基礎的な物理
固体・液体・気体
物質の状態には,固体・液体・気体の 3 つの状態があり,この 3 つの状態を物質の三態(three states of matter)という。
固体
固体(solid)は物質の三態の一つ。固体内の原子は互いに強く結合しており,規則的な幾何学的格子状に並ぶ場合(金属や通常の氷などの結晶),不規則に並ぶ場合(ガラスなどのアモルファス)がある。
液体や気体と比較して,変形あるいは体積変化が非常に小さい。変形が全く起こらない剛体は理想化された固体の一つである。
液体
液体(liquid)は物質の三態の一つ。物質内の原子あるいは分子の結合する力が熱振動(格子振動)よりも弱くなった状態であり,構成する粒子が互いの位置関係を拘束しないために自由に移動することができ,いわゆる流体の状態となる。このような状態を物質が液相であるという。
気体と同様に流動的で,容器に合わせて形を変える。液体は気体に比べて,圧縮性が小さい。気体とは異なり,容器全体に広がることなく,ほぼ一定の密度を保つ。液体特有の性質として表面張力があり,それによって「漏れ」という現象が起きる。
気体
気体(gas)とは,物質の三態の一つ。一定の形と体積を持たず,自由に流動し圧力の増減で体積が容易に変化する状態のこと。
物質の状態変化
同じ物質が,温度や圧力によって状態の変化が起こる。これを物質の状態変化という。
融解
固体から液体への状態変化を融解といい,融解が起こる温度を融点という。
沸騰
液体を加熱すると,内部からも蒸発が起こり,この現象を沸騰という。沸騰の起こる温度を沸点という。※沸点とは,液体の蒸気圧が外気の圧力に等しくなるときの液体の温度のことである。
演習問題
物質の状態変化について,次のうち誤っているものはどれか。
- 水には気体,液体および固体の 3 つの状態がある。
- 状態の変化には熱エネルギーの出入りが伴う。
- 沸点は外圧が高くなると低くなる。
- 固体から直接期待に状態変化することを昇華という。
- 固体が液体に変わることを融解といい,逆に液体が固体に変わることを凝固という。
正解は,3. である。沸点は外圧が高くなると高くなる。
比重と密度
比重
ある物質の重さが,同じ体積で 4 °C の水と比べて何倍重いかを表す数値を比重という。
密度
物質の単位体積(1 cm³)あたりの重さ(g)で表す。単位は [g/cm³]である。
熱量と比熱
熱量
物体を熱したり,冷したりするときに,物体に出入りする熱の量を熱量という。
比熱
物質 1 g の温度を,1 °C 上げるために必要な熱量を比熱という。
熱の移動と熱膨張
熱の移動
熱の移動には伝導・対流・放射の3種類がある。
熱が高温部から低温部へと伝わっていくことを伝導という。物質ごとの熱の伝わりやすさは熱伝導率で表される。
液体や気体の内部で,温度差による流れが起こる現象を対流という。
熱せられた物体が出す放射熱によって,他の物体に熱が伝わることを放射(または輻射)という。
熱膨張
物体は一般に温度が高くなるにつれて体積が増えていき,この現象を熱膨張という。
静電気
2つの物質を摩擦したときなどに,物質の表面に発生する電気を静電気といい,物質に静電気がたまることを帯電という。静電気が発生しただけでは火災にはならないが,帯電した静電気が何らかのきっかけで放電されると,電気火花(スパーク)が発生し,引火や爆発につながる危険がある。
静電気による火災などの災害を防止するためには,次のような対策がある。
接地する
帯電しやすいものを導線で大地に接続しておくと,静電気を大地に逃がすことができる。
湿度を上げる
静電気は乾燥すると発生しやすくなるため,湿度を高くする。
流速を制限する
配管やホース内を流れるガソリン等の流速を小さくすることで,摩擦による静電気の発生を抑制できる。
演習問題
静電気について,次のうち誤っているものはどれか。
- 静電気は,固体だけでなく,液体にも帯電する。
- 2 種類の電気の不導体を互いに摩擦すると,一方が正,他方が負に帯電する。
- 静電気は,人体にも帯電する。
- 静電気の帯電を防止するためには,空気中の湿度を低くする。
- 静電気の放電火花は,可燃物の蒸気や粉じんが浮遊するところでは,しばしば点火源となる。
正解は,4. である。空気中の湿度が低くなると,静電気の帯電が起こりやすくなる。