科目Ⅳ:電力応用 平成23年度

問題14 電気化学-選択問題

食塩水の電気分解

塩素の原子量は35.5とし,ファラデー定数は96500C/molとする。

丈夫で耐久性のある高分子材料として塩化ビニルが広く利用されているが,この原料となる塩素は,工業的には食塩電解プロセス,すなわち,食塩水の電気分解により次の反応を利用して製造される。

2NaCl+2H2O→2NaOH+H2+Cl2

この食塩電解プロセスは,古くから幾つかの方法で実施されてきたが,我が国では,工業的にはすべて,環境問題への対応から開発されたイオン交換膜法が用いられており,環境対策と共に,省エネルギーの面でも大きな効果を上げている。

この食塩電解プロセスで,塩素ガスは食塩を酸化して得られ,理論的には,得られる塩素ガスの体積は,水素ガスの体積と等しい

塩素ガス1tは1.41×104[mol]であり,この量を製造するのに必要な理論電気量は2.72×109[C]となる。この理論電気量を,より実用的な単位である[kA·h]で表すと7.55×10²[kA·h]となる。この電解において塩素ガス1tを製造するのに実際に使用した電気量が788kA·hであったとき,その電流効率は95.8[%]となる。さらに,このプロセスで使用している槽の電解電圧を3.15Vとすると,このプロセスで塩素ガス1tを製造するのに必要な,実際の電気エネルギーは2.48×104[kW·h]となる。

塩素ガス1tのモル数は,

1000×10³/2/35.5=1.408×104[mol]

実際の電気エネルギーは,

788×3.15=2482.2[kW·h]

ニッケル・カドミウム電池

アルカリ蓄電池は充電が可能な電池として古くから使用されている。このアルカリ蓄電池の代表であるニッケル・カドミウム蓄電池について考える。

この電池の負極は,充電状態でCd,放電状態でCd(OH)2が主成分である。一方,正極は,充電状態でNiOOH,放電状態でNi(OH)2が主成分である。

この電池反応に関与する電子数は,ニッケル1原子当たり1個,カドミウム1原子当たり2個である。また,電池の電解液の主成分はKOHである。

ニッケル・カドミウム電池の放電反応
負極:Cd+2OH--2e-→Cd(OH)2
正極:2NiOOH+2H2O+2e-→2Ni(OH)2+2OH-
全反応:Cd+2NiOOH+2H2O→Cd(OH)2+2Ni(OH)2
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