令和2年度 第二種 電気主任技術者二次試験 電力・管理

2020年11月28日作成,2022年11月05日更新

目次

  1. 水力発電機の定格回転速度の選定の考え方
  2. 保護リレーシステム
  3. 対称座標法を用いた 1 線地絡故障の計算
  4. 単相 3 線式
  5. 特別高圧架空電線路による電磁誘導障害
  6. 力率改善用コンデンサ

問1 水力発電機の定格回転速度の選定の考え方

水車発電機の定格回転速度の選定の考え方に関して,次の問に答えよ。

周波数 60 Hz の系統の地点において,有効落差 162 m,出力 40 MW のフランシス水車 1 台を設置する場合,最も適切な水車の定格回転速度 [min-1] 及び発電機の極数を求めたい。

(1) フランシス水車において,適用できる比速度と有効落差の関係が,次式によって表されるとき,次式に基づき算出される回転速度の上限値を求めよ。

\[ n_\text{s} \le \frac{23000}{H+30}+40 \]

ただし,$n_\text{s}$ : 比速度(m·kW 基準),$H$ : 有効落差 [m] とする。

なお,比速度 $n_\text{s}$ は,出力 $P$ [kW],回転速度 $N$ [min-1] としたとき,$\displaystyle n_\text{s}=\frac{N\times P^{\frac{1}{2}}}{H^{\frac{5}{4}}}$ で与えられる。

(2) 選定すべき定格回転速度を求めよ。また,その理由を 100 文字程度で述べよ。

(3) 小問 (2) の場合の発電機の極数を導出せよ。

問1 解答と解説

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(1) 限界比速度

限界比速度は,次式で求められる。

\[ n_\text{s} \le \frac{23000}{H+30}+40 = \frac{23000}{162+30}+40=159.8 \]

また,比速度 $n_\text{s}$ は,出力 $P$ [kW],回転速度 $N$ [min-1] の関係より,適用可能上限となる回転速度 $N_\text{max}$ [min-1] は,次式となり,与えられた数値を代入する。

\[ N_\text{max}=\frac{n_\text{s}\times H^{\frac{5}{4}}}{P^{\frac{1}{2}}}=\frac{159.8 \times 162^{\frac{5}{4}}}{40000^{\frac{1}{2}}}=461.78 \]

したがって,$N_\text{max}$ = 461 min-1 となる。

(2) 選定すべき定格回転速度とその理由

選定すべき定格回転速度

選定すべき定格回転速度は 450 min-1 である。

選定理由

周波数が 60 Hz という条件下で,選定できる定格回転速度は,低い順に 400 min-1,450 min-1,514 min-1,・・・となるが適用可能な回転速度の上限値が 461 min-1 のため,450 min-1 となる。

フランシス水車の比速度としては,180 程度で最も高い効率が得られること,また,水車及び発電機は高速化することでの小型化によるコスト低減が図れることから,できるだけ適用限界の回転速度に近い定格回転速度を選定することが望ましい。

(3) 発電機の極数

周波数 $f$ と定格回転速度 $N$ と発電機の極数の関係は,次式で表される。

\[ f=\frac{\frac{p}{2}\times N}{60}=\frac{pN}{120} \]

上式に各値を代入して,発電機の極数 $p$ を求める。

\[ p=\frac{120f}{N}=\frac{120\times60}{450}=16 \]

よって,発電機の極数は 16 である。

発電機の極数と定格回転速度の関係(60 Hz)
図 発電機の極数と定格回転速度の関係(60 Hz)

問2 保護リレーシステム

保護リレーシステムは,電力系統の状態を把握する計器用変成器,そこから得られる情報をもとに事故を検出して事故除去指令を出す保護リレー,指令を受けて事故点を切り離す遮断器の,三つにより構成される。これらに関して,次の (1) ~ (3) のそれぞれに対し,100 字程度で簡潔に述べよ。

(1) 計器用変成器の役割について説明し,計器用変成器の最も代表的なものを二つ挙げよ。また,計器用変成器の比誤差 $\epsilon$ [%] を,公称変成比 $K_\text{n}$,真の変成比 $K$ を用いた式で表せ。

(2) 保護リレーが電力系統を的確に保護するために具備すべき条件のうち,信頼性について説明せよ。

(3) 一般に 77 又は 66 kV 系統に使用される遮断器の定格遮断時間を,サイクル数で答えよ。また,遮断器において保護リレーからの事故除去指令を受ける箇所の名称を答え,あわせて同箇所が持つ引外し自由(トリップフリー)の機能と目的について説明せよ。

問2 解答と解説

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(1) 計器用変成器の役割ほか

(1)-1 計器用変成器の役割

電力系統の電流,電圧は,大電流,高電圧であることから,これを保護リレー装置や制御装置に取り込むために,計器用変成器で小電流,低電圧に変換する必要がある。計器用変成器の役割は,保護リレーや計器を高圧回路や特別高圧回路から絶縁し,電流や電圧を適当な大きさに小さく変成して継電器や計器に与えることである。

(1)-2 代表的な計器用変成器

最も代表的な計器用変成器として,電流を変換する変流器(CT : Current Transformer),電圧を変換する計器用変圧器(VT : Voltage Transformer)がある。

(1)-3 計器用変成器の比誤差

比誤差 $\epsilon$ [%] は,次式で表される。(ただし,$K_\text{n}$ は公称変成比,$K$ は真の変成比である。)

\[ \epsilon = \frac{K_\text{n}-K}{K} \times 100 \text{ [%]} \]

(2) 保護リレーの信頼性

保護リレーが電力系統を的確に保護するために具備すべき条件のうち,信頼性について以下に記載する。

  • 保護区間内部の事故に対してのみ正動作し,誤不動作しないこと。
  • 保護区間外部の事故に対しては正不動作し,誤動作しないこと。
  • 点検や自動監視を行うこと。
  • 故障率が低いこと。
  • 冗長化されていること。

(3) 遮断器の定格遮断時間ほか

(3)-1 遮断器の定格遮断時間

一般に 77 又は 66 kV 系統に使用される遮断器の定格遮断時間は,5 サイクル又は 3 サイクルである。

(3)-2 遮断器において事故除去指令を受ける箇所の名称

遮断器において保護リレーからの事故除去指令を受ける箇所の名称は,引外しコイル(トリップコイル)である。

(3)-3 引外し自由(トリップフリー)の機能と目的

引外しコイルが持つ引外し自由(トリップフリー)の機能は,引外しコイルと投入コイルが同時に付勢されたとしても,投入動作と無関係に自由に引外される機能のことである。投入動作と事故が同時に発生した場合に開放を優先し,投入・解放を繰り返さないことにより遮断器の損傷・大事故を防ぐ目的で用いられる。

参考
  • 電気学会 : 「保護制御システムにおける計器用変成器の関連技術の現状と動向」,電気学会技術報告 第1475号(2020年3月)
  • 目指せ!電気主任技術者~解説ノート~「保護リレーシステム
  • 目指せ!電気主任技術者~解説ノート~「計器用変成器

問3 対称座標法を用いた 1 線地絡故障の計算

対称座標法を用いた 1 線地絡故障の計算に関して,次の問に答えよ。

図のような送受電端の変圧器の中性点をそれぞれ $R_\text{e}$ の抵抗で接地したこう長 20 km,電圧 66 kV,周波数 50 Hz の三相 3 線式 1 回線送電線路がある。

その a 相 1 線が $R_\text{f}$ の抵抗を通じて地絡を生じた場合の地絡電流を求めたい。

三相 3 線式 1 回線送電線路
図 三相 3 線式 1 回線送電線路

(1) 地絡電流を $\dot{I_\text{g}}$ を,a 相の無負荷電圧 $\dot{E_\text{a}}$,この送電回路の故障点から見た零相インピーダンス $\dot{Z_0}$,正相インピーダンス $\dot{Z_1}$,逆相インピーダンス $\dot{Z_2}$,及び,地絡点の抵抗 $R_\text{f}$ で表せ。

なお,故障点での各相電圧,各相電流を図に示すように $\dot{V_\text{a}}$,$\dot{V_\text{b}}$,$\dot{V_\text{c}}$,$\dot{I_\text{a}}$,$\dot{I_\text{b}}$,$\dot{I_\text{c}}$ とし,それを対称成分に変換したものを $\dot{V_\text{0}}$,$\dot{V_\text{1}}$,$\dot{V_\text{2}}$,$\dot{I_\text{0}}$,$\dot{I_\text{1}}$,$\dot{I_\text{2}}$ としたとき,以下の関係となる。

\[ \dot{V_0}=-\dot{Z_0}\dot{I_0} \] \[ \dot{V_1}=\dot{E_\text{a}}-\dot{Z_1}\dot{I_1} \] \[ \dot{V_2}=-\dot{Z_2}\dot{I_2} \]

また,故障条件から以下の関係となる。

\[ \dot{I_\text{b}}=\dot{I_\text{c}}=0 \] \[ \dot{V_\text{a}}=\dot{I_\text{a}}R_\text{f} \]

(2) 零相インピーダンス $\dot{Z_0}$,正相インピーダンス $\dot{Z_1}$,逆相インピーダンス $\dot{Z_2}$ をそれぞれ求めよ。ただし,1 線当たりの対地静電容量 $C$ は 0.005 μF/km,変圧器の中性点の抵抗 $R_\text{e}$ は $\displaystyle \frac{2000}{3}$ Ω として,その他のインピーダンス,また負荷電流は無視するものとする。

なお,$\pi=3.1416$ とする。

(3) 小問 (2) の条件に加えて,地絡点の抵抗 $R_\text{f}$ が 10 Ω の場合における地絡電流の大きさ $|\dot{I_\text{g}}|$ [A] を求めよ。

問3 解答と解説

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準備中

問4 単相 3 線式

一般的に低圧配電方式として広く使用されている単相 3 線式について,次の問に答えよ。

(1) 我が国の単相 2 線式(200 V と 100 V)と単相 3 線式を図で示し,単相 3 線式を用いた電力供給の特徴を,単相 2 線式と比較して利便性及び安全性の観点から 200 字程度で述べよ。ただし,小問 (2),(3) に関する特徴は除く。

(2) 単相 3 線式は単相 2 線式と比較して電圧降下が小さいことを示したい。単相 2 線式と単相 3 線式とで 100 V 負荷を用いる場合,単相 2 線式の負荷電力と単相 3 線式の負荷電力の合計が等しい際の 100 V 負荷にかかる電圧降下について計算により比較せよ。ただし,単相 3 線式の各相間(電圧線と中性線との間)の負荷は等しいものとし,各方式での電線の太さは同一とし抵抗のみを考慮するものとする。

(3) 単相 3 線式における中性線の欠相(断線)により発生する障害,欠相が生じる原因,及び障害の防止対策(防止対策については二つ)について述べよ。

問4 解答と解説

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(1)

(1)-1 単相 3 線式と単相 3 線式の図示

我が国の単相 3 線式(200 V と 100 V)と単相 3 線式を下図に示す。

図 我が国の単相 3 線式(200 V と 100 V)と単相 3 線式
図 我が国の単相 2 線式(200 V と 100 V)と単相 3 線式
(1)-2 単相 3 線式を用いた電力供給の特徴

単相 3 線式では,上図に示すように電源の単相変圧器の中性点から中性線を引き出し,両外側の電圧線とともに 3 線で負荷に電力供給を行い,以下の特徴を持つ。

(利便性) 一つの系統から単相の 100 V と 200 V を取り出すことができ,100 V と 200 V のどちらの機器も使用できる。

(安全性) 中性線が接地されているので,200 V 回路の対地電位は 100 V となることから,200 V 回路の安全性が高い。

(2) 単相 2 線式と単相 3 線式の電圧降下

(2) 単相 2 線式,単相 3 線式の電線 1 条当たりの抵抗を $R$ [Ω],負荷の力率を $\cos\theta$($\theta$ は非常に小さいものとする)とし,それぞれの電流を $I_2$,$I_3$ [A],100 V 負荷端の電圧降下を $\Delta V_2$,$\Delta V_3$ [V] とする。題意より単相 3 線式は中性線に電流が流れないので,電圧降下は 1 線分となる。よって,各電圧降下は,次式で求められる。

\[ \Delta V_2 = 2 I_2 R \cos\theta \] \[ \Delta V_3 = I_3 R \cos\theta \]

$\Delta V_3$ と $\Delta V_2$ の比をとり,負荷電流が等しい条件 $I_2 = 2 I_3$ を代入する。

\[ \frac{\Delta V_3}{\Delta V_2} = \frac{I_3}{2 I_2}=\frac{1}{4} \]

したがって,単相 3 線式の電圧降下は単相 2 線式の電圧降下の 1/4 となる。

図 単相 2 線式と単相 3 線式の電圧降下
図 単相 2 線式と単相 3 線式の電圧降下

(3) 単相 3 線式における中性線の欠相(断線)

(3)-1 中性線の欠相により発生する障害

二つの 100 V 回路の負荷が不平衡であるときは,中性線が断線していると回路ごとの電圧に不平衡が生じる。一方の 100 V 回路で過電圧が生じ,他の回路では電圧が低下して,機器類の損傷・焼損及び誤動作などの障害を起こす恐れがある。

(3)-2 中性線の欠相が生じる原因

中性線欠相の主な発生原因は,分電盤内の開閉器の端子等において接触が不完全になるものである。この接触不良は,工事施工不良によるねじ締めの不完全や導体温度変化による導体の膨張・収縮や振動等により経年的な接触不完全へのは進展が考えられる。

(3)-3 障害の防止対策

障害の防止対策は,次のようなものがある。

  • 2 ねじ方式,圧着端子方式等により開閉器類端子部の構造を改善し,長時間使用してもねじのゆるみが生じにくい構造とする。
  • 中性線欠相による過電圧発生時に回路を遮断する機能(欠相保護機能)を持たせた漏電遮断器を使用する。
  • 開閉器類を設置するとき,高温・多湿の場所,振動や塵埃のある場所への設置を極力避ける。また,端子締め付けに適した工具を用い,確実に施工・確認をする。
  • 既設開閉器類の端子部の点検のほか,異臭,テレビ・ラジオの雑音,機器類の運転の異常,照明器具の明るさの異常などから,不良箇所の早期発見に努め,処置する。
  • 低圧線の末端にバランサ(単巻変圧器)を設置することで,中性線断線時の電圧不平衡を大幅に軽減する。

参考文献

問5 特別高圧架空電線路による電磁誘導障害

特別高圧架空電線路による電磁誘導障害について,次の問に答えよ。

(1) 電磁誘導作用により通信線に誘起される電圧の種類を二つ挙げ,それぞれの発生原理について,簡潔に説明せよ。

(2) 電磁誘導障害の防止対策のうち,架空電線路側の対策について,二つ答えよ。

問5 解答と解説

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(1) 電磁誘導作用により通信線に誘起される電圧の種類と発生原因

電磁誘導作用により通信線に誘起される電圧の種類と発生原因を下表に示す。

表 電磁誘導作用により通信線に誘起される電圧の種類と発生原因
電圧の種類 発生原因
異常時誘導電圧 送電線に一線地絡事故が発生した場合に地絡電流が大地帰路電流となって流れることにより,隣接する通信線路と大地間に誘起される電圧
常時誘導電圧 送電線の常時運転時に,各相の負荷電流の不平衡や各相導体と通信線の離隔の不整合によって誘起される電圧
誘導雑音電圧 送電線に流れる常時の高調波電流に起因して生じる電圧

(2) 電磁誘導障害の防止対策

電磁誘導障害の防止対策のうち,架空電線路側の対策は,以下のようなものがある。

  • 架空地線の条数を増やす。
  • 架空地線に導電率のよい鋼心イ号アルミより線やアルミ被鋼より線を使用する。
  • 送電線をねん架する。
  • 送電系統の保護継電方式に高速遮断方式を採用する。
  • 遮へい線を設置する。
  • 送電線のルートを変更し,お互いの離隔距離を大きくする。
  • 中性点抵抗接地方式の抵抗値を大きくする。
  • 中性点接地方式に消弧リアクトル接地方式を採用する。

参考文献

問6 力率改善用コンデンサ

図 1 は,受変電設備の一部を表した単線結線図である。容量 $P_\text{T}=12000$ [kV·A] の変圧器から,容量 $P_1=$ 6 600 kW で,力率 $\cos\theta_1 =$ 0.8(遅れ)の負荷に電力を供給しており,変圧器の 2 次側には,力率改善用コンデンサ $Q_1 =$ 2 000 kvar が投入されている。この設備において,次の問に答えよ。なお,力率改善用コンデンサの直列リアクトルは考慮しなくてよい。

受変電設備の一部を表した単線結線図
図 1 受変電設備の一部を表した単線結線図

上記の運用状況をベクトル図に表すと,図 2 のようになる。この運用にさらに容量 $P_2 =$ 4 500 kW で,力率 $\cos\theta_2 =$ 0.6(遅れ)の負荷を増設すると,変圧器は過負荷になるおそれがある。そこで,変圧器を過負荷にしないためには,増設分の力率改善用コンデンサの容量 $Q_2$ [kvar] は,少なくともいくら必要か。また,このときの総合力率 $\cos\theta_\text{S}$ はいくらになるか。

答案用紙に印刷されている図 2 に,$P_2$ [kW],$Q_2$ [kvar] のベクトル図と,力率角 $\theta_2$ を追記せよ。

総合力率を $\cos\theta_\text{S} =$ 0.95(遅れ)にするためには,増設する力率改善用コンデンサの容量 $Q_2$ [kvar] はいくら必要か。

運用状況のベクトル図
図 2 運用状況のベクトル図

問6 解答と解説

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準備中

参考文献

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