科目Ⅰ:エネルギー総合管理及び法規 平成23年度

問題3 エネルギー管理技術の基礎

次の各文章は「工場等におけるエネルギーの使用の合理化に関する事業者の判断の基準」(以下,工場等判断基準と略記)の内容に関連したもので,平成22年4月1日時点で施行されているものである。これらの文章において「工場等(工場等であって専ら事務所その他これに類する用途に供するものを除く)に関する事項について,「Ⅰ エネルギーの使用の合理化の基準」の部分は基準部分(工場),「Ⅱ エネルギーの使用の合理化の目標及び計画的に取り組むべき措置」の部分は目標及び措置部分(工場)と略記する。

燃料として重質油を使用する場合,スラッジや水分が燃料輸送系やバーナノズルを閉塞して燃焼を不安定にするので,タンク掃除,ストレーナの切替え掃除,水抜きなどを定期的に実施する必要がある。工場等判断基準の基準部分(工場)では,燃料を燃焼する場合には,燃料の粒度,水分,粘度などの性状に応じて,燃焼効率が高くなるよう運転条件に関する管理標準を設定し,適切に運転することが求められている。

ある重油燃焼ボイラにおいて,空気比の管理標準を1.2~1.3に設定し管理している。実際には,排ガス中の酸素濃度を測定し,工場等判断基準で定められている簡易式を用いて空気比を求めている。このときの簡易式を用いると,空気比1.2は乾き排ガス中の酸素濃度(体積割合)3.5[%]に相当する。

21/(21-x)=1.2より,x=3.5[%]

ボイラの蒸発管にすすが付着すると,燃焼ガスから水への伝熱が悪くなるため熱効率が低下する。工場等判断基準の基準部分(工場)は,ボイラ,工業炉,熱交換器などの伝熱面その他の伝熱に係る部分の保守及び点検に関する管理標準を設定し,これに基づき定期的にばいじん,スケールその他の付着物を除去し,伝熱性能の低下を防止することを求めている。

温度727°Cの物体の表面から放射される単位面積,単位時間当たりの放射エネルギーは45.4[kW/m²]である。ただし,この物体の表面の放射率を0.8,ステファン・ボルツマン定数を5.67×10-8W/(m²4))とする。

0.8×(727+273)4×5.67×10-11=45.36[kW/m²]

廃熱回収の計画に当たっては,廃熱の回収率を高めることと回収熱の利用率を高めることに留意する必要がある。工場等判断基準の基準部分(工場)では,廃熱を排出する設備から廃熱回収設備に廃熱を輸送する煙道,管などを新設する場合には,空気の侵入の防止,断熱の強化その他の廃熱の温度を高く維持するための措置を講ずることが求められている。

連続加熱炉において,被加熱物装入口近くから温度を高く設定すると急速過熱となり,加熱能力は増すが排ガス温度が高くなる。このため,被加熱物装入口近くは温度を低くし,抽出口に向かってなだらかに温度を上げていくことが行われている。工場等判断基準の基準部分(工場)では,加熱,熱処理などを行う工場炉については,設備の構造,被加熱物の特性,加熱,熱処理などの前後の工程などに応じて,熱効率を向上させるように管理標準を設定し,ヒートパターンを改善することが求められている。

加熱炉では炉内温度が高いため,炉壁からの放射の低減が重要な省エネルギー対策となる。工場等判断基準の基準部分(工場)は,加熱などを行う設備ごとに,炉壁外面温度,被加熱物温度,排ガス温度など熱の損失状況を把握するための事項及び熱の損失改善に必要な事項の計測及び記録に関する管理標準を設定し,これに基づきこれらの事項を定期的に計測し,その結果に基づく熱勘定などの分析を行い,その結果を記録することを求めている。

厚さ20cmの平板の両表面の温度がそれぞれ60°及び20°であった。この平板の厚さ方向に伝わる熱流速が20W/m²であるとき,この平板の熱伝導率は1.0×10-1[W/(m·K)]である。

蒸気輸送配管の保温を十分に行っても配管からの放熱があり,放熱量に相当する蒸気が配管内で凝縮するため,輸送される蒸気の乾き度は低下する。工場等判断基準の目標及び措置部分(工場)は,加熱などを行う設備で用いる蒸気であって,乾き度を高めることによりエネルギーの使用の合理化が図れる場合にあっては,輸送段階での放熱防止及びスチームセパレータの導入により熱利用設備での乾き度を高めることを検討することを求めている。

また,蒸気輸送配管における放熱損失を低減するために,工場等判断基準の目標及び措置部分(工場)は,熱媒体を輸送する配管の径路の合理化により,放熱面積を低減するよう検討することを求められている。

ある工場で,原油の量に換算したエネルギー使用量を,製品の生産数量で除した値をエネルギー消費原単位として管理している。前年度は,製品の生産数量が5500台で,電気使用量は12000MW·hであった。また,ボイラで使用したA重油は1000kLであり33800GJの蒸気を発生させ,すべて工場で消費した。今年度は,生産数量が5800台で,電気使用量は12400MW·h,A重油を1030kL使用して35000GJの蒸気を発生させ,すべて工場で消費した。この工場における今年度のエネルギー消費原単位は,前年度に対して97.9[%]になる。ここで,電気使用量の熱量への換算係数を9.76GJ/(MW·h),A重油の高発熱量を39.1GJ/kLとする。

ある火力発電設備が,液体燃料を熱源として電気出力150MWの一定出力で運転をしている。燃料の高発熱量を40GJ/kL,この発電設備の,高発熱量基準の発電端熱効率を36%とすると,1時間当たりの燃料使用量は37.5[kL/h]である。

空気調和設備は,外気条件の変化などによる軽負荷時には,それに合った高効率運転を行うことが必要である。工場等判断基準の基準部分(工場)では,空気調和設備を構成する熱源設備,熱搬送設備,空気調和機設備の管理は,外気条件の季節変動などに応じ,冷却水温度や冷温水温度,圧力などの設定により,空気調和設備の総合的なエネルギー効率を向上させるように管理標準を設定して行うことが求められている。

線間電圧400Vの対称三相交流電源に,消費電力が40kW,力率が60%の負荷と,消費電力が140kW,力率が80%の負荷とが並列に接続されており,いずれも平衡三相負荷である。このとき,負荷の合計消費電力は180[kW]であり,電源から見た力率は75[%]である。ここで,力率はいずれも遅れ力率である。

三相交流電源から三相負荷へ供給する電圧は,負荷の大きさや,電源から負荷までの距離などを考慮して決められるが,その際の線路における電力損失を考える。負荷は,同一電力で同一力率であるとし,同じ線路を用いて電力を供給する場合,負荷の電圧を2倍にすると,線路における電力損失は1/4倍になる。

送風機の所要動力P[kW]は,風量をQ[m³/min](質量流量G[kg/min]),風圧(吐出し側と吸込側の全圧の差)をH[Pa],送風機の効率をηとすると,[kW]で表される。

電動機で送風機を駆動している送風機系で,回転速度を変えて風量制御する場合,電動機を含む送風機系の慣性モーメントが大きいと,一般に,制御の応答は遅くなる。ただし,この慣性モーメントの大きいものと小さいものとの比較において,負荷トルクは同じで,電動機の駆動トルク及び制御するトルクの変動幅も同じとして考える。

電気化学システムでは,電極と電解質の界面で,電子とイオンの電荷移動を伴う電気化学反応が起こる。この反応において,電極上に析出又は溶解する化学物質の質量は,物質の種類によらず,反応に関与する電子数と,物質の式量(1mol当たりの質量)に応じて,通過する電気量に比例する。これはファラデーの法則と呼ばれる。

照明設備で光源を選ぶときの主な指標として,ランプ効率と平均演色評価数がある。トンネルなどの照明によく使用される低圧ナトリウムランプは,一般の蛍光ランプと比較してランプ効率は高いが平均演色評価数は低い

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