問題10 電気機器
誘導電動機,永久磁石形同期電動機,半導体電力変換装置
誘導電動機は,回転子側の電流を固定子巻線からの電磁誘導作用によって発生させており,等価回路は変圧器と類似しているが,固定子と回転子の間にエアギャップがあるため磁路の磁気抵抗が大きく,変圧器に比べ励磁電流が大きい。また,電磁気的損失のほかに回転子の運動による摩擦損もあって,効率は一般に変圧器よりも低い。
近年,同期電動機の界磁巻線の代わりに永久磁石を用いた永久磁石形同期電動機が注目され,三相誘導電動機に比較しても高効率,高力率,低騒音,省スペース,保守の容易さなどの特徴から,適用分野が広がってきている。永久磁石形同期電動機の発生トルクは,永久磁石の磁束とこれと直交するq軸電流との積で表されるマグネットトルクと,磁気的な突極性によって発生するリラクタンストルクから成る。永久磁石形同期電動機を可変速運転する場合には,インバータなどを用いて電動機に印加する電源の周波数を変化させる。永久磁石形同期電動機では回転速度に比例して誘起起電力が増減する。このため,高速領域で電動機に加える電圧が誘導起電力より低いとトルクを発生できなくなるので,電機子電流の誘導起電力に対する位相を進み側に制御し,電機子反作用によって合成磁束を弱めて運転範囲の拡大を図っている。
半導体電力変換装置はバルブデバイスのオン-オフにより動作するため,電流又は電圧の波形が方形波状の組合せとなり,高調波と無効電力を発生する。また,使用されるバルブデバイスは理想的なスイッチング素子ではなく,オン状態での順方向電圧降下を発生し,オフ状態でのわずかな漏れ電流による損失が発生する。オフ状態からオン状態へ,あるいはその逆の切換に有限の時間を必要とすることによって発生する損失をスイッチング損失といい,切換動作の繰り返し周期を短くすると増加する。
三相誘導電動機
図は三相誘導電動機が滑りsで運転しているときの,星形換算1相分の二次(回転子)等価回路を示している。図において,E2[V]は二次誘導起電力,I2[A]は二次電流,また,r2[Ω]は二次抵抗,x2[Ω]は一次周波数における二次リアクタンスで,いずれも星形一次換算値である。なお,二次抵抗分は二次損失分と発生動力分に分割して表示している。この等価回路で,一次側からの二次入力P2,二次回路の抵抗損Pc2はそれぞれ次式で表される。
また,発生動力(機械出力)P0は次式となる。
これらの関係から,
これらの式を用いると,滑りが0.04で運転されている三相誘導電動機の二次抵抗損Pc2が150Wであるときの電動機の発生動力P0は,3.60[kW]となる。
また,定格出力250kW,定格電圧3000V,周波数50Hz,8極のかご形三相誘導電動機が,全負荷時の二次抵抗損8kW,機械損5kWである場合,全負荷の滑りは3.04×10-2となり,回転速度は727[min-1]となる。ただし,定格出力は定格負荷時の発生動力から機械損を差し引いたものに等しいものとする。

電動機の発生動力は,
滑りは,
回転速度は,