科目Ⅲ:電気設備及び機器 平成20年度

問題9 電気機器

二巻線変圧器

一次巻線と二次巻線で構成される二巻線変圧器において,二次巻線が無負荷の状態で一次巻線に交流電圧を加えると,一次巻線に励磁電流が流れる。励磁電流は印加電圧と同相分の鉄損電流と,発生する磁束と同相分の磁化電流に分けて考えることができる。磁化電流により生じる交番磁束によって,印加電圧と平衡する起電力が生じる。この交番磁束によって誘起される起電力を誘導起電力という。鉄心の磁化特性は非直線性であり,かつ,ヒステリシス現象があるため,印加電圧が正弦波であっても励磁電流はひずみ波形となる。励磁電流は磁化電流分が大きいので,印加電圧に対し,ほぼπ/2遅れた位相で流れる。一次巻線によって生じた磁束は,二次巻線と鎖交することによって,二次巻線の巻数に比例する電圧を誘起する。

次に,二次巻線に負荷を接続すると,この巻線に流れる電流によって新たに起磁力が生じ,一次巻線には,この起磁力を打ち消すように補償電流が流れ込む。実際には,これら二つの巻線による磁束がすべて対向する巻線と鎖交するわけではなく,その一部が漏れる。この鎖交しない磁束を漏れ磁束といい,一次電流及び二次電流に比例して増減する。この漏れ磁束はリアクタンス降下と同じ作用を端子電圧に与え,漏れリアクタンスを生じる。漏れリアクタンスと巻線の抵抗とのベクトル和が短絡インピーダンスとなる。この値は,通常,基準インピーダンスに対する百分率で表され,一方の巻線を短絡して定格電流を流すように他方の巻線に印加した電圧の値と定格電圧との比の百分率に等しい。

実際の変圧器では,励磁電流と負荷電流が合成された形で入力側電流となり,入力側巻線の抵抗によって損失が発生する。また,同様に出力側では負荷電流と出力側巻線の抵抗によって損失が発生する。銅損はこれら両巻線抵抗による損失である。このほかに,巻線を流れる負荷電流が増加すると漏れ磁束も増加し,この漏れ磁束が巻線や鉄心押さえ及びその他の金属部分を通過するため,これらの部位に過電流を発生させることで生じる漂遊負荷損がある。

直列リアクトル付きコンデンサ設備

負荷と並列に直列リアクトル付きコンデンサ設備を接続することにより,電源側から見た力率の改善を図ることができる。この直列リアクトル付きコンデンサ設備の定格設備容量をQ[kvar],この設備に用いられるコンデンサの定格容量をQc[kvar],直列リアクトルの定格容量をQL[kvar]とすると,Qc及びQLは次の二つの式で計算される。

コンデンサの定格容量;Qc
直列リアクトルの定格容量;QL

ここで,Kはコンデンサに直列に接続される直列リアクトルの%リアクタンスであり,力率改善の目的で通常使用されている6%直列リアクトル付きコンデンサは,K=6である。

一方,直列リアクトル付きコンデンサ設備は,高調波フィルタとしても用いられ,高調波電流の電源系統への流出の抑制,高調波電圧ひずみの改善を図ることができる。この場合,直列リアクトル付きコンデンサ設備の共振次数はで求められる。

5次調波フィルタ(単一同調形)の場合を考えると,基本周波数の5倍で共振することから,K=4である。三相線間回路電圧6600V,三相定格設備容量550kvarの5次調波フィルタを構成するのに必要なコンデンサの定格容量Qc573[kvar],直列リアクトルの定格容量QL23[kvar]となる。

コンデンサの定格容量は,

Qc
であり,直列リアクトルの定格容量は,
QL
である。

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