科目Ⅳ:電力応用 平成19年度

問題16 空気調和-選択問題

液体に粘性がなく,かつ,流れが定常であれば,ベルヌーイの定理によって,動圧,静圧,位置圧という三つの圧力和が一定という関係が成り立つ。この和を全圧と呼ぶ。空調ダクト内の空気の流れでは,これら三つの圧力のうち位置圧は無視できる。実際には空気に粘性があるため,ベルヌーイの式に管路の抵抗による圧力の損失を考慮する必要がある。

ダクト系では,一般に全圧は100~1000Pa程度の範囲,風速は2~16[m/s]程度の範囲が利用される。また,一般にこの圧力の損失に比べて端末吹出し口の圧力がはるかに小さい。これが電気回路との大きな違いであり,省エネルギーのためには,管路の損失を小さくするように設計で工夫することが大切である。また,送風ファンのエネルギー消費量は全圧風量の積に比例し,ファンの効率に反比例するため,ダクト系はできるだけ変風量方式で設計するのが好ましい。

空調の室内負荷は顕熱負荷qSHと潜熱負荷qLHに分けることができる。これらを用いると,顕熱比SHLは次式で表される。

K

また,水の蒸発潜熱をrとし,潜熱負荷qLHを生じる原因である発生水分量などをWとすると,潜熱負荷q_{LH}は次式で表される。

qLH=rW

空調機で室内負荷を処理するときは,顕熱負荷と潜熱負荷の両方を処理する必要があるが,そのときの空気の定圧比熱をcp,空気の密度をρ,室内温度をtR,吹出し空気温度をtDとすると,吹出し空気量(体積)Vは次式で表される。

V ・・・①

一般に,室に空調空気が吹き出されると,吹出し空気は顕熱負荷及び潜熱負荷を吸収して室内を設計条件に保つが,このとき室内に吹き出された空気の状態は,空気線図上で室内空気の状態を表す点を通り,顕熱比の勾配を持つ直線上になければならない。

空調を行う各室の最大負荷に対して式①から各室の必要風量を求め,これらを合計すれば空調機の風量を求めることができる。ただし,この計算を暖房と冷房の両方に対して行って,大きい方の値を採用する。実際のシステムでは負荷が常に変動するため,供給すべき熱量は負荷に合わせて変化させねばならないが,その方法には風量を変化させる方法と,吹出し温度を変化させる方法とがある。

inserted by FC2 system