周辺など電界集中部に水分が集まり凝集し,樹枝状劣化が進むが,この劣化痕を水トリーと呼ぶ。水トリー内部は,健全部分に比べて導電率はけた違いに高く,電界は低くなるので,水トリーが発生しても,電気トリーとは異なり部分放電は観測されない。このため,水トリーの発生は検知しにくいうえに,水トリー先端の電界が高い部分より電気トリーが発生すると短時間で絶縁体の全路破壊に結びつくことが多い。

CV ケーブルの水トリー劣化診断技術

  1. 損失電流法:ケーブル絶縁体に流れる充電電流から課電電圧と同位相の電流成分(損失電流成分)を抽出し,その中に含まれる高調波電流(主に第三高調波電流)を劣化信号として用いる。
  2. 残留電荷法:水トリー劣化部に蓄積された電荷の放出状況を評価して劣化状況を診断する。具体的には,直流電圧をケーブルに課電し,接地後,水トリー劣化部に蓄積された電荷を,交流電圧を印加することにより放出させて診断する。
  3. 耐電圧法:水トリー劣化ケーブルのスクリーニングを目的とし,常規電圧よりも高い電圧をケーブル線路に課電する。スクリーニングする劣化レベルに応じて試験電圧や,効果的な試験電圧種類(商用周波,超低周波,可変周波)を選定する。
  4. 直流漏れ電流測定:ケーブルの導体-シース間に一定の直流電圧を印加し,漏れ電流の大きさ・変化・三相不平衡などを時間で整理し,その形状や値から絶縁状態を調査する。
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