【要点ノート】工場配電その1

2013年7月24日作成,2023年4月29日更新

配電方式

配電方式

低圧配電系統の構成は,構成のシンプルさ,経済性,新規供給の対応面から樹枝状方式(branch-type distribution system)が基本である。

表 低圧配電系統の種類
系統構成 概要
樹枝状方式 配電用変圧器ごとに低圧配電線が独立しており,他と連系していないもので,わが国では大部分がこの方式である。
バンキング方式 同一の高圧配電線に接続されている 2 台以上の配電用変圧器の低圧配電線を相互に接続するものである。電圧変動や電力損失が少なくなるが,わが国の低圧配電方式としてはほとんど使用されていない。
低圧ネットワーク方式 低圧配電線を相互に接続し,これに同一母線から出る 2 回線以上のフィーダで供給するもので,低圧需要家の無停電供給が可能である。低圧需要家の割合が高く,超過密地域の一部で使用されている。

その他の配電方式としては,ループ方式,常用予備切替方式,スポットネットワーク方式などがある。これらは,いずれも都心部などの過密地域や特別高圧配電線路で適用されている。

スポットネットワーク受電方式

一般電気事業者の変電所から,スポットネットワーク配電線(通常 3 回線の 22 kV または 33 kV 配電線)で受電し,各回線に設置された受電変圧器(ネットワーク変圧器をいう。)を介して二次側のネットワーク母線で並列接続した受電方式をいう。電気方式には,一次側は 22 kV(または 33 kV)三相 3 線式,二次側 200 ~ 400 V 級三相 4 線式(低圧スポットネットワーク方式)と二次側 6.6 kV 三相 3 線式(高圧スポットネットワーク方式)とがある。

スポットネットワーク受電方式
2 以上の特別高圧配電線(スポットネットワーク配電線)で受電し,各回線に設置した受電変圧器を介して 2 次側電路をネットワーク母線で並列接続した受電方式

SNW 受電方式で使用されるネットワーク継電器には次の三つの特徴がある。

  1. 無電圧投入特性:ネットワーク母線が無電圧の状態でネットワーク変圧器が充電された場合,プロテクタ遮断器は自動投入する特性
  2. 過電圧(差電圧)投入特性:配電線事故が復旧して送電されたとき,プロテクタ遮断器を自動投入する特性
  3. 逆電力遮断特性:配電線の1回線が故障時,健全相からネットワーク母線を通じて故障回線へ電流が逆流するのを検出してプロテクタ遮断器を遮断する特性
スポットネットワーク受電方式
図 スポットネットワーク受電方式

定電圧方式

配電線路によって需要設備へ電力供給を行う形態として,一般的には定電圧方式が採用されている。ただし,実際には負荷の変動による線路の電圧降下などにより負荷端電圧が変動するので,このことを考慮した設備構成や運用を行うことが求められる。

この電圧降下を低減し,負荷機器の許容電圧範囲内に収めるためには,例えば次のような対策が考えられる。

① 配電用変圧器を付加中心点近くに配置

変圧器二次側の低電圧で電圧降下の大きい配電区間を縮小することにより,線路全体での電圧降下を低減させる。これにより,線路全体での電力損失も低減できる。

② 系統インピーダンスの低減

インピーダンスの低減方法としては,配電線路の太線化,こう長の短縮,短絡インピーダンスの低い変圧器の採用などがある。ただし,短絡インピーダンスの低い変圧器を採用する場合は,短絡電流の増加による回路への影響を考慮する必要がある。

受電方式

2 000 kW 未満の自家用受電設備については,やむをえない場合を除き,標準電圧は各電気事業者の電気供給約款ですべて 6 000 V である。

高圧受電設備の高圧側の受電方式としては,受電設備容量 500 kVA 以下の主遮断装置には設備の簡素化から高圧限流ヒューズ(PF)と高圧交流負荷開閉器(S)を組み合わせた PF・S 形が,それより大容量の設備には主遮断装置には遮断器(CB)と過電流継電器を組み合わせた CB 形が使用される。

CB 形の受電方式は過電流継電器(OCR : Over Current Relays),地絡継電器(GR : Ground Relays)と遮断器(CB : Circuit Breaker)の組み合わせによって,短絡,過負荷,地絡及びその他の故障保護を完全に行い得るものである。

CB 形の受電方式の例
図 CB 形の受電方式の例

PF・S 形の方式は最も経済的な受電方式で,限流ヒューズ(PF)と高圧負荷開閉器(LBS)とを組み合わせて保護しようとするものである。

各種電気方式の比較

各種の電気方式において線間電圧を $V$,線路電流を $I$ および力率を $\cos{\theta}$ とし,これらを一定とするとき,電線総量比として単相 2 線式を 100 % としたときの比率を示したのが次表である。ただし,三相 4 線式,単相 3 線式の中性線は外線と同じで,各相,線間負荷は平衡するものとしている。

表 各種電気方式の特性
単相 2 線式 単相 3 線式 三相 3 線式 三相 4 線式
Δ 結線 V 結線 V 結線 Y 結線
送電電力 $VI\cos{\theta}$ $2VI\cos{\theta}$ $\sqrt{3}VI\cos{\theta}$ $\sqrt{3}VI\cos{\theta}$ $\sqrt{3}VI\cos{\theta}$ $\sqrt{3}VI\cos{\theta}$
電圧降下 $2IR\cos{\theta}$ $IR\cos{\theta}$ $\sqrt{3}IR\cos{\theta}$ $\sqrt{3}IR\cos{\theta}$ $\sqrt{3}IR\cos{\theta}$ $\sqrt{3}IR\cos{\theta}$
電力損失 $2I^2 R$ $2I^2 R$ $3I^2 R$ $3I^2 R$ $3I^2 R$ $3I^2 R$
電線総量比(単相 2 線式に対する %) 100 37.5 75 75 33.3 33.3

単相 2 線式と単相 3 線式の電圧計算

単相 2 線式(single-phase two-wire system,1 φ 2 W)

単相 2 線式とは,電圧線 1 本,接地された無電圧の線 1 本,計 2 本の電線・ケーブルを用いて単相交流電力を供給する低圧配電方式である。

電源電圧 $V_s$ と負荷電圧 $V_r$ の差が電圧降下(voltage drop)であり,電線の抵抗 $r$ による電圧降下(負荷電流を $I$ とすれば,往路と復路で 2rI )に等しい。

\[ v = V_s - V_r = 2Ir \]

電力損失(power loss) $P_l$ は電線の抵抗 $r$ による損失である。負荷電流(線路を流れる電流と等しい)を $I$ とすれば,電力損失は次式で表される。

\[ P_l = 2I^2 r \]
単相2線式の電圧降下と電力損失
図 単相 2 線式の電圧降下と電力損失
単相 3 線式(1 φ 3 W)

単相 3 線式とは,3 本の電線・ケーブルを用いて単相交流電力を供給する低圧配電方式である。

中性線に流れる電流 $I_N$ はキルヒホッフの法則の第一法則(KCL:Kirchhoff's Current Law)より次式で表される。

\[ I_N = I_1 - I_2 \]
中性線に流れる電流
図 中性線に流れる電流

キルヒホッフの法則の第一法則(KCL:Kirchhoff's Current Law)とは,電気回路の任意の接点において,流れ込む向きを正(または負)と統一するとき,各線の電流 $I_i$ の総和は 0 となる。

\[ \sum^N_{i=1}I_i = 0 \]

負荷が平衡した場合の電圧降下は電源電圧 $V_s$ と負荷電圧 $V_r$ の差分となる。単相 3 線式では電線の 1 線当たりの抵抗を $r$ とすれば,中性線の電流 $I_N$ は 0 となるため電圧降下 $v$ は,負荷線の電流を $I$ とすれば $Ir$ となる。

\[ v = V_s - V_r = Ir \]

このとき,電力損失 $P_l$ は次式となる。

\[ P_l = 2I^2 r \]
負荷が平衡した場合の電圧降下と電力損失
図 負荷が平衡した場合の電圧降下と電力損失

三相 3 線式(three-phase three-wire system,3 φ 3 W)の電圧計算

三相 3 線式とは,3 本の電線・ケーブルを用いて三相交流電力を供給する配電方式である。

三相 3 線式の電圧降下(voltage drop) $v$ は線電流 $I$ と 1 線当たりの線路抵抗 $r$ に $\sqrt{3}$ を乗じたものである。

\[ v = V_s - V_r = \sqrt{3}Ir \]

三相 3 線式の電力損失(power loss)は 3 線分の線路抵抗による損失となる。

\[ P_l = 3I^2 r \]
三相3線式の電圧降下と電力損失
図2-4 三相 3 線式の電圧降下と電力損失

分岐線路の電圧計算

ループ線路の電圧計算

電力と電力損失の計算

V 結線と異容量 V 結線

受電設備と負荷

電圧の調整

需要家端の電圧は,基本的には変電所の送り出し電圧と需要家に至るまでの配電線の電圧降下によって決定される。電圧降下は,場所的・時間的に変化することから,すべての需要家の電圧を一定に保つことは不可能であり,法に基づく規定値の範囲で維持することが定められている。維持すべき値としては,電気事業法施行規則 第44条により,標準電圧が 100 V の場合 101 ± 6 V,200 V の場合 202 ± 20 V を超えない値と定められている。高圧需要家の電圧は特に法的な規定はないが,実用上問題がない範囲として中心電圧の ±10 % 程度に維持されている。

電力損失の発生源と軽減対策

電力用コンデンサ

進相コンデンサ(Static Capacitor)

自家用電気設備において無効電力の制御を行うことにより力率を改善させる設備。設備容量の有効利用,配電損失の低減,電圧効果の抑制および電気料金低減などを目的に設定する。一般に負荷機器の多くは遅れ力率なので,遅れ電流に応じた容量の進相コンデンサを設置して力率改善を行う。

進相コンデンサによる力率改善
図 進相コンデンサによる力率改善
直列リアクトル(Series Reactor)

進相コンデンサの開閉時に発生する過大な突入電流の防止を目的に設置するリアクトル。また,進相コンデンサの設置に伴う高調波拡大現象を防止する目的でも設置される。

進相コンデンサ設備容量

進相コンデンサと直列リアクトルとを組み合わせた設備の定格電圧および定格周波数における設計無効電力。

進相コンデンサ容量

定格電圧および定格周波数における,進相コンデンサの設計無効電力。

電力用コンデンサでの力率改善

力率を改善する代表的な方法としては調相機による方法と進相コンデンサ(以下,SC と略す)による方法とがある。後者は前者に比較してその所要経費が格段に安く,しかも技術的にみても,供給変電所に SC をまとめて設置するよりも需要家ごとに SC を分散設置するほうが効果的であるため,その奨励策の一つとして欧米主要国と同様にわが国においても力率割引割増精度を設け,力率の改善を図っている。

力率の差による料金の割引および割増は,主として固定費に係るものであるため,基本料金を対象としてなされている。その方法は,毎日 8 時 〜 22 時における力率を対象として,遅れ 85 % を基準として 100 % に近づく,あるいは遠ざかる 1 % ごとに基本料金を 1 % 割引あるいは割増することとなっている。

なお,進み力率の場合には 100 % とみなされる。これは当該需要家だけをとれば,その効果は遅れ力率と異ならないわけであるが,送電系統全体では遅れ力率を改善することになるためこのような取り扱いとなっている。

系統連系

不特定多数の分散型電源が電力系統に連系され,逆潮流(分散型電源から電力系統への潮流)が増加すると,次表に示すような電力系統の安全性,安定性,信頼性に影響を及ぼすことが考えられる。このため,分散型電源を電力系統に連系する場合は,「電力品質確保に係る系統連系技術基要件ガイドライン」,「電気設備に関する技術基準を定める省令」,「系統連系規程」などに基づき実施されているが,分散型電源の急増による配電線の電力品質,電圧管理,事故時対応系統への受入の困難化など,新たな課題も生じている。

表 分散型電源の配電系統連系に関する主な検討課題
検討課題 内容
供給信頼度の確保(保護協調)
  • 分散型電源の内部事故あるいは故障が電力系統に波及しないこと
  • 電力系統の事故時に分散型電源が連系されていることにより事故の拡大や事故区間以外での電力供給に支障が生じないこと(短絡容量の増大,配電線過電流リレーの誤動作など)
電力品質の確保
  • 分散型電源の連系により生じる配電線の電圧変動を抑制すること
  • 分散型電源からの高調波電流の流出を抑制すること
安全の確保と設備保全 配電系統停止時に分散型電源が単独運転あるいは逆充電することを防止すること
安定運転の確保 他系統事故,系統切替,瞬時電圧低下,負荷急変などに対して運転を継続すること(FRT 運転)

分散型電源の系統連系

2011年3月に発生した東日本大震災に伴う電力の需給逼迫,地球温暖化防止,再生可能エネルギーの活用,そして固定価格買取制度の導入などにより,わが国では,現在,分散型電源の設置が積極的に推進されている。

「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」は、再生可能エネルギーで発電した電気を、電力会社が一定価格で一定期間買い取ることを国が約束する制度です。電力会社が買い取る費用の一部を電気をご利用の皆様から賦課金という形で集め、今はまだコストの高い再生可能エネルギーの導入を支えていきます。この制度により、発電設備の高い建設コストも回収の見通しが立ちやすくなり、より普及が進みます。

分散型電源とその系統連系装置は次表のようなものがある。

各種分散型電源の種類と系統連系装置
エネルギー源 発電形態 系統連系装置
太陽光,風力,水力 太陽光発電(直流) インバータ
風力発電(交流) 回転機(インバータ)
小水力発電(交流) 回転機(小型はインバータ)
化学燃料(ガス・石油) 燃料電池発電(直流) インバータ
回転機コージェネレーション(交流) 回転機(小型はインバータ)
廃棄物 ごみ発電(交流),バイオマス発電 回転機
太陽光発電設備

太陽光発電設備は,発電源となる太陽電池,その電源から発生する直流電力を交流に変換する逆変換器部,及び系統事故時に逆変換器を速やかに停止させる連系保護装置部の三つの主要部分から構成され,太陽電池は材料と組成により次のように分類される。

表 太陽電池の材料と組成による分類
太陽電池の材料と組成 主な特徴
シリコン 単結晶 高純度シリコンを使用
変換効率が高い
多結晶 シリコンは高純度を要しない
変換効率はやや劣る
多数の単結晶群により形成される
アモルファス 変換効率は劣るが,製造コストは安い
10 μm 程度の薄いシリコン層で形成される
化合物 銅,ガリウム,セレンなどの化合物を使用し,シリコンを使用しない

逆変換器部と連系保護装置部は合わせてパワーコンディショナと呼ばれ,逆変換回路には電圧形インバータが一般に使用される。この設備に要求される機能としては連系保護に加え,制御として出力電流制御,太陽光発電を有効活用するための最大電力点追従制御などがある。

参考文献

  • 道上 勉 著,「電気学会大学講座 送配電工学[改訂版]」,社団法人 電気学会,2011年8月25日 改訂版 7 刷
  • 飯田 芳一 著,「図解 配電系統と太陽光発電-系統連系のしくみを理解する技術要件ガイド-」,株式会社オーム社,2019年5月30日 第 1 版第 3 刷
  • 社団法人 東京電気管理技術者協会 編,「電気管理技術者必携(第 7 版)」,株式会社オーム社,2008年10月20日 第 7 版 第 1 刷
  • 「電気学会大学講座 電気機器工学 Ⅰ(改訂版)」,社団法人 電気学会,2002年1月31日 改訂版 14 刷
  • 一般社団法人 電気協同研究会 第66巻 第1号「配電系統における力率問題とその対応」

工場配電 第6版

電気学会・工場電気設備調査専門委員会 編 / A5 版 / 336 頁 / 定価 6,050 円(税込) / 978-4-274-22779-0

工場電気技術者必携書の改訂版。今回の改定では,若手・中堅技術者をおもな対象者として,現状の工場電気技術者の要求,ベテラン技術者の知識・経験から伝承すべき事項,最新技術・規格・基準等をまとめ,工場配電の現代的なあるべき姿を記載しました。若手エンジニアをはじめ,工場における電気を知りたい人,工場電気設備の新設および更新を計画・設計する人などに役立つようまとめています。

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