科目Ⅳ:電力応用 平成21年度

問題14 電気化学-選択問題

電気化学システム

地球レベルでの環境問題が注目される中,電気エネルギーは使いやすくクリーンな二次エネルギーである。この電気エネルギーと化学エネルギーを結びつけるものが電気化学システムである。

電気化学システムを利用して,電気をエネルギー源として化学物質を得るシステムは,電解システムと呼ばれる。一方,電気化学システムを利用して,化学物質から電気を得るシステムは,電池システムと呼ばれる。

電気化学システムでは,電子伝導体である2種の電極と,イオン伝導体である電解質が重要な要素となる。電解質は,室温で水電解あるいは乾電池にも利用されているアルカリ水溶液,亜鉛電解精錬に使われている硫酸水溶液から,1000°C付近でアルミニウム精錬に使われている溶融塩電解質まで,幅広い温度域をカバーしている。また,電解質としては液体に限らず,自動車用や家庭用の燃料電池に用いられている固体高分子電解質もある。

鉛蓄電池

鉛蓄電池は,19世紀中頃のプランテの発明によるもので,現在でも自動車の始動用をはじめ,信頼性のある二次電池として産業用にも不可欠なものである。蓄電池では正極,負極における電気化学反応により充放電される。

鉛蓄電池では,正極の活物質は充電状態でPbO2が,また,放電状態でPbSO4が主体である。一方,負極の活物質は放電状態でPbSO4が主体である。いずれの極でも,反応物と生成物が共に固体でありながら可逆的に反応を進行させることができる。また,イオン伝導体である電解液にはH2SO4の水溶液が用いられる。

鉛蓄電池と他の実用化されている水溶液系二次電池とを比較した場合,前者では固相である活物質の鉛化合物と,液相である電解液との反応があり,その結果として電解液の比重で充電状態が分かる点が鉛蓄電池の特徴となる。

鉛蓄電池の放電反応
負極:Pb+SO4--2e-→PbSO4
正極:PbO2+4H++SO42-+2e-→PbSO4+H2O
全反応:Pb+2H2SO4+PbO2→2PbSO4+2H2O
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