平成26年度 第二種 電気主任技術者二次試験 機械・制御

2020年11月23日作成,2021年12月19日更新

目次

  1. 三相かご形誘導電動機の L 形等価回路
  2. 正相及び逆相リアクタンスの測定法
  3. 昇降圧チョッパ及び昇圧チョッパ
  4. フィードバック制御系

問1 三相かご形誘導電動機の L 形等価回路

定格線間電圧 200 V,定格周波数 50 Hz,4 極の三相かご形誘導電動機について,三相星形結線 1 相分の L 形等価回路から動作特性を考える。三相星形結線 1 相分の L 形等価回路の回路定数を,励磁アドミタンス $\dot{y_0}=0.05-\text{j}0.15$ S,一次抵抗 $r_1=0.1$ Ω,一次漏れリアクタンス $x_1=0.3$ Ω,二次抵抗の一次側換算値 $r_2'=0.15$ Ω,二次漏れリアクタンスの一次側換算値 $x_2'=0.4$ Ω とする。誘導電動機を定格電圧,定格周波数の三相交流電源に接続し,負荷トルクを $T_\text{L}$ [N·m] としたとき,滑りは $s=0.03$ であった。負荷トルクが $T_\text{L}$ [N·m] のときの次の値を求めよ。

  1. 同期速度 $n_0$ [min-1]
  2. 励磁電流 $I_0$ [A]
  3. 二次電流の一次換算値 $I_2'$ [A]
  4. 負荷トルク $T_\text{L}$ [N·m]
  5. 一次電流 $I_1$ [A]
  6. 入力力率
1. 同期速度

同期速度 $n_0$ を定格周波数 $f_1$ と 極数 $p$ より求める。

\[ n_0=\frac{120 f_1}{p}=\frac{120\times50}{4}=1500 \]

よって,同期速度は 1 500 [min-1] である。

2. 励磁電流

励磁電流 $\dot{I_0}$ は,相電圧 $V_1$ と励磁アドミタンス $\dot{y_0}$ より求められる。

\[ \dot{I_0}=V_1 \dot{y_0}=\frac{200}{\sqrt{3}}(0.05-\text{j}0.15)=5.7735-\text{j}17.320 \] \[ I_0=\sqrt{5.7735^2+17.320^2}=18.257\approx18.3 \]

よって,励磁電流の大きさは 18.3 [A] である。

3. 二次電流の一次換算値

二次電流の一次換算値 $\dot{I_2'}$ は,次式で求められる。

\[ \dot{I_2'}=\frac{V_1}{r_1+\frac{r_2'}{s}+\text{j}(x_1+x_2')}=\frac{200/\sqrt{3}}{0.1+\frac{0.15}{0.03}+\text{j}(0.3+0.4)}=22.222-\text{j}3.0500 \] \[ I_2'=\sqrt{22.222^2+3.0500^2}=22.430\approx22.4 \]

よって,二次電流の一次換算値は 22.4 [A] である。

4. 負荷トルク

負荷トルク $T_\text{L}$ は,同期角速度を $\omega_\text{m}$ [rad/s],機械出力を $P_\text{m}$ [W],電源角周波数を $\omega_1$ [rad/s],同期ワットを $P_2$ [W] とすると,次式のように変形できる。

\[ T_\text{L}=\frac{P_\text{m}}{\omega_\text{m}}=\frac{P_2}{\frac{\omega_1}{p}}=\frac{3 \times p/2}{2\pi f_1}\times {I_2'}^2 \times \fraf{r_2'}{s} \] \[ T_\text{L}=\frac{3\times2}{2\pi \times 50}\times 22.430^2 \times \frac{0.15}{0.03}=48.067\approx48.1 \]

よって,負荷トルクは 48.1 [N·m] である。

5. 一次電流

一次電流 $\dot{I_1}$ は,励磁電流 $\dot{I_0}$ と二次電流の一次換算値 $\dot{I_2'}$ の和である。

\[ \dot{I_1}=\dot{I_0}+\dot{I_2'}=(5.7735-\text{j}17.320)+(22.222-\text{j}3.0500)=27.995-\text{j}20.370 \] \[ I_1=\sqrt{27.995^2+20.370^2}=34.621\approx34.6 \]

よって,一次電流は 34.6 [A] である。

6. 入力力率

入力力率 $\cos\phi$ は,一次電流の大きさとその実部より求められる。

\[ \cos\phi=\frac{27.995}{34.621}=0.80861=0.809 \]

よって,入力力率は 0.809 である。

問2 正相及び逆相リアクタンスの測定法

三相星形結線の円筒形同期発電機[定格容量 100 000 kV·A,定格電圧(線間電圧)$V_\text{R}=$ 13 800V,定格電流(相電流)$I_\text{R}=$ 4 184 A,定格周波数 60 Hz,定格力率 0.9(遅れ)]における正相及び逆相リアクタンスの測定に関して,次の問に答えよ。ただし,電機子抵抗などの抵抗分は無視する。

(1) 正相リアクタンス

円筒形同期発電機の正相リアクタンスは,定格回転速度で定常運転状態では同期リアクタンスとなる。同期リアクタンスは,図 1 に示す無負荷飽和曲線と三相短絡電流特性曲線から求めることができる。同期リアクタンスの定格電圧での飽和値 $X_\text{ss}$ [Ω] 及び同期リアクタンスの不飽和値 $X_\text{su}$ [Ω] を,$V_\text{R}$ [V],$I_\text{R}$ [A],$I_\text{f2}$ [A],$I_\text{f0}$ [A] 又は $I_\text{f0g}$ [A] を用いて表す式を導出せよ。その導出過程も示すこと。なお,$I_\text{f2}$,$I_\text{f0}$ 及び $I_\text{f0g}$ は図 1 に示す界磁電流である。また,$I_\text{f2}=600$ A,$I_\text{f0}=300$ A,$I_\text{f0g}=270$ A として,$X_\text{ss}$ [Ω] 及び $X_\text{su}$ [Ω] を導出せよ。

(2) 逆相リアクタンス

図 2 に示すように,電機子巻線の 2 端子を短絡し,発電機を定格回転速度で運転する。界磁電流を流し,短絡回路の電流 $I_\text{S}$ [A] 及び短絡回路と開放端子との間の電圧 $V_\text{OS}$ [V] を計測する。また,このときの対称座標系による等価回路を図 3 に示す。逆相リアクタンス $X_2$ [Ω] を,$V_\text{OS}$ [V] 及び $I_\text{S}$ [A] を用いて表す式を導出せよ。その導出過程も示すこと。また,$V_\text{OS}=250$ V,$I_\text{S}=400$ A として,$X_2$ [Ω] を算出せよ。

無負荷飽和曲線と三相短絡電流特性
図 1 無負荷飽和曲線と三相短絡電流特性
逆相リアクタンスの測定回路
図 2 逆相リアクタンスの測定回路
対称座標法における等価回路
図 3 対称座標法における等価回路
(1) 正相リアクタンス

短絡電流 $\dot{I_\text{SC}}$ は発電機の無負荷誘導起電力(相電圧)$\dot{E_0}$ と $\text{j}X_\text{S}$ から,次式となる。

\[ \dot{I_\text{SC}}=\frac{\dot{E_0}}{\text{j}X_\text{S}}=\frac{1}{\text{j}X_\text{S}}\times\frac{V_\text{R}}{\sqrt{3}}=\frac{1}{X_\text{S}}\times\frac{V_\text{R}}{\sqrt{3}}\times \text{e}^{-\text{j}\frac{\pi}{2}} \]

上式より,同期リアクタンスは次式となる。

\[ X_\text{S}=\frac{V_\text{R}}{\sqrt{3}I_\text{SC}} \]

同じ界磁電流であれば,無負荷誘導起電力は同じである。無負荷飽和曲線上で電圧 $V_\text{R}$ における界磁電流 $I_\text{f0}$ と,三相短絡電流特性曲線上での同じ界磁電流 $I_\text{f0}$ における短絡電流 $I_\text{S0}$ の値から算出した同期リアクタンスが,飽和値 $X_\text{ss}$ となる。

\[ I_\text{S0}=\frac{I_\text{R}\times I_\text{f0}}{I_\text{f2}} \]

したがって,飽和値 $X_\text{ss}$ は次式で求められる。

\[ X_\text{ss}=\frac{V_\text{R}\times I_\text{f2}}{\sqrt{3}\times I_\text{R} \times I_\text{f0}} \]

無負荷飽和曲線の低電圧不飽和域の直線部を延長したギャップ線上で電圧 $V_\text{R}$ における界磁電流 $I_\text{f0g}$ と,三相短絡電流特性曲線上での同じ界磁電流 $I_\text{f0g}$ における短絡電流 $I_\text{S0g}$ の値から算出した同期リアクタンスが,不飽和値 $X_\text{su}$ となる。

\[ I_\text{S0g}=\frac{I_\text{R}\times I_\text{f0g}}{I_\text{f2}} \]

したがって,不飽和値 $X_\text{su}$ は次式で求められる。

\[ X_\text{su}=\frac{V_\text{R}\times I_\text{f2}}{\sqrt{3}\times I_\text{R} \times I_\text{f0g}} \]

上の 2 式に,定格電圧(線間電圧)$V_\text{R}=$ 13 800V,定格電流(相電流)$I_\text{R}=$ 4 184 A,$I_\text{f2}=600$ A,$I_\text{f0}=300$ A,$I_\text{f0g}=270$ A として,$X_\text{ss}$ [Ω] 及び $X_\text{su}$ [Ω] を導出する。

\[ X_\text{ss}=\frac{13800\times600}{\sqrt{3}\times4184\times300}=3.8085\approx3.81 \] \[ X_\text{su}=\frac{13800\times600}{\sqrt{3}\times4184\times270}=4.2317\approx4.23 \]

したがって,飽和値は 3.81 [Ω],不飽和値は 4.23 [Ω] である。

(2) 逆相リアクタンス

二相短絡(V 相と W 相間短絡)状態であり,電圧について次式が成り立つ。

\[ \dot{V_\text{V}}=\dot{V_\text{W}} \] \[ \dot{V_0}+a^2 \dot{V_1} + a\dot{V_2}=\dot{V_0}+a\dot{V_1}+a^2\dot{V_2} \]

よって,$\dot{V_1}=\dot{V_2}$ となる。(上式における $a$ はベクトルオペレータである。)

一方,二相短絡(V 相と W 相間短絡)状態であり,電流について $\dot{I_\text{U}}$,$\dot{I_\text{V}}=-\dot{I_\text{W}}$ が成り立つ。よって,$\dot{I_0}=0$ となり,$\dot{I_0}=0=\dot{I_1}+\dot{I_2}$ から,$\dot{I_1}=-\dot{I_2}$ となり,図 3 の等価回路となる。

\[ \dot{I_\text{V}}=a^2 \dot{I_1}+a\dot{I_2}=-a^2 \dot{I_2}+a\dot{I_2}=\text{j}\sqrt{3}\times\dot{I_2} \]

上式より,$\dot{I_2}$ は,次式となる。

\[ \dot{I_2}=\frac{\dot{I_\text{V}}}{\text{j}\sqrt{3}} \]

さらに,相関電圧 $\dot{V_\text{UV}}$ は,次式で求められる。

\[ \dot{V_\text{UV}}=\dot{V_\text{U}}-\dot{V_\text{V}}=(\dot{V_0}+\dot{V_1}+\dot{V_2})-(\dot{V_0}+a^2 \dot{V_1}+a\dot{V_2}) \] \[ \dot{V_\text{UV}}=2\dot{V_2}-(-\dot{V_2})3\dot{V_2} \]

よって,$\dot{V_2}$ は,次式となる。

\[ \dot{V_2}=\frac{\dot{V_\text{UV}}}{3} \]

さらに,$\text{j}X_2$ は,次式となる。

\[ \text{j}X_2=\frac{\dot{V_2}}{-\dot{I_2}}=\frac{\dot{V_\text{UV}\times\text{j}\sqrt{3}}}{-3\times \dot{I_\text{V}}} \]

ここで,$V_\text{UV}=V_\text{OS}$,$I_\text{V}=I_\text{S}$ より,逆相リアクタンス $X_2$ は,次式で表される。

\[ X_2=\frac{V_\text{OS}}{\sqrt{3}I_\text{S}} \]

上式に $V_\text{OS}=$ 250 V,$I_\text{S}=$ 400 A を代入する。

\[ X_2=\frac{250}{\sqrt{3}\times400}=0.36084\approx0.361 \]

したがって,逆相リアクタンスは 0.361 [Ω] である。

問3 昇降圧チョッパ及び昇圧チョッパ

図 1 に示す昇降圧チョッパ及び図 3 に示す昇圧チョッパは,運転が定常状態にあるものとする。この動作特性について,次の問に答えよ。ただし,両図において,リアクトルのインダクタンスはその電流が連続するほどに適度に大きく,また,コンデンサの静電容量は出力直流電圧が一定とみなせるほど十分に大きいものとし,損失のない理想的なチョッパとする。

(1) 図 1 の昇降圧チョッパにおいて,トランジスタ $Q_1$ が時刻 0 でターンオン,時刻 $T_1$ でターンオフ,時刻 $T_2$ でターンオンするという 1 周期の動作を繰り返しているとする。図 2 は,この昇降圧チョッパの各部の電流波形を示す。図 1 に示す各部の電流 $i_\text{S}$,$i_\text{D}$,$i_\text{L}$ 及び $i_\text{C}$ の波形を図 2 の波形の中から選び,その記号で答えよ。

(2) 図 2 から $T_1$ 及び $T_2$ を用いて通流率(時比率)$\alpha$ を表せ。

(3) 図 1 の出力電圧 $V_1$ を入力電圧 $E_1$ 及び通流率 $\alpha$ を用いて表せ。

(4) 図 3 の昇圧チョッパにおいて,トランジスタ $Q_2$ が時刻 0 でターンオン,時刻 $T_\text{a}$ でターンオフ,時刻 $T_\text{b}$ でターンオンするという 1 周期の動作を繰り返しているとする。このときの通流率(時比率)$\beta$ を $T_\text{a}$ 及び $T_\text{b}$ を用いて表し,出力電圧 $V_2$ を入力電圧 $E_2$ 及び通流率 $\beta$ を用いて表せ。

(5) 図 1 の昇降圧チョッパと図 3 の昇圧チョッパとにおいて,同じ入力電圧で同じ通流率のときに出力電圧が高いのはどちらのチョッパであるか。また,その理由を示せ。

昇降圧チョッパ
図 1 昇降圧チョッパ
図 2
図 2
昇圧チョッパ
図 3 昇圧チョッパ
(1) 電流波形

電流 $i_\text{S}$ は (b),$i_\text{D}$ は (c),$i_\text{L}$ は(a),$i_\text{C}$ は (d) の波形である。

(2) 昇降圧チョッパの通流率(時比率)

オン時間を $T_\text{ON}$,オフ時間を $T_\text{OFF}$,周期を $T$ とすると,通流率 $\alpha$ は次式で定義される。

\[ \alpha=\frac{T_\text{ON}}{T_\text{ON}+T_\text{OFF}}=\frac{T_\text{ON}}{T} \]

図 2 より,$T_\text{ON}$ が $T_1$,$T$ が $T_2$ であるので,$\alpha$ は次式で表される。

\[ \alpha=\frac{T_1}{T_2} \]
(3) 昇降圧チョッパの出力電圧

定常状態において,リアクトルの 1 周期の電圧時間積は零となることから,次式が与えられる。

\[ E_1 T_1 +(-V_1)(T_2 - T_1)=0 \]

したがって,$E_1$ と $V_1$ との関係は次式となる。

\[ V_1=\frac{T_1}{T_2 - T_1}E_1=\frac{T_1 / T_2}{1- T_1 / T_2}E_1=\frac{\alpha}{1-\alpha}E_1 \]
(4) 昇圧チョッパの通流率と出力電圧

(2) と同様に通流率 $\beta$ は次式で示される。

\[ \beta=\frac{T_\text{a}}{T_\text{b}} \]

図 3 の昇圧チョッパにおいても,定常状態では,リアクトル 1 周期の電圧時間積は零となることから,次式が与えられる。

\[ E_2 T_\text{a}+(E_2 - V_2)(T_\text{b} - T_\text{a})=0 \]

したがって,$E_2$ と $V_2$ との関係は次式となる。

\[ V_2=\frac{T_\text{b}}{T_\text{b}-T_\text{a}}E_2=\frac{1}{1-T_\text{a}/T_\text{b}}E_2=\frac{1}{1-\beta}E_2 \]
(5) 昇降圧チョッパと昇圧チョッパの出力電圧の比較

昇降圧チョッパと昇圧チョッパにおいて,同じ入力電圧 $E$,同じ通流率 $\gamma$ のときの出力電圧を $V_{1\gamma}$,$V_{2\gamma}$ とする。

\[ V_{1\gamma}=\frac{\gamma}{1-\gamma}E \] \[ V_{2\gamma}=\frac{1}{1-\gamma}E \]

$\gamma$ は,$0 \lt \gamma \lt 1$ であるので,

\[ \frac{\gamma}{1-\gamma} \lt \frac{1}{1-\gamma} \]

となり,$V_{1\gamma} \lt V_{2\gamma}$ となる。よって,昇圧チョッパの出力電圧がの方が高くなる

問4 フィードバック制御系

図 1 はフィードバック制御系の基本構成を示し,$G_\text{C}(s)$ は補償器の伝達関数,$G_\text{P}(s)$ は制御対象の伝達関数を表している。また,$R(s)$,$E(s)$,$D(s)$ 及び $Y(s)$ は,目標値 $r(t)$,偏差 $e(t)$,外乱 $d(t)$ 及び制御量 $y(t)$ をそれぞれラプラス変換したものである。$\displaystyle G_\text{C}(s)=\frac{4(s+1)}{s+2}$,$\displaystyle G_\text{P}(s)=\frac{1}{s(s^2+5s+5)}$ として,次の問に答えよ。

(1) $D(s)=0$ としたとき,$R(s)$ から $E(s)$ までの伝達関数を求めよ。

(2) 上記 (1) において,目標値として図 2 に示す大きさ $a$ のステップ信号を入力したときの定常偏差を求めよ。

(3) 上記 (1) において,目標値として図 3 に示す傾き $b$ のランプ信号を入力したときの定常偏差を求めよ。

(4) $R(s)=0$ としたとき,$D(s)$ から $Y(s)$ までの伝達関数を求めよ。

(5) 上記 (4) において,外乱として図 2 に示す大きさ $a$ のステップ信号を印加したとき,制御量の最終値を求めよ。

(6) 上記 (4) において,外乱として図 3 に示す傾き $b$ のランプ信号を印加したとき,制御量は発散することを示せ。

フィードバック制御系
図 1 フィードバック制御系
ステップ信号
図 2 ステップ信号
ランプ信号
図 3 ランプ信号
(1) $R(s)$ から $E(s)$ までの伝達関数

図 1 から,次の関係式を得る。

\[ E(s)=R(s)-G_\text{C}(s)G_\text{P}(s)E(s) \]

上式を変形して,$R(s)$ から $E(s)$ までの伝達関数を求める。

\[ \frac{E(s)}{R(s)}=\frac{1}{1+G_\text{C}(s)G_\text{P}(s)} \]

上式に $\displaystyle G_\text{C}(s)=\frac{4(s+1)}{s+2}$,$\displaystyle G_\text{P}(s)=\frac{1}{s(s^2+5s+5)}$ を代入して,次式を得る。

\[ \frac{E(s)}{R(s)}=\frac{1}{1+G_\text{C}(s)G_\text{P}(s)}=\frac{1}{1+\frac{4(s+1)}{s+2}\times\frac{1}{s(s^2+5s+5)}} \] \[ \frac{E(s)}{R(s)}=\frac{s^4 +7s^3+15s^2 +10s}{s^4 +7s^3 +15s^2 + 14s +4} \]
(2) ステップ信号を入力したときの定常偏差

目標値として図 2 のステップ信号を入力するとき,目標値のラプラス変換は次式となる。

\[ R(s)=\frac{a}{s} \]

定常偏差 $e(\infty)$ を求めるために,次の最終値の定理を用いる。

\[ e(\infty)=\lim_{s\rightarrow 0}{sE(s)}=\lim_{s\rightarrow 0}{s\times \frac{s^4 +7s^3+15s^2 +10s}{s^4 +7s^3 +15s^2 + 14s +4} \times \frac{a}{s}}=0 \]
(3) ランプ信号を入力したときの定常偏差

目標値として図 3 のランプ信号を入力するとき,目標値のラプラス変換は次式となる。

\[ R(s)=\frac{b}{s^2} \]

(2) と同様にして,定常偏差 $e(\infty)$ を求める。

\[ e(\infty)=\lim_{s\rightarrow 0}{sE(s)}=\lim_{s\rightarrow 0}{s\times \frac{s^4 +7s^3+15s^2 +10s}{s^4 +7s^3 +15s^2 + 14s +4} \times \frac{b}{s^2}}=\frac{5}{2}b \]
(4) $D(s)$ から $Y(s)$ までの伝達関数

図 1 から,次の関係式を得る。

\[ Y(s)=[D(s)-G_\text{C}(s)Y(s)]G_\text{P}(s) \]

上式を変形して,$D(s)$ から $Y(s)$ までの伝達関数を求める。

\[ \frac{Y(s)}{D(s)}=\frac{G_\text{P}(s)}{1+G_\text{C}(s)G_\text{P}(s)}=\frac{s+2}{s^4 + 7s^3 +15s^2 + 14s +4} \]
(5) ステップ信号を印加時の制御量の最終値

外乱として図 2 のステップ信号を印加するとき,外乱のラプラス変換は次式となる。

\[ D(s)=\frac{a}{s} \]

よって,外乱が制御量に及ぼす定常値 $y_\text{d}(\infty)$ は,次式で計算することができる。

\[ y_\text{d}(\infty)=\lim_{s\rightarrow 0}{s\times \frac{s+2}{s^4 + 7s^3 +15s^2 + 14s +4} \times \frac{a}{s}}=\frac{a}{2} \]
(6) ランプ信号を印加時の制御量

外乱として図 3 のランプ信号を印加するとき,外乱のラプラス変換は次式となる。

\[ D(s)=\frac{b}{s^2} \]

(5) と同様に計算して,外乱が制御量に及ぼす定常値 $y_\text{d}(\infty)$ は,次式で計算することができる。

\[ y_\text{d}(\infty)=\lim_{s\rightarrow 0}{s\times \frac{s+2}{s^4 + 7s^3 +15s^2 + 14s +4} \times \frac{b}{s^2}}=\infty \]

よって,発散する。

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