科目Ⅳ:電力応用 平成23年度

問題11 電動力応用

ポンプやファンの可変速運転

ポンプやファンは,その流量や圧力を制御するために,可変速運転が行われることが多く,それに適した電動機及び制御方式が採用される。上水道などで用いられる中・大容量のポンプシステムでは,その運転速度制御範囲は定格の70~100%程度の比較的狭い領域にある。この範囲でポンプ負荷を可変速で駆動するために,巻線形誘導電動機の二次側電力を半導体電力変換装置を介して電源側に回生して可変速運転を行う方法が採られる。このように,二次側電力を制御して可変速運転を可能にする制御方式が静止セルビウス制御である。

ベクトル制御方式

牽引負荷などのように,始動時には大きなトルクが必要であるが高速域では比較的小さなトルクでよい場合の特性として,電動機は,機器単体又は制御装置と組み合わせて定電力特性を持つものが多く使用される。

一方,可逆圧延機のような急加減速と,変動の激しい負荷トルクへの追従が要求される用途では,トルクの高速応答が必要である。最近では絶縁ゲート形バイポーラトランジスタ(IGBT)などを用いたインバータなどの半導体電力変換装置で給電される交流電動機に,磁束の位相を基準として,トルク電流と励磁電流を,設定した値に制御するベクトル制御方式を用いて必要な性能を得ていることが多い。この方式を三相かご形誘導電動機に適用すると,出力トルクは滑り周波数に比例する。この方式はV/f制御方式よりも優れた応答性を得ることができる。

巻上げ装置

図のように,電動機に(減速比)=(電動機側の回転速度)/(負荷側の回転速度)が10の減速装置を介して,直径1mの巻胴が直結された巻上装置で,ワイヤロープによって質量100kgの吊り荷を加速度1m/s²で巻き上げている。ここで,巻胴,吊り荷以外の質量,慣性モーメント,及び摩擦は無視できるものとし,重力の加速度は9.8m/s²とする。

このとき,ロープに掛かっている力は重力と,加速に要する力との和であるから1080[N]となる。この力を巻胴軸でのトルクに換算すると540[N·m]であり,電動機軸でのトルクTwに換算すると54[N·m]である。また,巻胴軸の角加速度は2[rad/s²],電動機軸の角加速度は20[rad/s²]である。巻胴の慣性モーメントJが5kg·m²であるとき,巻胴を加速させるために必要な電動機トルクTS1[N·m]であり,電動機所要トルクは,TwとTsとの和で求めることができる。

以上のことを考慮して,定格トルク100N·mの電動機を使用している巻上装置を考える。

電動機のトルクが定格の1/4で,吊り荷の巻き上げ速度が1m/s一定のとき,電動機の出力は0.5[kW]であり,この状態で5秒間に電動機が行う仕事は2.5[kJ]である。

ポンプの理論動力(1秒間当たりの仕事)は,

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