科目Ⅲ:電気設備及び機器 平成21年度

問題8 工場配電

調相設備

調相設備には,進相用の電力用コンデンサ,遅相用の分路リアクトル,及び進相・遅相の両方に使用できる同期調相機があり,工場などでは,主に電力用コンデンサを設置して力率を調整している。

電力用コンデンサにより力率を改善することで,電力損失の減少,電気料金の低減,系統容量の増加及び系統電圧の改善を図ることができるため,適切な力率調整が望まれる。コンデンサによる力率調整の制御方式としては,時間制御,無効電力制御及び力率制御があるが,このうち無効電力制御及び力率制御では,コンデンサの投入・開放を連続的に繰り返すハンチング現象に対する配慮が必要となる。

一般にコンデンサ設備は,直列リアクトルコンデンサと直列に接続し,電力系統に存在する高調波に対し,コンデンサ設備の合成リアクタンスが誘導性になるようにして,電圧波形のひずみを軽減させ,かつ,コンデンサ投入時の突入電流の抑制を図っている。また,開放時の残留電荷を放電させるために,コンデンサと並列に放電抵抗又は放電コイルを備えている。

三相3線式2回線のループ運転

図のような三相3線式2回線の,常時開路のループ状の配電線(図の開閉器Sは開放した状態)がある。回線Ⅰ及び回線Ⅱの長さはいずれも1kmとし,電線1条当たりの抵抗は0.3Ω/kmで,線路インピーダンスは各回線とも平衡しているものとする。両回線の末端には二つの工場があり,1相当たりの負荷電流は,回線Ⅰで100A(力率100%),回線Ⅱが80-j60[A](力率80%)である。

負荷電流は三相平衡の定電流特性を有するとしたとき,回線Ⅰの線路損失は9kW,回線Ⅱの線路損失は9[kW]となる。

次に,開閉器Sを投入してループ運転を行った場合,開閉器Sを流れる電流の大きさは定常状態では10√10[A]となる。このとき,回線Ⅰ及び回線Ⅱの線路損失の合計値は,開閉器Sを投入する前に比べて0.9倍となる。

図a

開閉器Sを開放した状態で,回線Ⅱに流れる電流の大きさ[A]は,

回線Ⅱでの線路損失[kW]は,

開閉器Sを投入した後の定常状態での回線ⅠおよびⅡに流れる電流[A]は,

よって開閉器Sを流れる電流[A]は(工場Ⅰから工場Ⅱへの向きを正とする),

開閉器Sを流れる電流の大きさ[A]は,

回線Ⅰ及び回線Ⅱの線路損失[kW]は,

開閉器Sの投入前後で回線Ⅰ及び回線Ⅱの線路損失の合計値を比較すると,

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