科目Ⅳ:電力応用 平成19年度

問題13 電気加熱-選択問題

温度計

工業炉で使用される温度計には,熱電温度計や抵抗温度計に代表される接触式と,放射温度計などの非接触式とがある。接触式の熱電温度計はゼーベック効果を利用して測温するのに対し,非接触式の放射温度計は,被測温体からの熱放射エネルギーをレンズで集光し,検出素子により電気量に変換して測温するものである。

熱電温度計は2種の金属で構成された閉回路において,二つの接続点にそれぞれ異なる温度を与えると,回路に電流が流れる。これをゼーベック効果という。この回路を途中で回路すると,開路点には起電力が発生するが,この起電力から温度を知ることができる。

金属発熱体

金属発熱体には,合金発熱体と単体金属発熱体がある。ニッケルクロム系と鉄クロム系の合金発熱体は,一般に1200~1300°C以下の酸化雰囲気中で広く使用されている。一方,タングステンタンタル,モリブデンは高温では還元雰囲気,中性雰囲気,又は真空中での使用に限定される。また,タンタルは水素を嫌うので,高温では中性雰囲気か真空中でしか使用できないといった条件がある。

表 金属発熱体の種類と特性
金属発熱体 最高使用温度[°C] 使用可能雰囲気
合金発熱体 鉄クロムアルミ系
Fe-Cr-Al
1100~1400 酸化
ニッケルクロム系
Ni-Cr
1000~1200 酸化
単体発熱体 タングステン
W
2400 還元,中性,真空
タンタル
Ta
2200 中性,真空
モリブデン
Mo
1800 還元,中性,真空

電子ビーム加熱

電子ビーム加熱では,被加熱材表面に当たる電子ビームは,パワー密度が小さい場合,通常のアーク溶接と同様に被加熱材表面で熱に変わり,その熱は順次伝導伝熱で被加熱材内部に伝わっていく。

加熱,溶接の分野で工業的に主として利用される炭酸ガスレーザは波長10.6μmの遠赤外線を,また,YAGレーザは波長1.06μmの近赤外線を放出するものが多い。

直接抵抗加熱設備

図1のような直接抵抗加熱設備で,一辺の長さが0.01mの正方形断面を有する長さ2mの金属角材を加熱する場合を考える。この角材の抵抗率が0.8×10-6Ω·mであるとき,その抵抗値は16×10-3[Ω]となる。したがって,この角材を直流電力36kWで加熱する場合,両電極間に加えるべき電圧は24[V]である。ただし,電極部の抵抗,電極・角材間の接触抵抗は無視できるものとする。

図1
金属角材の抵抗値Rは,抵抗率をρ[Ω·m],断面積をA[m²],長さをd[m]とすると,次式で表される。
R[Ω]
電力をP[W]とすると,加えるべき電圧Vは,
V[V]

電気炉

図2のように炉壁が耐火れんがと断熱材で構成される電気炉がある。炉壁の伝熱面積は10m²で,内壁面温度は650°C,外壁面温度は50°C,外気温度は30°Cでそれぞれ一定に保たれている。炉壁は熱的定常状態にあり,耐火れんがの厚さ0.1m,熱伝導率は0.2W/(m·K),断熱材の厚さは0.05m,熱伝導率は0.02W/(m·K)で,それぞれ温度にかかわらず一定である。このとき,炉壁の熱抵抗は0.3[K/W]であるから,炉壁から外気へ流れる熱流は2.0[kW]となる。また,外壁面と外気間の熱伝達係数は10[W/(m²·K)]となる。ただし,熱伝達係数は外壁面の位置にかかわらず一定であるものとし,外壁面から外気への放射伝熱は無視できるものとする。

図2

熱抵抗RH は次式で表される。

ここで,λ は熱伝導率[W/(m·K)],d は厚さ[m],A は断面積[m²]である。

炉壁の熱抵抗RH は,耐火レンガの熱抵抗と断熱材の熱抵抗の直列接続であるので,次式で求められる。

炉壁から外気へ流れる熱流Q は,内壁面の温度をθ1 [°C],外壁面の温度をθ2 [°C]とすると,次式で求められる。

熱伝達係数h は,外気温度をθ0 [°C],単位面積当たりの熱流をθとすると,次式で求められる。

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