目指せ!エネルギー管理士 電気分野

2023年8月4日更新

平成18年度 問題3 エネルギー管理技術の基礎

次の各文章は「工場又は事業場におけるエネルギーの使用の合理化に関する事業者の判断基準」(平成18年経済産業省告示第65号)(以下,工場・事業場判断基準という)の内容に関連したものである。

(1) エネルギー消費原単位

工場・事業場判断基準は遵守すべき「Ⅰ エネルギーの使用の合理化の基準」(基準部分)と,努力すべき「Ⅱ エネルギーの使用の合理化の目標及び計画的に取り組むべき措置」(目標及び措置部分)との二つの部分から構成されており,エネルギー消費原単位を中長期的にみて年平均 1 パーセント以上低減させることを目標としている。

(2) 燃料の燃焼の管理

燃焼設備は,通常 1 より大きい値の空気比で操業されるが,空気比が過大であると排ガス量が増加し,エネルギー損失が増加する。一方,過小であると一酸化炭素や煤が発生し,これらによる損失が増加する。工場・事業場判断基準では,燃料の燃焼の管理は,燃焼設備及び使用する燃料の種類に応じて,空気比についての管理標準を設定して行うことを求めている。

(3) 燃料の完全燃焼

ある都市ガス燃焼ボイラにおいて,乾き排ガス中の酸素濃度(体積割合)が4%であった。このボイラにおいて燃料が完全燃焼しているものとすると,概略の空気比は 1.2 である。

工場・事業場の判断基準の別表第1 (A) 基準空気比 (1) (備考)より,空気比の算定は次式により行う。

空気比 = 21 / (21 - 排ガス中の酸素濃度 [%])

この式に数値を代入して計算する。

空気比 = 21 / (21 - 4) = 1.235 ≈ 1.2

(4) リジェネレイティブバーナ

リジェネレイティブバーナは,燃焼排ガスの熱を回収するセラミック製の蓄熱体とバーナとを一体化したもので,NOx の増加を抑制し 1 000 °C 以上の空気予熱が可能であり,排熱回収率が高められるので工場炉で普及している。工場・事業場判断基準では,バーナの更新・新設に当たっては,リジェネレイティブバーナなどの採用を検討することを求めている。

(5) 加熱などを行う設備で用いる蒸気

蒸気輸送管の保温を十分に行っても蒸気輸送管からの放熱があり,蒸気の乾き度が変化する。乾き度の低い蒸気を蒸気使用設備に送り込むと,伝熱面に凝縮液の膜が付着して伝熱を妨げたり,凝縮液が製品に付着して品質を損ねることがある。効率の良い加熱を行うためには,乾き度を適度に高いレベルに維持する必要がある。工場・事業場の判断基準では,加熱などを行う設備で用いる蒸気については,適切な乾き度を維持することを求めている。

(6) 平板の厚さ方向に伝わる単位面積当たりの熱量

厚さ 15 cm,熱伝導率 0.1 W/(m·K) の平板がある。板の両表面の温度をそれぞれ 80 °C 及び 20 °C としたとき,この平板の厚さ方向に伝わる単位面積当たりの熱量は 40 [W/m²] である。

厚さを $d$ [m],熱伝導率を $\lambda$ [W/(m·K)],板両面の温度を $\theta_1$,$\theta_2$ [°C] とすると,板の厚さ方向に伝わる単位面積当たりの熱流 $q$ は,次式で求められる。

\[ q = \lambda \frac{\theta_1-\theta_2}{d} = 0.1 \times \frac{80-20}{0.15} = 40 \]

(7) 空気調和設備

空気調和設備は,熱源設備,熱搬送設備,空気調和機設備,自動制御装置で構成されており,個々の設備の最適化だけでなく,全体を統合した外部からの総合投入エネルギー量の最小化を目指すことが重要である。工場・事業場判断基準では,空気調和設備の熱源設備の管理は,外気条件の季節変動などに応じ,熱源機とポンプ,冷却塔などの補機とを含めた設備の総合的なエネルギー効率を向上させるように管理標準を設定して行うことを求めている。

(8) 空気調和設備における省エネルギーの取り組みの手順

空気調和設備における省エネルギーの取り組みの手順としては,まず,空調負荷の低減を検討することが求められる。これにより,過剰な設備の導入が避けられる。工場・事業場判断基準では,空気調和の管理は,空気調和を施す区画を限定し,ブラインドの管理などによる負荷の軽減及び使用状況などに応じた設備の運転時間,室内温度,換気回数,湿度などについての管理標準を設定して行うことを求めている。

(8) コージェネレーションシステムの導入

コージェネレーションシステムの導入に当たっては,電力と熱の負荷状況(時間的・季節的変動,負荷パターンなど)を正確に把握し,保守・補修,信頼性などを考慮し,利用率が最大になるよう,適切な原動機の種類と容量及び台数などをシミュレーションなどによって選定し,経済性の評価を十分に行うことが肝要である。

(9) 配電系統の損失

配電系統の損失は,配電線路の損失と変圧器の損失が支配的要因である。配電線路の損失は線路の電流の 2 乗と線路の抵抗との積に比例する。工場・事業場判断基準では,受変電設備の配置の適正化及び配電方式の変更による配電線路の長さの短縮,配電電圧の適正化などについて管理標準を設定し,配電損失の低減を図ることを求めている。

(10) 負荷の合成インピーダンス

抵抗 4 Ω,リアクタンス 3 Ω を直列に接続した単相負荷がある。この負荷の合成インピーダンスは 5.0 [Ω] である。この負荷に単相交流 100 V の電圧を加えたときに負荷で消費される電力は 1.6 [kW] である。

(11) 三相 3 線式 200 V 電源から供給される三相平衡負荷

三相 3 線式 200 V 電源から供給される三相平衡負荷の消費電力が 10 kW,力率が 90 % であるとき,この負荷に供給する線路の線電流は 32 [A] である。

(12) 送風機

送風機の軸動力は,風量と風圧との積に比例して変化する。送風機の回転速度を変えると,送風機の風量は回転速度に比例して変化し,送風機の軸動力は回転速度の 3 乗に比例して変化する。工場・事業場判断基準では,ポンプ,送風機,圧縮機などの流体機械については,管理標準を設定し,その使用端圧力及び吐出量の見直しに基づく台数制御,回転速度の変更,配管変更,インペラカット,回転速度制御などにより,送出量及び圧力を適正に調整し,電動機の負荷を低減することが求められている。

(13) 照明設備の消費電力量

照明設備の消費電力量 [kW·h] は,照明設備の電力 [kW] と点灯時間 [h] との積で表される。点灯時間について,工場・事業場判断基準では,不必要な場所及び時間帯の消灯又は減光のため,人体感知装置の設置,計時装置(タイマ)の利用などについて検討することを求めている。

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