科目Ⅲ:電気設備及び機器 平成21年度

問題7 工場配電

分散型電源を連系するために必要な設備対策

コージェネレーションや新エネルギーなどの分散型電源を,一般電気事業者の配電系統に連系するために必要な設備対策は,次のように定められている。

  1. 公衆や作業者の安全確保,配電系統や他の需要家の電気設備への悪影響防止など,保安の確保に関するものは「電気設備の技術基準の解釈」に定められている。
  2. 電圧,周波数などの電力品質の確保に関するものは「電力品質確保に係る系統連系技術要件ガイドライン」に定められている。

これらにより,配電線との連系の種類は「低圧配電線との連系」,「高圧配電線との連系」,「スポットネットワーク配電線との連系」及び「特別高圧配電線との連系」の四つに区分されており,例えば,6600V配電線から受電する需要家が,構内に400Vの発電設備を設置して,昇圧用変圧器を介して系統に連系する場合には,原則として「高圧配電線との連系」が適用される。

新エネルギー

近年,二酸化炭素排出抑制対策の観点から,分散型電源として太陽光発電,風力発電などの新エネルギーへの関心が高まっている。太陽光発電に使われる太陽電池は,一般にp形半導体とn形半導体を接合した構造で,内部で発生する電気量は日射の強さに比例し,天候により大幅に変化する。日本での実績によると,最大出力1kWの太陽光発電設備を設置した場合,年間で得られる電力量は平均して1000[kW·h]程度である。また,風力発電も太陽光発電と同様,無尽蔵でクリーンな自然エネルギーであり,メリットは多いが,その出力は風向・風力の変動に大きく左右される。風力発電機の年間設備利用率は場所によって異なるが,日本での実績によると,平均して20[%]程度である。ここで,年間設備利用率は,定格出力で連続運転したときの発電電力量に対する,実際の発電電力量の割合を表す。

最大出力1kWの太陽光発電の年間に得られる電力量が1000[kW·h]程度として,年間設備稼働率は求める。365日24時間太陽光発電が稼働していたとすると,年間に得られる発電電力量は,365×24×1=8760[kW·h]である。よって年間設備稼働率は1000÷8760×100=11.4[%]となる。

分散型電源連系による電圧降下の低減と配電線電力損失の低減

図のように,長さLで,電線太さが均一で抵抗のみからなる配電線がある。この配電線にはL/2間隔で,定電流負荷Ⅰ,Ⅱが接続されており,二つの定電流負荷の電流は同一で変化しないものとする。この配電線の末端(定電流負荷Ⅱの引込地点の直近に,定電流負荷の合計(ⅠとⅡの電流の合計)の1/3の電流を定格電流とする分散型電源を連系するものとする。分散型電源を連系し,定格運転したとき,受電点から定電流負荷Ⅱの引込地点までの電圧降下は,分散型電源を連系していないときの値の56[%]となる。また,このときの配電線全体の電力損失は,分散型電源を連系していないときの値の38[%]となる。ここで,定電流負荷及び分散型電源の力率はいずれも1とし,配電線から定電流負荷Ⅰ,Ⅱへの引込部分,及び配電線と分散型電源の連系部分の長さは無視できるものとする。

定電流負荷Ⅰ,ⅡそれぞれにI/2ずつ電流が流れるとする。また,配電線L/2あたりの抵抗をrとおく。分散型電源連系前の電圧降下は,

連系後の電圧降下は,

連系前後での電圧降下を比較すると,

同様に,分散型電源連系前の電力損失は,

連系後の電力損失は,

連系前後で電力損失を比較すると,

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