基礎的な化学
物質の成り立ち
物質を構成元素によって分類すると純物質と混合物(単体や化合物がさまざまな割合で混ざり合った物質)に分けることができる。また,純物質は単体(1 種類の元素だけでできた物質)と混合物(2 種類以上の元素が化学的に結合してできた物質)に分かれる。
同素体
構成元素が同じで,原子の結合の仕方が違うために化学的性質が異なる物質を同素体という。同素体の例として,酸素(O2)とオゾン(O2),黄燐(P)と赤燐(P),ダイヤモンド(C)と黒鉛(C)などがある。
異性体
分子式は同じで,化学構造が違うために化学的性質が異なる物質を異性体という。異性体の例として,エチルアルコールとジメチルエーテル(分子式はいずれも C2H6O)がある。
物質の変化
物理変化
物質の状態や形状が変化することを物理変化という。
化学変化
物質が,性質の異なる別の物質に変化することを化学変化という。化学変化には,化合(2 種類以上の物質から,化合物ができる),分解(化合物を 2 種類以上の構成要素に分ける),置換(化合物に含まれている成分が,別の成分に置き換わる)などの種類がある。
演習問題
単体,化合物および混合物の組合わせとして,次のうち正しいものはどれか。
No. | 単体 | 化合物 | 混合物 |
---|---|---|---|
1 | 硫黄 | アンモニア | 軽油 |
2 | カリウム | 硫黄 | ガラス |
3 | アンモニア | エタノール | 空気 |
4 | 銅 | 硫黄 | 塩化ナトリウム |
5 | 酸素 | 空気 | ジエチルエーテル |
正解は,1. である。硫黄(S)は単体,アンモニア(NH3)は化合物,軽油は混合物である。
原子の構造・原子量・分子量
原子の構造
物質の原子は,中心にある原子核と,その周囲をまわる電子で構成される。原子核は複数の陽子・中性子からなる。
原子量・分子量
炭素原子の質量を「12」と決め,これを基準に他の元素の質量を表したものを原子量という。また分子の質量を表したものを分子量という。
演習問題
プロパン(C3H8)88 g に含まれる炭素原子の物質量 [mol] として,次のうち正しいものはどれか。
ただし,C の原子量を 12,H の原子量を 1 とする。
- 3 mol
- 6 mol
- 8 mol
- 12 mol
- 88 mol
正解は,2. である。プロパンの分子量は,12 × 3 + 1 × 8 = 44 [g/mol] である。プロパン(C3H8)88 g の物質量は,次式で求められる。
プロパン 2 [mol] に含まれる炭素原子の物質量は 6 [mol] である。
酸・塩基・中和・pH
酸
水に溶けたとき,水素イオン(H+)を出す物質を酸という。
塩基
水に溶けたとき,水酸化物イオン(OH-)を出す物質を塩基(またはアルカリ)という。
中和
酸性水溶液とアルカリ性水溶液を混ぜると,水素イオンと水酸化イオンが結合して,酸性・アルカリ性の性質が失われる。これを中和という。また,酸とアルカリが中和してできる物質を塩という。
pH
水溶液の酸性やアルカリ性の度合いは,水溶液中の水素イオンの量ではかることができる。これを数値で表したものを pH (または水素イオン指数)という。pH の値は 0 ~ 14 までで,pH 0 ~ 7 未満が酸性,pH7 が中性,pH 7 超~14 がアルカリ性である。
酸化と還元
物質が酸素と化合することを酸化という。酸化の逆で,酸化物の酸素を失うことを還元という。
化学反応と熱
物質が化合や分解などの化学変化を起こすとき,多くの場合,熱の発生や吸収が起こる。このときの熱量を反応熱という。
演習問題
水素(H2),炭素(C),プロパン(C3H8)の燃焼熱がそれぞれ 286 kJ/mol,394 kJ/mol,2 219 kJ/mol である場合,プロパンの生成熱として正しいものは次のうちどれか。
なお,それぞれが完全燃焼する場合の化学反応式は,下記のとおりである。
- 107 kJ/mol
- 215 kJ/mol
- 1 539 kJ/mol
- 2 899 kJ/mol
- 4 545 kJ/mol
正解は,1. である。プロパンの生成熱 [kJ/mol] は,次式で求められる。
金属とハロゲン
金属の性質
金属には一般的に次のような性質がある。
- 金属光沢がある。
- 熱や電気をよく伝える。
- 一般に常温で固体である。(水銀は例外。)
- 一般に融点は高い。(水銀は例外。)
- 一般に比重が1より大きい。(カリウムやナトリウムの比重は1より小さい。)
- 一般に水に入れると電子を失い,陽イオンとなる。
イオン化傾向
一般に,金属は水に入れると電子を失い,陽イオンとなって水に溶け出す。ただし,金属によって陽イオンになりやすいものとなりにくいものがあり,なりやすさの違いをイオン化傾向という。イオン化傾向の大きいものからならべると,下記の通り。
金属はイオン化傾向の大きいものほど酸化されやすく,腐食が早く進む。また,重金属より軽金属のほうがイオン化傾向が大きくなる性質がある。ちなみにイオン化傾向の覚え方は,金かな,まあ当てにすんな,ひどすぎる借金
。
演習問題
地中に埋設された危険物の金属製配管を電気化学的な腐食から守るために,配管に異種金属を接続する方法がある。
配管が鋼製の場合,次の A ~ E に掲げる金属のうち,効果のあるものの組合わせとして,正しいものはどれか。
- 銅
- 鉛
- マグネシウム
- 亜鉛
- スズ
- A と B
- A と E
- B と C
- C と D
- D と E
正解は,4. である。鋼(Fe)よりイオン化傾向が大きいものは,マグネシウム(Mg)と亜鉛(Zn)である。
ハロゲン
周期表の 17 族に属するフッ素(F),塩素(Cl),臭素(Br),要素(I),アスタチン(At)の 5 つの元素をまとめてハロゲンという。ハロゲンは水素や金属と反応しやすく,消火剤として使用されているものもある。
有機化合物(organic compound)
炭素を主体とした化合物を総称して有機化合物という。一方,炭素を含まない化合物を無機化合物という。※一酸化炭素(CO),二酸化炭素(CO2),炭酸ナトリウム(Na2CO3)は炭素を含んでいても,無機化合物に分類される。