令和2年度 第二種 電気主任技術者二次試験 機械・制御

2021年11月2日作成,2021年12月19日更新

目次

  1. 三相かご形誘導電動機
  2. 単相変圧器の簡易等価回路
  3. 誘導性負荷を接続した単相インバータ
  4. フィードバック制御系

問1 三相かご形誘導電動機

三相かご形誘導電動機に関して,次の問に答えよ。

4 極の三相かご形誘導電動機が 60 Hz の電源において 5 % の滑りで運転している。下記の数値を求めよ。なお,相対速度は単位 [min-1] を使って答えよ。

  1. 固定子巻線電流による回転磁界と固定子との相対速度の大きさ $N_0$
  2. 回転子と固定子との相対速度の大きさ $N_\text{m}$
  3. 固定子巻線電流による回転磁界と回転子との相対速度の大きさ $N_\text{s}$
  4. 回転子巻線を流れる電流の周波数 $f_2$
  5. 回転子巻線電流による回転磁界と回転子との相対速度の大きさ $N_\text{r}$
  6. 回転子巻線電流による回転磁界と固定子との相対速度の大きさ $N_\text{R}$
  7. 回転子巻線電流による回転磁界と固定子巻線電流による回転磁界との相対速度の大きさ $N_\text{sr}$

問1 解答と解説

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(1) 同期速度 $N_0$

固定子巻線電流による回転磁界と固定子との相対速度の大きさ $N_0$ とは,いわゆる同期速度であり,次式で求められる。

\[ N_0 = \frac{120f}{p}=\frac{120 \times 60}{4} = 1800 \]

答えは,$N_0$ = 1 800 [min-1] である。

(2) 回転子の機械的速度 $N_\text{m}$

回転子と固定子との相対速度の大きさ $N_\text{m}$ とは,いわゆる回転子の機械的速度であり,次式で求められる。

\[ N_\text{m} = N_0 (1-s) = 1800 \times (1-0.05) = 1710 \]

答えは,$N_\text{m}$ = 1 710 [min-1] である。

(3) 固定子巻線電流による回転磁界と回転子との相対速度の大きさ $N_\text{s}$

固定子巻線電流による回転磁界と回転子との相対速度の大きさ $N_\text{s}$ とは,滑り $s$ を速度の単位で表すことである。

\[ N_\text{s} = N_0 - N_\text{m} = 1800 - 1710 = 90 \]

答えは,$N_\text{s}$ = 90 [min-1] である。

(4) 回転子巻線を流れる電流の周波数 $f_2$

回転子巻線を流れる電流の周波数 $f_2$ は,滑り周波数であり,次式で求められる。

\[ f_2 = sf = 0.05 \times 60 = 3 \]

答えは,$f_2$ = 3 [Hz] である。

(5) 回転子巻線電流による回転磁界と回転子との相対速度の大きさ $N_\text{r}$

回転子巻線電流による回転磁界と回転子との相対速度の大きさ $N_\text{r}$ とは,回転子巻線電流による回転磁界を回転子から見た速度であり,次式で求められる。

\[ N_\text{r} = \frac{120 f_2}{p}=\frac{120 \times 3}{4}=90 \]

答えは,$N_\text{r}$ = 90 [min-1] である。

(6) 回転子巻線電流による回転磁界と固定子との相対速度の大きさ $N_\text{R}$

回転子巻線電流による回転磁界と固定子との相対速度の大きさ $N_\text{R}$ とは,固定子から見た回転子巻線電流による回転磁界の速度であり,次式で求められる。

\[ N_\text{R}=N_\text{m}+N_\text{r}=1710+90=1800 \]

答えは,$N_\text{R}$ = 1 800 [min-1] である。

(7) 回転子巻線電流による回転磁界と固定子巻線電流による回転磁界との相対速度の大きさ $N_\text{sr}$

回転子巻線電流による回転磁界と固定子巻線電流による回転磁界との相対速度 $N_\text{sr}$ を求めるためには,それぞれの固定子から見た速度の差を求めればよい。

固定子から見た回転子巻線電流による回転磁界の速度 $N_\text{R}$ は (6) で求めており,1 800 min-1 である。

固定子から見た固定子の回転速度 $N_0$ は (1) で求めており, 1 800 min-1 である。

したがって,回転子巻線電流による回転磁界と固定子巻線電流による回転磁界との相対速度の大きさ $N_\text{sr}$ は,次式で求められる。

\[ N_\text{sr}=N_0 - N_\text{R} = 1800 - 1800 = 0 \]

答えは,$N_\text{sr}$ = 0 [min-1] である。

問2 単相変圧器の簡易等価回路

定格容量 100 kV·A,定格一次電圧 6 600 V,定格二次電圧 440 V,定格周波数 60 Hz の単相変圧器がある。この変圧器の一次換算全巻線抵抗は 2.72 Ω である。

この変圧器について,簡易等価回路を用いて次の問に答えよ。ただし,鉄損と銅損以外の損失は無視できるものとする。

  1. この変圧器の二次側の端子を開放して,一次側に定格周波数,定格一次電圧を印加したところ,一次側に 0.173 A の電流が流れ,力率は 0.35(遅れ)であった。鉄損 $W_\text{i}$ [W] を求めよ。
  2. 定格負荷で運転しているときの銅損 $W_\text{c}$ [W] を求めよ。
  3. 力率 100 % で運転する場合に,効率が最大となる負荷率 [%] とそのときの効率 [%] を求めよ。ただし,負荷率 $x$ [%] とは負荷が変圧器定格容量の $x$ [%] であることとする。
  4. 負荷率 30 % で力率 60 % の負荷を接続した場合の効率 [%] を求めよ。

問2 解答と解説

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1. 鉄損 $W_\text{i}$

鉄損 $W_\text{i}$ は,次式で求められる。

\[ W_\text{i}=6600 \times 0.173 \times 0.35 = 399.63 \]

鉄損 $W_\text{i}$ は,400 [W] である。

2. 定格負荷で運転しているときの銅損 $W_\text{c}$

変圧器の一次定格電流 $I_1$ [A] の大きさを求める。

\[ I_1 = \frac{100 \times 10^3}{6600}=15.152 \text{ [A]} \]

変圧器の一次換算全巻線抵抗は 2.72 Ω であり,定格負荷で運転しているときの銅損 $W_\text{c}$ は,次式で求められる。

\[ W_\text{c}=2.72 \times 15.152 = 624.47 \]

銅損 $W_\text{c}$ は,624 [W] である。

3. 力率 100 % で運転する場合に,効率が最大となる負荷率とそのときの効率

負荷率 $x$ [%],力率 $\cos\theta$ における効率 $\eta$ [%] は,変圧器の定格容量を $P$ [V·A] とすると,次式で示される。

\[ \eta=\frac{P\times\frac{x}{100}\cos\theta}{P\times \frac{x}{100}\cos\theta +W_\text{i}+(\frac{x}{100})^2 \times W_\text{c}} \]

効率 $\eta$ が最大となる条件は,鉄損と銅損の値が同じとなる場合なので,次式を解いて,そのときの負荷率 $x$ が求まる。

\[ W_\text{i}=(\frac{x}{100})^2 \times W_\text{c} \] \[ x=\sqrt{\frac{W_\text{i}}{W_\text{c}}}\times100 = 79.997 \]

題意より力率 $\cos\theta$ は 100 % であるので,効率は次式で求められる。

\[ \eta = \frac{100 000 \times 0.79997}{100000 \times 0.79997 + 2 \times 399.63}\times 100 = 99.011 \]

力率 100 % で運転する場合に,効率が最大となる負荷率 $x$ は 80.0 [%],そのときの効率 $\eta$ は 99.0 [%] である。

4. 負荷率 30 % で力率 60 % の負荷を接続した場合の効率

負荷率 30 % で力率 60 % の孵化を接続した場合の効率は,次式で求められる。

\[ \eta=\frac{P\times 0.3 \times 0.6}{P\times 0.3 \times 0.6 +W_\text{i} + 0.3^2 \times W_\text{c}} \times 100 \] \[ \eta=\frac{100000 \times 0.3 \times 0.6}{100000\times 0.3 \times 0.6 + 399.63 + 0.3^2 \times 624.47} \times 100 \] \[ \eta=\frac{18000}{18000+399.63+56.202}\times 100 = 97.530 \]

負荷率 30 % で力率 60 % の負荷を接続した場合の効率は,97.5 [%] である。

問3 誘導性負荷を接続した単相インバータ

準備中

問3 解答と解説

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準備中

問4 フィードバック制御系

図のようなフィードバック制御系について,次の問に答えよ。ただし,$R(s)$ は目標値,$D(s)$ は外乱,$U(s)$ は操作量,$Y(s)$ は制御量,$E(s)$ は偏差とする。外乱 $D(s)$ の時間関数は次に示すランプ関数であり,$d(t) = 2t$($t \ge 0$),$d(t)=0$($t \lt 0$)とする。

  1. $R(s)=0$,$C(s)=K \gt 0$ のとき,外乱 $D(s)$ による定常速度偏差 $e_\text{V}$ を求めよ。
  2. $C(s)=K\gt 0$ のとき,閉ループ系の安定性の指標の一つである減衰係数 $\zeta$ を 0.8 に設定するための $K$ の値を求めよ。
  3. $R(s)=0$,$\displaystyle C(s)=A\times\frac{s+1}{0.1s+1}$($A \gt 0$)の場合について,外乱 $D(s)$ による定常速度偏差 $e_\text{V}$ を求めよ。
  4. 上記 (3) の $C(s)$ を用いた閉ループ系の減衰係数 $\zeta$ が 0.8 になるような $A$ の値を求めよ。
  5. 上記 (2) と上記 (4) の場合,それぞれにおいて閉ループ系の固有角周波数 $\omega_\text{n}$ を求めよ。その結果,上記 (2) の場合に比べて上記 (4) の場合は,応答が何倍速くなるかを示せ。
  6. 上記 (2) と上記 (4) の場合,それぞれにおいて外乱 $D(s)$ に対する定常速度偏差 $e_\text{V}$ を求めよ。その結果,上記 (2) の場合に比べて上記 (4) の場合は,定常速度偏差が何倍になるかを示せ。
フィードバック制御系
図 フィードバック制御系

問4 解答と解説

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1. 定常速度偏差 $e_\text{V}$

図のブロック線図から次式が成り立つ。

\[ E(s)=-[\frac{K}{s(s+1)}E(s)+D(s)] \]

これを $E(s)$ について解く。

\[ E(s)=\frac{-1}{1+\frac{K}{s(s+1)}}\times D(s)= \frac{-s(s+1)}{s^2 + s + K}\times\frac{2}{s^2} \]

定常速度偏差は,次のように求められる。

\[ e_\text{V}=\lim_{t \rightarrow \infty}{e(t)}=\lim_{s \rightarrow 0}{sE(s)}=\lim_{s \rightarrow 0}{s\times \frac{-s(s+1)}{s^2 + s + K}\times\frac{2}{s}}=-\frac{2}{K} \]
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