科目Ⅲ:電気設備及び機器 平成21年度

問題9 電気機器

電気機器の発熱

電気機器は使用中,機器の内部での損失により熱を発生する。この熱は伝熱により外部へ放散されるが,一部は機器内部に蓄積され機器各部の温度を上昇させ,発生熱量と放熱熱量が均衡したときに温度が一定となる。電気機器各部の測定温度と冷媒温度との差を温度上昇という。温度上昇は電気機器の寿命や定格を決定する主要な指標の一つである。すなわち,使用される絶縁物の耐熱性によって区分が行われ,実用上十分な寿命が確保できるための許容最高温度が定められている。温度上昇値を求めるための温度測定法には,抵抗法,埋込温度計法,温度計法があり,目的に応じて使い分けがなされている。

規約効率の算定に使用する巻線抵抗には,これらの測定法によって得られた温度を用いて,測定した抵抗値を,使用絶縁物の耐熱クラスに対応した基準巻線温度へ補正した値が用いられる。

変圧器の損失

変圧器の規約効率の算定に用いられる全損失は,鉄損と誘電体損などの和である無負荷損,及び銅損と漂遊負荷損の和である負荷損で構成される。無負荷損の大部分を占める鉄損は,ヒステリシス損と渦電流損に分けられる。ヒステリシス損は,鉄心の磁化ヒステリシス現象により生じる損失で,交番磁界のもとでは周波数の1乗と,最大磁束密度の1.6~2乗に比例するものとして表すことができる。渦電流損は,鉄心中で磁束の変化に起因して発生する抵抗損である。

最近の変圧器は,損失の少ない鉄心材料を使用しているため無負荷損が減少し,最大効率の負荷点が軽負荷側に移行する傾向にある。日本工業規格 JIS C 4304:2005では,配電用油入変圧器のエネルギー消費効率の基準値を定義しており,この値を計算するときの基準負荷率を,定格容量が500kV·A以下では40%,500~2000kV·Aでは50%と規定している。

変圧器の無負荷損と負荷損

定格容量200kV·A,定格一次電圧6600V,定格二次電圧210Vの三相変圧器に,この定格容量に等しく,力率1の平衡三相負荷を接続したときの効率が98.5%であった。また,定格容量の40%で力率1の平衡三相負荷を接続したときに最大効率となった。これら二つの効率条件から,無負荷損Pi[W],定格容量時の負荷損Pc[W]は次のように計算される。

定格容量(100%)で力率1の負荷を接続したときの効率条件より次式が成立する。

Pi+Pc=3046[W]

定格容量の40%で力率1の負荷を接続したとき最大効率となる条件より次式が成立する。

Pi=(1.6×10-1)×Pc [W]

以上の二つの条件式より

Pi=420.1[W]
Pc=2626[W]

また,最大効率ηmの値は98.96[%]となる。

定格容量(100%)P=200[kV·A]で力率1の負荷を接続したときの効率が98.5%であるので,
最大効率となるのはα=0.40のときなので,
最大効率は,
inserted by FC2 system