問題8 工場配電
ある工場における配電系統
図は,ある工場における配電系統を示す。この配電系統は,受電端から順に22kV/6.6kV受電用三相変圧器,高圧配電線路,6.6kV/210V配電用三相変圧器,低圧配電線路,平衡三相負荷(以下,負荷という)で構成されており,各設備の仕様は次のとおり。
- 22kV/6,6kV受電用三相変圧器
- 定格容量:1000kVA
- 定格容量時の負荷損:8kW
- 6.6kV/210V配電用三相変圧器
- 定格容量:500kVA
- 定格容量時の負荷損:5kW
- 高圧配電線路
- 配電方式:三相3線式
- 1線当たりの電線断面積:22mm²
- 1線当たりの電線抵抗:0.85Ω/km
- 線路のこう長:50m
- 低圧配電線路
- 配電方式:三相3線式
- 1線当たりの電線断面積:400mm²
- 1線当たりの電線抵抗:0.047Ω/km
- 線路のこう長:100m

この配電系統において電力損失を低減させるため,次の1~6の方策について考える。なお,1~6の方策はそれぞれ独立して実施するものとし,電流による電力損失を計算する場合には,負荷に供給される電流のみを考えるものとする。
- 配電線路の電流が一定の場合,配電線路の抵抗損失を低減させる方法には線路を短くするか,太い電線を使用するかが考えられる。例えば,電線を,設備の仕様で与えた抵抗値を使用して,同じ長さで比較すると,断面積400mm²の電線の抵抗損失は,断面積22mm²の電線の抵抗損失の5.5[%]となる。
抵抗損失は導体の断面積に反比例するので,22/400*100=5.5[%]
- 同じ大きさの電力を送電する場合,配電線路の電圧が高い方が電力損失は少ない。例えば,負荷の消費電力を200kW一定とし,配電用変圧器を移動させ,配電線路の全こう長150mは変えずに,高圧配電線路のこう長を100m,低圧配電線路のこう長を50mに変更した場合,低減する電力損失は2.09[kW]である。ここで,負荷の力率は100%一定とする。
- 配電用変圧器については,「工場又は事業場におけるエネルギーの使用の合理化に関する事業者の判断の基準」に規定する基準エネルギー消費効率以上の効率の変圧器を使用する。
- この配電線路に単相負荷を接続するときは,電圧の不平衡を防止するようにする。
- 電力損失は,負荷率によって変動し,一般に同じ時間内の負荷の消費電力量が同じとすれば,負荷率が小さいほど損失電力量は大きくなる。例えば,負荷の消費電力が200kWで24時間一定,すなわち,日負荷率100%の場合と,負荷の消費電力が300kWで12時間一定と,100kWで12時間一定の組合せ,すなわち,日負荷率66.7[%]の場合とを比較すると,配電系統の1日の全損失電力量の差は32.5[kW・h]となる。ここで,負荷力率は100%一定とする。
- 負荷の消費電力が同じならば,負荷力率が高い方が電力損失は小さくなる。例えば,負荷の消費電力を200kW一定とし,負荷力率が100%から80%に低下すると,配電線路の電力損失は負荷力率100%のときと比較して,56.3[%]変化する。