科目Ⅳ:電力応用 平成19年度

問題11 電動力応用

慣性モーメント

ある電動機の回転子が半径0.1m,質量5kgの均質な円柱で近似できるものとすると,中心軸に対する慣性モーメントは0.025[kg·m²]となる。

電動機と負荷が減速機を介して接続されていて,その減速比=(電動機側回転速度)/(負荷側回転速度)は5であり,その負荷側に換算した機械系全体の慣性モーメントが2kg·m²であった。この慣性モーメントを電動機側に換算すると,0.08[kg·m²]となる。

ある回転機械で機械系全体の慣性モーメント(電動機軸に換算)が0.01kg·m²,負荷トルク(電動機軸に換算)が4N·m一定であった。この機械を,電動機トルクを6N·m一定に保って静止状態から加速する場合,800rad/sの角速度まで加速するのに必要な時間は4秒である。ここで,系全体の機械損は無視できるものとする。

誘導電動機の可変速制御

インバータによる誘導電動機の可変速制御では,運転状況に応じて,インバータの出力電圧と周波数を適切に制御することが必要である。最も一般的なV/f制御方式は出力電圧を周波数に対応して設定するものである。V/fを一定にすると,低速度では電動機の一次インピーダンスによる電圧降下が無視できず,十分なトルクが発生できなくなる。そこで,加速時や負荷トルクの増大に対応させて電圧を補償する方式が一般的にとられており,これをトルクブーストという。

誘導電動機の可変速制御方式のうち,電動機の一次電流を励磁電流とトルク電流に分解して制御するものをベクトル制御という。トルクの急変時には周波数のみでなく,一次電流の位相がステップ的に変化するという特徴がある。従来,この制御の実現には速度センサが不可欠であったが,最近では制御理論やマイクロコンピュータの進歩により速度センサを必要としない方法が実用化されている。

汎用インバータ

送風機やポンプなどに使用される汎用インバータでは,商用周波数の交流を整流回路によりいったん直流に変換し,インバータにより可変電圧・可変周波数の交流に変換している。インバータが回生動作を行うと回生エネルギーは直流部のコンデンサに帰還され,直流電圧が上昇する。回生エネルギーが大きい場合には過電圧によりバルブデバイスが破壊する恐れがあるため,放電回路を動作させる。

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