科目Ⅲ:電気設備及び機器 平成23年度

問題8 工場配電

高調波

高調波の発生源は,主に,電力変換装置における,整流動作や半導体バルブデバイスのスイッチングによるもの,アーク炉などにおける放電現象によるもの,変圧器や電動機などの鉄心の磁気飽和やヒステリシスによるものに分類される。

一方,発生した高調波によって過電流,誘導障害,電圧波形ひずみが引き起こされ,これらが様々な障害の要因となる。変圧器や電動機など鉄心を有する機器では,鉄損の増大による過熱や異常音,振動が発生する。また,計算機,制御装置,計測器などの電子機器では,電磁誘導や電源電圧の波形ひずみなどが誤動作やノイズの原因となる。位相制御を行う電力変換装置では,高調波により誤動作や不安定動作が引き起こされる。

高調波による障害を防止するには,発生源で高調波の発生を抑える方法と,影響を受ける側で対策する方法とがある。影響を受ける機器は多様であるが,電力用コンデンサ設備に直列リアクトルを挿入する場合には,高調波に対する共振を考慮する必要がある。

瞬時電圧低下

電力系統への落雷や風雨,氷雪などにより電力系統を構成する送電線で系統故障が発生すると,この異常を保護継電器などが検知し,遮断器により故障点を電力系統から除去するが,故障が除去されるまでの間,事故電流により故障点を中心に広範囲に電圧低下が発生する。このような系統の電圧が瞬時的に低下する現象を瞬時電圧低下と呼んでいる。

この瞬時電圧低下が発生すると,その電圧低下の率と継続時間によっては需要家の機器類に悪影響を与えることになり,工場のプロセス制御やFAシステム,OAシステムに使われるコンピュータのデータ消失やプログラムの誤動作の発生,電動機の運転・停止用電磁接触器の開放,高圧放電ランプの消灯などの問題が起きる。

このような瞬時電圧低下の対策としては,電力系統側で行うものと,影響を受ける機器側で行うものとがある。電力系統側では,雷害事故の保護,故障点の高速除去による継続時間の低減,電源側の高インピーダンス化による電圧低下の抑制などの方法がある。また,影響を受ける機器側の対策としては,順逆変換装置と蓄電池から構成された無停電電源装置の設置が推奨されている。そのほか,NAS電池,フライホイールなどの電力貯蔵装置を瞬時電圧低下対策用として採用する方法などもある。

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