問題3 エネルギー管理技術の基礎
次の各文章は「工場等におけるエネルギーの使用の合理化に関する事業者の判断の基準」(以下,工場等判断基準と略記)の内容に関連したもので,平成24年4月1日時点で施行されているものである。これらの文章において「工場等(工場等であって専ら事務所その他これに類する用途に供するものを除く)に関する事項について,「Ⅰ エネルギーの使用の合理化の基準」の部分は「基準部分(工場)」,「Ⅱ エネルギーの使用の合理化の目標及び計画的に取り組むべき措置」の部分は「目標及び措置部分(工場)」と略記する。
「工場等判断基準」の「基準部分(工場)」は,事業者が遵守すべき基準を示したもので,次の6分野から成る。
- 燃料の燃焼の合理化
- 加熱及び冷却並びに伝熱の合理化
- 廃熱の回収利用
- 熱の動力等への変換の合理化
- 放射,伝導,抵抗等によるエネルギーの損失の防止
- 電気の動力,熱等への変換の合理化
また,「目標及び措置部分(工場)」は,その設置している工場等におけるエネルギー消費原単位を管理し,その設置している工場等全体として又は工場等ごとにエネルギー消費原単位を中長期的にみて年平均1パーセント以上低減させることを目標として,技術的かつ経済的に可能な範囲内で,1 エネルギー消費設備等に関する事項 及び 2 その他エネルギーの使用の合理化に関する事項に掲げる諸目標及び措置の実現に努めるものとしている。
質量10kg,温度20°Cの水を標準大気圧のもとで加熱して,すべて乾き飽和蒸気にするために必要な熱量は2.59×104[kJ]である。ただし,20°Cの水が100°Cの飽和水になるまでの比熱を4.18kJ/(kg·K),水の蒸発潜熱を2257kJ/kgとする。
加熱炉において,設定温度を必要以上に高くすると大きな熱損失となる。「工場等判断基準」の「基準部分(工場)」では,加熱などを行う設備は,被加熱物又は被冷却物の量及び炉内配置について管理標準を設定し,過大負荷及び過小負荷を避けることが求められている。
温度22°Cの水が,表面温度48°Cの鋼板に接して流れている。この鋼板表面での熱伝達率が430W/(m²·K)であるとき,鋼板から水へと伝わる単位面積,単位時間当たりの伝熱量は11.2[kW/m²]である。
設備単位によるきめ細かいエネルギー管理を行うためには,工場エネルギー管理システムが有効である。「工場等判断基準」の「目標及び措置部分(工場)」では,エネルギー管理の中核となる設備として,系統別に年単位,季節単位,月単位,週単位,日単位又は時間単位などでエネルギー管理を実施し,数値,グラフなどで過去の実績と比較したエネルギーの消費動向などが把握できるよう検討することや,機器や設備の保守状況,運転時間,運転特性などを比較検討し,機器や設備の劣化状況,保守時期などが把握できるよう検討することが求められている。
ボイラ効率は,投入した燃料の熱量が蒸気の発生にどれだけ有効に利用されたかを示す比率であり,入出熱法では,ボイラ給水が蒸気になるまでに得た熱量を,消費した燃料が完全燃焼する際に発生する熱量で除した値で示される。
蒸気発生量が8t/hで,燃料消費量が520kg/hのボイラがある。ボイラの入口給水の比エンタルピーが430kJ/kg,ボイラ出口蒸気の比エンタルピーが2770kJ/kg,燃料の低発熱量が41.8MJ/kgであるとすると,このときの低発熱量基準のボイラ効率は86.1[%]である。
工業炉のバーナなどの燃焼機器は,燃焼設備及び燃料の種類に適合し,かつ,負荷や燃焼状態の変動に応じて燃料の供給量や空気比を調整できるものがよい。また,燃焼排ガスの熱を高効率で回収する,蓄熱室とバーナを一体化した燃焼機器の採用が望ましい。「工場等判断基準」の「目標及び措置部分(工場)」では,バーナの更新・新設に当たっては,リジェネレイティブバーナなど熱交換器と一体となったバーナの採用を検討することが求められている。
ボイラや工業炉などの燃焼排ガスの熱回収については,自工程で使用できる燃焼用空気予熱や給水予熱への回収熱利用のほか,乾燥・予熱用熱風などにも利用できる可能性がある。廃熱の回収利用の基準に関して,「工場等判断基準」の「基準部分(工場)」では,排ガスを排出する設備などに応じ,排ガスの温度又は廃熱回収率について管理標準を設定して行うことが求められている。
スチームトラップは使用している間に徐々に性能が低下するので注意が必要である。「工場等判断基準」の「基準部分(工場)」では,スチームトラップの作動の不良などによる蒸気の漏えい及びトラップの詰まりを防止するように保守及び点検に関する管理標準を設定し,これに基づき定期的に保守及び点検を行うことが求められている。
空気調和設備では,機器のそれぞれの効率の向上に加えて,設備全体としての総合的なエネルギー効率の向上が求められる。「工場等判断基準」の「基準部分(工場)」では,空気調和機設備が同一区画において複数の空気調和機で構成されている場合は,混合損失の防止や負荷の状態に応じ,稼働台数の調整又は稼働機器の選択により空気調和機設備の総合的なエネルギー効率を向上させるように管理標準を設定して行うことが求められている。
燃料として天然ガスを使用している,ある火力発電所の,年間の燃料消費量が1.44×107m³であった。天然ガスの高発熱量を45MJ/m³,高発熱量基準の平均発電端熱効率を40%としたとき,この発電所の年間の発電端発生電力量は7.2×104[MW·h]である。
三相3線式400V電源から供給される平衡三相負荷の消費電力が85kW,力率が95%であるとき,この負荷に供給する線路の線電流は129[A]である。
三相3線式6.6kV電源から供給される平衡三相負荷の消費電力が500kW,力率が85%であった。この力率を100%に改善するために,負荷に並列に設置すべきコンデンサ容量は310[kvar]
省エネルギーを行う上で,効率の良い機器を選定することは重要な要素の一つである。「工場等判断基準」の「基準部分(工場)」では,特定機器に該当する受変電設備に係る機器を新設する場合は,当該機器に関する性能の向上に関する製造事業者等の判断の基準等に規定する基準エネルギー消費効率の値よりも優れたものの採用を考慮することが求められている。
受変電設備及び配電設備に関して,「工場等判断基準」の「基準部分(工場)」では,電気を使用する設備の稼働について管理標準を設定し,調整することにより,工場における電気の使用を平準化して最大電流を低減することが求められている。負荷の電力を一定以下に抑えて最大電流を低減するために一般にデマンド監視制御装置が用いられる。
また,電気の使用の平準化を目的として蓄熱設備,蓄電設備なども用いられる。
送風機の吐出し側にある制御ダンパにおいて,流量が18000kg/hで圧力損失が2kPaであるとき,この圧力損失をエネルギーに換算すると8.33[kJ/s]となる。ここで,流れは一様で,制御ダンパの前後で流速の差はないものとする。また,空気の密度は1.2kg/m³で一定とする。
電気加熱のうち,直接抵抗加熱,誘導加熱,誘電加熱などは,被加熱物を直接内部から加熱でき,しかも急速加熱できるという特徴がある。このうち,誘電加熱でよく用いられるものに,電気的に絶縁体である被加熱物を電極間に配置して加熱する方法がある。
照明設備の効率を表す指標の一つに,ランプの全光束を消費電力で除した値で表す光源効率(単位:lm/W)がある。一般に使用されるランプの光源効率は,直管形蛍光ランプではおおむね70~110lm/Wであり,白熱電球ではおおむね15~20[lm/W]である。