平成30年度 第二種 電気主任技術者二次試験 電力・管理

2018年12月31日作成,2022年11月5日更新

目次

  1. 自流式発電所
  2. 変電所母線などの結線方式
  3. 電力線図と無効電力損失
  4. 地中配電系統の特徴
  5. 高調波を発生する負荷設備と進相コンデンサ設備
  6. 送配電系統の中性点接地方式

問1 自流式発電所

河川の流域面積が 200 km²,年間降水量が 1 500 mm,流出係数 0.7 の河川がある。この河川に最大使用水量が年間平均流量の 2 倍の自流式発電所を設置するとき,次の問に答えよ。

ただし,取水口標高 420 m,水車中心標高 185 m,放水口標高 200 m,損失落差を総落差の 5 %,水車効率 90 %,発電機効率 98 %,1 年は 365 日とする。

(1) この河川の年間平均流量 [m³/s] を求めよ。

(2) 発電所の最大出力 [kW] を求めよ。

問1 解答と解説

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(1) この河川の年間平均流量 6.66 [m³/s]

河川への年間流入量は,「流域面積 × 年間降水量 × 流出係数」である。

河川への年間流入量 = 200 [km²] × 1 500 [mm] × 0.7 = 200 × 106 [m] × 1.5 [m] × 0.7 = 2.10 × 108 [m³]

河川の年間平均流量は次式で求められる。

2.10 × 108 [m³] ÷ (365 [日] × 24 [時間] × 60 [分] × 60 [秒]) = 6.66 [m³/s]

(2) 発電所の最大出力 24 100 [kW]

発電機出力は,「9.8 × $Q$(使用水量) × $H$(有効落差) × $\eta_\text{w}$(水車効率) × $\eta_\text{g}$(発電機効率)」で求められる。

\[ P = 9.8 Q H \eta_\text{w} \eta_\text{g} = 9.8 6.659 \times 2 \times (420 - 200) \times (1 - 0.05) \times 0.9 \times 0.98 = 24 059 \text{ [kW]} \]

問2 変電所母線などの結線方式

変電所母線などの結線方式には,単母線方式,複母線方式(二重母線方式),ユニット方式などがあるが,結線方法の選定の一般的な考え方と特徴について,次の問に答えよ。

(1) 変電所の結線方式を決定する際に考慮すべきことを三つ述べよ。

(2) 単母線方式,複母線方式,ユニット方式について,該当する単線結線図の記号を下図からそれぞれ一つ選べ。

(3) 単母線方式,複母線方式について,それぞれの長所・短所を述べよ。

複母線方式(二重母線方式)
(イ)
単母線方式
(ロ)
環状母線方式
(ハ)
ユニット方式
(ニ)

問2 解答と解説

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(1) 変電所の結線方式を決定する際に考慮すべきこと

  • 送電線事故,母線事故時の系統への影響・供給信頼性
  • 変化する電源,送電線工事に対応する適応性
  • 送電線や変圧器の増設工事における安全性
  • 点検等による停止の難易など系統運用操作の容易性
  • 設置スペースなども含めた経済性

(2) 該当する単線結線図の記号

  • 単母線方式:(ロ)
  • 複母線方式:(イ)
  • ユニット方式:(ニ)

(3) 単母線方式,複母線方式について,それぞれの長所・短所

項目 単母線方式 複母線方式
所要機器
スペース
母線事故 当該母線が停止し,送電線や変圧器も停止する 当該母線に接続されている送電線や変圧器を,もう一方の母線に直ちに切り替え可能
保守面 母線側断路器等の点検のために全停電となる場合がある 容易に停止可能

問3 電力線図と無効電力損失

電力円線図と無効電力損失に関して,次の問に答えよ。ただし,計算には全て単位法を用いること。

  1. 短距離の高圧送電線は,対地容量と線路抵抗を無視すると図のような等価回路で表現できる。送受電端の電圧の大きさがともに 1.0 p.u. に保たれるとして,送電電力 $P$,送電端無効電力 $Q_\text{s}$,受電端無効電力 $Q_\text{r}$ はそれぞれどのように表されるか。送受電端電圧間の位相差 $\delta$(受電端を基準とする)と送電線リアクタンス $X$ を用いて表せ。ただし,無効電力は遅れを正とする。
  2. 上記の場合に,送電端複素電力 $\dot{S}_\text{s} = P + \text{j}Q_\text{s}$ 及び受電端複素電力 $\dot{S}_\text{r} = P + \text{j}Q_\text{r}$ が複素平面上で円を描くことを示せ。
  3. 上で求めた二円はそれぞれ送電円,受電円と呼ばれており,一般に複素平面上に表された複素送電電力の線図を電力円線図と呼ぶ。送電線の亘長が 2 倍になり,$X$ が 2 倍になっても引き続き同一の有効電力を送電する場合,$\delta$ が大きく開くことを送電円を用いて説明せよ。
  4. 3. に記したように $X$ を 2 倍にした送電線でも同一の有効電力を送電するとき,無効電力損失が $X$ を 2 倍する前と比べてどうなるかを送電円,受電円を用いて説明せよ。
  5. 周波数 50 Hz,作用インダクタンス 1.3 mH/km をもつ 10 km 一回線の送電線で 300 MW を送電する場合について送電円,受電円を描き,$\sin{\delta}$ と無効電力損失 $Q_\text{s} - Q_\text{r}$ を算出せよ。単位法は基準電圧 66 kV,基準容量 1 000 MV·A とし,$\pi = 3.141 6$ とする。
短距離の高圧送電線
短距離の高圧送電線

問3 解答と解説

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準備中

問4 地中配電系統の特徴

地中配電系統の特徴について,次の問に答えよ。

(1) 架空配電系統と比較したとき,地中配電系統のメリットとデメリットをそれぞれ二つずつ述べよ。

(2) 地中配電系統の供給方式のうち本線予備線方式(常用予備切換方式ともいう)とスポットネットワーク方式について,常時供給している配電線路内に事故が生じた際の需要設備側の応動(操作又は自動切り換え,保護装置)を含め,それぞれの概要を述べよ。

問4 解答と解説

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(1) 地中配電系統のメリットとデメリット

メリット
  • 都市の美観が向上する。
  • 同一ルートにケーブルを多数条施設可能なため,都市部など高需要密度地域への供給が可能となる。
  • 暴風雨,雷,火災などの災害に対して信頼性が向上する。
  • 設備の安全性が向上する。
デメリット
  • 建設費が高額である。
  • 新設や増設など需要変動への即応が困難である。
  • 事故復旧・改修に時間がかかる。

(2) 本線予備線方式とスポットネットワーク方式の概要

本線予備線方式

本線予備線方式は,2 回線の異なる配電線に接続し,停電時に常用予備切換をする方式である。通常あらかじめ定められた常用線から受電しているが,配電系統が事故停電した場合,需要家構内事故でないこと,及び予備線に電圧があることを条件に,受電用遮断器又は断路器を手動又は自動で切り換える。そのとき一定時間の停電を伴う欠点があるが,スポットネットワーク方式より簡単な設備構造となる。

スポットネットワーク方式

スポットネットワーク方式は,一般的に 20 kV 級電源変電所の 3 回線の配電線から受電する方式であり,都市部の高層ビルや大工場等の大容量で高信頼度が求められる地域に適用される。このスポットネットワーク方式は受電用遮断器を省略し,変圧器の二次側にネットワークプロテクタを設置し,各種事故に対して事故区間を的確に切り離し,負荷には無停電で供給を行うことができる。したがって保護装置が複雑で建設費が高くなる一方,一次側配電線又は変圧器が事故停止しても,設備容量を常時供給する容量の 1.5 倍で設計しておけば残った設備により無停電で供給できるので,供給信頼性は高い。

問5 高調波を発生する負荷設備と進相コンデンサ設備

図は系統電源に接続された自家用電気設備の単線結線図である。変圧器の 2 次側母線には高調波を発生する負荷設備と力率改善用の直列リアクトル付進相コンデンサ設備が設置されている。$X_\text{T}$,$X_\text{L}$,$X_\text{C}$ は,それぞれ変圧器,直列リアクトル,進相コンデンサの基本波におけるリアクタンスの大きさ(Ω 値)である。また,電流 $I_\text{H}$,$I_\text{S}$,$I_\text{C}$ は,それぞれ高調波発生負荷からの高調波電流,系統電源側に流出する高調波電流,進相コンデンサ設備に流入する高調波電流とする。このとき,次の問に答えよ。ただし,系統電源側のインピーダンス及び変圧器の抵抗分は無視するものとする。

  1. $n$ 次高調波電流源を電源とする高調波等価回路を描くとともに,$I_\text{Hn}$,$I_\text{Sn}$,$I_\text{Cn}$ それぞれに対し,電流の方向を矢印で示せ。ただし,$n$ 次高調波電流源の電流を $I_\text{Hn}$,系統電源側に流出する $n$ 次高調波電流を $I_\text{Sn}$,進相コンデンサ設備に流入する $n$ 次高調波電流を $I_\text{Cn}$ とする。
  2. 1. の $n$ 次高調波等価回路において,$n$ 次高調波電流源の電流 $I_\text{Hn}$ と各部のリアクタンスの大きさを用いて,進相コンデンサ設備に流入する $n$ 次高調波電流 $I_\text{Cn}$ を表す式を示せ。
  3. $I_\text{Cn}$ を表す式において,回路で共振を起こす条件式を示せ。
  4. $I_\text{Cn}$ を表す式において,進相コンデンサ設備に流入する $n$ 次高調波電流が,高調波発生源の電流よりも大きくならないようにするための条件式を示せ。
    $n = 5$(第 5 高調波)の場合,直列リアクトルのリアクタンスの大きさは進相コンデンサのリアクタンスの大きさの何 [%] 以上であることが必要か示せ。
  5. 6 % 直列リアクトル付進相コンデンサ設備の場合,高調波発生源に第 3 高調波が多く含まれていた場合,進相コンデンサの容量によっては共振現象となり,第 3 高調波電流が異常に増大する場合がある。このとき,進相コンデンサのリアクタンスの大きさ $X_\text{C}$ [Ω] と変圧器のリアクタンスの大きさ $X_\text{T}$ [Ω] の関係式を示せ。また,進相コンデンサ容量は変圧器容量の何 [%] か示せ。変圧器の容量を $P_\text{T}$ [kV·A],変圧器のパーセントリアクタンス $\% X_\text{T}$ を 7.5 %(自己容量基準),進相コンデンサ容量を $Q_\text{C}$ [k var] として計算せよ。
図 自家用電気設備と高調波電流
図 自家用電気設備と高調波電流

問5 解答と解説

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1. $n$ 次高調波電流源を電源とする高調波等価回路

$n$ 次高調波電流源を電源とする高調波等価回路を下図に示す。

高調波発生源を電源とする n 次高調波等価回路
高調波発生源を電源とする $n$ 次高調波等価回路

2. 進相コンデンサ設備に流入する $n$ 次高調波電流 $I_\text{Cn}$

高調波発生源を電源とする $n$ 次高調波等価回路より,進相コンデンサ設備に流入する $n$ 次高調波電流 $I_\text{Cn}$ は次式となる。

\[ I_\text{Cn} = \frac{nX_\text{T}}{nX_\text{T} + (nX_\text{L} - \frac{X_\text{C}}{n})} \times I_\text{Hn} \]

3. 回路で共振を起こす条件式

回路で共振を起こすのは,$I_\text{Cn}$ の式において,分母が 0 のときである。

\[ nX_\text{T} + (nX_\text{L} - \frac{X_\text{C}}{n}) = 0 \]

4. 進相コンデンサ設備に流入する $n$ 次高調波電流

進相コンデンサ設備に流入する $n$ 次高調波電流が,高調波発生源の電流よりも大きくならないようにするためには,$I_\text{Cn}$ の式において,次式が成立する必要がある。

\[ nX_\text{L} - \frac{X_\text{C}}{n} \ge 0 \]

$n = 5$(第 5 高調波)の場合,次式となる。

\[ X_\text{L} \ge \frac{X_\text{C}}{n^2} = \frac{X_\text{C}}{25} = 0.04 X_\text{C} \]

よって,直列リアクトルのリアクタンスの大きさは進相コンデンサのリアクタンスの大きさの 4 [%] 以上であることが必要である。

5. 第 3 高調波電流が異常に増大する場合

準備中

問6 送配電系統の中性点接地方式

次の問は,送配電系統の中性点接地方式に関するものである。

(1) 中性点接地方式には,① 非接地方式,② 直接接地方式,③ 抵抗接地方式,④ 消弧リアクトル接地方式などがある。

我が国の以下の電圧の送配電系統に対し,上記のうち,どの中性点接地方式が広く用いられているか答えよ。

  1. 高圧配電系統
  2. 154 kV の送電系統

(2) 消弧リアクトル接地方式の仕組みと目的についてそれぞれ述べよ。

(3) 抵抗接地方式について,直接接地方式と比較した場合の長所,短所をそれぞれ一つずつ述べよ。

問6 解答と解説

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(1) 我が国の以下の電圧の送配電系統

  1. 高圧配電系統:非接地方式
  2. 154 kV の送電系統:抵抗接地方式

(2) 消弧リアクトル接地方式の仕組みと目的

この方式はドイツのペテルゼン氏の発明で,ペテルゼンコイル接地方式(PC 接地方式)ともいう。

仕組み

1 線地絡時に故障点から大地を通って,対地静電容量に流れ込む電流を打ち消すようなインダクタンスをもつ消弧リアクトルを中性点に設置し並列共振回路とすることで,地絡故障時のアークを消弧する。

目的

線路を遮断せず,そのまま電力の供給を続けること。

(3) 抵抗接地方式の長所と短所(直接接地方式と比較した場合)

長所
  • 抵抗接地方式は直接接地方式に比べ,地絡故障時の電流が小さいため,通信線に対する電磁誘導障害が少ない。
  • 抵抗接地方式は直接接地方式に比べ,地絡故障時の電流が小さいため,機器や故障点に与える機械的ショックが小さい。
  • 抵抗接地方式は直接接地方式に比べ,地絡故障時の過渡安定度が大きい。
短所
  • 抵抗接地方式は直接接地方式に比べ,地絡時の健全相の電圧上昇が大きく機器の絶縁レベルを高くとる必要がある。
  • 抵抗接地方式は直接接地方式に比べ,接地機器の価格が高い。
  • 抵抗接地方式は地絡事故時の地絡電流を抑制するので,地絡リレーの事故検出機能は直接接地方式に比べ低い。

参考文献

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