科目Ⅳ:電力応用 平成20年度

問題16 空気調和-選択問題

空調システムの消費エネルギー

空調システムの消費エネルギーは室内環境条件に関係する。通常,事務作業空間の冷房時の設計用室内環境条件として,気温は25~28°Cで,相対湿度は50~60%の値が採用されるが,人間の温熱感はこれらだけでは決まらず,風速と放射にも関係する。

一方,室内環境条件には着衣量と代謝量という人間側の要因も深く関与する。着衣量を表す指標としてはcloが用いられ,その値は春秋期の正装で約1.0である。代謝量については,例えば,安静時の成人1人当たりの代謝量は,およそ100[W]である。

適切な省エネルギーのためには,これらの6要素を考慮して空調システムの運用を行うことが肝要であり,省エネルギーのためにと,室温だけをよりどころにして空調システムを運転すると,居住者から不満が出たり,居住者の知的生産性の低下を招いて非効率的な作業空間となる場合がある。

圧縮式冷凍機のプロセス

準備中

二酸化炭素濃度

「建築物における衛生的環境の確保に関する法律(最終改正平成18年6月2日)」(建築物衛生法)が適用される事業所では,空調設備を設けている場合,二酸化炭素濃度を1000[ppm]以下とする必要がある。一般建築物において二酸化炭素濃度を1000[ppm]以下に維持しようとすれば,計算上,30[m³/(h・人)]程度の外気量を導入することになる。しかし,事務室や工場作業場では外出などにより,実際の居住率は50%前後であることが多く,また,建物入口その他の隙間から外気の侵入があるので,保健空調を行っている空間に対しては,設計ピーク作業人員に対して実際には5~10[m³/(h・人)]の外気取入れで十分な場合も多い。したがって,一般に二酸化炭素濃度などを指標に外気量を制御することにより熱負荷低減につながる。

外気負荷低減のためには,全熱交換器を使用する場合も多い。全熱交換器は,空調している室内からの排気と取入れ外気との間で顕熱,潜熱共に熱交換を行うもので,70[%]前後の熱回収も可能である。ただし,冷房時に,排気が外気より高い比エンタルピーを有する場合には,運転を停止する。また,全熱交換器には回転形と固定形があるが,回転形を使用するときは,排気が外気取入れ側に漏気するおそれがあるので,排気ファンは全熱交換器に対して吸込み側になるように設置するほか,排気が著しく汚損されている場合は,適切な空気清浄装置やヒートパイプを利用した密閉形の顕熱交換器を用いることなどを検討する。ただし,夏季冷房に対しては顕熱だけでは熱回収率はかなり低くなる。

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