科目Ⅳ:電力応用 平成21年度

問題11 電動力応用

かご形誘導電動機の可変速運転

かご形誘導電動機はインバータ装置を使用することにより,容易に可変速運転が行える。インバータ装置の主回路部は順変換回路,直流中間回路(平滑回路),及び逆変換回路から構成される。

通常,汎用インバータの順変換回路はダイオードで構成された整流回路で,直流中間回路の電圧を調整する機能は持たず,逆変換回路では出力電圧を変えるためにPWM変調方式が採用される。

汎用インバータでかご形誘導電動機の速度を変化させるための制御方式としては,回転速度を検出する必要がなく,簡便なV/f制御がある。この方式は電動機の回転速度を検出しないため,加速率を制限し,滑りが大きくなり過ぎないようにするストール防止機能が組み込まれる。

一方,クレーンなどの巻上装置にインバータ装置を使用する場合は,トルク制御が容易に行えるベクトル制御方式が必要となる。また,巻上装置では吊荷を巻き下げるときに,直流中間回路に負荷からのエネルギーが流入することになる。このときに生じる過電圧を防止するために,半導体スイッチと抵抗器から成る放電回路を付加するか,交流電源への回生機能を有する順変換回路に変更するなどの考慮が必要となる。

三相かご形誘導電動機による負荷の巻上げ

4極の三相かご形誘導電動機が,(減速比)=(電動機側の回転速度)/(負荷側の回転速度)が100の減速機を介して図のような巻胴に結合し,200V,50Hzの商用電源に接続されて一定速度で負荷を巻き上げている。

この巻上げ負荷の質量mが1300kgのとき,電動機の滑りが0.04であった。このとき電動機の毎分回転速度は1440[min-1]であり,毎秒回転角速度は151[rad/s]である。巻胴の半径rが0.5mであると,巻上げに必要なトルクは6370[N·m]になる。したがって,巻上げに必要な電動機の回転子軸トルクは63.7[N·m]である。この結果,電動機軸の機械的な出力は9.60[kW]となる。

ただし,円周率πは3.14,重力の加速度gは9.8m/s²とし,巻上機と減速機の機械損は無視できるものとする。

電動機の毎分回転速度Nは,

毎秒回転角速度は,

巻上げに必要なトルクTは,

巻上げに必要な電動機の回転子軸トルクT'は,減速比が100なので,

電動機軸の機械的な出力は,

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