科目Ⅰ:エネルギー総合管理及び法規 平成22年度

問題3 エネルギー管理技術の基礎

次の各文章は「工場又は事業場におけるエネルギーの使用の合理化に関する事業者の判断の基準」(以下,工場等判断基準と略記)の内容に関連したもので,平成22年4月1日時点で施行されているものである。これらの文章において「工場等(工場等であって専ら事務所その他これに類する用途に供するものを除く)に関する事項について,「Ⅰ エネルギーの使用の合理化の基準」の部分は基準部分(工場),「Ⅱ エネルギーの使用の合理化の目標及び計画的に取り組むべき措置」の部分は目標及び措置部分(工場)と略記する。

工場等判断基準の基準部分で,事業者に工場等において求められていることは,燃料並びに熱及び電気の合計のエネルギーの使用の合理化を図るため,燃料並びに熱及び電気の特性を十分に考慮するとともに,その設置している工場等全体を俯瞰し,定められた取組を行うことにより,技術的かつ経済的に可能な範囲内で工場等単位,設備単位(個別設備ごとに分離することが適当ではない場合にあっては,設備群単位又は作業工程単位)によるきめ細かいエネルギー管理を徹底し,エネルギーの使用の合理化を適切かつ有効に実施することである。

基準部分(工場)は,次の6分野ごとに工場等で遵守すべき基準を示したものである。

  1. 燃料の燃焼の合理化
  2. 加熱及び冷却並びに伝熱の合理化
  3. 廃熱の回収利用
  4. 熱の動力等への変換の合理化
  5. 放射,伝導,抵抗等によるエネルギーの損失の防止
  6. 電気の動力,熱等への変換の合理化

燃料管理では爆発・火災に対する安全対策が何よりも優先するが,次いで良好な燃焼状態を得られるよう燃料を保管すること,燃料の取扱いに必要なエネルギーの節減を図ることが必要である。工場等判断基準の基準部分(工場)では,燃料を燃焼する場合には,燃料の粒度,水分,粘度などの性状に応じて,燃焼効率が高くなるよう運転条件に関する管理標準を設定し,適切に運転することが求められている。

ある都市ガス燃焼ボイラにおいて,乾き排ガス中の酸素濃度(体積割合)が2.3%であった。このボイラにおいて燃料が完全燃焼しているものとすると,概略の空気比は1.1である。

空気比=21/(21-排ガス中の酸素濃度[%])=21/(21-2.3)=1.12

ボイラ給水の中には種々の不純物が含まれており,ボイラの運転経過と共にボイラ水中の不純物の濃度が高くなり,例えば蒸発管内側にスケールが付着するようになる。スケールの熱伝導率は鋼管に比べてかなり小さいため,付着量が少なくても所定の蒸気量を確保しようとすると,燃料の使用量は増加することになる。工場等判断基準の基準部分(工場)では,ボイラへの給水は,伝熱管へのスケールの付着及びスラッジなどの沈殿を防止するよう,水質に関する管理標準を設定して行うことが求められている。

蒸気使用設備において加熱を終わった蒸気はドレンとなるが,設備に必要な蒸気を常に供給するには,発生したドレンを速やかに排出する必要がある。蒸気使用設備からドレンを排出するのに使用されるのがスチームトラップである。工場等判断基準の基準部分(工場)では,スチームトラップはその作動の不良などによる蒸気の漏えい,及びトラップの詰まりを防止するように保守及び点検に関する管理標準を設定し,これに基づき定期的に保守及び点検を行うことが求められている。

大気圧下で30°Cの水100kgを冷却して,0°Cの水と0°Cの氷の混合物を製造する。水と氷の質量比を (水の質量)/(氷の質量)=70/30とすると,この混合物を製造するために必要な冷却エネルギーは23[MJ]である。ただし,水の比熱を4.2kJ/(kg·K),氷の融解潜熱を340kJ/kgとする。

水を冷却するのに必要なエネルギー
4.2×100×(30-0)=12600[kJ]
30kgの氷を製造するために必要なエネルギー
340×30=10200[kJ]
合計すると22.8[MJ]となる。

加熱炉では炉内温度が高いため,炉壁からの放熱の低減が重要な省エネルギー対策となる。一方,乾燥炉においても炉内温度は低いが表面積が大きいため,炉全体からの放射量は多くなるので注意を要する。工場等判断基準の目標及び措置部分(工場)は,断熱材の厚さの増加,熱伝導率の低い断熱材の利用,断熱の二重化などにより,熱利用設備の断熱性を向上させるよう検討することが求められている。

表面温度80°C,表面積3m³の鋼板に接して,温度20°Cの水が流れている。この場合の熱伝導率が550W/(m²·K)であるとき,鋼板から水への伝熱量は99[kW]である。

550×3×(80-20)=99000[W]

熱媒体を輸送する配管に不要配管,迂回配管などが多くあれば,その部分を通る熱媒体の熱が管そのものに奪われ,更に表面からの熱放散により熱の損失が生じる。したがって,配管経路を最短化・集合化する合理化を行い,放熱面積そのものを低減する必要がある。工場等判断基準の基準部分(工場)では,熱利用設備を新設する場合には,熱媒体を輸送する配管の経路の合理化,熱源設備の分散化などにより,放熱面積を低減することが求められている。

定期報告書作成のため,ある工場のエネルギー消費原単位を,原油換算値を用いて求める。前年度の製品の生産数量は900個,一般電気事業者からの買電量は9600MW·hであった。また,自家発電用のボイラでA重油1200kLを使用して3900MW·hの発電を行い,発生した電気及び熱はすべて工場で消費した。この工場の原油換算値を用いたエネルギー消費原単位は4.03[kL/個]である。ここで,電気量の熱量への換算係数を9.76GJ/(MW·h),A重油の高発熱量を39.1GJ/kLとする。

液体燃料を使用するボイラで発生した蒸気をタービンに通気し,このタービンで発電機を駆動する火力発電設備が定出力運転をしている。燃料消費量を36kL/hとすると,発電電力は153[MW]である。ここで,燃料の高発熱量を40GJ/kL,ボイラ効率(高発熱量基準)を85%,タービンと発電機を一体とした効率を45%とし,その他の損失は無視できるものとする。

空気調和設備の省エネルギーでは,負荷の低減が大きな要素となる。工場等判断基準の基準部分(工場)では,工場内にある事務所などの空気調和の管理は,空気調和を施す区画を限定し,ブラインドの管理などによる負荷の軽減及び区画の使用状況などに応じた設備の運転時間,室内温度,換気回数,湿度,外気の有効利用などについての管理標準を設定して行うことが求められている。

抵抗8Ω,誘導性リアクタンス6Ωを直列に接続した単相負荷がある。この負荷に交流400Vの電圧を加えたとき,負荷で消費される電力は12.8[kW]である。

三相誘導電動機が電圧400Vで運転されている。電流は最初の30分間は20A,次の30分間は30A,力率はいずれも85%であった。電動機がこの60分間で使用した電力量は14.7[kW·h]である。

線間電圧400Vの対称三相交流電源から供給される平衡三相負荷の電流が60A,力率が80%であった。この力率を100%に改善するために,負荷に並列に設置すべきコンデンサ容量は24.9[kvar]である。

同期電動機とかご形誘導電動機について比較すると,通常運転では,同期電動機は負荷の大きさによらず同期速度で回転するが,かご形誘導電動機は同期速度より数パーセント遅く回転し,負荷が大きくなると滑りは少しだけ大きくなる

工場等判断基準の基準部分(工場)では,ポンプ,ファン,ブロワ,コンプレッサなどの流体機械については,使用端圧力及び吐出量の見直しを行い,負荷に応じた運転台数の選択,回転速度の変更などに関する管理標準を設定し,電動機の負荷を低減することが求められている。

電気加熱では,燃料による加熱では不可能な材料内部からの加熱ができる。内部からの加熱の方式としては,主に,被加熱材が電気的絶縁物である場合は誘電体損失による発熱を利用する加熱方式,導電性物体である場合はジュール熱を利用する加熱方式が用いられる。

照明において,光源の光色を表す数値として色温度がよく使用される。光源の色温度は青みを増すと高い数値になる。

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