危険物とは

2022年12月11日更新

危険物とは

どのような物質が危険物にあたるかは,消防法の別表第一に掲げられている。

消防法 第一条

この法律は、火災を予防し、警戒し及び鎮圧し、国民の生命、身体及び財産を火災から保護するとともに、火災又は地震等の災害による被害を軽減するほか、災害等による傷病者の搬送を適切に行い、もつて安寧秩序を保持し、社会公共の福祉の増進に資することを目的とする。

消防法 第二条

危険物とは、別表第一の品名欄に掲げる物品で、同表に定める区分に応じ同表の性質欄に掲げる性状を有するものをいう。

危険物の分類

消防法の別表第一によれば,危険物はその性質によって,次の 6 種類に分類されている。下表の通り,気体は含まれていない。また,物質自体に引火や爆発の危険があるものだけでなく,それ自体は不燃性でも他の物質と混ぜて燃焼を促進させるもの(第 1 類,第 6 類)も含まれる。

危険物の分類
種別 性質 性質の説明
第 1 類 酸化性固体 物質を強く酸化させる性質をもち,可燃物と混ぜて熱や衝撃を加えると,激しい燃焼を起こさせる物質。
第 2 類 可燃性固体 火をつけると簡単に燃えはじめる固体。または,比較的低温(40度未満)で引火してしまう固体。
第 3 類 自然発火性物質及び禁水性物質 空気や水に触れると自然に発火したり,可燃性ガスを発生する物質。
第 4 類 引火性液体 引火性のある液体。
第 5 類 自己反応性物質 加熱などによる分解反応によって,多量の熱を発生したり,爆発的に反応が進行する物質。
第 6 類 酸化性液体 物質を強く酸化させる性質をもち,他の可燃物と混ぜることで燃焼を促進させる液体。

消防法 別表第一 備考(抜粋)

酸化性固体
固体(液体(1 気圧において、温度 20 度で液状であるもの又は温度 20 度を超え 40 度以下の間において液状となるものをいう。以下同じ。)又は気体(1 気圧において、温度 20 度で気体状であるものをいう。)以外のものをいう。以下同じ。)であって、酸化力の潜在的な危険性を判断するための政令で定める試験において政令で定める性状を示すもの又は衝撃に対する敏感性を判断するための政令で定める試験において政令で定める性状を示すものであることをいう。
可燃性固体
固体であって、火炎による着火の危険性を判断するための政令で定める試験において政令で定める性状を示すもの又は引火の危険性を判断するための政令で定める試験において引火性を示すものであることをいう。
自然発火性物質及び禁水性物質
固体又は液体であって、空気中での発火の危険性を判断するための政令で定める試験において政令で定める性状を示すもの又は水と接触して発火し、若しくは可燃性ガスを発生する危険性を判断するための政令で定める試験において政令で定める性状を示すものであることをいう。
引火性液体
液体(第三石油類、第四石油類及び動植物油類にあっては、1 気圧において、温度 20 度で液状であるものに限る。)であって、引火の危険性を判断するための政令で定める試験において引火性を示すものであることをいう。
自己反応性物質
固体又は液体であって、爆発の危険性を判断するための政令で定める試験において政令で定める性状を示すもの又は加熱分解の激しさを判断するための政令で定める試験において政令で定める性状を示すものであることをいう。
酸化性液体
液体であって、酸化力の潜在的な危険性を判断するための政令で定める試験において政令で定める性状を示すものであることをいう。

指定数量

どれくらいの量を貯蔵すると消防法の規制の対象となるかは,危険物によって異なり,この数量を指定数量という。危険物の指定数量は危険性が高いほど小さく,危険性が低いほど大きい。

危険物についてその危険性を勘案して政令で定める数量(以下「指定数量」という。)

指定数量以上の危険物は,消防法で定められた危険物施設以外で,貯蔵したり,取扱うことはできない。一方,指定数量未満の危険物の貯蔵・取扱いは,各市町村が定める火災予防条例にしたがう。

消防法 第九条の四

危険物についてその危険性を勘案して政令で定める数量(以下「指定数量」という。)未満の危険物及びわら製品、木毛その他の物品で火災が発生した場合にその拡大が速やかであり、又は消火の活動が著しく困難となるものとして政令で定めるもの(以下「指定可燃物」という。)その他指定可燃物に類する物品の貯蔵及び取扱いの技術上の基準は、市町村条例でこれを定める。

② 指定数量未満の危険物及び指定可燃物その他指定可燃物に類する物品を貯蔵し、又は取り扱う場所の位置、構造及び設備の技術上の基準(第十七条第一項の消防用設備等の技術上の基準を除く。)は、市町村条例で定める。

表 危険物を貯蔵量・取扱量によって規制する法令
指定数量以上の危険物 消防法にしたがう
指定数量未満の危険物 各市町村の火災予防条例にしたがう

ちなみに,第 4 類危険物の品名ごとの指定数量は下表の通り(危険物の規制に関する法令別表3に掲げられている)。

第 4 類危険物の品名ごとの指定数量
品名 物質 指定数量
特殊引火物 二硫化炭素・ジエチルエーテル・アセトアルデヒド・酸化プロピレンなど 50 L
第 1 石油類 非水溶性液体(ガソリン・ベンゼン・トルエンなど) 200 L
水溶性液体(アセトン・ピリジンなど) 400 L
アルコール類 メチルアルコール・エチルアルコール・n-プロピルアルコール・イソプロピルアルコールなど 400 L
第 2 石油類 非水溶性液体(灯油・軽油・キシレンなど) 1,000 L
水溶性液体(酢酸など) 2,000 L
第 3 石油類 非水溶性液体(重油・クレオソート油・ニトロベンゼンなど) 2,000 L
水溶性液体(グリセリン・エチレングリコールなど) 4,000 L
第 4 石油類類 ギヤー油・シリンダー油など 6,000 L
動植物油類 ヤシ油・アマニ油など 10,000 L

例えば,灯油の指定数量は 1,000 L,ガソリンの指定数量は 200 L である。灯油に比べ,ガソリンの方が指定数量が小さいので,危険性が高い。

指定数量の倍数の計算

指定数量の倍数は次式で計算する。

(指定数量の倍数)=(貯蔵量)/(指定数量)

2 種類以上の危険物の指定数量の倍数は次式で計算する。

(指定数量の倍数)=(危険物Aの貯蔵量)/(危険物Aの指定数量)+(危険物Bの貯蔵量)/(危険物Bの指定数量)+(危険物Cの貯蔵量)/(危険物Cの指定数量)+・・・
演習問題

屋外貯蔵タンクに第 4 類の危険物が 2,000 L 貯蔵されている。この危険物は非水溶性で,比重が 1.26,引火点が -30 °C,発火点が 90 °C である。法令上,この屋外貯蔵タンクには指定数量の何倍の危険物が貯蔵されているか。

  1. 2 倍
  2. 4 倍
  3. 10 倍
  4. 20 倍
  5. 40 倍

物性より危険物は二硫化炭素であり,特殊引火物に分類される。よって,指定数量は 50 L であり,指定数量の倍数は,次式で求められる。

指定数量の倍数 = 2,000 L / 50 L = 40 倍

危険物を取り扱う施設

指定数量以上の危険物を貯蔵・取り扱う危険物施設は,製造所,貯蔵所,取扱所の 3 種類に分類される。法令では,この 3 つをまとめて製造所等という。

製造所

危険物を製造する施設。

貯蔵所

危険物を貯えておく施設で,以下の7種類ある。

  1. 屋内貯蔵所
  2. 屋外タンク貯蔵所
  3. 屋内タンク貯蔵所
  4. 地下タンク貯蔵所
  5. 簡易タンク貯蔵所
  6. 移動タンク貯蔵所
  7. 屋外貯蔵所
危険物の規制に関する政令 第二条 貯蔵所の区分

法第十条の貯蔵所は,次のとおり区分する。

  1. 屋内の場所において危険物を貯蔵し,又は取り扱う貯蔵所(以下「屋内貯蔵所」という。)
  2. 屋外にあるタンク(第四号から第六号までに掲げるものを除く。)において危険物を貯蔵し,又は取り扱う貯蔵所(以下「屋外タンク貯蔵所」という。)
  3. 屋内にあるタンク(次号から第六号までに掲げるものを除く。)において危険物を貯蔵し,又は取り扱う貯蔵所(以下「屋内タンク貯蔵所」という。)
  4. 地盤面下に埋没されているタンク(次号に掲げるものを除く。)において危険物を貯蔵し,又は取り扱う貯蔵所(以下「地下タンク貯蔵所」という。)
  5. 簡易タンクにおいて危険物を貯蔵し,又は取り扱う貯蔵所(以下「簡易タンク貯蔵所」という。)
  6. 車両(被牽引自動車にあつては,前車軸を有しないものであつて,当該被牽引自動車の一部が牽引自動車に載せられ,かつ,当該被牽引自動車及びその積載物の重量の相当部分が牽引自動車によつてささえられる構造のものに限る。)に固定されたタンクにおいて危険物を貯蔵し,又は取り扱う貯蔵所(以下「移動タンク貯蔵所」という。)
  7. 屋外の場所において第二類の危険物のうち硫黄,硫黄のみを含有するもの若しくは引火性固体(引火点が零度以上のものに限る。)又は第四類の危険物のうち第一石油類(引火点が零度以上のものに限る。),アルコール類,第二石油類,第三石油類,第四石油類若しくは動植物油類を貯蔵し,又は取り扱う貯蔵所(以下「屋外貯蔵所」という。)

取扱所

給油などのために危険物を取り扱う施設で,以下の 4 種類ある。

  1. 給油取扱所
  2. 販売取扱所
  3. 移送取扱所
  4. 一般取扱所
危険物の規制に関する政令 第三条 取扱所の区分

法第十条 の取扱所は、次のとおり区分する。

  1. 給油設備によつて自動車等の燃料タンクに直接給油するため危険物を取り扱う取扱所(当該取扱所において併せて灯油若しくは軽油を容器に詰め替え、又は車両に固定された容量四千リットル以下のタンク(容量二千リットルを超えるタンクにあつては、その内部を二千リットル以下ごとに仕切つたものに限る。)に注入するため固定した注油設備によつて危険物を取り扱う取扱所を含む。以下「給油取扱所」という。)
  2. 店舗において容器入りのままで販売するため危険物を取り扱う取扱所で次に掲げるもの
    1. 指定数量の倍数(法第十一条の四第一項 に規定する指定数量の倍数をいう。以下同じ。)が十五以下のもの(以下「第一種販売取扱所」という。)
    2. 指定数量の倍数が十五を超え四十以下のもの(以下「第二種販売取扱所」という。)
  3. 配管及びポンプ並びにこれらに附属する設備(危険物を運搬する船舶からの陸上への危険物の移送については、配管及びこれに附属する設備)によつて危険物の移送の取扱いを行う取扱所(当該危険物の移送が当該取扱所に係る施設(配管を除く。)の敷地及びこれとともに一団の土地を形成する事業所の用に供する土地内にとどまる構造を有するものを除く。以下「移送取扱所」という。)
  4. 前三号に掲げる取扱所以外の取扱所(以下「一般取扱所」という。)

仮貯蔵・仮取扱い

指定数量以上の危険物は,原則として製造所等以外の場所で貯蔵したり,取扱うことはできない。ただし,所轄消防長または消防署長承認を受けて,10 日以内の期間であれば,製造所等以外の場所に貯蔵し,取扱うことができる。これを仮貯蔵または仮取扱いという。

消防法 第十条

指定数量以上の危険物は、貯蔵所(車両に固定されたタンクにおいて危険物を貯蔵し、又は取り扱う貯蔵所(以下「移動タンク貯蔵所」という。)を含む。以下同じ。)以外の場所でこれを貯蔵し、又は製造所、貯蔵所及び取扱所以外の場所でこれを取り扱ってはならない。ただし、所轄消防長又は消防署長の承認を受けて指定数量以上の危険物を、10 日以内の期間、仮に貯蔵し、又は取り扱う場合は、この限りでない。

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