科目Ⅲ:電気設備及び機器 平成23年度

問題7 工場配電

電気設備の事故

電気設備の事故を原因別に分類すると,設計・製作・施工などの不完全,保守の不完全,機器や部品の経年劣化,誤操作及び,落雷や風雨,氷雪などの自然災害による被害,に大別することができる。自然災害による被害以外の事故は,施工後の検査と,その後の点検や保守によって,大きく低減できる。このうち,故障の兆候を早期に見つけて処置したり,故障前に予測される不具合部品を交換する方法が採られることが多い。これを予防保全と呼ぶ。

構内電気回路に短絡などの事故が発生した場合,高速に事故を検出し,事故の範囲をその回路に局所化し高速に遮断して,損傷部分をできるだけ軽微にとどめるとともに,他の部分にその影響が波及することを防止するためには,保護協調を採ることが重要である。一般に短絡保護協調としては,例えば高圧系統では時限差継電方式が採用される。

電力用コンデンサ

図のように,受電点から,高圧三相3線式の配電線で接続された平衡三相負荷がある。この負荷電力Pは1500kW,力率cosθは遅れ0.8とし,簡単のため負荷端の電圧Vrは6600Vで一定とする。このときの負荷の皮相電力Sは1875[kV·A],無効電力Qは1125[kvar]であり,電流は164[A]である。

配電線1相当たりの抵抗Rが0.6Ω,リアクタンスXが0.8Ωである場合,受電点の電圧Vsは6.87×10³[V]である。ここで,Vs-Vr=√3I(Rcosθ+Xsinθ)の近似式が成り立つものとする。

この負荷端に,力率を改善するために電力用コンデンサQcを設置することとした。負荷端における力率を1とするためには,この負荷が消費する無効電力Qと同容量のコンデンサを設置する必要がある。このコンデンサを設置することにより,受電端の電圧Vsは6.74×10³[V]となり,線路電流及び線路損失は,共に減少する

次に,電力用コンデンサQcを接続したまま,負荷電力が500kW(力率は遅れ0.8)まで減少した場合,受電点から負荷側を見た力率は進み力率となり,その線路インピーダンスにより,負荷端の電圧Vrは受電点の電圧Vsと比べて高くなる。このように進み力率になることで,VsとVrとの間に発生する現象は,電力系統ではしばしば見られ,これをフェランチ効果と呼ぶ。

図 高圧三相3線式の配電線で接続された平衡三相負荷
皮相電力Sは,
無効電力Qは,
電流Iは,
コンデンサ接続前の受電点の電圧Vsは,
コンデンサ接続後の受電点の電圧Vs’は,
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