科目Ⅲ:電気設備及び機器 平成23年度

問題10 電気機器

誘導電動機の始動方法

普通かご形誘導電動機を全電圧始動すると,二次巻線を短絡した変圧器と同様な現象が発生する。二次(回転子)回路抵抗は小さく,抵抗に比してリアクタンスが大きい。このため,力率は悪く,大電流の割に,トルクを発生させる有効電流成分は少ない。この欠点を改善し,二次回路の実効抵抗が始動時に自動的に大きくなり,定格運転時には小さくなるような構造としたものが特殊かご形誘導電動機であり,定格出力5.5kW以上の誘導電動機に採用されている。特殊かご形誘導電動機には,深溝かご形と二重かご形の2種類がある。

誘導電動機の始動時は二次回路周波数が高い。特殊かご形誘導電動機では,二次回路の同一スロット内に納められた導体内での漏れ磁束は,スロット底部に近い部分ほど多くの磁束と鎖交するので,インダクタンスが大きくなる。このため,表皮効果により導体内の電流密度分布が不均一となり,導体全体としては電流が上部ほど大きくなって二次回路の実効抵抗が増加することで始動電流が抑制され,大きな始動トルクを得ることができる。電動機の回転速度の上昇に従って滑りsが小さくなる。したがって,一次回路の周波数をfとすると,二次回路の周波数sfも小さくなることで,二次回路導体のリアクタンスが減少し,導体内での電流分布も均一となり,二次導体は低抵抗導体として作用するので損失の増大が抑制される。

直流チョッパ回路

直流チョッパとは,半導体バルブデバイスを高頻度にオン-オフすることによって,中間に交流を介することなく,直流電圧を直接制御する回路である。直流チョッパには,3種類の基本回路がある。図に示すのは昇圧形チョッパ回路である。

この回路の定常状態におけるダイオードDの作用と,それに伴うエネルギーの授受は,次のようになる。スイッチSがオンの期間(ton)には,DはコンデンサCの電圧によって逆バイアスされて非導通となる。この期間,負荷の消費電力はCによって供給され,電源電圧EsはリアクトルLにのみエネルギーを供給する。次に,スイッチSがオフの期間(toff)には,tonの期間にLに蓄えられたエネルギーがDを通して放出されるので,この期間は,Lの放出エネルギーと電源からの供給エネルギーとによってCの充電エネルギーと負荷の消費エネルギーが供給される。ここで,Dは環流ダイオードと呼ばれる。また,T=ton+toffはチョッパの周期であり,α=ton/Tは通流率と呼ばれる。負荷に掛かる電圧Vdと,電源電圧Esとの関係は,αを用いて次式で示される。

三相かご形誘導電動機

定格出力7.5kW,定格周波数50Hz,4極の三相かご形誘導電動機が,定格運転時,滑り4%で運転されているとき,回転角速度は50×π×(1-0.04)[rad/s]となる。このときのトルクTは49.8[N·m]となる。この誘導電動機の無負荷損が400Wで,L形等価回路での,星形1相一次換算の,一次抵抗値を0.35Ω,二次抵抗値を0.24Ωとすると,定格運転時の二次電流(一次換算値)I220.8[A]となる。したがって,定格時の銅損Pc768[W]と計算され,定格運転時の効率ηは86.5[%]となる。

トルクTは,

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