【要点ノート】電動力応用その2

2013年7月27日作成,2022年7月17日更新

使用の種類

永久磁石界磁同期電動機

永久磁石界磁同期電動機はかご形誘導電動機に比べ,一般に高効率で,サイズが小さい。永久磁界界磁同期電動機には,磁石を回転子表面に貼り付けた SPM 電動機と,磁石を回転子内部に埋め込んだ IPM 電動機がある。

SPM 電動機(Surface Pefmanent Magnet Motor)

ロータの表面に磁石を張り合わせた形状をもつ,回転界磁形式の同期モータ。

回転子に導体がなく,誘導電動機の二次抵抗損相当の損失がなく,高効率で小型化が可能である。一方で,磁石を回転子表面に取り付けているため,回転子の最大周速が制限され,比較的,小容量機に適用される。

IPM 電動機(Interior Permanent Magnet Motor)

モータ内部に永久磁石が埋め込まれている同期電動機で,設定周波数に同期して回転する。

SPM 電動機と同じ長所を備え,さらに弱め界磁制御により広範囲の出力制御を行うことができる。

巻上機の所要動力

巻上機の所要動力 $P$ [W] は,重力加速度 9.8 [m/s2],余裕係数を $k$,巻上荷重を $W$ [kg],巻上速度を $v$ [m/s],巻上効率を $\eta$ [p.u.] とすれば,次式で求められる。

\[ P = \frac{9.8kWv}{\eta} \]

ポンプの所要動力と特性

ポンプの所要動力 $P$ [kW] は,重力加速度 9.8 [m/s2],余裕係数を $k$,揚水量を $Q$ [m3/s],揚程を $H$ [m],ポンプ効率を $\eta$ [p.u.] とすれば,次式で求められる。

\[ P = \frac{9.8kQH}{\eta} \]

ポンプ駆動用電動機の入力電力

ポンプ駆動用電動機の入力電力 $P$ [kW] は,水の密度を 1,ポンプ効率を $\eta_p$,電動機効率を $\eta_m$ とすると,次式で表される。

\[ P = \frac{QH_T}{6.12 \times \eta_p \times \eta_m} \times Q_0 \times H_0 \]

ただし,$Q$ は流量 [p.u.],$H_T$ は全揚程[p.u.],$Q_0$ は定格流量 [m³/min],$H_0$ は定格揚程 [m] である。

ポンプの流量制御

インバータモータの回転数を変化させることで流量を調整することができる。回転数を高くすれば流量は増え,回転数を低くすれば流量は減る。

(参考)バルブでの流量調整

ポンプの流量調整をする場合,吐出側(出口側)のバルブの開度の大きさで調整するのが一般的である。

吐出側のバルブではなく,吸込側のバルブの開度の大きさで調整しようとすると,圧力が低下してキャビテーションを発生してしまう。

送風機と圧縮機

圧縮機と送風機の分類

空気機械で吐出し圧力が 98 [kPa] 以上のものを圧縮機,それ未満のものを送風機という。いずれも動作原理からターボ形と容積形に大別され,前者は軸流式と遠心式に,後者は回転式と往復式に分類される。さらに,吐出し圧力が 9.8 [kPa] 以上の送付機をブロワ,それ未満をファンと分類している。

  • 通風機(ファン):圧縮比 1.1 未満まで昇圧する送風機
  • 送風機(ブロワ):圧縮比 1.1 以上 2.0 未満まで昇圧する送風機
  • コンプレッサ:圧縮比 2.0 以上まで昇圧する圧縮機

送風機の所要動力

送風機の所要動力 $P$ [kW] は,風量を $Q$ [m³/min](質量流量 $G$ [kg/min]),風圧(吐出側と吸込側の全圧の差)を $H$ [Pa],送風機の効率を $\eta$ [%] とすると,次式で表される。

\[ P = \frac{QH}{60}\times\frac{100}{\eta} \times 10^{-3} \text{ [kW]} \]

汎用インバータ適用時の特徴と留意点

汎用インバータは,モータ(誘導電動機)の駆動周波数を変化させることによってモータを可変速運転する装置である。

インバータの構成

そもそもインバータ(Inverter)とは,「逆変換するもの」という意味である。電動機応用においては,直流又は交流から,周波数の異なる交流を発生させる(逆変換する)電源回路,またはその回路を持つ装置のことである。制御装置と組み合わせることなどにより,省エネルギー効果をもたらすことが可能である。

汎用インバータでは,入力の商用周波数の交流を整流器によりいったん直流に変換し,インバータにより可変電圧・可変周波数の交流に変換している。

減速時,負荷の慣性エネルギーが回生されると,そのエネルギーは平滑回路のコンデンサ(中間直流回路)に帰還させ,直流電圧を上昇させ,バルブデバイスを破壊するおそれがある。このような場合,減速機を低減して電圧上昇を抑えるか,これが不可能な場合には放電回路にエネルギーを放出させて電圧上昇を抑える。

インバータの構成
図 インバータの構成

汎用インバータを電動機駆動に利用する場合の特徴と注意点

直流リアクトル又は交流リアクトル

高調波を低減するため,入力側に交流リアクトルを挿入する方法とインバータ内部の直流回路に直流リアクトルを挿入する方法がある。インバータの入力電流ピークを抑制するが,適切な値を選ぶことにより電源側力率を改善できる。

力率改善用コンデンサ(インバータ入出力端子に直接接続)

力率改善用コンデンサは高調波電流が流れ込み,拡大させるので,インバータの入出力端子に直接接続してはならない。

制動動作

機械系の運動エネルギーがインバータの直流コンデンサにより吸収されるので,大きな制動力を必要としたり,頻繁に制動動作を繰り返す場合には,コンデンサのエネルギーを放出するため,制動抵抗回路や PWM 整流回路の追加が必要である。

電源容量

始動時に特に大きな電源電流が流れることはないので,電源容量としては通常,電動機定格出力の 1.5 倍程度で十分である。

電磁波障害

インバータの内部でパワー素子が高速度でスイッチングすることにより,電磁波ノイズが発生する。通信機器などに電磁波障害を与える場合には,ノイズフィルタを付けることにより電磁波障害を小さくすることができる。

運転範囲

汎用電動機は低速領域で冷却が悪くなるので,低速領域でも 100 % の連続トルクが必要な場合にはインバータ運転専用の電動機を使用する。

電動機の種類

高効率誘導電動機では,鉄損を低減するため高磁束密度のけい素鋼板を使用し,抵抗損を低減するためスロット断面を広くするなど高効率設計が採用されている。

産業部門でのエネルギー使用量は,国全体の 50 [%] 以上であり,平均的な工場で使用されている電力量の 70 [%] を電動機が占めている。省エネ法では工場全体のエネルギー効率向上が主目標として取り上げられ,JIS C 4212 の制定にもあるように高効率電動機の導入の加速が期待されている。

定格運転時の効率

商用電源で駆動されている電動機をインバータ駆動に変更すると,インバータの損失により定格運転時の効率(システム全体)は若干低下する。

ストール防止機能

$V/f$ 制御方式では,電動機の速度は開ループで制御されており,周波数の立ち上げを急激に行うと,インバータによる電流制限が原因となり加速ができず静止状態になる。これを防止するため,加速率を下げるなどのストール防止機能が工夫されている。

誘導電動機の高効率運転

$V/f$ 制御方式で軽負荷での効率(電動機)を改善するには,$V/f$ の値を定格運転時に比べ小さくする必要がある。

インバータの回路構成

下図は汎用インバータと回生制動形インバータの回路構成である。

汎用インバータでは,エネルギーの流れは一方向である。回生運転時には中間回路のコンデンサは充電と放電を繰り返すが,過電圧となる。

回生制度形インバータでは,コンバータ部に PWM 整流装置を用い,回生エネルギーを交流電源に返還する回路構成である。この方式は,省エネルギー装置として開発されたもので,エレベータや可逆頻度の多い工作機の回生エネルギーを電源力率の制御を行いながら電源に返還する機能を持っている。

インバータの回路構成
図 インバータの回路構成

(参考)整流回路とインバータの可逆性

整流回路は交流を直流に変換する装置であり,インバータは逆に直流を交流にする変換する機器またはシステムと定義されている。前者を順変換装置,後者を逆変換装置と呼ぶこともある。両者は回路構成が酷似しており,1 つの装置で制御のやり方によって,あるときは交流から直流へ,他の場合は直流から交流への変換動作を行う。

参考文献

  • 「電気学会大学講座 電気機器工学 Ⅰ (改訂版)」,社団法人 電気学会,2002年1月31日 改訂版 14 刷
  • 「電気学会大学講座 電気機器工学 Ⅱ(改訂版)」,社団法人 電気学会,1995年10月5日 5版(改訂版)
  • 広瀬 敬一 原著,炭谷 英夫 著,「電気学会大学講座 電機設計概論[4版改訂]-設計基礎から製図の基本まで-」,社団法人 電気学会,2007年11月30日 4 版改訂 1 刷
  • 宮入 庄太 著,「大学講座 電気・機械エネルギー変換工学」,丸善,2002年5月25日 第 10 刷
  • 「電気学会大学講座 パワーエレクトロニクスの基礎」,社団法人 電気学会,2007年10月30日 8 刷
  • 金 東海 著,「電気学会大学講座 パワースイッチング工学――パワーエレクトロニクスの基礎理論」,社団法人 電気学会,2003年8月5日 初版 1 刷
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