科目Ⅲ:電気設備及び機器 平成22年度

問題9 電気機器

二巻線変圧器

一次巻線と二次巻線とで構成される二巻線変圧器において,二次巻線が無負荷の状態で一次巻線に交流電圧を印加すると,一次巻線に励磁電流が流れる。励磁電流i0[A]と一次巻線数N1との積(i0×N1)で表される起磁力により,鉄心中には交番磁束φが生じる。変圧器の原理は,この磁束φによって一次及び二次の巻線に誘起される起電力に基づいている。交流電圧を印加すると,発生する磁束は印加される電圧とπ/2[rad]の位相差を有し,励磁電流としては磁束と同相の磁化電流,及び印加電圧と同相の鉄損電流が流れる。

変圧器を交流電源回路に投入したとき,励磁電流が定格電流を超える値となり,定常値となるのに数秒間を要する場合がある。この励磁電流を励磁突入電流と呼び,その大きさは,通常,鉄心中の残留磁束の大きさと,投入されるときの電源電圧位相で決まり,電源電圧の瞬時値がとなる位相で投入されたときに最大となる。

三相誘導電動機

三相誘導電動機の回転速度をn[min-1],同期回転速度をn0[min-1],滑りs=(n0-n)/n0とし,回転速度及びトルクと回転磁界が同方向の場合を正方向とすれば,滑りs<0となる領域では,n>n0であり,誘導発電機として電源にエネルギーを送り返す回生制動が可能である。s>1となる領域ではn<0であり,トルクが回転と逆方向に働き制動動作を行う範囲である。

n[min-1]で回転している状態で停止又は逆転を急速に行いたいときは,相回転の方向を逆にする(3相のうち2相を切り換える)と,新しい回転磁界の方向に対しては,-n[min-1]で回転していることになり制動域に移る。この制動方法はプラッキングとも呼ばれ,低速度になるほど制動トルクは大きくなり,急速に停止できるが,切り換えてから逆方向の運転速度に達するまで,大きな電流が流入する。

三相誘導電動機の速度制御用に汎用インバータを使用する場合で,制動時の回生エネルギーが大きく,直流回路が過電圧になる恐れがあるときは,半導体スイッチと抵抗から成る制動回路を付加するか,電源へのエネルギー返還が可能な順変換回路が採用される。

三相変圧器

定格容量1500kV·A,電圧比6600V/210Vの三相変圧器があり,高圧側を短絡し,低圧側から交流電圧10.92Vを印加したとき低圧側が定格電流となった。また,このとき低圧側で測定された有効電力の値は11.85kWであった。

定格容量基準での短絡インピーダンスは,一方の巻線を短絡し,定格電流を流すように他方の巻線に印加した電圧を定格電圧で除した値を百分率で表したもので,前述の測定結果を用いて5.2[%]と計算される。ここで,百分率抵抗降下pは,短絡インピーダンス中の抵抗分で,定格容量に対する損失値として表されるので7.9×10-1[%]となる。したがって,百分率リアクタンス降下qは5.14[%]となるので,遅れ力率0.8の負荷を接続して,定格容量で運転したときの電圧変動率εは簡略式を用いて3.72[%]となる。

短絡インピーダンスは,

10.92/210×100=5.2(%)

百分率抵抗降下pは,

11.85/1500×100=0.79(%)

百分率リアクタンス降下qは,

(%)

電圧変動率εは,

(%)

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