平成29年度 第二種 電気主任技術者二次試験 機械・制御
目次
問1 三相円筒形同期発電機の電圧変動率,出力電流および出力
三相円筒形同期発電機の電圧変動率,出力電流及び出力に関して,次の問に答えよ。ただし,電機子抵抗による電圧降下及び磁器飽和は無視するものとする。また,単位法は自己定格容量(定格皮相電力 [kV·A])を基準としている。
- 図に星形結線の 1 相分のフェーザ図を示す。その負荷状態での電圧変動率 $\epsilon$ を $\displaystyle \epsilon=\frac{E-V}{V}\times100$ [%] と定義する。この $\epsilon$ を $V$,$I$,$X_\text{S}$ 及び $\phi$ を用いて表す式を導出せよ。なお,$E$,$V$ 及び $I$ は図に記載の各フェーザの大きさを示す。
- 発電機の $V$ 及び $I$ を一定として,力率 $\cos\phi$(遅れ,0 ° < $\phi$ ≤ 90°)を小さくした場合,$\epsilon$ が大きくなる理由を説明せよ。
- 短絡比 $K_\text{SCR}$ を無負荷飽和曲線及び三相短絡特性曲線を用いて導出する方法を説明せよ。
- $K_\text{SCR}$ と同期リアクタンス $X_\text{S}$ [p.u.] との関係を示せ。
また,$V$,$I$ 及び力率が同じ運転状態のとき,$K_\text{SCR}$ の小さな発電機の方の $\epsilon$ が大きくなる理由を説明せよ。 - $K_\text{SCR}=0.6$ の三相円筒形同期発電機において,三相平衡負荷を発電機に接続し,$V=1$ p.u. 一定になるように界磁電流を調整したところ,発電機の $\delta$ は 30° で力率 $\cos\phi$ は 0.9(遅れ)であった。この運転状態における $E$ [p.u.],$I$ [p.u.] 及び出力 $P$ [p.u.] を求めよ。また,このときの $\epsilon$ [%] を求めよ。

1. 電圧変動率
三相円筒形同期発電機のフェーザ図より,$E$ は次式となる。
\[ E=\sqrt{(V+X_\text{S}I\sin\phi)^2+(X_\text{S}I\cos\phi)^2}=\sqrt{V^2+2V\sin\phi X_\text{S}I+(X_\text{S}I)^2} \]電圧変動率 $\epsilon$ の定義式に上式を代入する。
\[ \epsilon=\frac{E-V}{V}\times100=\frac{\sqrt{V^2+2V\sin\phi X_\text{S}I+(X_\text{S}I)^2}-V}{V}\times100 \]2. 電圧変動率と力率の関係
力率 $\cos\phi$(遅れ)が小さくなると,$\phi$ は大きくなる。小問 1. で求めた電圧変動率 $\epsilon$ から,$\phi$ が大きくなると $\sin\phi$ は大きくなり,$V$,$I$ 及び $X_\text{S}$ は一定であるため,$\epsilon$ は大きくなる。
3. 短絡比の導出
無負荷飽和曲線から定格電圧発生時の界磁電流 $I_\text{fo}$ を,三相短絡特性曲線から定格電流に等しい持続短絡電流を流すときの界磁電流 $I_\text{fs}$ を用いて,次の式から短絡比 $K_\text{SCR}$ を導出する。
\[ K_\text{SCR}=\frac{I_\text{fo}}{I_\text{fs}} \]4. 短絡比と同期リアクタンスとの関係
単位法表記での同期リアクタンス $X_\text{S}$ は,短絡比 $K_\text{SCR}$ の逆数である。
\[ X_\text{S}=\frac{1}{K_\text{SCR}} \]また,この関係から $K_\text{SCR}$ が小さいほど $X_\text{S}$ は大きい。小問 1. で求めた式から,$V$,$I$ 及び $\phi$ が同じ運転状態のとき,$X_\text{S}$ が大きい方の発電機の $\epsilon$ は大きくなる。
5. 三相平衡負荷接続
$E$ と $V$ の関係を図から以下に示す。
\[ E\cos\delta=V+X_\text{S}I\sin\phi \] \[ E\sin\delta=X_\text{S}I\cos\phi \]上の 2 式より $I$ について整理する。
\[ I=\frac{\tan\delta \times V}{X_\text{S}\cos\phi-\tan\delta\times X_\text{S}\sin\phi} \]この式に,$V=1$ p.u.,$X_\text{S}=1/0.6=1.666 7$,$\tan\delta=\tan{\pi/6}=1/\sqrt{3}=0.57735$,$\cos\phi=0.9$,$\sin\phi=\sqrt{1-0.9^2}=0.43589$ を代入すると,$I$ は次式となる。
\[ I=\frac{0.57735 \times 1.0}{1.6667\times0.9-0.57735\times 1.6667\times 0.43589}=\frac{0.57735}{1.0806}=0.53429 \]$E$ は次式で表され,与えられた数値を代入する。($\sin\delta=\sin{\pi/6}=0.5$)
\[ E=\frac{X_\text{S}I\cos\phi}{\sin\delta}=\frac{1.6667\times0.53429\times0.9}{0.5}=1.6029 \]$P$ は次式で表され,与えられた数値を代入する。
\[ P=VI\cos\phi=1.0\times0.53429\times0.9=0.48086 \]$\epsilon$ は定義式に,与えられた数値を代入する。
\[ \epsilon=\frac{E-V}{V}\times100=\frac{1.6029-1.0}{1.0}\times100=60.290 \]したがって,$E$ は 1.60 [p.u.],$I$ は 0.534 [p.u.] 及び出力 $P$ 0.481 [p.u.],$\epsilon$ は 60.3 [%] である。
問2 単相単巻変圧器
図に示すように定格一次電圧 3 000 V,定格二次電圧 3 300 V の単相単巻変圧器がある。この変圧器の二次側に負荷を接続した場合,一次電圧 $V_1$ が 3 000 V,一次電流 $I_1$ が 100 A であった。次の問に答えよ。ただし,励磁電流及び巻線のインピーダンス降下は無視できるものとする。
- この単巻変圧器の巻数比を求めよ。
- 分路巻線の巻数 $w_\text{c}$ が 500 回であるとき,直列巻線の巻数 $w_\text{s}$ を求めよ。
- 直列巻線を流れる電流 $I_2$ 及び分路巻線を流れる電流 $I_\text{c}$ をそれぞれ求めよ。
- 自己容量 $S_\text{s}$ を求めよ。
- 巻数分比 $K$(負荷容量 $S$ に対する自己容量 $S_\text{s}$ の比)を求めよ。

1. 単巻変圧器の巻数比
定格一次電圧及び定格二次電圧をそれぞれ $V_\text{1n}$ 及び $V_\text{2n}$ とし,二次側(負荷側)を基準とした巻数比を $a$ とする。
\[ a=\frac{V_\text{1n}}{V_\text{2n}}=\frac{3000}{3300}=0.90909\approx0.909 \]2. 直列巻線の巻数
直列巻線及び分路巻線の巻数をそれぞれ $w_\text{s}$ 及び $w_\text{c}$ とすれば,巻数比 $a$ との関係は次式で表される。
\[ a=\frac{w_\text{c}}{w_\text{c}+w_\text{s}} \]$a=0.909$,$w_\text{c}=500$ であるので,$w_\text{s}$ を求める。
\[ w_\text{s}=(\frac{1}{a}-1)w_\text{c}=(\frac{3300}{3000}-1)\times500=50.0 \]3. 直列巻線を流れる電流と分路巻線を流れる電流
直列巻線を流れる電流を $I_2$,分路巻線を流れる電流を $I_\text{c}$ とし,励磁電流を無視すれば両巻線の起磁力の平衡条件から次の関係が成り立つ。
\[ w_\text{s}I_2=w_\text{c}I_\text{c} \]また,一次電流及び二次電流をそれぞれ $I_1$ 及び $I_2$ とすると,電流比 $I_1 / I_2$ は $a$ の逆数に等しい。
\[ \frac{I_1}{I_2}=\frac{1}{a} \]上の 2 式より直列巻線を流れる電流 $I_2$ と分路巻線を流れる電流 $I_\text{c}$ を求める。
\[ I_2=aI_1=0.90909\times100=90.909\approx90.9 \text{ [A]} \] \[ I_\text{c}=I_1-I_2=100-90.909=9.0909\approx9.09 \text{ [A]} \]4. 自己容量
自己容量 $S_\text{S}$ は,分路巻線を用いて求める。
\[ S_\text{S}=V_1 I_C=3000\times9.0909=27273 \]よって,自己容量は 27.3 kV·A である。
5. 巻数分比
負荷容量 $S$ は,次式で求められる。
\[ S=V_2 I_2 =3300\times90.909=300000 \]ここで,巻数分比を $K$ は,次式で求められる。
\[ K=\frac{S_\text{S}}{S}=\frac{27273}{300000}=0.09091\approx0.0909 \]問3 単相ダイオード整流器
図 1 ~ 3 のように単相ダイオード整流器を 200 V,50 Hz の交流電源 $v$ に接続する。それぞれの回路には,負荷として $R = 100$ Ω の抵抗器を接続する。図 2 のコンデンサの静電容量及び図 3 のインダクタのインダクタンスは十分に大きく,コンデンサの電圧リプル及びインダクタの電流リプルは無視できる。また,ダイオード,コンデンサ及びインダクタに損失はないものとする。回路が動作してから十分に時間が経過しているものとして,次の問に答えよ。
- 図 1 の負荷電圧 $v_\text{L1}$ の平均値 $V_\text{L1}$ を求めよ。
- 図 1 の負荷抵抗器 $R$ の消費電力の平均値 $P_\text{L1}$ を求めよ。
- 図 2 の負荷電圧 $v_\text{L2}$ の平均値 $V_\text{L2}$ を求めよ。
- 図 2 の負荷抵抗器 $R$ の消費電力の平均値 $P_\text{L2}$ を求めよ。
- 図 3 の負荷電圧 $v_\text{L3}$ の平均値 $V_\text{L3}$ を求めよ。
- 図 3 の負荷抵抗器 $R$ の消費電力の平均値 $P_\text{L3}$ を求めよ。



1. 負荷電圧 $v_\text{L1}$ の平均値 $V_\text{L1}$
電源電圧 $v$ を $\sqrt{2}V\sin\theta$ とすると,その全波整流波形である負荷電圧 $v_\text{L1}$ は次式となる。
\[ v_\text{L1}=|\sqrt{2}V\sin\theta| \]負荷電圧 $v_\text{L1}$ の平均値 $V_\text{L1}$ は次式で求められる。
\[ V_\text{L1}=\frac{1}{2\pi}\int_0^{2\pi}{v_\text{L1}}\text{d}\theta=\frac{1}{2\pi}\int_0^{2\pi}|\sqrt{2}V\sin\theta|\text{d}\theta \] \[ V_\text{L1}=\frac{1}{\pi}\int_0^{\pi}\sqrt{2}V\sin\theta\text{d}\theta=\frac{\sqrt{2}V}{\pi}\int_0^{\pi}\sin\theta\text{d}\theta \] \[ V_\text{L1}=\frac{\sqrt{2}V}{\pi}[-\cos\theta]_0^{\pi}=\frac{2\sqrt{2}}{\pi}V \]与えられた数値を代入する。
\[ V_\text{L1}=\frac{2\sqrt{2}}{\pi}\times200=180.06\approx180\text{ [V]} \]2. 負荷抵抗器 $R$ の消費電力の平均値 $P_\text{L1}$
負荷電圧 $v_\text{L1}$ の実効値は $v$ の実効値に等しいので,負荷抵抗器 $R$ の消費電力の平均値 $P_\text{L1}$ は次式で求められる。
\[ P_\text{L1}=\frac{V^2}{R}=\frac{200^2}{100}=400\text{ [W]} \]3. 負荷電圧 $v_\text{L2}$ の平均値 $V_\text{L2}$
コンデンサ $C$ は $v$ の最大値まで充電され $R$ によって放電される。しかし $C$ は十分に大きく,電圧リプルは無視できるので,$V_\text{L2}$ は $v$ の最大値(波高値)で一定となる。
\[ V_\text{L2}=\sqrt{2}V=\sqrt{2}\times200=282.84\approx283\text{ [V]} \]4. 負荷抵抗器 $R$ の消費電力の平均値 $P_\text{L2}$
負荷抵抗器 $R$ には,一定電圧 $V_\text{L2}$ が印加されるので,その消費電力の平均値 $P_\text{L2}$ は,次式で求められる。
\[ P_\text{L2}=\frac{{V_\text{L2}}^2}{R}=\frac{(\sqrt{2}V)^2}{R}=\frac{2\times200^2}{100}=800\text{ [W]} \]5. 負荷電圧 $v_\text{L3}$ の平均値 $V_\text{L3}$
全波整流波形のうち,交流成分は $L$ に印加し,直流成分,すなわち平均値のみが $R$ に印加する。
\[ V_\text{L3}=V_\text{L1}=180.06\approx180\text{ [V]} \]6. 負荷抵抗器 $R$ の消費電力の平均値 $P_\text{L3}$
負荷抵抗器 $R$ には $V_\text{L3}$ が印加されるので,その消費電力の平均値 $P_\text{L3}$ は,次式で求められる。
\[ P_\text{L3}=\frac{{V_\text{L3}}^2}{R}=\frac{8V^2}{\pi^2 R}=\frac{8}{\pi^2}\times\frac{200^2}{100}=324.23\approx324\text{ [W]} \]問4 RLC 直列回路
図 1 に示す $RLC$ 直列回路において,電圧 $v_\text{i}(t)$ を入力信号,電圧 $v_\text{o}(t)$ を出力信号とみなすとき,次の問に答えよ。ただし,全ての変数の初期値は零とする。

$v_\text{i}(t)$ のラプラス変換 $V_\text{i}(s)$ を入力,$v_\text{o}(t)$ のラプラス変換 $V_\text{O}(s)$ を出力とするブロック線図を図 2 に示す。このブロックに当てはまる伝達関数 $G(s)$ を以下の手順で求めよ。

- 回路に流れる電流を $i(t)$ として,コンデンサの両端にかかる電圧 $v_\text{o}(t)$ を求めよ。求めた関係式をラプラス変換せよ。$i(t)$ をラプラス変換したものを $I(s)$ で表し,$V_\text{o}(s)$ を入力,$I(s)$ を出力とするブロック線図で表せ。
- 抵抗及びコイルそれぞれの両端にかかる電圧と $v_\text{o}(t)$ の和が $v_\text{i}(t)$ である。この関係式をラプラス変換して,$I(s)$ 及び $V_\text{o}(s)$ を入力,$V_\text{i}(s)$ を出力とするブロック線図で表せ。
- 上記小問 1. 及び 2. で求めたブロック線図を用いて,$V_\text{o}(s)$ を入力,$V_\text{i}(s)$ を出力とする $RLC$ 直列回路全体のブロック線図を求めよ。
- 上記小問 3. で求めたブロック線図を等価変換することで,$V_\text{i}(s)$ を入力,$V_\text{o}(s)$ を出力とする図 2 に示すような一つのブロックに簡単化せよ。
- $V_\text{i}(s)$ から $V_\text{o}(s)$ までの電圧関数は 2 次遅れ系となる。$R=1$ Ω,$L=2$ mH,$C=500$ μF であるときの固有角周波数 $\omega_\text{n}$ [rad/s] 及び減数係数 $\zeta$ をそれぞれ求めよ。
1. コンデンサの両端にかかる電圧 $v_\text{o}(t)$
コンデンサの両端にかかる電圧 $v_\text{o}(t)$は,次式で記述される。
\[ v_\text{o}(t)=\frac{Q(t)}{C}=\frac{1}{C}\int_0^{t}i(\tau)\text{d}\tau+\frac{Q(0)}{C} \]コンデンサの電荷の初期値 $Q(0)$ は零であり,両辺をラプラス変換して次式を得る。
\[ V_\text{o}(s)=\frac{1}{Cs}I(s) \]よって,ブロック線図は次のようになる。

2. $I(s)$ 及び $V_\text{o}(s)$ を入力,$V_\text{i}(s)$ を出力とするブロック線図
題意より,次式が成り立つ。
\[ v_\text{i}(t)=Ri(t)+L\frac{\text{d}i(t)}{\text{d}t}+v_\text{o}(t) \]上の式をラプラス変換して次式を得る。ただし,電流の初期値 $i(0)$ は零とする。
\[ V_\text{i}(s)=(R+Ls)I(s)+V_\text{o}(s) \]よって,ブロック線図は次のようになる。

3. $RLC$ 直列回路全体のブロック線図
$RLC$ 直列回路全体のブロック線図は次のようになる。

4. $RLC$ 直列回路全体のブロック線図の等価変換
$RLC$ 直列回路全体のブロック線図を並列結合,直列結合の等価変換を行う。

さらに並列結合の等価変換を行う。

入力と出力を逆にする。

5. 固有角周波数 $\omega_\text{n}$ [rad/s] 及び減数係数 $\zeta$
$RLC$ 直列回路全体のブロック線図(等価変換その3)より,$V_\text{i}(s)$ を入力,$V_\text{o}(s)$ を出力とする伝達関数は,次式となる。
\[ \frac{V_\text{o}(s)}{V_\text{i}(s)}=\frac{1}{LCs^2+RCs+1}=\frac{\frac{1}{LC}}{s^2+\frac{R}{L}s+\frac{1}{LC}} \]一方,2 次遅れ系の標準形は次式となる。
\[ \frac{K{\omega_\text{n}}^2}{s^2+2\zeta\omega_\text{n}s+{\omega_\text{n}}^2} \]上の 2 式を比較する。
\[ K=1 \] \[ \omega_\text{n}=\frac{1}{\sqrt{LC}}=\frac{1}{\sqrt{2\times10^{-3}\times500\times10^{-6}}}=\frac{1}{\sqrt{10^{-6}}}=10^3 \text{ [rad/s]} \] \[ \zeta=\frac{R}{2\omega_\text{n}L}=\frac{R}{2}\sqrt{\frac{C}{L}}=\frac{1}{2}\sqrt{\frac{500\times10^{-6}}{2\times10^{-3}}}=0.25 \]