令和元年度 第二種 電気主任技術者二次試験 機械・制御

2020年11月14日作成,2021年12月19日更新

目次

  1. 三相かご形誘導電動機
  2. 三相変圧器の並行運転
  3. 太陽光発電用電力変換器
  4. フィードバック制御系

問1 三相かご形誘導電動機

定格出力 5 kW,定格電圧 200 V,4 極の三相かご形誘導電動機がある。この電動機を 50 Hz の電源に接続して全負荷運転したとき,速度は 1 440 min-1 である。また,この電動機の鉄損は 180 W であった。一次巻線の抵抗を $r_1$,一次側に換算した二次巻線の抵抗を $r_2'$ としたとき,それらの比が $\displaystyle \frac{r_1}{r_2'}=\frac{2}{5}$ であった。簡易等価回路を用いて,この電動機の次の値を求めよ。ただし,機械損は無視する。

  1. 同期速度 [min-1]
  2. 全負荷時の滑り
  3. 全負荷時の滑り周波数 [Hz]
  4. 全負荷時のトルク [N·m]
  5. 全負荷時の効率 [%]

問1 解答と解説

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1. 同期速度 [min-1]

同期速度 $N_\text{s}$ は,極数 $p$,電源周波数 $f_1$ [Hz] より求められる。

\[ N_\text{s} = \frac{120f_1}{p} = \frac{120 \times 50}{4}=1500 \]

よって,同期速度は 1 500 [min-1] である。

2. 全負荷時の滑り

全負荷時の滑り $s$ は,同期速度 $N_\text{s}$ と全負荷運転時の速度 $N$ より求められる。

\[ s=\frac{N_s-N}{N_s}=\frac{1500 - 1440}{1500}=0.04 \]

よって,全負荷時の滑りは 0.04 である。

3. 全負荷時の滑り周波数 [Hz]

全負荷時の滑り周波数は,滑り $s$ と電源周波数 $f_1$ [Hz] より求められる。

\[ sf_1=0.04 \times 50 = 2 \]

よって,全負荷時の滑り周波数は 2 [Hz] である。

4. 全負荷時のトルク [N·m]

全負荷時のトルク $T$ [N·m] は,定格出力 $P_0$,角周波数 $\omega$ [rad/s] より求められる。

\[ T=\frac{P_0}{\omega}=\frac{5 \times 10^3}{2\pi\times\frac{1440}{60}}=33.157 \]

よって,全負荷時のトルクは 33.2 [N·m] である。

5. 全負荷時の効率 [%]

全負荷時の二次入力 $P_2$ [W] を求める。

\[ P_2 =\frac{P_0}{1-s}=\frac{5\times10^3}{1-0.04}=5208.3 \text{ [W]} \]

銅損 $W_\text{cu}$ [W] は,一次銅損と二次銅損の和であり,次式で求められる。

\[ W_\text{cu}=sP_2 (1+ \frac{r_1}{r_2'})=0.04\times5208.3(1+\frac{2}{5})=291.66 \text{ [W]} \]

入力 $P_\text{i}$ は,定格出力,銅損,鉄損の和である。

\[ P_\text{i}=P_0+W_\text{cu}+W_\text{fe}=5\times10^3+291.66+180=5471.7 \text{W} \]

効率 $\eta$ [%]は次式で求められる。

\[ \eta = \frac{P_0}{P_\text{i}}\times100=\frac{5\times10^3}{5471.7}\times100=91.379 \text{ [%]} \]

よって,効率は 91.4 [%] である。

問2 三相変圧器の並行運転

表に示す定格及び特性をもつ 2 台の三相変圧器 A 及び B が並行運転をしている。次の問に答えよ。ただし,負荷力率は 90 % とし,両変圧器の定格一次電圧,定格二次電圧,変圧比,結線,相回転,及び巻線の抵抗と漏れリアクタンスの比は等しいものとする。また,鉄損は負荷によらず一定とする。

表 三相変圧器の定格及び特性
定格・特性 変圧器 A 変圧器 B
定格容量 [MV·A] 20 12
全負荷銅損 [kW] 100 75
鉄損 [kW] 32 20
百分率インピーダンス [%] 4 5
  1. 負荷容量を $P$ [MV·A] とするときの変圧器 A 及び B の各負荷分担 $P_\text{A}$ [MV·A] 及び $P_\text{B}$ [MV·A] について,それぞれを $P$ で表せ。
  2. 変圧器 A 及び B の損失をそれぞれ $P_\text{lA}$ [kW] 及び $P_\text{lB}$ [kW] とするとき,両変圧器の総損失 $P_\text{L} = P_\text{lA} + P_\text{lB}$ [kW] について,上記の $P$ で表せ。
  3. 変圧器 A 及び B を合わせた効率が最大となる負荷の有効電力 $P_\text{a}$ [MW] を求めよ。
  4. 小問 3. のときの効率の最大値 $\eta_\text{m}$ を求めよ。

問2 解答と解説

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1. 変圧器の負荷分担

変圧器 A 及び B の定格容量を $P_\text{nA}$ [MV·A] 及び $P_\text{nB}$ [MV·A],百分率インピーダンスを $%Z_\text{A}$ [%] 及び $%Z_\text{B}$ [%] とする。$%Z_\text{B}$ [%] を変圧器 A の定格容量 20 MV·A を基準容量として換算した百分率インピーダンスを $%Z_\text{B}'$ [%] とする。

\[ %Z_\text{B}'=\frac{P_\text{nA}}{P_\text{nB}}%Z_\text{B}=\frac{20}{12}\times5=8.3333 \text{ [%]} \]

負荷容量を $P$ [MV·A] とするときの変圧器 A 及び B の各負荷分担 $P_\text{A}$ [MV·A] 及び $P_\text{B}$ [MV·A] は,百分率インピーダンスの逆比で分担されるので,それぞれ次式で求められる。

\[ P_\text{A}=\frac{%Z_\text{B}'}{%Z_\text{A}+%Z_\text{B}'}P=\frac{8.3333}{4+8.3333}P=0.657567 P \] \[ P_\text{B}=\frac{%Z_\text{A}}{%Z_\text{A}+%Z_\text{B}'}P=\frac{4}{4+8.3333}P=0.32433 P \]

よって,変圧器 A 及び B の各負荷分担 $P_\text{A}$ [MV·A] 及び $P_\text{B}$ [MV·A] は,0.676 $P$ [MV·A] 及び 0.324 $P$ [MV·A] である。

2. 両変圧器の総損失

変圧器 A 及び B の損失 $P_\text{lA}$ 及び $P_\text{lB}$ は,鉄損と銅損の和であるから,定格容量と負荷分担の二乗の比を用いて表される。

\[ P_\text{lA}=P_\text{iA}+P_\text{cA}(\frac{P_\text{A}}{P_\text{nA}})^2=32+100(\frac{0.675 68 P}{20})^2=32+0.11414P^2 \] \[ P_\text{lB}=P_\text{iB}+P_\text{cB}(\frac{P_\text{B}}{P_\text{nB}})^2=20+75(\frac{0.32432 P}{12})^2=20+0.054783P^2 \]

ただし,$P_\text{iA}$ 及び $P_\text{iB}$ は変圧器 A 及び B の鉄損,$P_\text{cA}$ 及び $P_\text{cB}$ は全負荷時の変圧器 A 及び B の銅損である。両変圧器の総損失 $P_\text{L}$ は,次式で求められる。

\[ P_\text{L} = P_\text{lA} + P_\text{lB}=(32+0.11414P^2)+(20+0.054783P^2)=52+0.16892P^2 \]

よって,両変圧器の総損失は 52 + 0.169 $P^2$ [kW] である。

3. 変圧器 A 及び B を合わせた効率が最大となる負荷の有効電力

変圧器 A 及び B を合わせた効率が最大値は,両変圧器の総損失の鉄損と銅損が等しいときに生じる。

\[ 0.16892P^2=52 \] \[ P=\sqrt{\frac{52}{0.16892}}=17.545 \text{ [MV·A]} \]

このときの力率は 90 % であるので,最大効率時の負荷有効電力 $P_\text{re}$ は,次式で求められる。

\[ P_\text{re}=0.90 \times P =0.90 \times 17.545 = 15.791 \text{ [MW]} \]

変圧器 A 及び B を合わせた効率が最大となる負荷の有効電力は,15.8 [MW] である。

4. 効率の最大値

効率の最大値 $\eta_\text{m}$ は,次式で求められる。

\[ \eta_\text{m}=\frac{P_\text{re}}{P_\text{re}+2(P_\text{iA}+P_\text{iB})}\times100 \] \[ \eta_\text{m}=\frac{15.791\times10^3}{15.791\times10^3+2(32+20)}\times100=99.346 \]

よって,効率の最大値は 99.3 [%] である。

問3 太陽光発電用電力変換器

準備中

太陽光発電用電力変換器の回路図

問3 解答と解説

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準備中

問4 フィードバック制御系

図のようなフィードバック制御系について,次の問に答えよ。ここで,$R(s)$ と $Y(s)$ は,それぞれ目標値 $r(t)$ と制御量 $y(t)$ のラプラス変換である。

  1. 目標値 $R(s)$ から制御量 $Y(s)$ までの閉ループ伝達関数 $W(s)$ を求めよ。
  2. この閉ループ系の特性根のうちの二つを -1,-2 とするためには,$K_1$ 及び $K_2$ の値をいくらにすればよいか。また,このときのその他の特性根も求めよ。
  3. 小問 2. で得られた $K_1$ 及び $K_2$ を用いて,単位インパルス応答 $y(t)$ を求めよ。
フィードバック制御系

問4 解答と解説

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1. 閉ループ伝達関数

まず,内側のフィードバックループの伝達関数を計算する。

\[ \frac{\frac{1}{s(s+2)(s+4)}}{1+\frac{K_2 s}{s(s+2)(s+4)}}=\frac{1}{s(s^2 + 6s + K_2 + 8)} \]

これより,閉ループ伝達関数 $W(s)$ を求める。

\[ W(s)=\frac{\frac{K_1}{s(s^2 + 6s + K_2 + 8)}}{1+\frac{K_1}{s(s^2 + 6s + K_2 + 8)}}=\frac{K_1}{s^3+6s^2+(K_2+8)s+K_1} \]

2. 特性根

閉ループ伝達関数 $W(s)$ の分母が閉ループ系の特性多項式 $P(s)$ である。閉ループ系の特性根は三つあり,二つは実根として与えられているので,残りの 1 根も実根となる。これを $-\alpha$ とおくと,所望の閉ループ特性多項式 $P_\text{d}(s)$ は次式のように書くことができる。

\[ P_\text{d}(s)=(s+1)(s+2)(s+\alpha)=s^3+(\alpha+3)s^2+(3\alpha+2)s+2\alpha \]

閉ループ伝達関数 $W(s)$ の分母が閉ループ系の特性多項式 $P(s)$ は,次式である。

\[ P(s)=s^3+6s^2+(K_2+8)s+K_1 \]

上の 2 式の係数を比較することで次式を得る。

\[ \alpha+3=6 \] \[ 3\alpha+2=K_2+8 \] \[ 2\alpha=K_1 \]

以上の 3 式を解くことで,$K_1 = 6$,$K_2 =3$,残りの特性根 -3 を得る。

3. 単位インパルス応答

$K_1 = 6$,$K_2 =3$ を閉ループ伝達関数 $W(s)$ に代入する。

\[ W(s)=\frac{K_1}{s^3+6s^2+(K_2+8)s+K_1}=\frac{6}{s^3+6s^2+11s+6} \]

単位インパルスのラプラス変換 $R(s)$ を用いて,$Y(s)$ は次のように展開できる。

\[ Y(s)=W(s)R(s)=\frac{6}{s^3+6s^2+11s+6}=\frac{a}{s+1}+\frac{b}{s+2}+\frac{c}{s+3} \]

上式の右辺を通分する。

\[ \frac{6}{s^3+6s^2+11s+6}=\frac{(a+b+c)s^2+(5a+4b+3c)s+(6a+3b+2c)}{(s+1)(s+2)(s+3)} \]

両辺の係数を比較し,次式を得る。

\[ a+b+c=0 \] \[ 5a+4b+3c=0 \] \[ 6a+3b+2c=6 \]

上の 3 式を解くことで,$a=3$,$b=-6$,$c=3$ が得られる。したがって,$Y(s)$ は次式となる。

\[ Y(s)=\frac{3}{s+1}-\frac{6}{s+2}+\frac{3}{s+3} \]

上式を逆ラプラス変換することで,時間応答を得る。

\[ y(t)=3e^{-t}-6e^{-2t}+3e^{-3t} \]

なお,単位インパルス応答 $y(t)$ の波形を下図に示す。

単位インパルス応答波形
図 単位インパルス応答 $y(t)$ の波形
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